我が軌跡は誰かの為に   作:みずしろオルカ

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 どうも、10月以内の投稿が間に合わなかったオルカです。

 色々と考えてはいるのですが、日常が恋しいです。

 らき☆すたとログホラのクロスの構想も並行で進めてますが、やっぱり日常系なんですよねぇ。


第4話 復讐の引き金

 

「ザフィーラはどう思うですか?」

 

 突然、末妹であるリィンフォースから声を掛けられた。

 思考が沈んでいた。

 三高の目的や理由を考えていたのだが、堂々巡りの思考ループに陥っていた。

 盾の守護獣の称号を掲げている彼は、正確には管理局に所属してはいなかった。

 それは彼自身の判断であり、管理局内では動けないことも所属していない自分なら対処できるだろうという考えからだった。

 

「一度、ヴォルケンリッターで話し合った方がいい案件だろうな。良くも悪くも、アイツは我々に近しい人間だ」

「せやなぁ。シグナムもヴィータもモヤモヤしとるようやし、シャマルはなんか色々調べ取るらしいし」

「みなさん、順一さん大好きですね!」

 

 三高順一が行方不明になって三週間目になる。

 未だに行方どころか、生死すら不明の状態になっていた。

 隊葬の用意すらも話し合われている始末。

 

 更に管理世界にある管理局の施設が襲撃される事件も多発して来ているのだ。

 巨大な何かに圧潰させられ、大半のデータは残っておらず、研究員なども巻き込まれて死亡している。

 凶悪犯罪だ。

 

「三高君おったら、偵察と称して骨休めもさせてあげられたんやけど……」

「主、三高の奴は真面目に偵察をして帰ってくるでしょう」

「順一さん真面目です!」

 

 三高順一の事を順一と呼ぶのは、何気にリィンフォースだけだったりする。

 ヴィータが一番三高の部屋を使うが、交流が多いのはリィンフォースだ。

 書類を届けたり、データを送ったり、管理局内で雑談をする姿が日常的に見られていた。

 

 上層部に疎まれている三高だが、同時に同期や後輩には人気があった。

 故に、『不撓のエースオブエース』の名を背負うに至ったのだろう。

 

「それに、報告でも圧潰した建物の中で、明らかに刃物による傷を負った遺体も出とった」

「潰す前に殺害されていたものと判断できるでしょう」

 

 内容が徐々に重いものになっていると自覚はあるが、それでも確認しなければならない。

 どれだけ認め難くとも、それを直視するのが管理局に勤める人間の態度であると、そう信じて。

 

「巨大な何かで圧潰された施設、刃物による殺害跡。この二つを結び付けられる人間をうち等は知っとる……」

「わかっています。三高の奴です」

「順一さん……」

 

 水の魔力変換を持ち、無人機械を大量の水で圧潰させる戦闘スタイルを持つ彼だ。

 カートリッジを数本使用すれば施設を圧潰させるだけの量の水を展開できる。

 そして、彼の持つデバイスである『クサナギ』は彼女の出身世界である地球に存在する『刀』に酷似した形状をしていた。

 刀を振り回しながら、大量の水を回転させたり、包み込んだりしながら敵を破壊する。

 それが三高の戦闘スタイル。

 

「事件が起き始めた時期と三高君が失踪した時期は一致するし、圧潰された研究施設は破壊した原因である物質は確認できんかった」

「しかし、それは魔力であれば可能かと」

「魔力の残滓が妙に少なかった。ありゃ、なのはちゃんのスターライトブレイカーよりは、フェイトちゃんのトライデントスマッシャーに近い傾向やな」

「水の魔力変換資質を持つ三高も同様の傾向があるというわけですか」

「現場の機器類はすべてショートしてましたです。電気か水の魔力変換資質なら、納得できるです」

 

 立ち込める重い空気。

 友人の疑惑がこうして話に出てきてしまうぐらいに、色濃くなっている現状。

 事件現場に残る証拠は、三高の特徴に合うものばかり。

 否定する材料を探しても、それを上回る該当条件が疑惑を募らせる。

 

「とにかく、これはうち等の中だけで考えるとして、やるべきなんは三高君の過去や」

「我ら全員、奴の過去はほとんど知りませんからな」

「シャマルが独自に調べてました。シャマルと情報共有するのがいいです」

「シャマルが? そういや、三高君が一番頭上がらんのってシャマルやったな」

 

 正規の病院にかかろうとしなかった三高が治療をしてくれるシャマルに頭が上がらなかったのはごく自然な流れなのかもしれない。

 シャマル自身も、三高の事を気にかけていたように、はやてにも見えていた。

 

「ヴィータやシグナムにも言って、調べなあかんな」

「ヴィータちゃんは一番順一さんの家にも行ってましたし、辛いかもです」

「シグナムの奴も三高の奴をかなり認めていましたし、辛いでしょう」

「そんなん言うたら、うち等だって三高君の事疑うんは辛いわ」

 

 否定したいが、もしかして?

 そういう感情がこの場の空気を包み込んでいる。

 大事な人だったからこそ、信じたい。

 でも、状況を細かく分析するたびに疑念を深めていく。

 

「現場……一度は見ておくべきやろうな」

 

 いくつもの犯行現場。

 そこに彼女たちだからこそわかるだろう、痕跡を探す目的。

 目を逸らしたい現実をしっかりと見据えるために。

 

 

********************

 

 

 夜闇に沈む学校の校舎を思わせる通路。

 そこには、うっすらの煙のような白い靄が充満していた。

 火の気配は無く、

 そこを白衣を纏った男が息を切らしながら走っている。

 その呼吸は荒く、擦れた様な音が一呼吸する度に周囲に響く。

 

「なんだ……。何なんだ!!!」

 

 走っていたからか、汗で全身がビッショリと濡れている。

 その片手には通信機が握られているが、その機能は完全に死んでいた。

 何度も押したのであろう通話のボタンが潰れていて、八つ当たりで壁に叩き付けたのだろう、ヒビが入っているのが窺える。

 だが、その破損しかけの通信機を放さないのは、それが今のところ彼が持ち得る唯一の外界への連絡手段だからだ。

 

「本部、応答願う! 本部!!」

 

 しかし、無線機からはノイズが吐かれるのみ。

 起動してはいるようだが、その機能が果たされている気配はない。

 

 それならばと、男は空いているもう片方の手を耳を覆うように構えると、手の甲にミッド式の魔法陣が現れる。

 念話の魔法を強力にするための増幅器の役割を果たす魔法陣。

 通常、そのような魔法は必要無い。

 だが、男は通常の念話魔法が使えないという事を知っていた。

 何度も何度も試し、その結果通信機という科学力に縋っていた。

 

「本部! 応答願う! 本部!!」

 

 念話魔法に増幅魔法をかけ、超広域念話にして管理局本部へ連絡を取ろうとするが、発せられた念話はすぐに減衰し、消滅してしまう。

 その効果をこの男は知っていた。

 先のJS事件にて、ジェイル・スカリエッティの尖兵として運用されていたガジェットドローン。

 それらが装備していた対魔法用装備である、AMF(Anti Magilink-Field)の効果に似ていた。

 

「くそ! ガジェットの襲撃か? しかしそれなら誰が……」

 

 例の事件以降、ガジェットのほとんどは破棄され、わずかに残ったモノも研究のために各研究施設で実験材料になっていた。

 まだ発見されていない工場で生産されている可能性も捨てきれないが、それを発見して、プログラムを書き換えて、この研究所へ襲撃する利点を理解できない。

 

 違法研究を多数行っている管理局の裏側の施設だが、それ故に厳重に秘匿されていて、それを知る人間も数が少ない。

 それを狙いすましたかのように襲撃ができるのは、何かしらの理由があるはずなのだ、と男は冷静に思考を巡らせた。

 

 意味不明な状況に置かれてなお、状況を分析しようとする。

 それは男がこの施設の責任者が故なのだろう。

 

「中央管制室に行けば有線の通信機器がある! そこで救援を呼べば……」

「残念ながらこの施設は孤立している。そして生き残りは貴様だけだ、カミイラ局地研究局長殿?」

 

 あまりに濃い霧の中で、はっきりと響いた自分ではない誰かの声。

 高すぎる湿度で不快感が全身に纏わりついているこの現状で、さらに全身が怖気立つようなひどく冷たい声。

 それはあまりに有名な男だった。

 

「き、貴様は!?」

「被検体番号4989番、リンカーコア摘出個体。出身世界、元第444管理外世界アース」

「!?」

 

 その男から語られたのは絶望的な情報。

 『不撓のエースオブエース』、三高順一。

 出身世界が『アース』であること、そして彼の言っている被検体番号4989番。

 それは何より三高に知られてはいけないものだった。

 

「個体名称『大神渚』、公式記録ではアース崩壊と同時に死亡を確認。しかし、秘密裏に崩壊後に遺体を回収し、炎熱変換資質を他検体に移植する実験に使用」

「そ、それは最高機密の情報で……!」

「実験は成功、検体は……」

「だまれだまれ!!! 貴様、その情報を知っているだけで重罪だぞ!」

 

 それは管理局の闇。

 先の大事件を起こしたジェイル・スカリエッティは、管理局の最高評議会が秘密裏に生み出したアルハザード時代のクローン体。

 アルハザードの知識を利用しようと生み出した結果、脳だけで生き残っていた彼らも殺された。

 

 そして、最高評議会が残した数々の負の遺産。

 最高評議会の名の下に行われた、違法研究の数々。

 それは知っているだけで罪に問われるほどの深い闇の底。

 

「重罪? 管理局の敷いた法など、無意味」

「な!?」

「我が故郷を、我が幼馴染を、侮辱した貴様らを俺は許さない」

 

 それは完全なる別離の言葉。

 袂を分かつ決意の言葉。

 

「俺は貴様らに復讐する。恩も義理も尽き果てたのだ、貴様らは俺が潰す」

 

 明確な殺意。

 そして、霧が意志を持ったかのようにうねり、男の周囲に集まってくる。

 その濃度が一段と濃くなり、眼前の復讐者と獲物の距離ですら双方の姿が霞んで見えてしまう。

 

「この世界は魔法の構成を阻害する。俺の魔力がこもった霧の中に居る限り、十全な魔法を行使できると思うな」

 

 つまり、この霧で念話魔法を阻害していたという事だ。

 個人の技能でAMFの機能を再現するなど、不可能であるともいえる。

 

「バカな! どれだけの魔力を使うと思っているのだ! Sランクの魔力だって5分を待たずに枯渇するのだぞ! エースレベルはいえ、貴様の魔力は……!?」

「公式では総合AAAで記録していたな。俺の本来のランクはSSSだ」

「嘘だろう!? 人間に到達できるかも疑わしい仮想ランクだぞ!?」

 

 闇の書事件で特殊な条件を満たした結果、SSランクを持つに至った八神はやてがいるが、それでもSSランクなのだ。

 リンカーコアの限界ではないかという学説が出回っているほどなのだ。

 

「これが俺のレアスキルの一つだ」

「バカな……!? バカな……!?」

 

 左目を覆っている眼帯を外し、男に向かってその瞼を開いた。

 そこに収まっていたのは、紅く光る宝石のようなモノ。

 そして、高濃度の魔力がそこから溢れていた。

 

「リンカーコアだと!? 何故そんな場所に! いや、そもそも何の機材も無く可視化できる訳が!!」

「疑似リンカーコア、『ヤサカニノマガタマ』。貴様らが俺の故郷を滅ぼした理由の一つだよ」

「そんな訳が……、そんな訳があるか!? あの世界と共に失われたはずだろ!?」

「そうだ、唯一現存する疑似リンカーコアだ」

 

 数少ない、管理局が届いていない領域。

 リンカーコアの外付け機関。

 

「冥途の土産は持ったな? では、さらばだ」

 

 その言葉と同時に、周囲の霧から氷の槍が生み出され、男の全身を滅多刺しにする。

 心臓、喉、脳天を貫かれ、男はその命を終えた。

 床には血だまりが広がり、男はその中に沈んでいった。

 

「この施設も潰すか……」

 

 そう呟くと、三高は天井に穴を開け、はるか空中に飛び上がる。

 施設の周囲にも高濃度の霧が充満しており、三高が空中に出たと同時に霧が彼の元に集まってくる。

 

『マイスター、対象の圧壊にはカートリッジ2本のリロードが必要です』

「3本リロードで圧潰後に内部をシェイクする」

『了解しました』

 

 その言葉と同時に刀の柄の部分から3本の空薬莢が排出される。

 高濃度の魔力が三高の全身から湧き立ち、頭上には渦巻くように徐々に水が溜まっていく。

 その量はすぐに眼前の施設を呑み込めるほどにまで膨れ上がった。

 

「クサナギ、圧壊と同時に水流を高速で回転、中身をグシャグシャにしろ」

『了解』

 

 デバイスの返事と同時に、両手で振り上げていた刀を施設に向けて、全力で振り下ろす。

 それに釣られる様に、巨大な水塊は施設の上から落下。

 施設ごと地面を抉り、中身を高速でかき回す。

 

「30秒で回転を終了、その後水を魔力へ還元する」

『了解』

 

 その言葉通り、回転していた水は緩やかにその動きを止め、まるで底が抜けるように水が消えていく。

 

『還元完了。ヤタノカガミへ変換します』

「頼む」

 

 還元された魔力は高濃度の魔力球に固められ、三高の元へ向かう。

 しかし、その球体の中身は満たされているようには見えず、半端に水の入ったボトルに似ていた。




 さてさて、家電をそろそろ買わないとなぁっと考えているのですが、冷蔵庫・卓上IHヒーター・鍋、一括で買うには値段がとんでもないですわ。

 そういえば、ヘルシオができる奴だと聞いたことがありますが、どれだけできる奴なのか・・・?

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