たぶん次は菜々さんの時期愛車選びになると思います
#0 Production meet motorsports
「メディア対抗レース、ですか?」
「ああ、秋に筑波でやってるアレだ。それに湖山さんから誘われてな。事務局に聞いたら、346プロとしても車番組の実績はあるし、華も添えられるからむしろウェルカムだと」
「で、まだ春先ですけど、なんでこんな早く?」
「湖山さんから誘われて、事務局に問い合わせたのが先週。んで、常務がやれって言うから、事務局に問い合わせたら、『出るなら、せっかくだからステージやってくれない?』って話があったのが昨日だ」
「はぁ」
「免許持ってるアイドルを2人選んで、限定解除とライセンス取らせて、事務所のアイドルほぼ全員の予定を開け、先方と予定を詰めなきゃいけない」
ほぼ半年先のメディア対抗ロードスター4時間耐久に出る事にした。だから、出場ドライバーとして、番組の演者として、美世と俺は決定。そして、常務がぜひ走りたいと言うので3人は決まってる。
残りの2人だが…… サーキットを走った経験のあるアイドルなんて美世くらいしか居ないし(幸子は走ったな、足で)、となると、免許持ってる20歳以上で、この一発の度胸がある人。ただ、燃費レースの面もあるため、冷静な走りも求められる。
「あいさんか?」
「んー、確かにそんなイメージありますね。のあさんなんかはほぼ一定のペースで淡々と走りそうですし」
「だがなぁ」
「なんですか?」
「なんかこう、パッションな感じがほしいわけよ」
「パッション、ですか……?」
クールな走りも確かに美しいが、お祭りレースだ。意外なところで沸かせる走りもほしい。たとえ、ミスったとしてもだ。
「よし、友紀とナナさんだ」
「はぁ!? 友紀ちゃんはまだわかりますけど、ナナさんですか?」
「ナナさんだ。ちゃんとウサミンで走ってもらおう」
そして始まるライセンス取得への道。ピットクルー含むエントラントは全員国内Bライ以上、ドライバーは国内Aライ以上が求められる為、免許を持つアイドルは全員筆記だけで取れるBライを取らせた。
だが、難しいのはAライを求められるドライバーだ。
美世と俺はBライは持っていたものの、Aライは無い。そのAライ取得の為には1回以上競技(サーキットトライアルなど)を完走する事が求められる。
なので、Bライ(筆記のみ)→競技に参加→Aライ(筆記、実技)と言う流れを踏まなければならない。
最も、最近はBライとAライを1日で取る講習会もあるくらいだから、ハードルは高くない。
そして、同時進行で常務の趣味だと社内で批判も受けた予算うん千万級プロジェクト、「346RacingProject」がスタートしたのだ。
予算がそんなに掛かった理由? 常務が車買ったからだよ。他にもFIA規格のレーシングスーツ初め、装備を特注して、レースクイーンの衣装まで発注しちゃってさ。俺が一番驚いてる。だって、番組の企画のつもりで上に申し立てしたらこんなに大事になっちゃってさ。
レースに出るアイドル。素敵だろ?
「サーキットって初めて来たけど、やっぱ広いねー!」
「こんなテスト受けるの何年ぶりでしょうねぇ……」
「ナナさん」
「ハッ! そそ、そうです。永遠の17歳――」
「は免許も取れませんよね」
「プロデューサー、ナナはもうダメです。ウサミン星に帰るのです」
「ナナさん、心をしっかり!」
というわけで、Aライ取得組の常務を除いた4人は、日本が誇る国際サーキットである、富士スピードウェイに来ている。
ここを選んだのは、国際規格だけあって、広い。つまり、万が一コースオフしても壁にぶつかるまでに止まれる。あとは、人がいても避けやすい、避けてもらいやすい。東京から近いってのも大きいところだ。
「お、受付始まったぞ」
「じゃ、一発やりますか!」
「ナナさんも頑張ってくださいね」
「はいぃ〜」
ライセンス無しの2人を送り出してから俺と美世は軽く軽食をつまんで時間を潰すと、俺らも受付を済ませて教室へ。
少し遅れてBライを取ったばかりの2人と合流すると、ざっと教室を見回す。50人ほどいるだろうか?
それから2時間ほど、休憩をはさみながら様々な規則についての講習を受けると、昼食の時間だ。
仕出し弁当を食べて少しゆっくりすると、午後のサーキットトライアルの講習(ブリーフィング)が始まった。
「先程の講習でもありましたとおり、ルールを守って、スポーツマンシップに乗っ取り、何よりも安全運転て楽しんでください」
そんな言葉を受けてから車に戻ると、装備品と車のチェックを受けてコースに入る。
今日はもちろん、各々の車なので、俺はポルシェ、美世はロードスター、ナナさんはノートだ。
なんだかんだで初めて見る友紀の愛車はインプレッサだった。もちろん、WRXじゃない普通の。
誤作動すると困るのでアイサイトの切り方だけ教えて4台もコースに入る。
やはりというべきか、俺と美世は他のスポーツカーが並ぶ前方へ誘導され、友紀とナナさんはファミリーカーが集まる後方へと誘導されていた。
そして、ピットからぞろぞろと出て行く車たち。こういう時に
15分間の走行枠の中で50台がひしめくのだから、いくら広いコースとは言え、クリアラップは望めない。だから一周目で一番時計を狙うべく、2周のウォームアップの後、ステアリングに付いているスイッチを押してから、最終コーナー立ち上がりでアクセルを底まで踏み込んだ。
420psのパワーをフルに使うと約1.5kmあるストレートエンドで250km/hを超える。そこからフルにブレーキを踏み込み、ターンイン。立ち上がりでミラーを見ると、ついてきてるのは"いかにも"な車数台。
「GT-Rとポルシェ、バリバリにいじってあるセブンか。一番後ろにワゴンRが居たとは思えねぇな」
そのままやる気のあるメンツがペースを上げ続け、バックマーカーのミニバンを抜いたあたりから混み始めたためにペースダウン。最終コーナーで美世のロードスターの後ろに着けてからストレートでオーバーテイクすると、ちょうどチェッカーフラッグが振られていた。
「大人気ないですよ、プロデューサー」
「本気で走りたくなるのが性だろ」
「最終コーナー立ち上がりで高そうな車がひとかたまりでバブーン、ですよ? 何キロ出したんですか?」
「多分、250は出したな」
「うへぇ…… 私なんて怖くて怖くて」
「おや、ナナさん……」
パドックに戻ってきたノートとインプレッサ。降りてきた2人がヘルメットを脱ぐと対照的な表情が露わになった。
「死ぬかと思いましたよ!」
「いやー、楽しかった! またやりたいね!」
「予想通りの反応で安心したわ」
「友紀ちゃんは楽しめたようで何よりです。ナナさん、大丈夫ですか?」
ぜーはーと、肩で息をするナナさん。追い抜いた感じでは、ペースはそこそこまあまあ。決して遅いわけでは無かったし、抜かせるのも上手いように見えたが、本人は気が気じゃなかったようだ。
友紀は、正直想像以上のペースてかっ飛んでた。だって、インプレッサスポーツでシビック追い回してたからな。
受付でリザルトを受け取ると、出走53台の内、トップタイムは俺、2分は切れなかったが、初めてにしてはまずまずだろう。そこからGT-R、GT-R、RX-7、ケイマンと続き、国産スポーツカーたちの群れの中に美世の名前を見つけた。23位、2分25秒? 速くね?
そこからあまり開きがないところに友紀、32秒ってマジっすか。ナナさんはファミリーカー軍団の中盤。全体では46位につけていて、3分を切れていたから重畳だ。
「最後は試験だ、旗の意味がわかればほぼ受かるらしいし、さっきも黄旗でたけど誰もペナルティ受けてないから大丈夫だな」
「黄色はストップ、赤ならバックホーム、でしょ?」
「ま、まぁ、その認識で大丈夫だ」
野球で前のランナーを抜くことはないし、大丈夫だよな?
俺の不安も杞憂に終わり、夕方の結果発表は全員無事に合格。証明書を受け取った。
余談ではあるが、サーキットトライアルの際にカメラマンが居たらしく、証明書を受け取る際に走行中の写真も貰えた。そこでナナさんの車を見ると、横転するんじゃないかと言うほどロールして(受付のお兄さんも倒れそうだと笑っていた)、イン側のタイヤが浮いていた。それを見たナナさんが顔を青白くさせていたのも見ものだった。
その後に「転ばないクルマ」がほしい、と相談を持ちかけられたので、いっそのことDrive Weekの企画として「安倍菜々の車選び」ってのもありかもしれない。あ、でも17歳だからだめか。
「日比谷君、少しいいか?」
「はい、なんでしょう」
「先日頼んだ車が出来上がったそうだ。手が空いているようなら引き取りに行ってもらいたいのだが」
予算の半分を食うモノ。常務が役員会の反対を押し切って購入したアクア。それにロールケージや消火器などの各種安全装備や競技に必要な物を装備し、車体をフルラッピング。
今後はワンデイラリーを中心に参加する計画だという。
責任者として今西部長の名前がついてるあたり、もうやる気しか感じられない。
「ええ、今日の業務も終わりますし」
「済まないな」
予定表では車両の半完成が今日。シェイクダウンテストとして週末のラリーイベントに俺と武内さんて参加して車両をテストしてからラッピングに入る予定だ。
シンデレラプロジェクトの事務室に顔を出し、ソファで寛ぐ留美を見つけると、足を頼むことにした。
「346レーシングねぇ…… おかげでBライ講習受けに行かなきゃいけなくなるなんて思わなかったわ」
「そりゃ、免許持ってるのが数えるほどしか居ないし」
「数えるほどしか居ないアイドルでよく回そうと思ったわね。瑞樹さんや楓さんなんて、トップアイドル中のトップアイドルなのに」
「まぁ、その一方で美波みたいに自費でいいから、って公認審判員まで取ったのもいる。車に乗るならJAFの会員証代わりって事でいいんじゃないか?」
留美のBMWは外見はちょいワル、エキゾーストもそこそこうるさいが、乗ってみると車高調も見た目低さからは想像できない乗り心地のよさ。外から聞けば結構な音量のエキゾーストも、バルブを開閉して音量が調整できる上に、車内には心地良い音を響かせる。
「はぁ、呆れた。ホント、車バカ」
「俺のせいじゃないぞ」
「発端は貴方」
「そ、そうだけどさ。まさかここまで大事になるなんて」
呆れられつつ、車を頼んでいたショップに着くと、店先に白いアクアが止められていた。シリーズ規定の位置にステッカーも貼られ、少し上がった車高とマッドフラップのおかげでちゃんとラリーカーに見える。
「こんにちは、美城プロです」
「お待ちしてました。ラリーチャレンジとJAFのレギュレーション範囲内でできることは全部やってます」
2人で店内に入ると、先ずはキーを返され、各種書類を揃えて手渡されると車両説明に移った。
基本的には安全装備の追加以外は大きな変更も無いので、キルスイッチと自動消火装置の取り扱いの説明を受けてバケットシートに体を収めた。
なんか目の前の光景はほぼ社用車のアクアと変わらないのにバケットシートって凄く違和感が……
軽くポジションを合わせてから車内にある消火器の位置や、ラリーコンピュータの使い方も教えてもらい、書類にサインすると乗って帰るだけだ。
「何時くらいに帰る?」
「んー、武内さんと軽く週末の打ち合わせだけして行きたいからな。そこまで遅くならないと思うけど」
「わかった」
真っ白いラリーカーにスーツで、というのもシュールだが、それでまた事務所まで戻らなければならない。
そして、戻ったら戻ったで常務に報告を済ませて武内さんと打ち合わせ、と言うなのおしゃべりだ。
駐車場に止めたアクアラリーカーをくるくる見回しながら、新しいおもちゃをもらった男の子(ちひろさん談)のように色々いじってみたりしている。
「エントリーは済ませてありますので」
「ありがとうございます」
「約束通り、ドライバーは私が。日比谷さんにはコ·ドライバーを」
「はい。荷物は汚れモノと工具、タイヤはアクアに」
「それ以外はプリウスに積みましょう。テントは事務所の物を使っていいと部長から」
「それってマズイんじゃ?」
「ティザー広告のような効果を狙うそうです。なので、エントラント名も『頑張るプロデューサー社用車アクア』にしました」
「えっと、そのネーミングは誰が……」
「――その……」
武内さんは、首筋に手を回し、少し困った顔をしてから、その名を明かした。
「――千川さんです」
#1 Producers meet motorsports
「おはようございます」
「おはようございます。今日は和久井さんの車なのですね」
「ええ、アレは荷物が積めないんで……」
留美のM4を借りて出社すると、午前はいつも通りの業務。昼からは戦いの地、長野へ移動だ。
遊んでいるようだが、これで給料が出るから恐ろしい。
武内さんも楽しみにしているようで、いつもよりも動きがフワッとしていた。
目聡いアイドルにバレて「午後から長野に」とか言うせいでお土産を買って帰らなければならなくなった。まぁ、何もなくても買って帰るつもりだったけどさ。
「忘れ物はありませんね」
「はい。3重チェックしたでしょう?」
「そうですね。では、私が前を」
「お願いします」
東京からおよそ3時間。長野県の木曽町は県西部の木曽郡の中心にある。
美しい山を望み、日本一美しい村連合にも選ばれているとか。そんなところを爆走するのが今回のラリーだ。
お土産を買ってから宿にチェックインを済ませると、部屋につくなりルールブックを頭に叩き込む。
それから食事、風呂と済ませて早めに寝ることにした。
翌朝、時間に余裕を持ってサービスと大会HQが置かれる公園に行くと、指定場所でテントの設営。
広げたテントは白地に346プロのロゴが入ったもので、大きさもあってファンの手作り品とは言い難い。
隣に止めた社用車もあってバレバレもいいところだろう。
そのテントの下にアクアを止めると、受付が始まったようだったので、エントリーを済ませてSSの場所などを示した地図のリエゾン区間のコマ地図、タイムスケジュールなどを受け取って準備をはじめた。
6つのSSから構成され、4つのターマックステージと、2つのグラベルステージから成る。
今回は車のシェイクダウンでもあるので、ターマック重視の浅溝タイヤを選ぶことを決めると、早速作業をはじめた。
それから、しばらくするとレッキが始まる。簡単に言えばコースの下見だ。そこでペースノートと呼ばれるコースのメモ書きを作るのだ。
「R3 50 R5タイトゥン」
こんな風にドライバーがコーナーの角度や路面状況などを告げるのをコ·ドライバーがノートにメモって、実際のアタックの際にはこれを読み上げ、それを元にドライバーは全力アタックというわけだ。
つまり、息を合わせて正しい情報を読み上げるのが大事というわけだ。その情報の元になるレッキが重要なのは言うまでもない。
武内さんが淡々と告げる言葉をペースノートにメモりながら、ラリータイマーのトリップメーターと景色もチラ見する。
そしてゆっくり走り続けたレッキを終えて、サービスに戻るとスターとの時間までにペースノートを清書し、武内さんと最後の打ち合わせだ。
「リエゾン間の時間は余裕のあるスケジュールが汲まれているので法定速度でゆっくり走っても大丈夫です。ドラミで主催者の方もおみやげ買う時間あります、って言ってましたし」
「そこは日比谷さんのナビを信じていますから。今日の私はただ走るだけですね。車を壊さない程度に、ですが」
そして、セレモニアルスタートのゲートをくぐった。
SS1。狭いターマック。我らが社畜アクア……じゃなくて、社用車アクアは当然ながら無事故無違反、ハイペースでかっ飛ばし(武内さんパネェよ、1.5車線道路100うん十km/hでかっ飛ばすんだぜ?)SS1をクラス3位、全体47位に付けた。
どうもポテンシャル的には1.5Lヴィッツと同じくらいのタイムが出せるらしい。流石に86には敵わないが。
「少しリアの粘りが足りない感じがあります。高速コーナーで流れ気味です」
「ターマック向けに固めたのをやりすぎましたかね。昼のサービスですこし戻してみましょうか」
「そうですね。あ、そこ右です」
コマ地図を頼りに次のSSへと向かうと、今度は広い空き地に特設されたグラベル混じりのSSだ。
ターマック区間は広い道路で車速も上がるが、グラベル区間はまるでダートトライアルのようにパイロンを縫う走りを求められるのでタイムが伸びにくい。
「5,4,3,2,1,ゴー。R1 オープン」
スタートはモーターのトルクを活かした強烈なダッシュを決められるアクア。他の参加者曰く、スタートから100mは86より速いらしい。そして、気がついたのはヴィッツと差がつくのはコーナーだということ。
車重とパワーの差もあって、全体的に遅いアクアはどうしても林道メインのラリーでは不利になりがちだ。
そこは武内さんがきっちり速度を落としてタックイン、そこからのモーターダッシュでストレートの遅さを補ってなんとかアマチュアのヴィッツと同等かすこし遅い程度のタイムで走っている。
「ラスト、ギャラリーステージです」
「グラベルですか。ここで持ちこたえれば」
「クラス2位ですね。後ろとのギャップは15秒ありますし、なんとかなります」
そして、スタート。派手に砂埃を上げて地面を蹴り出すと、すぐさまパイロンをターン。直角コーナーが多く、サイドブレーキも使えないこの車はつらい。
だが、そこをなんとか走り抜き、計測区間を走り終えてチケットを渡すと、サービスに戻った。ゴールしてからここまで無言。
「お疲れ様でした」
「あとは結果待ちですね。ん、あれは……」
ウチのテントで女の子が、というより、美世がちゃっかり折りたたみイスを広げて寛いでいた。その横に車を停めると、お疲れ様でした、といつも以上にテンションの高い声が聞こえた。
「最後のギャラリーステージだけでしたけど、武内プロデューサー凄いですね! 下手な86より速かったんじゃないですか?」
「いえ、そんなことは……」
首筋に手をやる武内さんも、内心満更でもないだろう。それから美世が客寄せパンダになったこともあり、数人からの写真撮影などに応じながら結果発表の時間になると、HQに向かう。人だかりの後ろから、壇上に上がる主催者の挨拶を聞き終えると、まずは総合表彰から始まった。
もちろん86が上位を占めたあとにクラス別。アクアのクラスはだいぶ後だ。
「やはり緊張しますね」
「今回はリザルトよりも完走することが目的でしたけどね。でもまぁ、結果を出したくなるのが性でしょう」
「でしょうね。柄にもなく興奮しています」
ついに自分たちの出たクラスになると、心なしか背伸びしてしまう。
「それでは、アクアワンメイク、Cクラスの結果を発表してまいります。第3位からまいります――」
いよいよだ。ざわめきが収まると、主催者のオッサンが3位のチームを呼んだ。俺らではない。
武内さんはなんとも言い難い顔だ。
「第2位、『頑張るプロデューサー社用車アクア』武内、日比谷組! 壇上へどうぞ!」
「やりました」
「上出来ですね」
1位のチームも呼ばれると、盾と記念品を渡され、短いフォトセッション。美世がスマホで撮った写真があとから送られてきた。
オープンクラスの結果も聞き終えると、町長さんの挨拶でワンデイイベントは閉幕した。
クラス2位、総合39位でイベントを終えて、美世の手を借りながら片付けると一路東京へと向かう。帰りにSAで釜飯を食べるためにわざと遠回りしたりしたが、いい旅だ。
「なるほど、素晴らしい結果だったな。よくやった」
「「ありがとうございます」」
「プロジェクトのいい弾みになっただろう。今後もスケジュールどおりに動いていこう」
「はい」
「車は既にラッピングに回ってます」
「来月末、全日本ラリーとの併催イベントでデビューだ。ドライバーは川島、高垣の2人で行く」
「連絡済です。ステージの方もセッティングしてあります」
こうして着々と346Racing Projectは進んでいくのだ。
しかし、あのど派手なアクアには乗りたくねぇなぁ…… 誰に車を取って越させるか。
タイムは富士スピードウェイ公式ホームページのタイム一覧参考にしてます
そこそこ現実的なタイムじゃないかな、と。