もしもセイバーのマスターがソードアートオンラインに異世界転移したら? 作:雪希絵
何としても水着アルトリアオルタが欲しい雪希絵です
そのために貯めた石と呼符です
爆死しないことだけを祈ります
さて、やって来ました更新日
タイトルから分かってしまう方もいるかもしれませんが、ごゆっくりどうぞ!
「よっこらせ」
男の腕を掴み、自分に引き寄せながら蹴りを放つ。
鳩尾に蹴りがめり込み、強烈な音を鳴らして男が吹き飛ぶ。
これで、ラフコフ全員のHPがレッドゾーンに到達した。
それでもまだ続ける気なのが実に狂っているが、それも時間の問題だ。
「────まだやるの?」
ため息をつきながら、立香は言う。
ところどころ赤い色の傷がついているが、HPにはまだまだ余裕がある。
「………ちっ」
彼らは困惑していた。
今まで、毒や麻痺などは、殺人の常套手段として頻繁に使ってきた。
だからこそ、このSAOでの毒の致死量も、麻痺するまでに必要な量もよく知っている。
だが、立香には既にその数倍の量の毒が回っているはずなのに、本人はびくともしない。
「獲物を途中で逃すのはポリシーに反するんでな」
「あっそう。なら仕方ないね」
納得したように頷き、立香は再び構える。
えらく軽い態度な気もするが、その目は間違いなく本気の目だ。
立香に合わせ、ラフコフパーティーも構える。
そこへ、
「オイオイ、随分楽しそうじゃあねぇか」
軽薄な口調で、誰かが割り込んで来た。
フードを深く被り、腰に巨大な鉈のような刃物を吊るした、不気味な男。
「──────『PoH』……!」
「プー?」
キリトの呟きに、立香が反応する。
「おっと、そこにいるのは黒の剣士か。って、オイオイ、閃光様までいるじゃねぇかよ」
すたすたと男達の間を歩き、だんだんと立香達の方に近づいてくる。
「ストップ」
あと数メートルというところで、立香が静止をかける。
「それ以上近づくなら、容赦しないよ」
「………ヒュゥー♪」
しかし、PoHは茶化すように口笛を吹き、歩み続ける。
さらに一メートル、距離が近づいた時、
「────警告はしたよ」
立香は全力で地面を蹴った。
目にも留まらない、神速の踏み込み。
究極の武技を持つ、李書文直伝の歩法。
その場にいる誰もが、反応出来るはずなど無かった。
しかし、
「────っ」
立香は、拳を止めざるを得なかった。
「ヒュウ、あぶねえあぶねえ。まさか、ここまでとは」
紙一重で、立香の首筋に武器が止まっている。
立香の拳もPoHの目の前。
お互いの攻撃が、お互いの致命傷になり得る位置だった。
(……あの李書文直伝の動きに、ついてくるなんて……)
しばらくそのまま硬直していたが、不意に、
「ま、楽しみは後に取っておくもんだ。じゃあな」
そう言って、武器を下げる。
そして、PoHはラフコフの全員を連れて、さっさと迷宮区の奥に消えて行った。
見えなくなってからも、立香はしばらくその方向を睨みつける。
(……大丈夫そう、かな)
そう判断し、四人の方に歩み寄る。
「みんな、平気?」
「あ、ああ……何とか動ける」
「私も、もう大丈夫」
キリトとアスナは立ち上がり、そう言う。
「良かった。アルトリアとマシュは?大丈夫?」
立香が二人に声をかけるが、答えはない。
「……どうしたの?」
「………マスター、すみませんでした」
再度声をかけると、マシュが唐突に頭を下げた。
「私の役目は、マスターを……先輩を守ることなのに、私はそれを果たせませんでした。あまつさえ、先輩に戦わせることになってしまうなんて……」
「マシュ……」
マシュの瞳には、大粒の涙が溜まっている。
溢れ出し、それは地面を染め上げていく。
涙声で、マシュは続ける。
「私は、先輩のサーヴァント失格です。こんなことなら……誰か」
「『誰か他にもっと強力なサーヴァントに来てもらえば良かった』?」
「えっ……?」
言いかけたマシュの言葉を、立香が拾う。
そして、マシュの両頬を手で包む。
「あのねぇ、マシュ。今さっき自分で言ったでしょ。『私は先輩のサーヴァント』って」
「は、はい……」
「じゃあ、なんで私から離れるのさ」
「えっ、だ、だって私は……」
何か言おうとするマシュに、立香は顔を揺することで邪魔をする。
「わぶぶ───!せ、先輩……?」
意図が読めず、マシュが困惑する。
立香はそんなマシュの瞳をまっすぐ見据え、口を開く。
「だってもなにもないの!マシュはもう、私の相棒なんだから、勝手に離れるなんて許さないから!」
「え、えぇ……?」
「それに」
一拍おき、立香が続ける。
「マシュは、本当に私のサーヴァント辞めたいの?」
「そ、そんなことはっ!」
「だったらそれでいいよ」
「えっ……?」
頬から手を離し、今度は頭を撫でる。
「辞めたくないなら辞めたくないでいいの。責任とか役目とか、そんなの関係ない。私はマシュと一緒にいたいから。マシュは違うの?」
「…………違いません。辞めたくないです。私も、先輩と一緒にいたいです!」
「うん、よろしい」
「はい!」
マシュは涙を拭い、立ち上がって笑った。
そんなマシュに満足そうに頷き、立香はアルトリアの方を見る。
「ほら、アルトリアもだよ!負けたことにいじけてないで、立った立った!」
「ですが、マスター……」
「それとも何?私のアルトリアは、一回負けたことくらいで挫けるような、情けないサーヴァントだったの?」
「むっ!そんなことは有り得ません。敗北も糧です。次こそは、奴らに鉄槌を与えてみせます」
「よろしい。それでこそアルトリアだ」
立香は本当に、サーヴァントをやる気にさせるのが上手い。
「ふふっ、仲良しだね。三人とも」
「ま、色々あったからね」
「今度、良かったら聞かせてくれよ。面白そうだ」
「いいよー。徹夜覚悟してね」
「うげっ、マジかよ」
先程死にかけたというのに、五人の雰囲気は明るかった。
それこそが、彼女達の良いところかもしれない。
「さて、そろそろ始めようか」
ひとしきり笑った後、立香が真剣な顔でそう言った。
「何をですか、先輩?」
「マシュ。盾用意して」
質問するマシュに指示を出し、立香はアイテム欄を探る。
「……まさか先輩」
「うん、そのまさか。今から、もう一人サーヴァントを呼ぼう」
そう言い、立香がオブジェクト化したのは、一枚の金色の札。
俗に言う、『呼符』というやつだった。
お読みいただきありがとうございました!
来週はいよいよ、新サーヴァントの発表です
まだまだ投票を受け付けていますので、どんどん投票してくださいね!
それでは、また来週お会いしましょう!