もしもセイバーのマスターがソードアートオンラインに異世界転移したら? 作:雪希絵
またやらかしたかと途方に暮れる雪希絵です
恐らく、この先もこういったことはあるでしょうけど……それでも翌日までには何とか更新したいと思っているので、気長に待って頂けると嬉しいです
そして、ついでに私は重大なことに気が付きました
……ラフコフ討伐戦を書いていない!!!
これは由々しき事態ですよ……SAOでもトップクラスの事案だと言うのに……
というわけで、今度書きます!
恐らく、七十四層の前の辺りに挿入して投稿することになると思います
よろしくお願いします!
「いよっしゃ、終わり!」
最後のハンマーを叩き込み、リズベットがマシュの盾を抱え上げる。
「おっも……!より重くなったなぁ……」
両手で持ち上げても支えきれず、ヨロヨロとよろけてしまう。
「あっ……と」
その途中、マシュがリズベットを支える。
「大丈夫ですか?リズベットさん」
「ありがと、マシュ。っていうか、見かけによらず力あるわね……」
ある部分以外は細く華奢なマシュが、盾と人間一人をしっかりと支えたということに、リズベットは驚きを隠せない。
「リズ、大丈夫?」
「ああ、うん。平気平気。それよりほら、これ」
そう言い、リズベットは盾をマシュに差し出す。
「ありがとうございます!」
嬉しそうに微笑みながら、盾を受け取る。
鈍い輝きを放つ盾は、重厚感が増してさらに堅牢になったようにも思える。
(これで……今まで以上に皆さんを守れます)
微笑むマシュの横顔は、どこか決意に満ちていた。
「……なるほど。だいぶ感覚にも慣れました。良い仕上がりです」
すると、作業場の奥で素振りをしていたアルトリアが戻ってきた。
「ごめんね、アルトリア。1回ミスっちゃって……」
「いえ、気にすることはありません。充分ですよ」
マシュは強化に全て成功したが、アルトリアは一度失敗してしまった。
よって、上昇量は少し減ってしまったが、それでも今までよりもかなり性能は向上している。
「これならこの層の敵でも一気に倒せそうですね」
「変わらなくない?それ」
「気にするな。気分の問題なのだろう」
首を傾げる立香に、エミヤが答える。
たしかに、多少苦戦はするが、基本的にアルトリアはどんな敵でも苦労するとことなく倒している。
恐るべし騎士王の強さである。
しかし、それはエミヤも同義である。
数多の武器を投影魔術で操るという都合上、どうしても強化は出来ないが、状況に応じて様々な武器のソードスキルを扱えるというのは強力極まりない。
加えて弓術、そして何よりそれによる『
強化は出来なくとも、このSAOでは無類の強さを誇るだろう。
「あーあ、手甲も強化出来ればいいのに」
「いいんじゃなーい?アンタにはユニークスキルがあるんだし。こっちの層まで噂届いてるわよ?」
「まあ、あの騒ぎ様ならそうだよねぇ……」
「今日もたくさん来てましたからね……」
ヒースクリフとのデュエル後、立香の元に多数の人がやってきた。
なんの比喩でもなく押し寄せてきたのだ。
理由は無論、立香のユニークスキル『太鳳拳』だ。
その時は李書文やハサン達に習った歩行術を駆使し、どうにか逃げるように家に帰れたのだが、残念ながら家まで割れてしまった。
今日、家を出る前も出てからも、結構な人数分に待ち伏せやら質問攻めやらを食らったのだ。
「はぁ……私もどうやって手に入ったかわからないんだけどなぁ。七十四層のボスを倒したらいつの間にかスロットに増えてただけだし」
「キリトも同じようなこと言ってたわ。ユニークスキルってみんなそうなの?」
「さあ?二つしか発動タイミングが分かってないから仮説でしかないけど……そうなんじゃないかな?」
現在明らかになっているユニークスキルは三つ。
ヒースクリフの『神聖剣』、キリトの『二刀流』、そして立香の『太鳳拳』。
エミヤの弓もオンリーワンのスキルだが、実のところソードスキルはない。
正規のユニークスキルである三つは、その全てが等しく出現条件不明だ。
ヒースクリフに関しては、そもそもいつからスキルを持っているのかすらわからない。
「……これは、いよいよもって前にキリトと話した推論が確信めいて来たかな」
「ん?リツカ、なんか言った?」
「なんでもにゃーい。にゃーん」
「……は?」
「なんでもございません」
リズベットの怪訝そうな顔に、立香は思わず秒で目を逸らした。
「……まあいいや。はい、これ料金ね」
「あれ?なんだか、随分とリーズナブルですね」
「友人価格ね。感謝しなさいよー」
「うんうん。ありがと」
頷きながらお礼を言い、オブジェクト化したコルの袋を手渡す。
「まいどあり。今後ともリズベット武具店を御贔屓に」
「そりゃあもう、これでもかってくらいにするよ」
「そいつはありがと。じゃあね」
「ありがとうございました、リズベット」
「ありがとうございました!」
「ばいばーい!」
実に晴れやかな表情で、立香達はリズベット武具店を後にした。
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「よーし、このままアスナ達の所へレッツゴー!」
「随分とまた急だな」
店を出た瞬間、立香は駆け出して転移門の方に向かう。
「早いとこ渡さないと。明日になったらギルドに正式加入するから、あんまり会えないだろうしさ」
「なるほど。では急ぎましょうか」
さらに拍車のかかった敏捷力を極限まで活かし、街中を駆け抜ける。
道行く人々が何事かと振り返るが、ついぞ視線が追いつくことはなかった。
転移門を通り抜け、集合場所のエギルの店へ。
「ダイナミック入店!!!」
扉をぶち破る勢いで店内に転がり込むと、
「ぬぉっ!?な、何事だ!?」
店長ことエギルがものすごい形相で立香達を見る。
「どうしたリツカ!トラブルか!?」
「ああ、そういうわけじゃないよ」
「じゃあそんな『バイ〇ハザード』みたいな登場をするなよ……」
げんなりとする店長を差し置いて、立香達は二階の階段へ。
「キリトとアスナいるよね?」
「なんだ、二人に用か?ああ、相変わらず居座ってるよ」
「OK、ありがとう。後でまたお話しよ?」
「はいよ。待ってるぜ」
頷き、トコトコと階段を登る。
「リツカちゃん!待ってたよ」
「話ってなんだ?」
そこには、いつも通りのアスナと、
「……キリト、どしたのそれ」
「違和感が……凄まじく違和感が……」
「で、でも!よ、良くお似合いですよ!」
「随分と雰囲気が変わるものだな」
「やめろ!次から次に指摘するな!」
真っ黒だった装備が真っ白に染まったキリトがいた。
形こそ今までのコートと同じ形状だが、純白をベースにところどころ赤の入った、控えめに言っても派手なものになっている。
「まあ、血盟騎士団入ったんだもんねぇ。仕方ないよね」
「まあなぁ……」
ため息をつくキリト。
割と不服らしい。
「まあまあ。今日は二人にプレゼント持ってきたんだからさ。機嫌直してよ」
「「プレゼント?」」
「相変わらずシンクロ率高いね。初〇機とシ〇ジかな?」
「また懐かしいネタだな、マスター……」
そんなツッコミは華麗にスルーし、立香はアイテム欄から選択したものをオブジェクト化した。
それは、先程も取り出していた概念礼装だ。
リミテッド・ゼロ・オーバーをキリトに手渡し、目醒め前をアスナに手渡す。
「はいこれ。プレゼント。心からの贈り物」
「なんだこれ?カード?」
「概念礼装、って言うんだ。端的に言えば、英雄の伝説が形になったもの……って認識かな?たぶん、持ってれば効果あると思うよ」
サラリとそう言う立香に、二人がギョッとした顔をする。
「え、聞くからに貴重そうなんだけど……」
「流石に、これを貰うわけにはな……」
「いいのいいの。アルトリアもマシュも強化出来たし、私もエミヤもユニーク持ちだし。それに……」
ニコッと微笑み、少しだけ恥ずかしそうに、
「やっぱり二人には、ちゃんと生きてて欲しいからさ」
えへへ、と笑った。
「……そっか。うん、それじゃあ、有難く貰うね」
「ありがとう、リツカ。大事にするよ」
「うん!上手く活用してね?」
概念礼装を握る二人を見て、満足そうに頷く立香。
そんな様子を、サーヴァント組はちょっとだけ離れて見守っていた。
「このためだったのですね。私たちの武器の強化は」
「たしかに、今まで装備してなくても充分戦えていたからな。良い判断だ」
「おふたりの為に、役立ってくれると良いですね」
元は自分達が使っていた装備が誰かを守ってくれる。
それを願って、彼らは目を細めて微笑んだ。
お読み頂きありがとうございました
前書きにも書きました通り、今後もこういった事態が起こるかも知れませんので……それでもお付き合い頂けると嬉しいです
それでは、また来週お会いしましょう