もしもセイバーのマスターがソードアートオンラインに異世界転移したら? 作:雪希絵
長らくお待たせしまった分、ってことで、連続投稿させていただきます
それでは、どうぞ!
あれから約二週間。
アインクラッド七十五層、迷宮区。
立香達は巨大な扉の前にいた。
「……さて」
「いよいよですね」
アルトリアも神妙な顔だ。
キリトとアスナの攻略組脱退から、立香達は攻略の中核として大きな活躍を見せた。
今までの階層と比べても特段危険度が高いらしく、かなり慎重に攻略が進められた。
軍師立香の監修の元、犠牲を出さない戦法が街中に無償で流され、それを多くのパーティーやギルドが採用。
七十五層解放当時に比べ、27パーセントものマッピング速度向上を成し遂げた。
十数日、慎重を重ねた探索により、何とか犠牲なしでボス部屋の場所が明らかに。
そして、五つのギルドが合同で偵察隊を組み、二十人が集まった。
マップを元に迅速にボス部屋前に到着し、突入直前の待機状態だ。
「……みんな、HPの確認は大丈夫?あと、転移結晶はすぐに使えるように準備すること」
立香の指示で、全員がHPの確認や転移結晶を手元に収めるなどの行動を取る。
「それにしても、偵察なのに凄いメンバーですね」
そんな中、偵察隊のメンバーの一人が立香達に話しかけて来た。
「ん?そうかな?」
「すごいですよ。だって、『神速(立香)』に『聖騎士(アルトリア)』に『鉄壁(マシュ)』に『千剣(エミヤ)』が全員揃っていて、合計二十人のメンバーがいるなんて……!」
「あー、分かる。このメンバーでも倒せちゃうんじゃないかって思うくらいだよな!」
興奮気味に語るプレイヤーに、また別のプレイヤーが同調する。
「いや、それはどうだろ……。今回『クォーターポイント』だしなぁ……」
それに対し、立香は渋い顔をする。
『クォーターポイント』。
二十五層ごとに巨大な体躯と絶大な強さを誇るボスが出現することを、キリトと立香の間ではそう呼んでいる。
二十五層のボスでは軍に甚大な被害を与え、現在まで続く勢力低下に大きく関わっている。
五十層では、ヒースクリフの奮闘と、アルトリアとマシュの防具がなければ更に絶大な被害が出ていたとされている。
ちなみに、アルトリアはあれ以来、一度しか宝具『約束された勝利の剣』を放っていない。
曰く『何故かあれ以来、令呪をもってしても宝具を使用することが出来なくなっている』とのことだ。
(それもおかしな話なんだよね。ひょっとしなくても、ゲームマスター側にブロックされてるとしか思えないや……)
立香Lv89。
アルトリアLv92。
マシュLv90。
エミヤLv88。
SAO生活で強化されたレベルによって、宝具を使えばいかにクォーターポイントといえど倒し切れるだろう。
それが出来ないとなれば、真っ向から迎え撃つしかない。
「よし、準備完了!突入準備!」
「「「了解!!!」」」
メンバーのうち二人が扉を開き、アルトリアとマシュを先頭に十人が中に飛び込んでいく。
その中にはもちろん、立香とエミヤがいる。
大きな道を渡りきり、中央にたどり着く。
やがて、青い炎が次々と灯り、中央でオブジェクトが形成されて行く。
いつも通りのボス出現エフェクト。
だが、いつもと違うことが一つ。
扉が、唐突に。
本当に不意に。
閉まり始めた。
「……!?セイバーーーーーー!」
気がついたエミヤが、立香、マシュ、アルトリアを勢いよく扉の方に突き飛ばす。
英霊の筋力とスピード補正は伊達ではなく、それだけでかなりの距離を稼いだ。
「えっ………エミヤ!?」
アルトリアはほぼ本能で
三人まとめて扉の外に投げ出された。
「セイバー……!マスターを、任せた……!」
何が起こったか分からない、そんな顔をしていた立香達も気がついた。
エミヤが、何をしようとしたのか。
扉は容赦なく、無慈悲にも立香達の目の前で、閉まっていく。
「エミヤ!エミヤ!」
「エミヤさん……!」
「アーチャー!」
最後に遠目から見たその顔は、いつもの様に皮肉げに、そしてどこか悲しそうに、微笑んでいた。
「エミヤァァァァァァァァ!!!」
重厚な音を立て。
扉は、完全に閉まった。
お読みいただきありがとうございました
大晦日に投稿するには、ちょっと話が暗かったですかね……
あと数分でで今年も終わりですね
今年はほとんど投稿出来なかったのが心残りです
来年は出来るだけ良いペースで、出来ないようならちゃんと連絡するようにしながら、続けていきたいと思います
お付き合い下さる皆様、来年もよろしくお願いします
それでは、良いお年を!