もしもセイバーのマスターがソードアートオンラインに異世界転移したら? 作:雪希絵
マイブームはお菓子作りな雪希絵です
得意なお菓子はスノーボールです
さて、やって来ました更新日!
ごゆっくりどうぞ!
「はあぁぁぁぁぁ!!」
「おおぉぉぉぉぉ!!」
「やあぁぁぁぁぁ!!」
「たあぁぁぁぁぁ!!」
重なり合う、四人分の気合い。
言うまでもなく、アルトリア、キリト、アスナ、マシュの四人である。
対して、同じ数のモンスター達は、心なしか慄いているようにも見える。
ジェットエンジンのような轟音と、魔力放出の轟音が重なり合い、より強烈な音が響く。
二つの突進ソードスキルは、見事にそれぞれの敵を穿つ。
ポリゴンが飛散し、発する光が二人を照らす。
一方、マシュとアスナはコンビネーションで戦う。
二体のモンスターをマシュが弾き飛ばし、敏捷力を活かしたアスナが反対に回り込む。
水色のライトエフェクトを纏い、アスナが飛ぶように突進する。
モンスターをまとめて貫き、爆発四散させる。
「………………」
そんな光景を、立香はかれこれ数十分眺めていた。
ともかく、四人の強さは圧倒的だった。
そもそも、偶然とは思えない程に編成のバランスが取れている。
大盾を装備したマシュが最前衛、そこにキリトとアルトリアが切り込み、アスナが場合に合わせて臨機応変に戦う。
加えて、個々の技量も相当に高い。
先程からモンスターを蹂躙出来るのも当然と言えば当然だった。
「……何この無双ゲー」
苦笑いどころか呆れ顔すら通り越し、完全に無の表情である。
ちなみに、今さっき大量のモンスター達に通路で挟まれたところだ。
しかし、そんな状況もなんのその。
そして、モンスターをちぎっては投げ、ちぎっては投げる。
もちろん、主に戦ったのはアルトリアではあるが、それでも大したものだ。
「戦闘終了、お疲れ様でした」
「うん、お疲れ様」
「恐ろしい程サクサク進んだな」
普通のプレイヤーなら死を覚悟するはずの数がいたはずだが、それら全てを倒した四人はケロッとしている。
「やっぱり、パーティーのメンバーが増えるだけで安心感が違うね。二人とも強いし」
「いえいえ、お二人こそ凄いです」
「そうですね。並び立って共に戦っていると、強く実感します」
「さて、それじゃあ、先に進むか。マッピングはまだ進んでないみたいだしな」
「マスター、行きましょう」
振り返ったアルトリアがそう言うと、座り込んでいた立香は立ち上がって頷く。
(これ絶対ゲームバランスぶっ壊れてるよね)
頭をポリポリと搔き、そんなことを考えながら。
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迷宮区をさらに奥へと進むと、そこには多少開けた場所があった。
アスナ曰く、安全地帯というものに似ているらしい。
安全地帯とは、迷宮区内ではあるがモンスターがポップしない場所のことを指す。
しかし、キリトとアスナは警戒を解かない。
「なんか……安全地帯とは違うんだよな」
「うん、私もそう思う」
「私達には全くわからないのだけれど」
剣の柄に手を添える二人。
そして、その予感は的中することになる。
突如、部屋が赤く染まり、アラートのような音を鳴らし始めた。
「!?」
「マスター、私の後ろに!」
「キリト君!」
「ああ、間違いない!罠だっ!」
全員武器を構え、マシュは立香を庇うように背後に押しやって立つ。
変化は、部屋の中央に現れた。
ボスの時とよく似た、ポリゴンが積み重なって形を成していくエフェクト。
無論、ボスほどのサイズはない。
だが、それでも、ほかのモンスターよりは幾許か大きい。
「何これ、中ボスってやつ!?」
「いや、中ボスはボスと一緒に出てくるのが普通だ!これはどうやら、単純に強力なモンスターに出くわしたみたいだな」
「みんな、連携は崩さないで!ピンチになったらすぐに撤退!」
「「了解です!」」
話しているうちに、ポリゴンが形を成した。
それは、黒い巨大な木と言えるモンスター。
固有名称『ダーク・トレント』。
ぐにゃぐにゃと蠢く枝を持った、触手と木の中間にいるような生物だった。
「いくぞ!」
「先陣は私が!はぁ!」
気味の悪い咆哮をあげるダーク・トレントに怯みもせずに、斬りかかっていくアルトリア。
流星の如き速度と、それを上乗せされた斬撃。
「ギイィィィィィィィィ」
まともにこれを受け、ダーク・トレントが目に見えて怯む。
「まだまだいくぞ!」
遅れてキリトも飛び込み、ソードスキルを発動。
片手剣四連撃ソードスキル『バーチカルスクエア』。
木の破片を撒き散らしながら、トレントのHPががくんと減る。
「ギイィィィィァァァァ!」
激情したかのように声を上げ、トレントはその無数の枝を広げる。
槍のような鋭さを持つそれは、全員に向かって伸びていく。
高速で飛来するをそれを、
「やっ!」
「えいっ……!」
アスナが神速で切り落とし、マシュが叩き潰した。
枝はあっという間にボロボロになり、トレントを守るものは何もなくなった。
「風よ、舞い上がれ────!」
そこへ叩き込まれる、アルトリア渾身の風王鉄槌。
光り輝くレーザーにも見える一撃、トレントの中心部に打ち込む。
トレントは大きく仰け反り、致命的な隙ができる。
「一斉攻撃!」
アスナの掛け声を合図に、全員がソードスキルを発動。
両手剣ソードスキル『アバランシュ』。
大盾ソードスキル『バスターアサルト』。
片手剣ソードスキル『ヴォーパルストライク』。
細剣ソードスキル『フラッシングペネトレイター』。
デュエルの時にはそれぞれ衝突したスキルが、今度は協力して一体の敵を穿った。
「ギイィィィィィ─────!」
登場の割にはあっさりと倒され、トレントはポリゴンの欠片と化し、ほかのモンスターよりも大きめの爆発を起こして消えた。
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「ふぅ……一時はどうなるかと思ったけど、無事に帰ってこれたね」
強エネミーとの戦いが終わったころ、時刻はいつの間にか夕方。
そこで、続きは明日ということにして、五人は街に帰って来た。
「そうだ。今日も良かったら、ご飯食べていかない?」
手を合わせ、アスナがそう言う。
もちろん全員了承し、アスナの家に向かう。
全員装備を外し、ひとまず家の中で寛いでいると、
「とりあえず、お風呂でも入ろうかなぁ……」
と、アスナが呟いた。
「ほうほう……」
それを目ざとく聞きつけたのは、もちろん立香である。
「ねぇ、アスナ?」
「うん?どうしたの、リツカちゃん」
小首を捻って尋ねるアスナの肩に、立香は満面の笑みで手を乗せる。
ただならぬ空気を感じたアスナは、動揺して口をパクパクさせる。
そんなことはお構い無しに、立香は一言。
「一緒にお風呂……入ろっか?」
最近、真面目な話が多くなってますね
という訳で、次回はご察しの通りの展開になります
それでは、また来週お会いしましょう!