もしもセイバーのマスターがソードアートオンラインに異世界転移したら?   作:雪希絵

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どうも皆様

メルトリリスが引けなくて泣きそうだった雪希絵です

時間過ぎて申し訳ありません!

寝落ちしてました、本当にごめんなさい!

いつもはリビングで書くのですが、今日は脚が痛かったので寝て書いていたのですが……

まさか本当に寝てしまうなんて……

今後二度とこんなことはないよう注意しますので、どうかお許しください

では、今回もごゆっくりどうぞ!


本気を出そうか

「盾部隊、前へ!」

 

広いボス部屋の中、アスナの声が響き渡る。

 

指示を受けた盾部隊が、マシュを筆頭にボスに向かっていく。

 

「ォオオオオオオォォォ!!」

 

かかってこいと言わんばかりの咆哮。

 

「「「「うおおおおおお!!!」」」」

 

負けじと盾部隊も叫び、ボスのヘイトを集める。

 

まるで阿修羅の如く三つある頭が、ぐるりと動いて盾部隊を見下ろす。

 

そして、無数にある腕を一斉に動かし始める。

 

轟音を上げ、右側の腕が振り下ろされる。

 

それを見て、盾部隊全員が足を踏ん張る。

 

無数の腕に武器の類はない。

 

だが、

 

「ぐあっ!」

「……ぐぅ!」

「うお……!」

 

盾部隊前方のプレイヤー達は、等しく数メートルは後退させられる。

 

あまりの衝撃に、唸り声を上げるもの。

 

そんな暇さえなく、体勢を整えるのに必死なもの。

 

続く第二波。

 

右側の腕を引っ込めたボスが、左側の腕を振りかぶる。

 

体勢の整いきっていないプレイヤーもいるが、ボスは一切容赦しない。

 

そこへ、

 

「『奮い立つ決意の盾』!!」

 

マシュが叫びながら飛び込む。

 

その瞬間、全ての腕はマシュに向かい始める。

 

マシュはタイミングを合わせ、防御スキルのモーションを取る。

 

水色に輝くライトエフェクト。

 

ボスは何も迷うことなく、この程度捻り潰せるとばかりに躊躇いなく腕を振り下ろす。

 

しかし、ボスのAIは認識していなかったのだろう。

 

あの最初の一撃で、マシュだけが唯一、微動だにしなかったことを。

 

巨大な多数の腕と、身の丈ほどもあるマシュの盾が衝突。

 

周りを染め上げるほどの火花と、大音響。

 

ただ、それだけ。

 

ボスは腕を引っ込め、マシュは少しも動かない。

 

周りのプレイヤーは目を丸くする。

 

あの攻撃を、正面から受けきったのかと。

 

「皆さん、落ち着いてください!力を込めるタイミングを誤らなければ、受けきれない攻撃ではありません!」

 

マシュが同じ盾部隊のプレイヤー全員に呼びかける。

 

それに頷き、今度はより強固に隊列を組み直す。

 

直後、再びボスの攻撃。

 

マシュを最前線に、盾を構える。

 

「今!」

 

どこからか聞こえた声。

 

しかし、不思議と身体が動き、盾部隊全員が同時に力を入れる。

 

すると、驚くことに全員が多少引きずられるくらいですんだ。

 

「次来るよ!今度はぶつけるように受けて!」

 

見上げると、今度は腕をバラバラに開き、至る方向から腕をぶつけてくる。

 

ちょうど、前衛一人につき一本から二本といったところか。

 

指示された通り、盾を腕に叩きつけるつもりで体重をかけながら動く。

 

力と力がぶつかり、質量の小さい方が負ける。

 

つまり、盾部隊全員に大きなノックバックが発生するということ。

 

そこから何をするかは、流石にもうわかった。

 

「「「「スイッチ!」」」」

 

声が揃った直後、背後に控えていた第二列の盾部隊が飛び出す。

 

マシュはなおも残り続けるが、それ以外は全員入れ替わった。

 

「さっき前衛だった人はポーションで回復!前衛、構え!」

 

また飛んできた指示に合わせ、前衛組が両腕で盾を支えて構える。

 

「今!」

 

先程と同じ指示。

 

素直に全員が従うと、やはり結果は同じ。

 

多少下がる程度に威力が抑えられた。

 

こんな全てを見通したかような指示が出来るのは、一人しかいない。

 

全部隊の後ろに控え、今も回避しながら必至に周囲の把握に務めるプレイヤー。

 

今回の作戦参謀、立香だ。

 

「スイッチ!」

 

タイミングを見極め、そう指示を出す。

 

今度は各々が判断し、盾で腕に向かっていく。

 

二列目の隊がスイッチし、三列目の隊が前衛に出る。

 

さながら、長篠の戦いで織田信長が行った三段撃ちのようだ。

 

こうして微調整しながらスイッチを繰り返せば、ボスのヘイトは盾部隊に集まり続ける。

 

今なら、アタッカー部隊が動ける。

 

「アタッカー部隊、攻撃開始!」

「「「「了解!」」」」

 

立香の指示に、左右に散開して走り出すアタッカー部隊。

 

「はあっ!」

 

アルトリアは魔力放出を使いながら、誰よりも早く駆け抜ける。

 

流星の如きスピードのまま、ボスのサイドに滑り込む。

 

途中、急ブレーキしながら、剣を床と水平に構えて詠唱する。

 

風王(ストライク・)────」

 

そして、剣をボスに向かって勢い良く突き出す。

 

鉄槌(エア)!!」

 

彼我の距離は、十メートルは離れている。

 

普通なら、剣を突き出したところでなんの効果もない。

 

だが、アルトリアは話が違う。

 

剣に宿っていた封印が、一瞬だけ解ける。

 

収束した風の塊は、剣を中心に一つの鉄槌に。

 

剣を突き出すとともに、それは閃光を放ちながら竜巻のように吹き荒れる。

 

ボスは盾部隊に夢中だったため、アルトリアの風王鉄槌に気がついていない。

 

よって、アルトリア渾身の一撃は見事にクリーンヒット。

 

ボスの四本のHPバーのうちの一本目、その一部が目に見えて減少する。

 

「すごい攻撃力だ……」

「残念ながら、連発はできませんが。ですが、まだまだ戦う手段はあります」

 

アルトリアが風王鉄槌を放っている間に追いついたキリトが、感嘆の声を上げる。

 

それにアルトリアは早口で答え、再びボスに接近。

 

「……よし、俺も負けてられないな」

 

キリトも右手の剣を強く握り、ボスに向かう。

 

走りながら、キリトは剣を構える。

 

「おおっ!」

 

剣先を中心に真紅のライトエフェクトを纏い、ジェットエンジンじみたサウンドが鳴り響く。

 

片手剣ソードスキル『ヴォーパルストライク』。

 

高いリーチと威力を持つ一撃を、ボスの腕に向かって叩き込む。

 

ガスッ……!と音が鳴り、ボスの腕が切り取られた。

 

「いける……!腕は切り落とせるぞ!」

「みんな!聞いた!?ボスの腕を狙って!」

「「「「了解!」」」」

 

計画通り、腕を切り落とすことは可能らしい。

 

キリトとアスナの指示に従い、アタッカーは全員腕を狙う。

 

とくに、アルトリアはただの斬撃でも甚大なダメージを与えられるため、そのペースは他のプレイヤーの比にならない。

 

腕が切り落とされるたび、ボスのHPが減少する。

 

また、何人かの両手剣使いは胴体の攻撃に集中しているため、それもHPの減少に一役買っていた。

 

盾部隊がスイッチを繰り返し、アタッカー部隊が腕を切り落としながら攻撃。

 

同じことの繰り返しだが、それはたしかな効果を持っていた。

 

───────────────────────

 

そんな戦いに、ある変化が訪れる。

 

「みんな、あと一本だよ!」

 

ボスのHPバー三本を削り取り、全員のモチベーションが上がった時。

 

「オオオオオオオオオォォォォォォ」

 

今までと少々トーンの違う叫び声。

 

直後、

 

カパッ

 

と、えらく間抜けな音とともに、ボスの口が開いた。

 

そこに、閃光が収束していく。

 

「「……!」」

 

キリトと立香は確信した。

 

このモーションの正体を。

 

「全員下がれーーー!」

「ブレスが来るぞ!」

 

そんな叫びも虚しく。

 

ボスのブレスは既に放たれた。

 

白に染め上がる視界。

 

広範囲に破壊を撒き散らすブレスは、まるで嵐の如く爆音と衝撃をもたらす。

 

破壊不能オブジェクトのはずの壁さえ砕けそうな、圧倒的な破壊圧。

 

次にプレイヤー達が目を開けた時、そこには。

 

HPの大部分を減らし、倒れる大勢の仲間の姿。

 

そして、彼らにとどめを刺そうとするボスの姿。

 

「ひ、ひぃぃぃ!」

「だ、だめだ!」

「逃げろぉぉ!!」

 

勝利の確信は、一瞬にして敗北の予感と恐怖にすり変わった。

 

大急ぎで転移結晶を取り出すプレイヤー達。

 

「お、おい!」

 

キリトが近くにいたプレイヤーを止めるが、そんなものに聞く耳を持つ者など一人もいない。

 

次々と勝手に転移し、ボス部屋から人が消えていく。

 

しかし、転移の間に合わない者もいる。

 

ボスの近くにいたプレイヤーは、大量の腕の連続攻撃が直撃。

 

「ああああああ……」

「や、やめ……!」

 

腕が振り下ろされるたび、断末魔の叫びとポリゴンの砕ける音が鳴る。

 

「そ、そんな……」

 

目も耳も塞ぎたくなるような状況に、アスナも他のプレイヤーも戦意を喪失する。

 

キリトはかろうじて剣を握っているが、自分が攻撃を防ぐのに手一杯だ。

 

そんなキリトの横では、ある人物が一人で攻撃を受け続けていた。

 

真紅の鎧に、巨大な十字盾。

 

血盟騎士団団長にして、SAO現最強プレイヤー、『神聖剣』の『ヒースクリフ』。

 

彼はブレス直後から一人で、ボスの残った腕による攻撃を防ぎ続けていた。

 

その化け物じみた防御力は、未だにグリーンゾーンから変わらないHPを見れば一目瞭然だった。

 

だが、それでも足りない。

 

一人で戦線を支えられても、アタッカーがまずいないのが問題だ。

 

気がつけば、部屋の中には最初の半分ほどの数しかプレイヤーが残っていない。

 

「くそっ……!」

 

どうにか腕を切り落としながら、歯噛みするキリト。

 

仮に全ての腕を切り落としたとしても、次に待っているのはブレスだ。

 

ほんの少しだけ減少しているが、ボスのHPはほぼ満タン。

 

だが、こちらは盾部隊もアタッカー部隊も間違いなく人が足りない。

 

こんな状況で、どうするというのか。

 

「増援を……待つしかないのか……?」

 

可能性があるとするなら、転移したプレイヤー達が応援を連れてきてくれることだ。

 

しかし、今から人を集め、状況を説明し、一体何人のプレイヤーが、何分後にやってくるのか。

 

考えただけでも絶望感が押し寄せる。

 

ふと、アスナの方を見ると、彼女は既に立ち上がっていた。

 

けれども、その立ち姿にはいつもの覇気がない。

 

「……こうなったら」

 

こうなったらアスナを連れて自分達だけでも、と自分でも反吐が出るほど卑怯な手を思いつき、首を振って否定した時。

 

「……ああ〜、死ぬかと思った」

 

場の空気に不釣り合いな、気の抜けた声が響き渡った。

 

声の方を横目で見ると、そこには、

 

「ブレスがあるなんて……聞いてないよ。意識なくなったわ」

「大丈夫ですか、マスター?」

「一応、なんとか」

「すみません。すぐにマスターの元へ駆けつけられなくて……」

「いいよ。気にしないで」

 

そんな会話を交わす、立香とアルトリアとマシュの姿。

 

呆れたような視線も気にせず、三人はずかずかとボスに近づく。

 

「お、おい!危ないぞ!」

「三人とも!下がって!」

 

キリトとアスナが咄嗟に叫ぶが、完全にスルー。

 

とうとう、ボスの前までやって来た立香は、ヒースクリフに話しかける。

 

「血盟騎士団の団長さん。ちょっと、危ないのでどいてもらってもいいですか?」

 

そして、いきなりそんなことを言った。

 

何を馬鹿な、という周囲の動揺も無視し、立香は続ける。

 

「ちょっと、本気を出してみたいので」

 

そう言い、立香は不敵に笑った。




最近百合成分が足りていない気がします

もう少ししたら補充していこうと思います

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