もしもセイバーのマスターがソードアートオンラインに異世界転移したら? 作:雪希絵
ついつい更新日を忘れてしまっていた雪希絵です
いや、いつかやらかすのではと思っていましたが……23時5分に気がつきました
そして、残り50分程で書きました
そんな紙クオリティでよろしければ、ごゆっくりどうぞ
「きゃっ!」
「うおっ!」
見事にお尻から落下し、アスナとキリトは短く悲鳴を上げた。
「よいしょっと……アスナ、大丈夫か?」
「う、うん。平気だよ」
痛みはないので、二人はすぐに立ち上がる。
辺りを見回してみると、
「ひぃ……!」
アスナが短く悲鳴を上げた。
カタカタと震えるアスナの様子から、キリトがその心情を察する。
まず、この場所は明かりが限りなく少ない。
もちろん、先も見えないほどというわけではないが、迷宮区よりもかなり暗い。
加えて、内部の構造が不気味だ。
迷宮区はいかにも古い城といった感じで、蜘蛛の巣やら妙な絵やらがあり、不気味さを駆り立てていたが。
「……ほとんど、何もないな」
周囲に、そんな類のものは見当たらない。
ほとんど先の見えない、一本道が続くだけである。
それが逆に不気味で仕方ない。
アスナが悲鳴を上げるのも当然と言えば当然だった。
「な、なぁ、アスナ」
「ひゃいぃ!?な、なに……?」
「あ、うん。ここどこかなぁ……って……」
ちょっと声をかけただけでこの驚きようである。
気の利いた言葉でもかけてやれば良いものを、自称コミュ力レベル1のキリトはどうしたら良いかわからないのだ。
「た、たぶん……リツカちゃんが一人で走破してきた安全地帯……じゃないかな?」
「あー……なるほど。ってことは、ゴールまで行かないと出られないのか……」
「いやぁぁぁ……!」
「お、落ち着けアスナ……」
キリトは前に進もうとするも、アスナがなかなか動き出せない。
「……アスナ。その、見えなくなると危ないから……」
「え……?」
若干恥ずかしそうにしながら、キリトはそっぽを向く。
「……その、コートの裾を掴んでて、もらえないか?」
しかし、ここで手を繋ごうとしないヘタレである。
「……う、うん?」
よく分からない提案に、アスナも思わず首を傾げるが、一応その通りにする。
「よし、行こう」
「うん……!」
覚悟を決めて一歩踏み出す。
心もとなさ過ぎる明かりを片手に、キリトが先導して歩き始めた。
直後、
「……キミハドコカラキタノ」
アスナの真横に、顔が現れた。
それは闇に浮かぶように、
もはや黒い穴だけと化した眼窩と口は、笑み浮かべているように見えた。
「……あ、あ……あ……」
状況が整理できず、アスナは硬直する。
「ドコカラキタノ」
「……アスナ!」
繰り返される言葉に、振り返って硬直していたキリトが強く手を引く。
「あ……!」
思わずアスナの鼓動が跳ねる。
だが、
「ドコカラキタノドコカラキタノドコカラキタノドコカラキタノドコカラキタノドコカラキタノドコカラキタノ」
そんなものかき消してしまう程に、背後から特段の恐怖が迫ってきていた。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「こ、これは流石に俺も怖い!!」
お互いの高い敏捷値を極限まで活かし、全力で走る。
ちなみに、立香はこの顔が現れた時はペタペタと触りながら、
「わー、冷たー。というか、ぜんっぜん触り心地良くないね」
と、呑気な感想を言っていたという。
随分と走り、どこをどう曲がったのかも分からなくなってしまったころ。
二人はようやく立ち止まった。
「ぜー……ぜー……!」
「はぁ……はぁ……!」
荒く息を吐き、壁に持たれる。
しばし息を整えた後、
「「あ……」」
繋いだままだった手に、同時に気がついた。
「あ、ご、ごめん!」
キリトは反射的に離そうとするが、
「ま、待って!」
アスナがぐっと握り返す。
「アスナ……?」
アスナの顔を見ると、耳まで赤く染まっていた。
「……こ、このまま、繋いでても……いい?」
「え……?あ、うん……。う、うん」
「こ、怖いから!怖いからだよ!?」
「う、うん……」
何度も頷くキリト。
「……その」
「な、なに?」
「一応……ありがとう……」
「お、おう。どういたしまして」
そうして、二人は手を繋いだまま歩き始めた。
その後も、モンスター達の猛攻(?)は続く。
行く先行く先で、次々に現れては驚かし、そして消えていく。
しかし、慣れたのか、はたまたそれ以外の何かによるのか。
アスナも、だいぶ落ち着いていた。
一方キリトは、
(落ち着かない……!)
別の意味でドキドキしていた。
手から感じるアスナの体温、柔らかな手自体の感触。
必然的に距離も近くなっているため、キリトは緊張しっぱなしである。
そんなこんなで、15分程歩いたころ。
「あ!キリトくん、あれ出口じゃない?」
「本当だ!扉がある!」
古ぼけたデザインで、まるで習字で書かれたように『出口』と書かれた扉。
どこからどう見ても出口には間違いなかった。
「よし、行こう、アスナ!」
「うん!」
しかし、二人は気がついていなかった。
これだけ驚かすこのお化け屋敷が、こんなに簡単に出してくれるわけがないということを。
「あれ?開かない……」
「ど、どういうことだ?」
ズル…………ッ!
「ん?」
まるで思い何かを引きずるような音が聞こえた。
ズルズル………ッ!
「あ………あ………!」
「な………んだよ……これ……」
絶句する二人の前には、肉塊が転がっていた。
赤色のブニブニとした見た目。
それは、一定の距離まで近づくと。
「キャ…………」
一斉に大量の目を開き、
「キャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャ!!!」
奇妙な声で高笑いし始めた。
「ヒッ………………!」
「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!?」」
飛びかかってくるそれに、二人は大きな悲鳴を上げる。
「出して!出してよぉぉぉぉおおお!」
「くっそ……こうなったら蹴破り……!」
ガチャガチャと扉を揺すり続け、その化け物が二人に着弾する寸前。
「「うわぁ!?」」
唐突に扉が開き、二人は外に投げ出された。
「おっかえりー!二人とも」
そこには、ニコニコとしている立香と、心配そうなサーヴァント組の姿が。
「どうだった?楽しかった?」
「「そんなわけないでしょ!」」
「あら、息ぴったり」
ほほほ、と聞いたことのない笑い方をする立香。
「こんなの楽しいわけないよ!どうしてあんなところに私を放り込んだの!?」
「いやいやー、出来心で」
「幾ら何でもタチが悪すぎる……」
涙目のアスナ怒鳴られ、立香はニコニコと返す。
そして、二人を指さしながら。
「そーんな体勢で抱き合ってる二人に言われても、説得力なんかないよー?」
ニヤー、と口の端を吊り上げながら、立香はそう言う。
「「……………!?」」
二人は今、キリトの腕の中にアスナがすっぽり収まる形で、抱き合っていた。
倒れた拍子に、どうやらそうなったらしい。
「お二人共、随分お楽しみのようですねぇ?うっふっふっふ」
「「ち、違ーーーーーう!!!」」
二人の大きな否定の声が、迷宮区にコダマした。
お読みいただきありがとうございました!
二人を上手くイチャイチャさせられたでしょうか?
時間も時間なので、恐怖描写もラブラブも紙クオリティはご容赦ください
それでは、また来週お会いしましょう!