もしもセイバーのマスターがソードアートオンラインに異世界転移したら? 作:雪希絵
先週はおやすみして申し訳ございません、雪希絵です
先週一週間はなかなか時間がなくて……
やることも多かったので時間が取れませんでした
しかし、それも片付きましたので、また連載再開していきたいと思います
それでは、ごゆっくりどうぞ
すっかり空腹も満たされ、少しの間休憩をとる。
アスナはキリトにほんの少しだけ寄りかかり、立香はアルトリアに膝枕をしてもらっている。
エミヤとマシュは向かい合って今後の方針について相談中だ。
そんな時、不意に下層の入口の方から、プレイヤーが鎧をガチャガチャと鳴らしながら入って来た。
突発的にアスナとキリトは離れるが、立香は構わずのんびりしている。
現れたのは、六人組のパーティーだった。
「おお、キリト!しばらくだな」
その先頭を歩いていたプレイヤーは、キリトを見て気さくに挨拶をした。
逆だった茶髪に赤いバンダナ、腰には刀。
「まだ生きてたか、クライン」
「相変わらず愛想のねぇ野郎だ。珍しく連れがいるの……か……」
クラインと呼ばれた長身の男は、キリトのそばにいるプレイヤー達を見て、目を丸くして固まった。
「あー……っと。ボス戦で顔は合わせてるだろうけど、一応紹介するよ。こいつはギルド《風林火山》のクライン。で、こっちは《血盟騎士団》のアスナ。それと、リツカ、アルトリア、マシュ、エミヤだ」
キリトの紹介に、アスナや立香達はぺこりと頭を下げるが、クラインは未だフリーズしている。
「おい、ラグってんのか」
「く、くくクラインと申します二十四歳独身」
混乱のためか訳のわからないことを口走ったクラインに、キリトが肘鉄を打ち込む。
「まあ、こんなんだけど、気の良い奴だから仲良くしてやってくれ。リーダーの顔はともかく」
今度はクラインがキリトの足を思い切り踏みつける。
ゲームなので痛覚はないが、見た感じはかなり痛そうである。
そんな様子に、アスナはたまらず腰を折って吹き出した。
「おー、明るい人だね。まあ、よろしくね、クライン」
「よ、よよよよろしくお願いします」
立香がニッコリと微笑むと、クラインは鼻の下を伸ばしてにへらと笑う。
しかし、すぐに我に返って殺気のこもった様子でキリトの腕を掴む。
「ど、どどどういうことだよキリト!?」
キリトが返答に困っていると、
「こんにちは。しばらくこの人とパーティーを組むので、よろしく」
「よろしくぅー」
アスナと立香がよく通る声でそう言った。
「キリト、てんめぇ……」
もはやダダ漏れの殺気を振りまきながら、クラインが歯ぎしりする。
面倒なことなることをキリトが覚悟したその時、先程《風林火山》が現れた方角から、新たな一団が現れた。
「キリト君、《軍》よ!」
見れば、そこには道中でも見かけた重装部隊がいた。
その先頭にいた鎧の男は、部下とおぼしきメンバーを休ませると、立香たちの方へ歩み寄ってきた。
ヘルメットを取り、その長身でじろりとキリトを見下ろす。
「私はアインクラッド解放軍所属、コーバッツ中佐だ」
「……キリト。ソロだ」
コーバッツは軽く頷くと、横柄な態度で口を開いた。
「君らはこの先まで攻略しているのか?」
「……ああ。ボス部屋の前まではマッピングしてある」
「では、そのマッピングデータを提供してもらいたい」
当然だ、という態度の相手にキリトは少なからず驚く。
アルトリアやエミヤも眉をひそめ、身を乗り出そうとしたマシュは立香に止められた。
しかし、クラインは穏やかではいられなかったらしい。
「な……て……提供しろだと!?てめぇ、マッピングする苦労が分かってんのか!?」
未踏破エリアのマッピングデータは貴重だ。
場所によっては高値で取引されることもある。
そんなクラインにコーバッツは眉をぴくりと動かし、顎を突き出しながら、
「我々は君たち一般プレイヤーの解放のために戦っている!諸君が協力するのは当然の義務である!」
大声でそう言った。
「ちょっとあなたねぇ……」
「て、てめぇなぁ……」
あんまりな態度に爆発寸前の二人を、キリトが抑える。
「どうせ街に戻ったら公開しようと思ってたデータだ。構わないさ」
「おいおい、それは人が良すぎるぜキリト」
「マップデータで商売する気はないよ」
キリトは言いながらトレードウィンドウを出現させ、コーバッツにデータを渡した。
コーバッツは「協力感謝する」と感謝も欠片もないような声でそう言い、くるりと振り返った。
その背中に、
「……カッコわるぅ」
盛大に言葉の毒が突き刺さる。
驚いたキリトとアスナ、クラインが振り返ると、声の主は傍観していた立香だ。
「……なんだと?」
不愉快さを隠そうともせず、コーバッツが振り返って立香を睨む。
気の弱いものなら気絶しそうな程の迫力だ。
だがしかし、立香に気の弱いなどということは欠片もない。
「ん?思ったこと言っただけだよ。かっこ悪いって」
「……どういう意味だ」
「そのまんまだよ?」
真顔で返す立香と、青筋を浮かべるコーバッツ。
しかし、その膠着は不意に途切れた。
「行くぞ!立て、貴様ら!」
コーバッツが半ば無理やり部下達を立たせたのだ。
軍のメンバー達はヨロヨロと立ち上がり、装備を構えて整列し、進軍し始めた。
最後まで、コーバッツは忌々しそうな顔をしていた。
その姿が見えなくなると、キリトが高速で立香に振り返る。
「……お、おい、リツカ……。あんまり軍と波風立てるのは……」
「えー、だってイライラしたんだもん」
ぶー、と唇を尖らせる立香。
「でも、リツカちゃんが何か言わなければ、私が言うところだったよ。だって、本当に嫌な態度だったもの」
「騎士の風上にもおけませんね」
アスナとアルトリアは立香に同調しているようだ。
「だが、いたずらに人を刺激するのは良くない。気をつけたまえ、マスター」
「はーい。……やっぱりオカンだなぁ」
クラインはと言えば、軍の者達が消えた方向を見ながら、
「……大丈夫かよ……あの連中」
と気遣うように呟いていた。
「……ふふっ。優しいんですね、クラインさん」
マシュが微笑みながらそう言うと、クラインは気まずそうに目を逸らした。
「まあ、間違いなくボス戦行くつもりだよね。あれは」
「やっぱりそうなのかな……。そんな無茶はしないと思いたいけど……」
立香の言に、アスナも不安そうにする。
「一応、様子だけ見に行くか?」
キリトがそう提案すると、その場にいた全員が首肯した。
装備を整え、走り出す。
すると、並んで走っていたアスナと立香に、クラインが話しかけてきた。
「あー、その。アスナさん。それと、リツカさん。ええっとですな……アイツの、キリトのこと、宜しく頼んます。口下手で、無愛想で、戦闘マニアのバカタレですが」
直後、クラインの背後に猛烈な勢いでキリトが回り込み、バンダナを引っつかむ。
「お前は何を言ってるんだ!」
「だ、だってよぉ……お前がパーティー組むなんて久しぶりだからよぉ……例え美人の色香に惑ったんだとしても大した成長だと思って……」
「惑ってないわっ!」
そんなやり取りに、アスナと立香は思わず吹き出す。
見れば、その場にいる全員がニヤニヤ(もしくはニコニコ)している。
アスナと立香は揃って、
「「任されました」」
と返事をした。
拗ねたのか、キリトは口をへの字にして先頭を走っていった。
お読みいただきありがとうございました
うーん、スランプというものが私のようなペーペーにもあるのでしょうか……なんだか上手く書けない気がします
それでは、また来週お会いしましょう