もしくは、半分ぐらい過ぎたあたりで読み始めた方がダメージが少ないかもしれないです。
まだ先なんですよねぇ。
進まない筆に、悲しくなります。
年も明け、八神はやては年末年始の仕事に追われていた。
クリスマスに無理を通して休暇を取った揺り返しが今ここに来ている。
自業自得だと心の中で苦笑しながらも、殺人的な量の書類と格闘する。
「いつもやったら、三高君にも振るんやけどなぁ」
思わず出てしまう独り言。
准空尉という階級だが、彼の事務処理能力は中々に高い。
本来なら、自分ほどとはいかずとも友人のなのはやフェイトと同じ程度には出世していてもおかしくない実力があるのだ。
なのはよりも早く管理局で働いており、接近戦を主体としたベルカの騎士にも似た独自のデバイスを使用している。
単騎で高難易度のミッションをクリアできる実力と魔法に対する深い知識と教養、医療魔法やデバイスマスターの資格を習得できる優秀さ。
彼のデバイスである『クサナギ』は彼が幼少の頃から育てているAIを搭載、特殊な機構を多く取り込んだワンオフの逸品だ。
「ほんま、どこ行ってもうたんよ……?」
頬杖を突きながら、上唇と鼻でペンを挟むようにしている。
部下の目の前では絶対にできない仕草だ。
はやての考えている人物、三高順一はクリスマスパーティーを開いたその日から行方不明になっていた。
最後に会ったのは、彼女の友人であるなのはとフェイト、二人の娘であるヴィヴィオ。
仕事が入ったという言葉と共に転移魔法を使用してしまったと言っていた。
それから転移魔法の痕跡を辿ると、きちんと仕事場の座標が検出されたのだ。
しかし、管理局側での監視カメラなどには、三高順一の痕跡を見つけることができなかった。
転移魔法の不具合で別次元に飛ばされたのか?
それとも、転移途中に何者かに妨害にあったのか?
いずれにしても、『不撓のエースオブエース』の行方不明は管理局内でも大荒れだった。
「どんだけ、三高君に依存してたんや」
彼が行方不明になって2週間程だろう。
たったそれだけの時間だというのに、三つの部署が立ち行かなくなり、2週間帰れない状態の幹部連中がたくさん出てきた。
はやて自身は彼に仕事を振ることはあっても、自身が処理しなくてはいけない分はしっかりと終わらせていた。
今大量の書類を抱えているのは純粋に無理に休みを取ってクリスマスパーティーを開いたツケなのだ。
幹部連中に嫌われている三高の昇任は遅い。
彼ほどの実力ならば、最低でも三等空尉か二等空尉の地位が相応しい。
加えて、様々な資格、レアスキルなどの多くのモノを持ってして、准空尉という地位に封ぜられている。
「JS事件でアホ幹部結構減ったんやけどなぁ」
思わず出てしまった溜息。
同時にデスクに転がるペン。
ミッドのような魔法と科学が発達している世界でも紙媒体の書類は多い。
それに付随して文房具の需要も一定数存在していた。
彼が気に入っていたメーカーのボールペン。
以前自分のペンのインクが切れてしまった時に貰った一本。
使い心地も良く、はやても気に入っていた。
「いっぺん、三高君の昇任に関して調べてみんとあかんな」
違法研究、汚職、魔法の私的使用、上げるだけでもキリが無い。
だが、それで一掃できたなどとは決して言えないのだ。
三高順一の功績は計り知れない。
それで昇任が遅いのは、誰かが功績を横取りしたり、横やりを入れている可能性もある。
そういう輩が一掃できているならば、執務官や査察官なんて必要ない。
だが、当の執務官であるフェイトはJS事件を契機に忙しくなり、査察官であるヴェロッサもサボり癖が出せない程度には忙しそうにしていた。
「た、大変です! はやてちゃん! 事件です!!」
そこでボーっとした思考を、家族のリィンフォース・ツヴァイに無理やり現実に引き戻されたのだった。
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「あー、つまんねぇな」
鉄槌の騎士、ヴィータはつまらなそうにつぶやいた。
今日は非番であり、はやてもシグナムもシャマルもザフィーラも誰も彼も仕事だった。
通常、誰かしら非番の人間がいるのだが、今回は残念ながら誰とも予定が合わなかった。
「あの野郎も行方不明になんかなるなよな……」
思い浮かぶのは、二週間も行方を暗ましている友人の事。
あのクリスマスパーティーの日、なのはとフェイトに会った後の行方が分からなくなっていた。
もしかしたら、三高がいれば押しかけていたかもしれない。
それも、いつもの光景ではあったのだ。
「たまに休みの合う日にあちこちに連れまわしてたからなぁ」
ゲームをしたり、買い物に行ったり、料理が上手だと聞いてからは食べたいものを作らせたり……。
おおよそ、恋人と呼んでもいいようなことをしていた。
そういった行為自体は無かったが。
「アイツの家も管理局で押さえてるから行けねぇし……」
三高の自宅のカギは八神家の人間はみんな持っていた。
理由は様々だったが、はやてが最初に預かり、そのまま八神家全員が持つに至った。
ヴィータははやての次にカギを預けられていて、理由が暇を見つけては入り浸っていたからだ。
「三高の家、ゲームとか漫画とか作り置きの料理とかたくさんあったからなぁ」
話題のゲームや漫画なんかは一通り揃っていたし、冷蔵庫には三高が作り置きしていたであろう料理が色々と保存されていた。
ヴィータは休みの日に部屋に行っては、ゲームや漫画を楽しんで、作り置きの料理を摘んで帰る、ということをよくしていた。
もちろん、大人として電気代や勝手に食べた料理分の食材を補充してはいたが。
三高が自宅に帰ると、八神家の誰かしらが家にいることが多かった。
その最たる人物が、彼女であったことは余談である。
三高の家には一室、八神家用の部屋が存在していた。
度々来る上に、いつの間にか泊まって行ったりしている八神家用に一室を用意し、そこに必需品を置いておくようになった。
よく行くヴィータはその部屋を自室の様に使っていたりもしていたので、遊び場というより自分の部屋が無くなったような気分になっていた。
「ああくそ! つまらねえ! 訓練して汗かいて、風呂に入ってさっぱりする!」
ごちゃごちゃと考えるのが煩わしくなったのか、ヴィータはその場で踵を返す。
彼女の仕事場へ向かう。
そこには、訓練用のシミュレータや休み時間に鍛錬しているであろうシグナムがいる。
ヴィータの鬱屈した感情を発散させるにはちょうど良い場所だ。
(最近、アイツの家で遊んでばかりだったからな。腕が錆び付いてたら大変だ)
最低限の鍛錬や、三高との模擬戦などをしていたので、錆び付いているということは無いのだが、ヴィータにとって三高との時間のイメージはゴロゴロしていたり、ゲームしていたりという印象が強く、鍛錬のような感覚とは結び付きにくいものだった。
チャリッ
手元からなる音に目を向けると、なんということは無い。
三高の家の合鍵。
八神家の人間であればみんな持っているものだった。
いつもの感覚で、家を出る際に持ってきてしまった。
平和だった頃の象徴。
もしかしたら唯一の彼のと繋がり。
(絶対に見つけ出してやる。そして、一発ぶん殴ってやらなきゃ気が済まねえ!)
決意を新たにする彼女の脳内には、彼女のデバイスであるグラーフアイゼンで三高の横顔を殴打しているシーンが再生されているが、それだけ彼を心配し、無事を祈っているのだ。
自分が殴っても問題無い状態であってほしい、ちょっと喧嘩になるだろうけど、笑って許し合えるようになりたい。
そんな心情から、彼女は訓練場へ向かう。
ちょっと理不尽な怒りと強い不安感に突き動かされながら。
書きたいことを書けるか不安ですが、のんべんだらりとお待ちいただければ幸いです。
湯船に浸かったら寝落ちして溺れかけたのは、かなり危険なので皆様気を付けましょう。
疲れが取れていない証拠であり、人間は洗面器一杯の水で死ぬので本当に危険です。
気絶するように眠る人は溺れる可能性が高いので、気を付けましょう。
ガチで上下が分からなくなります。