もしもセイバーのマスターがソードアートオンラインに異世界転移したら? 作:雪希絵
最近やたらとオロナミンCが美味しい雪希絵です
疲れてるんですかね……?
今回、例によってかなり話が飛びます
そして、とうとう皆様お馴染みの話に入っていきます
それでは、ごゆっくりどうぞ!
あれから随分時が経った。
一体どれだけの人が犠牲になったのだろうか。
一体どれだけの人が泣き叫んだのだろうか。
それでも、彼らは戦い続けている。
己の命のため。
自らの願いのため。
何よりも、この世界から解放されるために。
VRMMORPG『ソードアート・オンライン』サービス開始より約二年。
現在の階層、第七十四層。
物語は、大きく動き出す。
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「おろ?」
迷宮区からの帰り道。
立香は不意に立ち止まって、ある方向を凝視する。
「どうしました?先輩」
それに気がついたマシュが、一緒に立ち止まる。
「しっ……」
唇に指を当て、立香は鋭く息を吐く。
「……あれ」
そして、自分が見ていた方向を指さした。
そこには、ウサギに似た白色のモンスターがピョンピョンと飛び回っていた。
「あれは……『ラグーラビット』……でしたか?」
マシュがそう言うと、アルトリアが音こそないが凄まじい勢いで振り返る。
『ラグーラビット』は、SAOでS級食材と呼ばれる程の美味らしい。
食べたことなどないので分からないが、そんな食材をアルトリアが逃がすわけが無い。
「アーチャー!」
「小声で叫ぶとは器用だな……」
ため息をつきながら、エミヤは黒弓と矢を投影して構える。
ギリギリ、と弦が音を鳴らす。
ラグーラビットは相変わらずピョンピョンと縦横無尽に飛び回り、どこに飛ぶかも分からない。
だが、一流の弓兵にとって、そんなものは関係ない。
「……しっ!」
短い気合いと共に、矢が放たれる。
それは音もなく真っ直ぐにラグーラビットに向かい、深々と突き刺さる。
そして、ラグーラビットはパタリと倒れた。
「よっし!」
「やりました!」
「流石です、アーチャー!」
先程までのラグーラビットのように、ピョンピョンと飛び跳ねる女性陣。
早速立香が回収し、アイテム欄に放り込む。
「これでよし!早速帰って調理して食べよう!」
「はい!」
スキップしながら、立香とアルトリアは街の方へと急ぐ。
「……食べ物のことになると、やはりアルトリアさんは……その、素直になりますね」
「オブラートに包む必要はないぞ、マシュ。彼女は単純に、食いしん坊なのだ」
苦笑いのマシュに対し、エミヤはため息をつきながらそう言った。
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「どうせなら、アスナとエミヤ二人に作って貰わない?確実に超美味しいよ」
「賛成です!」
街に到着した。
今まで先行していた立香の一言に、アルトリアが即座に同意する。
「んじゃあ、そうと決まれば早速アスナの家へGO!」
「はい!」
流れるような動作で、転移門に飛び込んで行った。
「……行きましょうエミヤさん」
「……私は、あの子の育て方を間違えたのだろうか……」
「エミヤさん。色々と認識が間違っています、しっかりしてください!」
半ば狂いかけているエミヤを揺すりながら、マシュは転移門へと急いだ。
通いなれたアスナの家に到着すると、いつもの如く扉をノックした。
「……はーい」
しばらくして、アスナが扉を開けて出てきた。
「やっほー、アスナ。こんばんは」
「立香ちゃん!こんばんは。どうしたの?」
「ん、ちょっとお願いが……って、あら?ひょっとして料理中?」
私服姿でエプロンを身につけているアスナに、立香はそう言った。
「うん。今始めたところだよ」
「そっか。じゃあ、ついでにこれも調理して貰えない?」
「え?どれ?」
「まーまー。とりあえず中に入れてよ」
「あ、うん。どうぞ!」
「お邪魔しまーす」
カルデア組が全員家の中に入ると、
「ありゃ?キリト」
「リツカ?それにアルトリア達も。どうしたんだ?急に」
そこにはキリトがいた。
「いや、私はちょっと食材を調理してもらおうと思ってさ」
「食材?」
「そう。これ」
言いながら立香はアイテム欄を操作し、先程捕らえた食材を取り出した。
「はいこれ」
「「…………え?」」
短く声を出し、顔を見合わせる二人。
「な、なぁ、リツカ?これってひょっとして……」
「うん、ラグーラビット」
えへん、と胸を張りながら立香は頷く。
ラグーラビットは相当に美味な分、遭遇率も桁違いに低いレアモンスターだ。
オマケに、かなり逃げ足が早い。
発見し、捕まえたともなれば、威張りたくなるのも当然だ。
「……どしたの二人とも」
硬直する二人に、立香が目をぱちくりしながらそう言う。
「「……ふふふっ」」
すると、二人は唐突に吹き出した。
大きくはないがしばらく笑い続ける。
「あの、お二人共……?」
「あ、違うの。ちょっと、こんな偶然あるんだなぁって」
「まさか、一日に二人がラグーラビットを捕らえた上に、それが知り合い同士なんてな」
「ん……?ということは、まさかキリトも?」
アルトリアの問いには答えず、アスナはキッチンに向かう。
そうして持ってきたのは、立香が持っているものと同じラグーラビットの肉だった。
「……あらま」
「今からこれでシチューを作るところだったんだ。立香ちゃんの捕ってきたラグーラビットも使って、どうせならみんなで食べない?」
「どうかな?みんな」
アスナの提案に、立香が三人の方を振り返る。
「私は構わないぞ。作りがいがありそうだしな」
「私も良いと思います。気の合う仲間との食事は楽しいものですし」
「私もアルトリアさんに賛成です」
「じゃあ決定!よろしくね、アスナ、エミヤ」
そうして、料理人二人はキッチンに入って行った。
そう時間が経たないうちに、部屋の中に美味しそうな香りが充満する。
やがて、
「出来たよー」
そんなアスナの一声と共に、人数分のシチューが運び出される。
ブラウンルーの中に、ゴロゴロと大きな肉が入っており、白いミルクがマーブル模様を描いている。
「おぉ……!」
「あ、やばいヨダレが」
待ちきれないとばかりに全員席につき、いただきますももどかしいと言わんばかりに、シチューにスプーンを差し入れる。
大きな肉を一口頬張ると、口の中で濃厚な油とルーの風味が広がる。
噛むたびに肉汁が溢れ出し、このまま永遠に飲み込まずにいたいと思うほどだった。
そうして、五人はほとんど喋ることすらなく、一心不乱にシチューを食べ続けていた。
お読みいただきありがとうございました!
さて、これはアニメでも原作でもお馴染みのシーンですね
少しばかり改変しましたが、いかがでしたでしょうか?
それでは、また来週お会いしましょう!