もしもセイバーのマスターがソードアートオンラインに異世界転移したら? 作:雪希絵
極度の甘党雪希絵です
なんならホイップクリーム丸呑みできると思います
さて、今回は説明回となりますので、すでに知っている方はつまらないかと思います
また、FGO本編のネタバレを含みますので、まだ最終章まで終えていない方はご注意ください
それでは、今回もごゆっくりどうぞ!
「ちょ、ちょっと待ってくれ!カルデア?マスター?異世界?どういうことだ!?」
「まあまあ、順を追って説明するから」
混乱するキリトとアスナを、立香はなだめながら説明を開始する。
「……まず、大前提として聞いて欲しいのが、私達はこの世界の人間じゃないってこと」
「異世界から来たってこと?」
「そう。私達の世界にはそういう技術があるから」
「技術?」
「うん。私達の世界には、魔術があるから」
二人は頭を抱えた。
目の前の少女が何を言っているのか、何一つ理解出来ないのだ。
「これは、魔術について説明してからの方が良さそうだね……」
呟き、そして場所を変えることを提案した。
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場所は変わってアスナの家。
全員装備を解除し、お茶を用意して話を再開する。
「まず、魔術に関して説明するね」
お茶を啜って一息つき、立香がそう言った。
「それって、つまり魔法のことなの?」
「うーん。この世界だとあんまり変わらない感じかな?」
「そうだな。少し呼び方が違うだけというか」
「やっぱりそんなものなのか……」
どうしたものかと、立香は首を捻る。
というのも、人理修復やらなんやらに忙しく、魔術に関してそこまで詳しい訳では無いのだ。
「それでは、私が説明します」
そこで、マシュが手を挙げた。
「おおっ!さすがマシュ、頼りになる!」
「あ、ありがとうございます……」
立香のストレートな褒め言葉に顔を赤くしつつ、マシュは咳払いして説明を始めた。
「まず、魔術と魔法は、私達の世界では全く持って違うものです。最初に、それをご理解ください」
二人が頷いたのを確認し、マシュは続ける。
「魔術というものは、あらゆる事象を魔術回路と魔力によって代替するものです」
「魔力はわかるが、魔術回路って?」
「そうですね……。今は、設計図のようなものだと理解してください。例を挙げましょう」
マシュはそこで一息いれ、机に指で空書きしながら説明を続けた。
「例えば、火を起こすとしましょう。キリトさんとアスナさんだったら、どうしますか?」
「うーん……。場合によるけど、ほとんどはライターかな?」
「そうだな。それかマッチ」
「それです」
欲しい答えを出した二人に、マシュは満足そうに微笑んで頷く。
「ライターの場合、『ライターオイルという原料に、火花を散らすことによって引火させ、それを燃焼させて火を発生させる』ということになりますね?」
「うんうん」
「たしかにそうだね」
「これを魔術で考えると、『魔力がライターオイル』『火花を散らす機構が魔術回路』『火が魔力と魔術回路によって発動した結果』という形で分けることが出来ます」
それを聞いて二人はしばらく考え、
「つまり、魔力という原料を使って」
「魔術回路という設計図で、色々なものを作ることができるのが魔術」
「「ってことになるのかな?」」
と、揃って言った。
「息ぴったりだね、二人とも」
苦笑いの立香が突っ込むと、二人は互いの顔を見合わせて少し顔を赤くした。
「まあ、魔術に関してはとりあえず分かったよ。それで?」
キリトが慌てて先を促すと、マシュはそれに従った。
「はい。つまり、魔術というのは現在科学で行っていることを、魔力で行おうというものだと言えます」
「ん?それじゃ、魔術は単純に万能なだけで、場合によっては科学の方が便利じゃない?」
「その通りです。現在では、魔術が科学の後追いをしている状態ですし」
「お寿司」
「マスター、少し空気を読みましょう」
「アルトリアに久しぶりに怒られた……」
何故か少々嬉しそうな立香を一旦放置し、話は先に進んでいく。
「ってことは、魔法は……」
「科学じゃ再現できないもの?」
「さすがです、お二人共。魔法というものは、科学では出来ないことを行うものです」
「なるほど……」
納得したように何度も頷く二人。
「例えば、どんな魔法があるの?」
「最も有名なものでいうと、『並行世界の運営』でしょうか」
「なんとなく想像できるな」
「はい。名前の通り、並行世界を渡り歩くことができるものです。あとは……」
と、そこまで言いかけて、マシュは首を横に振る。
直前にマシュが見ていたのは、アルトリアの方だ。
アルトリア、つまりは逸話上の『アーサー・ペンドラゴン』が持っていた聖剣『
『
これも、魔法の領域にある究極の宝具である。
各種五代魔法すらも防ぎきる、桁外れの防御性能を持つものだが、アルトリア自身はそれを所持してはいないのだ。
「厳密には魔法ではありませんし、言うべきではないかも知れませんね……」
「どうかしましたか?マシュ」
「いえ、なんでもありません、アルトリアさん。私からの説明は以上です」
説明を終え、マシュはお茶を飲んで、ほっと息をついた。
「というわけで、私達はそんな魔術のある世界から、その技術を使ってこの世界に来たんだ」
「だから最初は何も知らなかったんだね」
「そういうこと」
これで、キリトとアスナに取っての一つ目の疑問が氷解した。
「それじゃあ、マスターってなんだ?」
話は次へと進んでいく。
「マスターっていうのは、サーヴァントっていう使い魔を使役してる魔術師のことだよ」
「サーヴァント?」
「大昔の偉人の魂に仮の肉体を与えて、戦うことができるようにした感じ?」
「一から説明すると、長いですからね……」
だが、二人はイマイチ納得がいっていない顔をする。
「んー、じゃ、改めて二人に自己紹介してもらおうかな」
見てもらった方が早いだろうと、立香はアルトリアとマシュを立たせる。
「じゃあ、よろしく」
「「はい」」
これから何が起こるのか、キリトとアスナは息を呑む。
直後、風が吹き荒れる。
渦中にいるのは当然、アルトリアとマシュ。
数秒後、強い風が晴れたかと思うと、二人の姿は大きく変わっていた。
「!?」
「あ、あれ……?いつの間に……」
驚く二人。
しかし、そんなものはまだまだ可愛いものだ。
これから、人生最大クラスの衝撃を受けるのだから。
「それでは、改めて自己紹介を。私は円卓の騎士団長にして、ブリテン国王。真名をアルトリア・ペンドラゴンと言います。アーサー・ペンドラゴンの方がわかりやすいでしょうね」
「同じく円卓の騎士団所属。第十三席ギャラハッドのデミサーヴァント、マシュ・キリエライトです」
沈黙。
キリトは顎が外れたかと思うほどの表情で固まり、アスナは金魚の如く口をパクパクさせる。
伝説の存在が目の前にあっさり現れ、しかもそれがそうとは知らないうちに知り合いだったということが分かった時。
人はこうなるのである。
今回もお読みいただきありがとうございました!
それでは、また来週お会いしましょう!