もしもセイバーのマスターがソードアートオンラインに異世界転移したら? 作:雪希絵
諸事情により、しばらく投稿できなくてごめんなさい、雪希絵です
待ってくださった心優しい皆様、本当にありがとうございます
さて、ようやく復活となりました
これから先、ラストスパートに向けて頑張っていきたいと思います
よろしくお願い致します!
「馬鹿な……!あれは……!」
立香の元に通信が入る。
ロマニのものだ。
「ドクター?どうしたの」
立ち止まり、立香はロマニの言葉に耳を傾ける。
「立香ちゃん、気をつけて!……その赤くなった体、間違いない!」
「ああ、全く忌々しい。私も同じ意見だよ」
ダヴィンチも同調して、ロマニの発言を肯定する。
「立香ちゃん、あれは……狂化だ!しかも、下手をするとA+レベルのだっ!」
「……っ!?」
狂化A+。
カルデアの基準で言えば、言語能力と理性の喪失の代わりに、桁違いの攻撃力を得るレベル。
「それでもっ……!それでも!」
拳を握り、前を見据える。
自らの脚を叱咤するように叩き、駆け出した。
「それでも、私はやらなきゃいけない!もう、一人だって失いたくないから……!」
仮想の大気を切りながら、立香は疾走する。
ボス部屋の内部では、驚愕して立ち止まるアスナとキリト、そしてクライン以下風林火山の面々。
そして、整列して突撃しようとする軍。
「全員……突撃……!」
無茶苦茶だ。
これだけの人数が並んで突撃しても、まともに攻撃できるはずがない。
そして、真っ先に犠牲になるのは最前列で真正面にいるコーバッツ。
「やめろ……!」
キリトの静止も聞かず、コーバッツ達は突撃する。
「オオオオオオオオオオォ────!」
ボスは部屋を轟かす咆哮をあげながら、手に持った大剣を振るう。
コーバッツに直撃し、薙ぎ払う。
そして、そのHPを全損させる……はずだった。
「間に合えぇぇぇぇぇぇぇ────!!!」
全力全開の立香の拳が、大剣の脇から叩き込まれる。
予想外の位置から強烈な一撃を受け、大剣が軌道を逸らし始める。
「ガアァァァァァァァァァ────!」
「ああああああああああぁ────!」
拮抗する力と力。
差は、位置とタイミング、そして速度。
「……っ!?」
大剣は、コーバッツと立香をギリギリで避けた。
「き、貴様は……な、なぜ」
「いいから!早く逃げろっ!死にたいのかっ!?」
「わ、我々軍に逃げるなどということは……」
「じゃあ、あんたはっ!」
コーバッツを肩越しに睨みつけながら、立香は叫ぶ。
「そのつまらないプライドのために死ぬのかっ!?プライドと命、どっちが大事だっ!」
「……わ、私は……」
ボスが体勢を立て直し、大剣を大上段に振り下ろす。
「このっ……!」
立香はコーバッツを蹴飛ばし、遠ざける。
「あっ……ぶなっ……!」
ギリギリで顔の前を大剣が通り過ぎる。
「────やるしかないか」
拳を打ち付け、構える立香。
「ガァァァ!」
赤い体躯を大きくしならせ、大剣を振り下ろす。
立香はそれを手甲で受け止めながら、力を下方向に流す。
破壊不能オブジェクトでなければ、間違いなく床は砕けていただろう。
それほどの勢いで、大剣は地面に叩きつけられた。
立香はその大剣を踏みつけると、高く高く飛び上がる。
「やぁぁぁぁ!」
帯びる黄色のライトエフェクト。
拳闘スキルが発動し、加速音が鳴る。
うなる立香の拳が、ボスの顔面にめり込んだ。
「ガァッ────!」
ボスのHPが僅かに減少するが、ボスは顔を振って立香の拳を弾く。
「大して効いてないか……!」
空中でくるくると回転しながら、立香が着地する。
「リツカ!お前ぇ、なんて身のこなしだよ……」
「まあ、慣れてるから」
そんな立香の元に、アスナとクラインが駆け寄る。
「リツカ!アスナ、クライン!」
そこへ、キリトからの声が届いた。
「10秒だけ時間を稼いでくれ!」
頷き、三人はボスに向き直る。
ちょうど、ボスが突進してくるところだった。
「私が囮になる!二人は武器で受けて!」
「「了解!」」
立香は敵の懐に飛び込むように、突進する。
そんなもの許すはずがなく、ボスはその図体からは想像出来ない速度で身を捻り、真横に大剣を振るう。
「こんのっ……!」
立香はダッシュしながらイナバウアーのような体勢を取り、そのまま脚と背中をつけてスライディング。
アクション映画のような動きで回避する。
脚に力を込め、飛び上がるように起き上がる。
「やっば……!」
しかし、ボスは空いた片手を活用することを選んだ。
拳を振り下ろし、体勢を乱した立香を押し潰そうとする。
(防ぎ……切れない!)
「リツカちゃん!」
「リツカ!」
クラインとアスナが、割って入る。
突進系のソードスキルで、ボスの拳を弾く。
「リツカちゃん、大丈夫!?」
「チクショウ、なんちゅう重さだ!」
その間に立ち上がり、立香は二人の間を駆け抜ける。
真横に振るわれた直後、拳も弾かれた。
残されたボスの攻撃手段は、特殊攻撃。
「ボアァァァァァァァ!」
口から吐き出される、レーザーの如きブレス。
立香は二人を押し倒すことで、どうにかそれを回避させた。
しかし、タイミング故か、どうしても倒しきれなかったらしく、二人はダメージを受けてしまった。
「くそっ……!ごめん、二人とも……」
「大丈夫だ、直撃食らうよりマシだしな」
「次来るよ!二人とも!」
叩きつけるように飛来する大剣。
あまりの連続攻撃。
これをまともに対処できる人間など、このSAOに何人いるのだろうか。
だが、この場にいるのはその何人かだ。
「おんどりゃぁ!」
「くっ……!」
「……ここだっ!」
武器を持つアスナとクラインが大剣を受け、立香がそれを思い切り蹴る。
見事に軌道が逸れるが、それでもアスナとクラインのHPはさらに減少する。
「攻撃力が高すぎる……!」
「キリト君、もうそろそろ……もたないよ……!」
そう言うアスナのHPは既に半分を割って黄色ゾーンだ。
「いいぞ!待たせた!」
「アスナ!クライン!下がって!」
キリトの言に、立香がそう言う。
「……ごめん。ポーション飲んだら戻るから」
「任せるぜ、リツカ!」
「グォオオオオオ────!」
話を割って飛び込んでくる咆哮と攻撃。
「イヤァァァァ!!」
純白のライトエフェクトを纏い、アスナの攻撃がヒットする。
大きく空いたその間隙に、飛び込むキリト。
「スイッチ!」
そして、キリトは再び振り下ろされた大剣を、右手の剣で受ける。
間髪入れず、背中のもう一つの剣に手をかける。
空いた胸に斬撃を叩き込むと、クリーンヒットにボスが悶える。
(二刀流か────!たしかに、これなら!)
立香のHPは、まだグリーンゾーン。
一人で捌くのは厳しいだろう。
なら、やることは一つ。
「キリト!」
「リツカ!」
二人のコンビプレイで、捌き切ればいい。
な、なんとか満足のいくように書けました……
よ、良かったです……一応鈍ってはいないようです……
それでは、また来週お会いしましょう!