美穂子姉さんはぽんこつ?   作:小早川 桂

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七夕だし、久々にキャップと咲ちゃんとのイチャイチャを気楽に書きたかった。
ただそれだけなんだ。
※なので、短いです。


美穂姉と咲ちゃんは織姫になりたい

 我が家は世の中のイベントに敏感だ。親父も母さんもお祭りごとが好きなのが影響しているのかもしれない。

 

 そして今日は七夕。

 

 どこから買ってきたのか知らないが外から見ても目立つ大きな笹を庭に立てて、リビングでどんちゃん騒ぎをしていた。周囲の人も誘ったみたいでビール片手に日頃のうっ憤を晴らしている。

 

 もちろん未成年の俺たち姉弟は縁側へと避難。

 

 果汁ジュースと少量のお菓子を持って、星空を眺めていた。

 

「きれいだねー」

 

 いつものごとく遊びに来ていた咲が瞬く星の数々を目にして感想をつぶやく。

 

 確かにどの星も我こそは、と輝きを放っていて黒の空にちりばめられたそれは美しく映る。

 

「こういうのは都会じゃあ見れないよな」

 

 思い出すのは夏の全国大会。あの時も長野県勢でいろいろと出回ったものだが夜でも街の明かりが眩しかったのを記憶している。

 

「七夕だもの。きっとお星さまも頑張っているのよ」

 

「彦星と織姫かぁ。俺に織姫なんて一度も舞い降りたことはないな」

 

「私がいるじゃない」

 

「わ、私もいるよ! 京ちゃん!」

 

「咲は優しいなぁ」

 

 俺は隣で猛アピールをしている美穂子姉さんをスルーして幼馴染の頭を撫でる。だが、我慢がきかずに勝手に膝に頭を置いておねだりしてくる18歳金髪お姉ちゃん。

 

 仕方がないので髪を手で梳いてやると満足したみたいで起き上がった。

 

「優しい京太郎がお姉ちゃんは大好きです」

 

「はいはい」

 

「だからお姉ちゃんが織姫になります!」

 

「あっ結構です」

 

 駄姉の相手もほどほどに俺たちは鑑賞会に戻る。涼しい風が吹き、足をふらつかせながら空をただ見上げる。

 

「でも織姫と彦星って一年に一度しか会えないんだよね。美穂姉ちゃん我慢できなさそう」

 

「……確かに咲ちゃんの言う通りかも」

 

「好きすぎたのがいけなかったんだっけ? いちゃいちゃしすぎて働かなくなって無理やり離されたとか」

 

「うぅ、可哀想。好きな人と結婚したらずっとそばで話していたいっていうのはわかる気がするなぁ」

 

 文学少女の咲は純粋な乙女心を持ち合わせているみたいだ。

 

 とはいえ、俺も彦星の気持ちはわかる。きっと生涯で唯一の愛する人を見つけたならば全てを放り出して想い人と時間を過ごしていたいと思ってしまう。

 

 触れ合って、気持ちを通じ合わせたいと願ってしまうに違いない。

 

 そんなに相手を愛する二人が会えるたった一日という短い時間。

 

 俺ならばどんなことをするだろう……?

 

「……もし美穂姉が好きな人と一年に一回しか会えないってなったらどうする?」

 

「京太郎を殺して私も死にます」

 

「え? 匿名で聞いたのに名指し?」

 

「あの世で永遠の愛を誓いましょう、京太郎」

 

「怖い。怖いよ、美穂姉!」

 

 即答で心中宣言に我が姉ながらドン引きである。

 

 向けられる愛の重さに苦しみ半分、喜び半分だ。

 

 俺はとっさに咲へと話題を振ることで病んだ美穂子姉さんの視線から逃げることにした。

 

「じゃあ、咲は?」

 

「えっと……私はずっと一緒にいて離れたくないから」

 

「うん」

 

「京ちゃんを監禁する」

 

「なに? 最近の女子ってそういうのが流行りなの?」

 

 両隣から命の危険を感じる発言を頂いた俺はすぐさまその場から離脱しようとする。

 

 だがしかし、それぞれに腕と肩をつかまれて元の位置に強制的に戻されてしまった。

 

「どこにいこうとしたのかしら、京太郎?」

 

「せっかくの七夕なんだから外でお星さま見ていよ?」

 

 声音に普段の雰囲気が全く介在しておらず、妙な威圧感に圧された俺は素直に従って腰を下ろす。

 

 すると、今度は二人して腕を絡めて肩に頭を預けてくる。それぞれ女子特有の甘い香りが鼻孔をくすぐり、気が気でない。

 

 これだけ密着すれば咲の慎ましやかな胸でも柔らかさを感じてしまい、欲望を理性で抑え込むのに手いっぱいになってしまう。

 

「さ、咲さん? こんなことしなくても……」

 

「だーめ。今日は離しません。寝るときも一緒ですー」

 

「は、はぁ!? おい美穂姉も何か言ってやってくれよ!」

 

「私も隣で寝ますからね!」

 

「そうだった、この人は敵だった!!」

 

 少しでも美穂子姉さんに期待した俺がバカだった。

 

 振りほどこうにもがっちりと指先までつかまれていて身動きが取れない。背後から親父たちのからかう声が聞こえてくるが二人ともまんざらでもなさそうな表情を浮かべる。

 

 純粋な好意が伝わってくるだけに無下に扱えるわけがなかった。

 

「ずっとそばにいてね」

 

「彦星様?」

 

「はぁ…………」

 

 結局、俺は全裸になるという恥も外聞もない手段を取るまで手を握りしめたままだった。

 




夏コミ当選しています。
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サークル名は『Walking Trip』です。
よろしくお願いします。

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