もしもセイバーのマスターがソードアートオンラインに異世界転移したら? 作:雪希絵
誰が登場するのかお楽しみに!
「おーっ!さすがは立香!もうわかったのかい?」
自信満々な立香の一言に、ダヴィンチは目を輝かせて反応する。
特異点のたびに、鋭い洞察力で真実を導き出してきた立香に、ダヴィンチは一目置いているのだ。
「まあ、あくまでも予想だけどねー。たぶん、ここはゲームの中だよ」
「ゲームの……」
「中……?」
アルトリアとマシュが首を傾げる。
そんな中、ダヴィンチだけが目をキラキラとさせる。
「ほうほう!その心は?」
「理由は三つ。一つ目、このステータス画面だよ」
言いながら、立香は目の前のステータス画面を指さす。
「なんですか……?この黒い画面は」
「真っ暗ですね」
アルトリアとマシュは、立香に肩を(必要以上に)くっつけて、そのステータス画面を覗きこむ。
しかし、二人にはただ黒い画面にしか見えなかった。
「ありゃ、私にしか見えないのかこれ。えーっと……どうにか見えるようにする方法は……」
困り果てた立香は画面のあちこちを触る。
そんな時、
「それなら、画面の上の方に全表示モードがあるはずだよ」
と、不意に横から声がかかった。
「「「!?」」」
その瞬間三人は一斉に真横に飛び、声がした方を向いて身構える。
「誰っ……!?」
眼鏡の奥の瞳を鋭く細め、立香はその人物を睨みつける。
だが、
「か、可愛い……!!」
すぐに警戒を緩めて、目をハートマークにする。
そこにいたのが、絶世の美少女だったからだ。
「ご、ごめんね!びっくりさせるつもりはなかったんだけど……!そ、その、一応警戒を解いて貰えると助かるなー……!」
「いえ……もう……大丈夫です……。マスターがすでに骨抜きですので……」
ため息をつきながら、マシュは盾を下ろす。
ご察しの通り、立香は凄まじいほどに美少女に弱い。
単純に女好き(自分も女だが)というだけなのだが、本人も女の子にモテるため、拍車がかかりまくった。
結果出来上がったのは、『美少女は正義!マジ美少女Love!』とか叫び出すようなやつだった。
そんな立香の前に現れたのは、長い茶髪が特徴的な美少女だ。
服装は全体的に白色だが、所々に赤の入り、まるで騎士のように見える。
「先程は失礼しました。なにぶん、ついさっき襲われたばかりなもので」
「ううん、気にしないで。私も急に話しかけちゃってごめんね」
アルトリアが武器を下ろし、その美少女騎士に謝罪する。
「や、やばい!甲冑美少女アルトリアと騎士服美少女のコラボ……!はぁはぁ」
そして、その間に鼻息を荒くしながら入る立香。
これがカルデア唯一のマスターか……とロマ二が頭を抱えたことも露知らず、立香は美少女騎士に詰め寄る。
「あなた、名前は!?私はリツカ!!」
「え、えっと……『アスナ』だけど……」
「アスナね!よろしく!末永く!」
「えっ?末永くはもう確定なの?」
「他にも色々教えて欲しいな!スリーサイズとか、スリーサイズとか、スリーサイズとか!」
「スリーサイズしかないよね? それ」
怒涛の勢いでまくし立てる立香に、アスナは目を白黒させながらも答える。
恐らく、根が真面目なのだろう。
しかし、このままにもしておけない。
それを見兼ねたマシュが立香の脇に手を入れ、羽交い締めにしてからアスナから引き剥がす。
「先輩!アスナさんが困ってます!それに、初めて話の通じそうな人に会ったんですから、情報を集めるチャンスです」
「お、それもそうだね。いやー、テンション上がっちゃって気づかなかった!」
若干名残惜しそうにアスナから離れ、立香は表情を整え、アスナに向き直る。
「こほん。さて、気を取り直して、自己紹介続行だね。私の左にいるのがアルトリア。私の右にいるのがマシュだよ」
「「よろしくお願いします」」
「うん、よろしくね。それで、リツカちゃんの聞きたいことって何?」
言いながら小首を傾げるアスナに、『可愛いぃぃぃぃぃ!!』と叫びそうになる衝動を抑え、立香は答える。
「えっと、率直に言えば、ここがどこかってこと」
直後、突如として訪れる静寂。
理由は、アスナが口を開けたまま動かなかったからだ。
たっぷり三十秒は固まったあと、アスナはようやく口を開く。
「……まさか、ここまで来てどこかわからないなんて人がいるなんて……」
「? どういうこと?」
「どういうことも何も無いよ。ここは、VRMMORPG『ソードアートオンライン』でしょ?そんな当然のことも、忘れちゃってるの?」
「……なるほど、そう来たか……」