もしもセイバーのマスターがソードアートオンラインに異世界転移したら?   作:雪希絵

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どうも皆様

ちょっとだけお久しぶりです、雪希絵です

体調はもうバッチリ治りました

今週からまた連載再開していきます!

よろしくお願いします!


ユニークスキル

結果から述べると、接戦の末にキリトは敗北した。

 

二本の剣と十字剣、そして巨大な盾が応酬される激しいデュエル。

 

誰がどう見ても、このアインクラッド史上に残る名勝負だった。

 

実際、闘技場内には惜しみない拍手と歓声が満ちている。

 

だが、立香は妙な違和感を抱えていた。

 

(……速すぎる)

 

最後の最後、キリトの渾身の一撃。

 

感覚の鋭い立香は、あれで決まったと確信していた。

 

だが、ヒースクリフはそれを防いだ。

 

ギリギリ掠めるとかそういうレベルではなく、真正面から綺麗に受け切ったのだ。

 

結果、体勢を乱したキリトはヒースクリフのカウンターを避けられず、デュエルは呆気なく決着した。

 

アスナに助け起こされたキリトもそう思っていたのか、呆けた顔でぼうっとしていた。

 

(あれと、戦うのかぁ……)

 

だが、立香の目はやる気だった。

 

(……手は、ある)

 

アイテム欄を操作し、愛用の手甲を取り出す。

 

一見するとサテングローブのようにも見えるが、強度は折り紙付き。

 

ヒースクリフの盾や剣にも、ある程度はついていけるはずだ。

 

「先輩!」

 

愛しい後輩の一声に、立香が振り返る。

 

「頑張ってください!信じてますから!」

 

両手でガッツポーズしながら、マシュが微笑んでそう言う。

 

(……ああ、可愛い。天使か)

 

そう思いながら、背中を向けて右手を真横に突き出し、ぐっと親指を立てて答える。

 

大歓声と共に、立香は闘技場へと入場した。

 

闘技場の真ん中辺りで立ち止まり、肩をぐるぐると回して準備運動をする。

 

ひとしきり動かし終わった頃。

 

一際大きな歓声を背に、ヒースクリフが入場してきた。

 

服装はキリトと戦った時と同じ、血盟騎士団員と逆の色合いの装備。

 

その手には、身体の半分を覆う程のサイズの盾が握られている。

 

剣はその裏に収納されているようだ。

 

ヒースクリフは立香から数メートル離れた位置で立ち止まり、不敵に笑う。

 

「……久しぶりだな、リツカ君」

「……お久しぶりです、団長。まあ、今は団長じゃないですけど」

「いや、このデュエルの後は君も団員だ」

 

当然のようにそう言うヒースクリフに、立香が眉を少しだけひそめる。

 

だが、すぐに両の拳を打ちつけて、

 

「……分かりませんよ?私、キリトより速いですから」

 

そう言って、同じように不敵に微笑む。

 

ヒースクリフは受けて立とうとばかりに、ステータス画面を操作してデュエルの申請を行う。

 

即座にそれを受諾し、ステータスを閉じて深呼吸。

 

カウントダウンがカチカチと進んでいく。

 

見れば、ヒースクリフも剣を取り出して構えている。

 

立香も構え、細く鋭く息を吐き出した。

 

雑音が遠ざかっていく。

 

己の感覚が、ヒースクリフ一人へと注がれていく。

 

……3……2……1……0。

 

カウントダウンがゼロになったその瞬間、立香はロケットスタートを決める。

 

効果音もエフェクトも置いて行く程の速度で、ヒースクリフへと肉薄する。

 

だが、ヒースクリフは焦らない。

 

落ち着いて盾を構え、立香の右拳の軌道上に。

 

神速で繰り出される立香の拳は、それでもヒースクリフの防御を破れず、弾き返される……それが普通だ。

 

だが、事実はそれを裏切る。

 

李書文(せんせい)直伝────」

 

ポツリと呟いた立香の拳は、ヒースクリフの盾に衝突。

 

直後、

 

「『鎧通し(よぉろぉいどぉしぃ)』ぃぃぃ────!!!」

 

ヒースクリフの盾から、ダメージが抜ける(・・・)

 

それは僅かではあるが、闘技場の観客にも分かる程度には、ヒースクリフのHPを刈り取った。

 

「「「「うぉおおおおおおおおおおおおっっっっ!!!」」」」

 

一発目からヒースクリフにダメージが入り、観客は沸きに沸く。

 

サーヴァント組も驚き顔だ。

 

ヒースクリフはハッとした顔になると、即座に飛び下がる。

 

「……ふぅ」

 

立香はその間に体勢を整え、構え直す。

 

今しがた立香が使用したのは『鎧通し』と呼ばれる格闘技の技の一つだ。

 

端的に言えば、防具を無視して打撃力を直接相手に叩き込む技術。

 

カーディナルによる複雑な演算結果は、立香の打撃力を反映する結果を出した。

 

一か八かではあったが、立香は賭けに勝ったのだ。

 

(よし……次)

 

ほんの僅かな睨み合い。

 

数秒後、二人は同時に床を蹴る。

 

距離が詰まったその瞬間、

 

「やぁぁぁぁぁ────!」

 

立香の両手が燃える炎のようなライトエフェクトを帯びる。

 

微かに眉を顰めるが、ヒースクリフは冷静に盾を構える。

 

右手の正拳突きから、右側に回り込んで左手でアッパー。

 

大きく足を縦に回転させ、叩きつけるように踵落とし。

 

その全てを盾で受け、ヒースクリフは反撃に転じる。

 

だが、立香のスキルはこんなところでは終わらない。

 

両手の掌底を合わせ、手のひらを開いて五指を曲げる。

 

ライトエフェクトを纏いながら、ヒースクリフの攻撃を紙一重で回避。

 

そして、盾に向かって両手を叩きつける。

 

同時に捻りながら押し込み、力を爆裂させるイメージで力を放出する。

 

派手な金属音が鳴り、ヒースクリフが一歩二歩後退する。

 

再び、僅かながらも減少するHP。

 

「……なるほど。君も、ユニークスキルの持ち主か」

「ご明察」

 

左右の手を払うと、両手のライトエフェクトが消える。

 

「……ユニークスキル『太鳳拳』。隠し球、ってやつですよ」

 

直後、先程以上に沸きに沸く観客達。

 

闘技場が震えているようにも感じられる程だ。

 

(よし、上手くいった。でも……やっぱり流石だなぁ)

 

立香はそう思いながら、視線だけ右頬の方に向ける。

 

ポリゴンの欠片がキラキラと、傷痕から流れていた。

 

HPバーは少しながらも減少している。

 

『太鳳拳』のソードスキルを受けながらも、ヒースクリフはカウンターを決めてきたのだ。

 

(油断ならないな……)

 

再び構えながら、立香はヒースクリフを見据えた。

 

デュエルはまだ、始まったばかりだ。




お読み頂きありがとうございました!

というわけで、立香にユニークスキルを追加させて頂きました!

名前のセンスねぇな、とかは御容赦ください

それでは、太鳳拳の補足情報を少々

ユニークスキル『太鳳拳』は、体術スキルと拳闘スキルを発展させたような感じです

全てのライトエフェクトが燃える炎のような見た目で、両手両足を駆使した格闘ゲームのコンボのようなスキルがあるのも特徴です

それでは、また来週お会いしましょう!

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