もしもセイバーのマスターがソードアートオンラインに異世界転移したら? 作:雪希絵
再び親指を怪我した雪希絵です
絆創膏打ちにくいです……
いえ、実を言うと指の皮をめくってしまう癖がありまして……
時折それが深くなることがあるんです
治すように気をつけなくては……
それでは、ごゆっくりどうぞ!
「はっ……はっ……はっ……!」
視界が霞む。
滝のように汗が流れ出す。
熱された体が呼吸を重ねる毎に冷えていく。
頭上の見れば、HPバーはそのほとんどが消失してレッドゾーンになっていた。
(……初めて、なったなぁ)
ははっ、と乾いた笑いが口から漏れる。
妙な感情が湧き上がり、ぼーっとする頭のまま座り込む。
「キリトくん!リツカちゃん!」
アスナが駆け寄ってくる。
大丈夫、そう声を出そうとしたが、かすれて何も出なかった。
(これは……相当にきてるなぁ……)
狂化A+という、桁外れのバーサーカーと化したボスとの戦い。
極限状態で戦い続けたことによって磨り減った精神は、いかに立香といえど多少では済まない。
加速し続けた思考回路の代償。
焼き切れる程に行使し続けた、反射神経の限界。
どうにか立とうとしても、上手く体に力が入らなかった。
キリトは恐らく、立香のその上を行く症状で気を失ってしまったのだろう。
(まあ、でも……ギリギリ残ってるし、大丈夫かな)
キリトのHPバーは、立香と同じくギリギリではあるが、一応残っている。
これなら大丈夫だろう。
「大丈夫!?リツカちゃ……」
「センパァァァァァァァァァイ!!!」
「にゃっひぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!?」
声をかけようとしたアスナを遮り、突進するかのような勢いでマシュが抱きついて来た。
その勢いたるや、リツカが妙な奇声を上げてしまう程だった。
「先輩!先輩!大丈夫ですか!?お怪我はありませんか!?体力は大丈夫ですか!?状態異常は!?ああ、怪我はしないんでした!先輩!お腹は空いていませんか!?甘いもの食べますか!?」
「うん、大丈夫。大丈夫だよ、マシュ。あと話が妙な方向にズレてる」
怒涛の勢いでまくし立てるマシュを、立香は慌ててなだめた。
顔を見れば、その目は涙でくしゃくしゃに歪んでいた。
邪魔だとばかりにメガネを取り払い、拭いながら嗚咽を漏らす。
「先輩……先輩……ごめんなさい……ごめんなさい……!わた、私は……!先輩を…… 先輩を守らないと……ひっく……いけ、いけないのに……!」
「あーあー、大丈夫だって。そっちも大変だったんだから……」
「いえ、アルトリアさんとエミヤさんがバッタバッタと……」
「あ、そっかぁ……」
よくよく考えれば、エミヤも二刀流を使える上に、アルトリアも鎧を解けば魔力放出が激増するのだ。
時間はかかれど、充分に戦えるだろう。
「ごめんね、心配させて。私は大丈……」
「マスタァァァァァァァァァ!」
「いやっふぅぅぅぅぅぅぅぅ!?」
某ヒゲの配管工ような叫び声を上げながら、立香はまた驚きに身を跳ねた。
もはや魔力放出おも駆使しているのではないかという速度で、アルトリアが突撃してきたのだ。
下手をすればHPがゼロになってトドメを刺されそうである。
「マスター!大丈夫ですかっ!?お怪我は!?体力は大丈夫ですか!?状態異常は!?ああ、怪我はしないんでしたね!マスター!お腹は空いていませんか!?何か食べますか!?いえ、ぜひ食べましょう!ぜひ!」
「うん、大丈夫。大丈夫だよ、アルトリア。っていうか、食べ物ゴリ押ししすぎ。食べに行こうね、うん」
左手にはきつく抱きつくマシュ。
右手には手を握りながら不安そうな表情をするアルトリア。
(両手に花とはこのことか)
他人事のようにそんなことを思っていると、
「あの、リツカちゃん……」
アスナもまた、不安そうな表情でこちらを見ていた。
「……私は大丈夫だから。キリトのところに、行ってあげて?」
「……うん。ごめん、ありがとう」
キリトくん、と呼びながら、アスナはキリトの元へ駆け寄って行った。
直後、立香の側に背の高い影が現れ、立香にポーションの瓶を放り投げた。
周囲の索敵を終えたエミヤが戻ってきたのだ。
「マスター、無事か?」
「エミヤ」
「どうした、その反応は」
「いや、エミヤは二人みたいに抱きついて来ないのかなぁって」
「君は私に何を求めているんだ」
「バッチコイ」
「やめたまえ」
頭が痛いとばかりにエミヤはため息をつきながら、額に手を当てた。
しばらくすると、キリトが目を覚ました。
その瞬間強烈に抱き締めるアスナ。
「……あんまりきつく締めると、HPがゼロになるぞ」
アスナはキリトをキッと睨みつけると、その口にポーションの瓶を突っ込んだ。
五分もあれば体力はMAXになるだろう。
「おおい、それよかキリの字!何だったんだよ、今の!」
「言わなきゃダメか?」
「あったり前だ!」
「……エクストラスキルだよ。『二刀流』」
おおっ……、という声が上がる。
知ってた組は平然としているが、風林火山のメンバーは軍の面々は驚きを隠せない。
ひとしきり話が終わると、クラインは風林火山のメンバーを引き連れて転移門の方に向かう。
「どうする、キリト。せっかくの功労者だし、お前が転移門起動してくか?」
「いや、いいよ。任せた」
クラインはニヤニヤしながら頷くと、転移門の方へ向かっていった。
軍の面々も撤退していく。
「私達も行こうか?HPも回復したし」
「そうですね」
「マスターの言を借りるなら、『あとはお若いお二人で』だな」
「That's Right」
「流暢な英語ですね……」
キリトとアスナを部屋に残し、立香達もボス部屋を後にした。
お読み頂きありがとうございました!
盛大に時間過ぎてしまいました……
絆創膏打ちにくいぃぃぃぃぃぃぃぃぃ三('ω')三( ε: )三(.ω.)三( :3 )三('ω')三( ε: )三(.ω.)三( :3 )ゴロゴロゴロ
それでは、また来週お会いしましょう!