感謝を込めて今回はすこし長めに書かせていただきました!
字が多くて見にくい場合や、前回のような1000文字更新の方がいいという方はいらっしゃいましたら、また戻そうと思います!
『怪物』。まさか睦月ちゃんからもその言葉を聞くとは思いにもなかった。
「でも~、睦月も噂で聞いたお父さんのイメージなんだよね~。」
睦月ちゃんも実際には司令官の戦う姿を見たことがないらしい。彼女が言うには司令官が実際に海に出て戦ったのはもう10年も昔のことだという。それ以外に戦ったのは他の司令官との演習で、他の司令官の鎮守府で戦うのだから見る機会がなかったようだ。
「だからお父さんが戦う姿はきっとそうなんだろうなーっていう、睦月のイメージにゃし。」
「で、でも睦月ちゃんは怖くないの?自分の司令官が『怪物』って呼ばれているのに...」
「怖くないよー、だってお父さんだもん」
睦月ちゃんには全く恐怖心が無い様だった。それどころか逆に
「吹雪ちゃんはお父さんのどこが怖いの?」
その質問に私はすぐに応えることが出来なかった。確かに初めて司令官に会ったときはその体格に驚いたが、決して怖いとは思わず、むしろ家族として扱おうしてくれるその言葉に嬉しさを感じていた。
「確かにお父さんは怖い顔しているけど、全然怖くないにゃし。」
「だって他の司令官からは怪物って呼ばれてるし...それに睦月ちゃんだって、司令官のこと怪物だって」
「あくまで怪物ってのはイメージにゃし、むしろお父さんのことは睦月だーいすき!」
そう言うと無邪気に笑みを浮かべる睦月ちゃんは、本当に司令官のことが大好きなんだなと思った。
「それに睦月も最初はお父さんのことすっごく怖かったけど、ずっといるとお父さんの良さがわかると思うな~」
お父さん目つき悪いけどねと、一言睦月ちゃんは言ったけど、多分私が怖いと感じているのはそこじゃないんだよね...
「あ、着いたよ吹雪ちゃん!ここが私たち駆逐艦の子たちが集まる寮だよ!」
寮がある場所は鎮守府の司令官がいた部屋から少し歩いたところにあった。
「ありがとう睦月ちゃん、私はどこの誰の部屋に行けばいいのかな?」
前の鎮守府では同じ型の艦娘同士の相部屋だったので、今回は誰と部屋が一緒になるのだろうと考えていると
「ううん、吹雪ちゃんの個室が用意されるから一人部屋だよ~」
意外だった私たち艦娘はどの鎮守府でも人数が多く、個室を与えられるのは秘書官だけだと思っていたからだ。なんでも司令官の意向で『年頃の娘に相部屋は酷だろう』という理由で一人一部屋与えられている。
「でもね~、中には姉妹一緒に住みたいって人もいるからその人達用に相部屋も用意されてるんだ~」
主に利用しているのは、金剛姉妹や、大井さんと北上さんなど、姉妹艦だけでなく仲がいい艦娘同士も一緒に住んでいるらしい。
「吹雪ちゃんはどうする?誰かと一緒の方がいい?」
それとも睦月と一緒に住む?と睦月ちゃんは聞いてきた。
「う~ん、最初は一人部屋でいいかな」
少し心の整理もしたいし、それに初めて一人部屋を貰えるということにわくわくしていたからだ。
「そっか~、それは少し残念にゃし」
そう言うと睦月ちゃんは歓迎会の準備があるから先に食堂の方へ行くそうだ。ちなみに私の部屋は空き部屋ならどこでも使っていいらしく、睦月ちゃんの部屋の近くにした。
疲れが出たのか、すでに設置してあったベッドに横になり歓迎式の時間まで少々眠ることにした。
しばらくして睦月ちゃんが私を呼びに来た。もうそんな時間かと時計を見てみるとずいぶんと熟睡していたらしい、眠りについてから4時間以上経っていた。
睦月ちゃんに連れて行かれて食堂に着くと、この鎮守府の全艦娘が集合していた。私が以前いた鎮守府の艦娘より数が倍以上の人数がいて、その中には駆逐艦から戦艦まで、そして多くの国々の艦娘がいることにも驚いたが、ここまで人数に圧倒されたこともあったが、全員が提督を慕っていることが一番驚いた。
歓迎式の始まりは、提督が『仲良くやんな』と一言言い、私が自己紹介する簡単なものであった。私が挨拶をし終わると、他の艦娘たちが私に集まってきて、各艦娘の自己紹介や質問攻めを受けた。
一旦質問攻めの嵐が終わると、疲れたため人がいない窓際の方へ行き一休みすることにした。そこに一人の艦娘が私に近づいてきた。
「大変でしたね、ラムネ飲みます?」
「いただききます!えーと...」
「大和型戦艦一番艦、大和です。」
「失礼しました!大和さん!」
「そう畏まらなくていいですよ、もともとこの鎮守府は人数も多いし名前を一度におぼえるのは大変ですけど、覚えるのはゆっくりで大丈夫です。」
「ありがとうございます!そうですね、前にいた鎮守府と比べると人数が多くて、名前を覚えるのが大変で...」
「最近は特に人数が増えてて、3週間前には島風ちゃんが着任したばっかりですね。」
「ずいぶんと新しい艦が着任するのが早いですね、何か理由でもあるのですか?」
「そうですね、簡潔に言うと戦力の増強のためですね。以前はお父さんが海に出て戦っていたのですが、ここ数年は病気の症状が進んで海に出られないから、その穴を埋めるために海軍本部が艦娘を新しく配属させているのだと思いますね。」
「なるほどだから私も転任させられたわけですか」
正直ほっとした。前の提督から転任された理由は聞かされておらず、厄介払いだとずっと思っていたのだから。
「あれ?司令官は病気にかかってらっしゃるのですよね?」
提督のほうを見てみるとその周りには、隼鷹さんやPolaさん武蔵さんなど大人の艦娘が集まっている。
「あんなにお酒飲ませても大丈夫ですか?」
大和さんも提督を見るとそこには、提督にお酒を薦める艦娘たちの姿があった。そして笑顔で私を見ながら
「吹雪ちゃんちょっとすみません、席を外しますね」
そう言うと大和さんはすたすたと提督と艦娘たちがいるほうへ真っ直ぐ歩いて行った。すると提督たちがいるところから
「お父さん~、何飲んでいるのですか?」
笑顔ではあるが大和さんの怒りのオーラが分かるほど、その後ろ姿は怖かった。
「あれほどお酒は控えてくださいと言いましたよね?」
「馬鹿やろう、飲みてえもん飲んで体に悪いわけがあるか。」
はぁーと深いため息をついて、大和さんは
「あなたたちも何でお父さんにお酒を薦めているのですか」
すでに出来上がった隼鷹さんが
「今日は特別な日じゃん!よぉーし、いい酒を開けて、ひゃっはーしようぜ~!」
「そうですよ~。大和大丈夫ぅ、ポーラもお父さんも飲んでませんって~。」
Polaさんが明らかに飲ませて飲んでいるのに明らかにばれる嘘を言った。
「大和何か問題か?大丈夫。この武蔵に、全て任せておけ。」
どう見ても問題だ。明らかに武蔵さんが他の艦娘の誰よりも提督に酒を勧めている。
「武蔵、あなたが一番お父さんに薦めてどうするのですか。お父さんもお酒はもうそれで終わりにして下さいね。」
「娘たちから注がれた酒を断る親父がどこに居やがんだ、アホンダラァ。」
肝心の提督はまだお酒を飲むようだ。
「さっすがー親父―!」
隼鷹さんはお酒を加速させるように煽いでいる。
「隼鷹さん。後で少しいいかしら?」
大和さんは表情こそ笑顔ではあるが目は笑ってなく、隼鷹さんの酔いが醒めこの式が終わったあとどうなるのか、無事であることを私は静かに心の中で祈った。
最後前見ていただきありがとうございました!
次回の更新は今週、もしくは10日以内にはあげるので今後ともよろしくお願いします!