もしもセイバーのマスターがソードアートオンラインに異世界転移したら?   作:雪希絵

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どうも皆様

三連休で昼夜が逆転した雪希絵です

矯正しないとまずいことになります

さて、今回はボス部屋前のくだりですね

それでは、ごゆっくりどうぞ!


ランチタイム

「……開けるぞ」

 

キリトがそう言い、ゆっくりと扉を開く。

 

中は真っ暗で、立香達がいる回廊の明かりすら届かない。

 

部屋の中はひんやりとした冷気と闇に包まれており、五感の鋭い立香ですら奥まで見渡すことはできない。

 

「…………」

 

顔を見合わせ、口を開こうとした瞬間、部屋の真ん中辺りに一組の炎が灯る。

 

もう一組、もう一組と増えていき、あっという間に入り口から部屋の中央への炎の道が出来上がった。

 

最後に一際大きな火柱が吹き上がり、同時に奥行きのある部屋が薄青色に照らされる。

 

アスナが緊張に耐えかねたように、キリトの腕をぐっと握る。

 

しかし、その状況を楽しむ余裕はない。

 

部屋の中央部で、ポリゴンが積み上がっていく。

 

だんだんと形を成し、それは人型を作る。

 

見上げるようなその体躯は、全身縄のごとく盛り上がった筋肉に包まれている。

 

肌は周囲の炎に負けない深い青、分厚い胸板の上に乗った頭は、人間ではなく山羊のものだ。

 

目は燃えているようにギラギラと輝きを放っているが、その視線は明らかに立香達を見据えている。

 

その見た目を端的に述べるなら、悪魔そのもの。

 

いくらバーチャルと分かっていても、見慣れていても、人間の本能的な恐怖心を煽る。

 

そのボスモンスターの上に、名前が現れる。

 

『The Gleameyes』。

 

輝く目。

 

ボスモンスターは立香達にその鼻先を向けると、

 

「ヴォオオオオオオオオオ!!!」

 

大気をビリビリと震わせながら、雄叫びを上げた。

 

そして、

 

「……げっ」

 

猛烈な勢いで突進してきた。

 

(何あれ、お前を殺すオーラ全開なんだけど)

 

そんな雰囲気に立香が思わずじりじりと後ずさりしていると、

 

「うわぁぁぁぁぁぁ!?」

「きゃぁぁぁぁぁぁ!?」

 

キリトとアスナが揃って悲鳴をあげ、踵をかえして脱兎のごとく逃げ出した。

 

「えっ、ちょっ、待っ!」

「早っ!逃げるの早いです!」

「ボスは部屋から出てこないのではないのか……ってもう聞こえないか」

 

その速度はあまりにも圧倒的だった。

 

アスナは元々敏捷度を優先して上げていて、キリトは筋力優先ではあるがレベルの絶対値が高い。

 

(逃走)速度は、アインクラッドでもトップクラスだろう。

 

「……追いかけよっか?」

「はい」

「そうしましょう」

「迎えに行かなくてはな……」

 

立香達も踵をかえし、迷宮区の出口へと向かった。

 

残念ながらボス部屋から出られないボスモンスターは、出入口の前で棒立ちしている。

 

無情にも、扉はすぐに閉まってしまった。

 

───────────────────────

 

「あ、いたいた」

 

アスナとキリトは迷宮区途中の安全地帯にいた。

 

「みんな!こっちこっち」

 

駆け足で向かってくる立香達に、アスナが手を振る。

 

「もー。二人ともボス部屋から出てこないの分かってた癖にー」

「あ、あはは……。ごめんね。どうも途中で止まれなくなっちゃって……」

「俺も同じく」

「気持ちは分かるけどぉ……」

 

ため息をつく立香。

 

だが、あれは立香ですら怖気付く程の恐怖の塊だ。

 

いくら歴戦の剣士であるキリトとアスナでも、流石に黙って見ていることは出来ないだろう。

 

「うだうだ言ってても仕方ないだろう。これからどうする?」

「ああ、今からちょうど昼飯にしようとしていたところなんだ」

「食事ですかっ!」

「ブレませんね、アルトリアさん……」

 

そんないつもの様子に、アスナがうふふ、と笑いながらバスケットから人数分の大きな包みを取り出す。

 

手際よく包みを剥がすと、肉や野菜がふんだんに挟まれた大きなサンドイッチが姿を表す。

 

「おぉー!美味しそう!」

「じゅるり……」

「セイバー、涎をふけ」

「むっ、アーチャー。拭き方が荒いです」

 

そんなこんなで、立香達は早速サンドイッチにかじりつく。

 

「……? これって……」

「う、うまい……」

「もぎゅもぎゅ……むぐむぐ」

「セイバー、ソースがついているぞ」

「みゅっ、あーふぁー。ひゅきからがあらひれふ」

「口の中の物を飲み込んでから喋りたまえ」

 

全員、夢中でサンドイッチを頬張り続けた。

 

その味は、まさしく日本風のファストフードそのものだったからだ。

 

「……初めて食べる、味です」

「そっか。マシュはハンバーガー食べたことないのかー」

「あ、はい……。でも、すごく……美味しいです」

「良かった。また今度、作ってあげるね」

「はい!」

 

嬉しそうに微笑むマシュ。

 

一方、キリトの方は半ば放心状態だ。

 

「おまえ、この味、どうやって……」

「一年の修行と研鑽の成果よ。アインクラッドで手に入る約百種類の調味料が味覚再生エンジンに与えるパラメータをぜ〜〜〜〜んぶ解析して、これを作ったの。こっちがグログワの種とシュブルの葉とカリム水」

 

言いながら、アスナは小瓶の中身を指先につける。

 

「口開けて」

 

ぽかんと口を開けたキリトの口と、いつの間にか近くにいたアルトリアの口の中にどろっとした液体が着弾する。

 

「……マヨネーズだっ!!」

「……本当ですね」

「で、こっちがアビルパ豆とサグの葉とウーラフィッシュの骨」

 

最後のは解毒薬の素材な訳だが、考えるより早く二人の口の中に液体が着弾する。

 

その味に、二人は先程のマヨネーズを上回る衝撃を受けた。

 

まさしく醤油の味そのものだったのだ。

 

「ぱくっ」

「はむっ」

「ぎゃー!」

 

両手の指に付着した醤油を二人がくわえ、アスナが指を引き抜きながら悲鳴をあげる。

 

二人を睨みつけるが、呆けた顔を見てくすりと吹き出した。

 

「さっきのサンドイッチのソースはこれで作ったのよ」

「すごいな……これ売り出したら、すごく儲かるぞ」

「そ、そうかな……」

「いや、やっぱりダメだ。俺の分が無くなったら困る」

「いやらしいなぁ、もう!心配しなくても、気が向いたら作ってあげるわよ」

「素直だなぁ……キリトは」

 

穏やかに笑う声が、安全地帯に響き渡った。




時間すぎて&話全然進まなくてごめんなさい!

でも、これ以上詰め込むと文字数が……

次回は極力巻いていきますので、よろしくお願い致します!

それでは、また来週お会いしましょう!

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