もしもセイバーのマスターがソードアートオンラインに異世界転移したら? 作:雪希絵
理由ですか?
か・わ・い・い・か・ら・です!!!
周囲から音が遠ざかる。
レイシフト後の軽い酔いのような感覚が消え、3人は目的地に到着した。
「レイシフト完了。身体状況に異常なし、周囲に敵性反応……」
「……どう見ても敵性反応ありまくりだけど?」
3人がレイシフトしたのはどこかの森の中だった。
それと同時に……謎の集団のド真ん中でもあった。
「お、おい、何なんだよ、こいつら!」
「い、いきなり現れたぞ!」
「ていうか……女だぞ!」
ざわざわと騒ぎ出す男たち。
目の前に突然現れた3人が女性だと気づいた瞬間、いきなり目の色を変えて武器を構える。
「ど、どうします!?マスター!」
「ぶっ飛ばす!」
「ですよねー!」
慌てるマシュに対し、冷静(?)に返す立香。
「アルトリア!」
「承知しました!マシュ、マスターを頼みます!」
「はいっ!」
アルトリアの指示に従い、マシュが立香の前に立つ。
「私のマスターには、指1本触れさせません!」
「何がマスターだ!一斉にかかれ!」
総勢10人はくだらない男たちは、剣や斧、槍など様々な武器を持って襲いかかる。
巨大な盾を持っているマシュを一旦無視し、何も持っていない
四方八方から襲来する刃。
しかし、彼らは知らない。
華奢で鎧以外は線の細いアルトリアに秘められた、無敵ともいえる能力を。
「────ふっ!」
短い気合いとともに、アルトリアは構えた両腕を振るう。
直後、耳を裂くような轟音が鳴り響き、男たちは誰一人漏れなく吹き飛ばされ、周囲の木に叩きつけられた。
「振った剣の風圧でこんなに踏ん張ることになるなんて……」
マシュが若干声を震わせながらそう言う。
周りの男たちも立ち上がり、再び武器を構える。
だが、その表情は先程までとは打って変わって、明らかに動揺している。
「何なんだ、あの女……。どんな筋力パラメータしてるんだよ……?」
(……? パラメータ?)
男の漏らした一言に、立香は違和感を覚えた。
筋力というのはわかるが、なぜわざわざ『パラメータ』をつける必要があるのか……?
「マスター。マスター、ご指示を」
「……えっ?あっ、ごめん」
アルトリアの声に我に返る。
頭を切り替え、立香はこの場からさっさと逃れるために、指示を飛ばす。
「とりあえず、峰打ちで全員殴ろうか?」
「はい!」
「また盾で峰打ちですか……!」
アルトリアは返事を、マシュは若干文句を言いながら駆け出す。
「ひ、ひぃぃぃぃ!来た!」
「に、逃げろ!」
「し、死にたくねぇぇぇぇ!」
すると、男達は情けない声を上げながら逃げ出してしまった。
「……あら?」
「に、逃げましたね」
始まりと同じく突然な終わりに、3人は目をパチパチとささせる。
しばらくそのまま固まっていたが、アルトリアが剣を下ろしたので、立香とマシュも警戒を解く。
「何にせよ、殺さず終わったのは良かったと言えるでしょう。どうやら奇襲の可能性もなさそうですし」
「そうですね。先輩、お怪我はありませんか?」
しかし、立香から返事はない。
(おかしい……明らかに。あれだけ吹き飛ばされたにも関わらず、あいつらは全員割とすぐに立った。普通は背骨くらい折れたって仕方ないような勢いだったのに。それに耐えられるほど強いって可能性もあるけど、だとしたら逃げる理由が見当たらない……)
「……い……。……んぱい。先輩!」
「うおぅ!どったの!?」
「どうしたのじゃありません!やっぱり、どこか怪我をしたんですか?」
どうやら、立香が思ってた以上に考えこんでいたらしい。
「ごめん、ごめん。なんともないよ」
「ならいいんですけど……。ひとまず、カルデアに連絡しますね」
ほっと息をつき、マシュはカルデアに連絡をとる。
「ドクター、聞こえますか?こちらマシュです」
「えっ!?ま、マシュ!?ってことは、立香ちゃんとアーサー王もいるのかい!?」
すると、やけに慌てた様子のロマ二の声が聞こえてきた。
「どうしたんですか?そんなに驚いて」
「どうしたもこうしたもないよ!だって、君たちの身体、今こっちにあるんだよ!?」
「……はあ?」