架空世界では俺の青春ラブコメは間違えない?   作:0ひじり0

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Ep.10 Yukino

コンコン

 

俺は雪乃の部屋の前で少し躊躇いがちにノックをした。

今日の奉仕活動は雪乃の部屋で行うらしい。そう…これはデートではない!!(※立派なお家デートです。)

 

ユキノン「賢いわね。時間通りよ。」

 

ハチマン「当たり前だ。遅れたら後が怖いからな。」

 

カチャリと開けられた扉の内側には昨日に比べ軽装の雪乃が立っており、中に案内される。

 

ユキノン「賢明な判断ね。遅れたら迎え(※捕獲)に行くところよ。」

 

ハチマン「なんか怖いんだが。」

 

ユキノン「気のせいよ。」

 

普通は男なら悪くない言葉の筈なのに何故か背筋に悪寒が走ってしまうのは気のせいだよな。と言うか気のせいであって欲しい。

 

ハチマン「…お邪魔します。」

 

ユキノン「ええ。いらっしゃい。」

 

なんでそんなに嬉しそうに微笑むんだよ。惚れちゃうだろうが。

 

ユキノン「今紅茶を出すから待ってて頂戴。」

 

ハチマン「サンキュー。」

 

ソファーに座るように促された俺は雪乃が部屋に備え付けられたキッチンに向かうのを横目で見ながらくつろぐ。

…なんか夫h…ゴラムゴラム。危なかった。変な妄想をするところだったぜ。つか、材木座みたいだったな…今の俺。

 

――――――――――

 

ユキノンside

 

私は料理のスキルはかなり高い。だから現実世界に居たときの様に滞りなく紅茶を用意する。

彼はソファーで座ってるが視線を感じるのは気のせいではないはず。チラリと彼を見るとその目はいつもの様に濁ってはいるが、その中に慈愛にも似た色が見える。

顔がにやけてしまいそうになり、内心慌てて前を向く。このくらいで嬉しくなってしまう私はチョロいのかしら。少し複雑な気分ね。

 

仕上げにあるものを入れて紅茶の用意が終わり、彼が座るソファーの前に鎮座するテーブルに二人分の紅茶を置く。

 

ハチマン「ありがとう。」

 

ユキノン「いいのよ。」

 

短い会話を交わして私もソファーに座って紅茶を飲む。少し空間が開いてはいるが隣で座る彼を盗み見ると味わっているのか目を閉じながら飲んでいた。

目を閉じた彼の顔は整っており、かなりイケメンだ。だけどもあの濁った目がないと少し物足りなく感じる私は既に比企谷菌に犯されてしまったのかもしれないわね。

 

ハチマン「かなり美味い。」

 

ユキノン「当たり前よ。私が淹れたんだもの。」

 

ハチマン「ぷっ、ああ。そうだな。」

 

ユキノン「ふふっ、そうよ。」

 

軽く吹き出す彼に釣られて私も笑う。

短いやり取りだが彼独特の雰囲気が私の心を癒す。

さて、そろそろ効いて来る頃かしら。

 

ハチマン「…あれ?何か眠たく、なって…。」

 

ユキノン「あら。それは大変ね。」

 

時間通りに効いて来た薬によってフラフラする彼の肩を掴み私の太股にに寝かせる。嬉しい誤算だわ。

 

ハチマン「…嫌じゃねぇのか?」

 

ユキノン「このくらい嫌じゃないわ。いいから寝なさい。」

 

ハチマン「……わりぃ。」

 

こんな時でも相手を心配する彼は本当にお人好しね。そんな所が好きだけど嫌い。

彼の優しさを感じれるけれども少し位甘えられたいのが乙女心なのに。まあ、彼に分かれと言うのも酷な話ね。

 

少し話が脱線したけど計画通りね。

私は彼の柔らかくネコ毛な髪を撫でながら微笑んだ。

 

――――――――――

 

ハチマンside

 

ゆっくりと意識が覚醒していく中で一番に思ったのは『温かい』だ。

確か俺はソファーで寝ていた筈なのに俺の体の下にあるのは温かく柔らかい…そう、幼い頃に母親に膝枕をされていた時のような感触だ。

 

ハチマン「…ん、ユキノン?」

 

ユキノン「なにかしら。」

 

目を開けて上を見上げると雪乃の整った顔が目に入る。その顔はいつもより大きく感じ、雪乃は俺の背中を撫でている手は心地いい。…あれ?

おかしい。ゆっくりと周りを見渡すと部屋の何もかもが大きくなっている。いや、俺が小さくなったのか?

 

ハチマン「…どういう事だ。」

 

ユキノン「なんの事かしら。」

 

ハチマン「とぼけるな。」

 

ユキノン「ぁ…。」

 

雪乃の膝の上から飛び降りると雪乃は残念そうな顔をするが今は気にしない。部屋にある鏡の前に立つとそこに映るのはふさふさの黒い毛に尖った三角の耳臀部から伸びた細い尻尾は俺のトレードマークであるアホ毛を連想させる。つまりネコになっていた。

 

ハチマン「……なんじゃこりゃぁぁぁ!!」

 

叫ぶ俺をよそに雪乃は俺を持ち上げて抱き締める。

 

ユキノン「暴れてはダメじゃない。」

 

ハチマン「うおっ!?」

 

俺を嗜める雪乃だが、それどころではない。慎ましいけど確かな女性の象徴が俺の理性をゴリゴリ削っているのだから。

 

ハチマン「や、やめろ!」

 

ジタバタと必死に暴れるが今の体はネコなのだ勝てる訳と無く、仕方なく諦める。

 

ユキノン「ふふっ。大人しくしてなさい。」

 

ハチマン「………。」

 

抵抗をしなくなった俺に雪乃は嬉しそうに微笑むが俺はふてくされる。雪乃は俺を抱いたままベッドに座って再び膝の上に俺を置く。

 

ユキノン「こんなに耳を後ろに寝かせて怒ってるのかしら?」

 

ハチマン「…別に。」

 

ユキノン「貴方自慢のポーカーフェイスもネコになってしまってはバレバレね。」

 

無意識にイカ耳のしているらしい俺の頭を優しく撫でる雪乃のてはやはり心地良く目を細めてしまう。

 

――――――――――

 

ユキノンside

 

先程までイカ耳だった彼は撫で始めると直ぐに髭が少し下がってしまう。リラックスしている証拠ね。

いつも捻くれている彼の気持ちが手に取る様に分かるわ。

 

ユキノン「気持ちいいかしら?」

 

ハチマン「………。」ゴロゴロ

 

ユキノン「ふふっ♪バレバレよ?」

 

ハチマン「うっせ。」

 

次第に喉が鳴り始めて、尻尾も上にピンッと立つ。

これは嬉しくて甘えてる仕草。かわいいわ。

 

ユキノン「一日で元に戻るから許して頂戴。」

 

ハチマン「…最初から言えよ。」

 

ユキノン「言ったらネコになってくれないでしょ?」

 

ハチマン「ぅ…。」

 

言葉を詰まらせる彼を抱き上げてそのまま横になる。ネコ特有の少し高い体温を感じてにやけてしまう。

 

ハチマン「おい。ちょっと苦しい。」

 

てしてしと抗議する様に私の頬にネコパンチをする彼。爪をたてないのは彼の優しさだろう。

 

ユキノン「あら。ごめんなさい。」

 

ハチマン「別にいい。」

 

彼を解放すると寝心地が良くなかったのか一度私の懐から抜け出す。

 

ハチマン「…そんな悲しそうな顔するなよ。」

 

ユキノン「そんな顔してないわ。」

 

ハチマン「はぁ…。今日だけだからな。」

 

ユキノン「捻デレね。」

 

ハチマン「…うっせ。」

 

少し緊張してるのか髭が先まで張っている。いくらネコでも精神は男性なのだから流石に仕方ないわね。

再び私の懐に寄って来た彼はおずおずと体を横たえる。

お腹を見せてくれるのに私は嬉しくなり、優しく撫でる。

いくら彼でも動物の本能には逆らえないらしく目を細めて寝てしまった。

いつもこれ程素直ならかわいいのに。でも、素直じゃない所も彼の魅力なのだからやはり彼は今のままでいいのかも知れない。

 

ユキノン「はぁ…ダメね。私もかなり末期なのかも知れないわね。」

 

彼の耳がピクリと動く。

私は我慢できなくなり、彼の鼻先に口付けをしてしまう。

 

ユキノン「おやすみなさい。ハチマン。」

 

小さな彼の体を潰してしまわない様に腕を回して優しく抱き締めて私も目を瞑った。凄く幸せ。

 

目を覚ました時に人間に戻っていた八幡の顔が数センチ前にあり、叩いてしまったのはまた別のお話である。

 


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