もしもセイバーのマスターがソードアートオンラインに異世界転移したら? 作:雪希絵
メモ消失事件から立ち直れていない雪希絵です
泣いたのは随分久しぶりです
そんなテンションで書き上げたもので宜しければ、ごゆっくりどうぞ
「よっし、次いってみよー!」
まだまだゲームは続く。
アルトリアは未だに顔を真っ赤にし、キリトとエミヤは執念に燃えている。
マシュとアスナは、これから先に何が起こるかという不安感でいっぱいである。
くじが再び用意され、全員一斉に引く。
1番:アスナ
2番:エミヤ
3番:立香
4番:キリト
5番:アルトリア
王様:マシュ
「わ、私が王様ですか!?」
唐突に王様役を割り振られ、マシュは大いに困惑する。
「あ……えーっと……」
特にお題を考えていた訳でもないので、どうしたものかと悩んでしまう。
(ですが、あまり考えてお待たせしてしまうわけには……。今この場にふさわしいのは、盛り上がる行動。となれば……!)
「に、2番の方と5番の方でハグしてください!」
意外にも大胆な命令に、全員が顔を見合わせる。
「2番は私だ。5番は誰だ?」
見回しながら尋ねるエミヤに、アスナと立香とキリトが首を振る。
「…………わ、私……です……」
「なぁ……………!?」
ガチガチに固まるアルトリア。
それを聞き、エミヤも驚愕の表情を浮かべる。
「!? あ、わ、そ、その!す、すみません!?」
色々とわだかまりのある二人を指名してしまい、マシュが全力で頭を下げる。
「あ、あの、今から変更しても……」
「ダメー!」
変更も中止され、いよいよ後がなくなる。
「……ど、どうする、セイバー」
「そ、そそそそ、そう、ですね……。少なくとも、マスターはやらないと収まらないかと……」
「間違いない……」
小声で相談し、ため息をつく。
「セイバー、失礼するぞ」
「ど、どうぞ」
双方ガチガチだが、意を決して距離を詰める。
最初にエミヤが、おずおずとアルトリアの背中に手を回す。
ギリギリ触れるか触れないかくらいの距離感。
続いて、アルトリアもそれに習う。
極力離れてはいるが、お互いの呼吸は感じる。
もはや、これがゲームとは思えないリアルさだ。
数秒後、
「………っ! も、もういいでしょう!?」
「そ、そうだな!」
反発しているかのような勢いで、二人は離れた。
「本当に、本当に申し訳ありません、お二人とも……!」
土下座しそうな勢いのマシュを、立香がどうにか宥める。
(まあ、あの二人の関係にはあんまり手出しちゃいけないよねぇ……)
とはいえ、マシュにも悪気はない。
今回は運が悪かっただけだ。
「さて、次行こうか!」
クジを再びシャッフル。
「せーのっ!」
1番:立香
2番:アスナ
3番:アルトリア
4番:マシュ
5番:キリト
王様:エミヤ
「ふむ、私の番か」
全員が息をつく。
エミヤなら、唐突に変なことを言ったりはしないだろう。
「2番に一発芸でもしてもらおうか」
「わ、私が!?」
(そう思っていた時期が私にもありました)
一発芸はまだいいだろう。
しかし、それがまさかアスナに当たるとは。
「え……ど、どうしようキリトくん……」
「お、俺に聞かれてもなぁ……」
半分涙目のアスナに、キリトが困ったように返す。
「すまない、まさかアスナに当たるとは……」
エミヤも謝罪するが、変更が効かないのは先程のことでよく分かっている。
酔っ払いほど面倒なものも中々いないことを学んだ。
「と、とりあえず、歌います!」
恐らく、もうやけだろう。
アイテム欄からマイクを取り出し、歌い始めた。
曲名『motto☆派手にね!』(アニメ『かんなぎ』より)
「…………もうダメ。穴があったら入りたい」
実に見事に歌い上げた後、アスナはへなへなと崩れた。
「アスナ、お疲れ……」
「うん……」
労うキリトに、アスナが少しだけ頷いた。
「でも、すごくお上手でしたよ、アスナさん」
「関心しました」
「あ、ありがとう……」
微妙な表情でお礼を言うアスナ。
「さてさて!次行こうか!」
「一体いつまでやる気だマスター」
どこまで続くかわからない王様ゲームは、結局夜遅くまで続いた。
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「ふぅ」
解散した後、いつもの宿屋に戻ると、立香は一人窓際にいた。
先程のまでの酔いは醒めたのか、いつも通りの様子である。
「まったく、マスターも食えないな」
そこへ、エミヤが話しかけた。
「ありゃ、もう寝たと思ってたのに」
「マスターが散々やらかしたことを思い出してしまってな。とても眠れそうにはないよ」
「あはは、ごめんごめん……」
口調こそ軽いが、本当に申し訳なさそうにしている。
「それにしても、マスターも回りくどいことをするな」
「んー?何が?」
「アスナとキリトのためにやったのだろう?今回のことは」
エミヤがそう言うと、立香はニコリと微笑む。
「……バレてたか。さすがエミヤ」
「何となくだがな。だが、なぜ急に?」
「だって、もどかしいんだもん、あの二人」
エミヤが尋ねると、立香はさも当然といったように答える。
「お互い好意があるのは明らかなのに、どうも近づかないんだよね……。まあ、だからといって、当事者以外があーだこーだ言うものでもないんだけど……」
「それはそうだな。それで、今回のような間接的な手段に出たのか」
「まあね。結局上手くいかなかったけど」
あはは、と苦笑いする立香。
結局、酔っ払って見えたのも、大部分は演技だったのだろう。
多少はテンションハイになっていたかもしれないが。
「とにかく、これからは見守ることにするよ。ただの勘だけど、あの二人なら幸せになりそうな気がする」
「ならば、将来安泰だな。なにせ、マスターの勘はよく当たる」
「ん、だといいね」
お互いに微笑み合い、二人はしばらく窓の外を眺めていた。
お読みいただきありがとうございました!
次回からは、ちゃんとSAO攻略に戻しますので、ご安心ください
それにしても、こういった日常の描写は難しいですね
特に、全員に役割を回すのが大変です
書いてて楽しいのは、間違いないですけども
それでは、また来週お会いしましょう!