「はぁ...嫌だなぁ...」
彼女は提督室の前でため息を漏らしていた。彼女の名前は「吹雪」。今日から新しい鎮守府に着任し、新しい提督に挨拶をしようと提督室の扉の前でかれこれ1時間立ち止まっている。
「はぁ...嫌だなぁ...会いたくないなぁ...」
彼女がここまで挨拶に行きたくないのには訳がある。彼女が着任していた前鎮守府で、転任する提督について聞いたとき、こう呼ばれたからだ。
「怪物」
その言葉の理由を前提督から聞いたとき、彼は突然震えだした。前提督曰く、以前に演習で手合わせをしたことがあるらしく、そのときに彼が艦娘たちとともに戦ったそうだ。
前提督の階級は「大将」、それは本人も誇りに感じていることらしく演習も良い戦いをするだろうと思っていた。しかし結果は大敗、しかも戦ったのは相手の提督ただ一人だそうだ。その圧倒的な力を見せつけられ、今でも彼にはトラウマとなっているようだ。
私は今からそんな相手に会わないといけない、会わらなければないのだ。提督のことを考えるだけでも憂鬱になるのに、これから会わないといけないのだ。
そのとき扉の前で立ち止まっていると、一人の艦娘が近づいてきた。
「そこの扉の前にいるのは誰?」
不意に声を開けられ、私は
「は、はじめまして、吹雪です。よろしくお願いいたします!」
盛大に噛んでしまった。
「初めまして、航空母艦、加賀です。よろしく。ところであなたはさっきから扉の前で何をしているのかしら?」
「はい!実はこれから提督にご挨拶をしようと思い、扉の前に立っていました!」
嘘は言っていない、挨拶をするために扉の前にいたのだから
「そう、私もこれから提督に作戦終了の結果報告があるから一緒に入りましょう」
「はい!お願いします!」
即答であった、一人で入るのは怖いが誰か一緒に入るならば、それが知らない人であろうとも同じ艦娘ならばこれほど心強い味方はいない。
「では入りましょうか」
加賀さんは扉をノックし、「提督失礼します」と呼びかけ部屋に入った。私も遅れずにと部屋に入るとそこには点滴に繋がれた大男が座ってた。
「提督、第1艦隊無事帰還いたしました」
「そうか、それはご苦労だったな」
「いえ、みんな優秀な子たちですから」
「その後ろにいるやつは誰だ?」
提督が私の存在に気づき、声をかけてきた。
「は、はじめまして、吹雪です。よろしくお願いいたします!」
また噛んでしまった。初対面で「怪物」と呼ばれる提督前で、私は顔を真っ赤にして敬礼をした。
「グララララ、おめえか扉の前でずっと立っていたやつは」
ばれていた、私がずっと扉の前で待ったいたことを。さらに顔が真っ赤になった。
「ハナッタレが俺が気付かねえと思ってたのか」
グラララと提督が笑い出した。笑っている提督に加賀さんが
「提督からかうのはその辺にして、まず自己紹介をしてください」
そうだなと言い、その巨体を動かし立ち上がり名乗り始めた。
「おれぁ白ひげだ。吹雪、俺の娘になれ」
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