ハリー・ポッターと留学生 作:原作なくして更新停止中
9と4分の3番線
〜主人公side〜
出発前夜
「ふぅ、イギリス行きの準備はこんなものかな」
空間魔法を付与した真っ黒な鞄(向こうの薬草の種やら何やら色々持って帰れるよう、国から支給)に、荷物を詰め込み終え呟く。通貨が硬貨しかないのと、単位が中途半端でかなり仕分けが面倒な上、重いのでこの鞄で助かった。...鍋とかは学校の備品を使えばいいのに。
それにしても、詰め込み教育から逃れられると思うと、緊張や不安もあるがそれよりも喜びの方が強い。留学が決まってから、イギリスでは日本の勉強が出来なくなるからといって、勉強漬けにされていた。それに、3ヶ月前に届いた向こうの教科書を使った勉強まで入ったからかなりキツかった。魔法史って何故やるんだろう?魔法薬学とか変身術なんかは面白いのに、あれは余計だと思う。
でも教科書が届いた日に、良い機会だからって杖を買ってもらえたのは嬉しかったかな。私の枝垂れ桜と水龍の髭の24センチの杖は、とても良く曲がるから、折る方が難しいくらい。魔力で補強すれば、振る時の力程度ではしならなくなるから、術が変な方に飛ぶ事も無い。簡単に折れるような杖じゃあ悪さをする妖怪や悪霊と闘えないし、良い買いものだった。まだ慣れてないから、お札を使う方が楽なんだけどね。
......ローブやマントは、なんだかコスプレっぽくて少し恥ずかしいけれど、向こうに着けばこれが当たり前になるんだから慣れなきゃね。
それにしても、英語をどうにかする手段が魔法薬というのには驚いた。色々な言語を扱えるようになる薬らしい。ホグワーツの先生が作った物で、とても素晴らしい物だ。教科書を読む時に使ったけど、英語を母国語のように話せて読み書きも出来るし、意識すれば使い分けられるから他の言語を使えなくなるわけでもない。それぞれの言語で使う薬が違う上に、同時には使えない。それに、方言なんかはかなり変な言葉に聴こえるらしい。日本語や韓国語みたいな語源のよく分からない言語や、漢字みたいに文字の種類が多い言語、変な模様みたいな文字の言語など、何かしらの理由で一部の言語だと効果が落ちるって言うけど、それでも十分な性能だと思う。
一応、解毒?薬も用意してあるしとても準備が良い。きっと優秀な人なんだろうな。お母さんもビックリしてたし、特許を取ったら大儲け確定じゃないかな?変な材料も使ってないみたいだから、忌避感を感じる人もも少なそうだし。
……味は、薬にしてもこれは酷いって感じなのが残念だけど。しかも適量だと効果時間が1日くらいしか無いから、これから殆ど毎日飲むとなると辟易とするんだけどね。
その上、留学の目的を考えると、普通の授業だけだと足りないだろうということで、ある程度の学年になると大半の教科で、授業で扱うより高度なものを個人授業で教えてくれるらしい。ただし授業についていけるなら、という注釈がつくけれど。
ここまでの話を聞くと、待遇はなかなか良さそうだと思う。
ただ、この間、保護者に向こうの環境の説明をしにやってきたホグワーツを視察した人と話をしたら、
「色んな意味で凄い所だから驚くだろうけれど、出来る限りの事はしたよ。頑張ってね」
と、憐れむような目で此方を見ていたのが気になる。もしかして、相当ボロい校舎だったりするのだろうか。あまり贅沢は言わないけれど、せめて清潔な設備だと良いなぁ。
などと物思いに耽っていたら、お母さんが部屋にやって来て、大変な事を告げた。
「伝えるのを忘れてたけど、今まで教えていた向こうの常識は数十年以上前の物だから、現地で今の常識を学ばないといけないわ。頑張って」
......交流なんて無かった筈なのに、なんで知ってるのか不思議だったけど、こんな致命的な理由だったなんて。早いうちに仲の良い人を作って教えて貰うようにしよう。変な質問して笑われるのはイヤだもの。
...............私、友達作るの苦手なんだけど、なんとかなるかなぁ?
先週、お母さんがうっかり飛行機の予約を忘れていたのに気付いて、慌てて予約を取ろうとした時には殆ど埋まっていて、ギリギリの便しか取れなかった。
そのせいで当日の9時頃に着いた。話に聞いて覚悟していたが、やはり時間感覚が狂った上に慣れない飛行機で疲れてるせいか、やたらと眠い。やっぱり遅くても前日には現地入りした方が良かったよね?
駅に着くのは少し余裕がありそうだから、早く席を取って眠りたい。でも、切符に書いてある9と4分の3番線を見つけるのは難しそうだ。9番線と10番線の間にあるのだろうとは思うが、出入り口や入り方がわからない。何故か、どの辺りにあるのかという説明が無いのだ。実に不親切な設計だ。
切符が届いたのが1週間ほど前であり、ホグワーツに届く連絡手段では、確認が間に合わなかったせいで聞く事も出来ない。どうして連絡に電話やファックス、メールなんかを使わないのか不思議で仕方ない。単なる確認事項程度の情報のやりとりに往復で1週間以上かかるなんて現代社会では考えられないんだから、そっちを採用して欲しい。その代わりが伝書鳩ならぬ、伝書フクロウというのも驚きだ。相当速く飛べるフクロウみたいだけど、日本に着く頃には瀕死になっていた。適当に餌と水をやったら回復していたけれど、死んでしまうかとヒヤヒヤした。何故か手紙に羊皮紙を使っているだけでも不安になるのに、これを見るとかなりヤバそうな文化を持っていそうだと思う。これが噂に聞く英国面とやらなのだろうか?
でも、間に合わないものは仕方ないから、保護者兼見送りのお母さんと手分けして駅のホーム辺りを見回し、魔法使いらしき人にこっそり近づき、会話を(盗み)聞いて情報収集する事になった。なんだかダンボールが欲しくなる展開だなぁ。
……と、思っていた頃が私にもありました。とりあえず10番線寄りのホーム辺りにでも行こうか思い、向かった先で、周囲を気にする事もなく柱へ突撃して消えていく魔法使いを目撃するまでは。
いくらなんでも無防備過ぎる......流石に認識阻害の魔法が柱に掛かってるみたいだけど、それを扱う人があれじゃあ何時バレてもおかしく無い。不審に思った人が触りでもしたら即アウトだし、柱という物も駄目だ。誰かが寄りかかった途端に向こう側にひっくり返る羽目になる。それに、こんなに人が居るから人目を避けるのも難しい。
お母さんと顏を見合わせて、
「......色々とおかしいけど、取り敢えず、入る?」
「......そうね、そうしましょう」
という事で、私達はほぼ不可能だけれど、出来る限り自然に見えるように偽装しつつ入場。
そしてそこでもびっくり。何故か、この電気の時代に汽車があるのだ。まぁ、場所が秘密なら電線引けないから仕方ないのかな?と思うけれど、何故そこで敢えて汽車を選んだのだろうか。気にしても仕方ないので何も言わないが。
お母さんと挨拶をして、前にもしつこく聞かされた注意を延々と聞かされるが、そろそろ時間だからと言って脱出。比較的空いている最後尾の辺りで誰も居ない空きスペースを見つけて、そこの窓際に陣取る。ここに来るまでに周りの人が驚いていたような気もするけど、何度も聞かされた注意を改めてされたり、移動していたりする間にもどんどん強くなる眠気でそれどころじゃない。さっきまでは、カルチャーショック的なものに驚かされたおかげ?でなんとか眠気が飛んでたけれど、その効果もそろそろ切れそう。なんとか着ていた上着を脱ぎ、身体に掛けて布団代わりにするのは出来たけれど、すぐに意識は闇の中に落ちていった。
「……て。起きて!」
と思ったら揺り起こされた。多分数分くらいしか寝てない。何かと思ったら、赤毛でノッポな男の子と黒髪で小柄な男の子が居た。
「……何?」
我ながらかなり不機嫌な声だと思う。まぁ、眠いのに無理やり起こされたら誰でもそうなるだろうし構わないよね。
「い、いや、何?じゃないよ!君みたいな小さな子がここに居ちゃ駄目じゃないか!ホグワーツに行きたいのは分かるけど、11歳になってからだよ。あと数年は経ってからじゃないと駄目。もうすぐ出発しちゃうから、急いで汽車から降りて、お家に帰らないと。きっとお母さん達も心配してるよ?」
……確かに私は背が低いし、外国人から見たら日本人は幼く見えると聞いているので、余計にわかりにくいかもしれないが私は11歳だ。説明して分かってくれるかわからないけど、まずは穏便にいこう。
「私の事をどう見てるかは知りませんが、私は11歳で「「えぇ!?」……どういう意味ですか?喧嘩売ってんですか?」
余りの失礼さに、穏便にという方針がすぐに崩れてしまった。
「いや、そんな事ないよ!ただ、君が、その、11歳には見えないというかせいぜい8歳くらいにしか見えないし、持ってる荷物も大分小さいから明らかに嘘だろうなんて思ってないよ?」
……この失礼なノッポの赤毛、ぶっ飛ばして良いだろうか?良いよね?
「わぁ!待って待って!分かったからグーはヤメて!」
拳を握りしめたのがバレたらしい。気付かなければこのままぶち込んでヤったのに......。
「……本当に分かったのか怪しいですが、今は良いでしょう。どうせ向こうに着いたら分かる事です。私は寝るので邪魔しないで下さい」
勢いで無理矢理誤魔化すような形になったけど、まぁいいか。それよりも眠い。後でまた考えれば良いよね。
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〜ハリーside〜
双子に荷物を上げるのを手伝って貰った後、暫くその場で休憩しているとロンがやってきた。
「何処も一杯だね。一緒に空いている所を探さないかい?」
「うん、良いよ。多分最後尾の方くらいしか空いてないんじゃないかな?」
こうは言ったものの、結局誰もいないコンパートメントは無く、1人だけ居る所で相席を頼もうという事になった。そこで、最も近くにあったコンパートメントを覗くと、ホグワーツに行く年齢には見えない、可愛らしい少女が寝ていた。
「ロン、どうする?この子きっとこっそり乗り込んで付いて行こうとしてるんだよ。親の所に帰らせないとまずいよ」
魔法学校というものが忍び込みたくなる程に魅力的なのは分かるが、このまま向こうに付いたらきっと厄介ごとになるだろう。
「ハリーここは僕に任せて。何とか説得してみる。」
そして咳払いをすると、揺さぶりながら
「起きて。起きて!」
と呼びかける。すると、
「……何?」
目覚めた少女は寝起きのせいか、半眼の無表情でかなり機嫌の悪そうな声を発した。ロンはここまで酷く不機嫌になるとは思わなかったのか、少し顔が引きつっている。
「い、いや、何?じゃないよ!君みたいな小さな子がここに居ちゃ駄目じゃないか!ホグワーツに行きたいのは分かるけど、11歳になってからだよ。あと数年は経ってからじゃないと駄目。もうすぐ出発しちゃうから、急いで汽車から降りて、お家に帰らないと。きっとお母さん達も心配してるよ?」
僅かな間が空き、
「私の事をどう見てるかは知りませんが、私は11歳で「「えぇ!?」」……どういう意味ですか?喧嘩売ってんですか?」
驚きの余り話の途中で叫んでしまい、怒らせてしまった。 僕は、改めて少女を観察し、自分も小柄だし女の子ならこの大きさでも不思議では無いと考えたが、ロンは信じていないようで、自白しているも同然の下手な言い訳のようなナニカを始めた。
「いや、そんな事ないよ!ただ、君が、その、11歳には見えないというかせいぜい8歳くらいにしか見えないし、持ってる荷物もホグワーツに行くにしては大分小さいから明らかに嘘だろうなんて思ってないよ?」
動揺し過ぎだろう。これでは信じてないのが見え見えじゃないか。そして、少女は数秒ほどの沈黙のあと、拳を握り締めた。あれで殴るつもりなのだろうが、身長差や姿勢があいまって、男の急所を撃ち抜く恐ろしい一撃になりそうだ。
「わぁ!待って待って!分かったからグーはヤメて!」
「……本当に分かったのか怪しいですが、今は良いでしょう。どうせ向こうに着いたら分かる事です。私は寝るので邪魔しないで下さい」
……ロンの命乞いは上手くいったようだが、少女は言うだけ言うと再び眠ってしまった。半ば脅迫じみた行動を伴う宣言をされては、もはやどうしようもない。
「……駄目じゃん」
「……ごめん。でもあれは仕方ないと思うんだ」
確かにアレは仕方ないので、数時間ほどしたら制服に着替えさせる(持っているなら) 為に起こすが、それまでは寝かせてあげる事にした。
この回では寝惚けてるので主人公の思考力はかなり落ちてます。
寝てる時の姿勢はルーピンとの初遭遇をイメージしてもらえればわかりやすいかも。
見た目で年齢を勘違いネタを放り込む為だけに、主人公をロリ体型にしました( ・∇・)
今後もこのネタで時々弄ります。(つまり当分はつるぺたということが確定)
時差ボケネタは、作者が昔ヨーロッパに行った時に大変な事になっているツアー客を見かけたからです。多少時間がおかしいのは乗り換えがあったという事で見逃してください。今後も大体こんな感じのしょうもない理由でネタを放り込みます。
変更点
ハリーとロンの合流はコンパートメントより前で、大体の会話は移動中に終えてる
ロンは原作以上にアホ
イギリスで数人しか作れない程の難易度を誇る脱狼薬を、さも当然とばかりに作っているスネイプなら開発だって出来る筈!でも脱狼薬も未完成品だし、こっちも完全なものは難しいんじゃなかろうか?こんな設定だけどイギリスを困らせる為じゃないんだよ?(震え声)