もしもセイバーのマスターがソードアートオンラインに異世界転移したら? 作:雪希絵
この度、皆様に二つ御報告があります
まず一つ、感想欄でのご指摘をいただいたため、二点ほど大きく変更致しました
①主人公の名前を変更
主人公の名前を決める際、自分のユーザーネームを使って『詩島ライカ』としましたが、その随分後に『藤丸立香』という正式名があることを知りました
ここまで来て変えるのも不自然かと思い、今まで何もしていませんでしたが、指摘をいただいたので変更することにしました
②原作名を変更
こちらはお二人の方にご指摘をいただきました
自分の考え方が間違っていたようで、大変申し訳ありませんでした
原作名は『ソードアートオンライン』に変更致します
二つ目、この作品の更新日に関してですが、明確な時間を決めないから期間を空けてしまうのではないかと思い至りました
そこで、この作品の場合は、『毎週月曜日』に更新することにします
作者の都合でズレてしまうかも知れませんが、1日以上はズレないように注意します
以上となります
上記のように、気になる点やおかしな点、間違った考え方の部分がありましたら、どうぞ遠慮なくご意見ください
これからも『もしもセイバーのマスターがソードアートオンラインに異世界転移したら?』をよろしくお願いします
「はー、食べた食べた」
「ごちそうさまでした」
「はい、お粗末様でした。というか、とんでもない量作ったのに、見事に空っぽだね……」
アスナが苦笑いでテーブル中央を見る。
巨大な鍋一つ分のカレーを作ったが、まるで最初から何も無かったかのように空になっていた。
原因はもちろん、アルトリアとキリトである。
「なかなか……やりますね……キリト……」
「ふっ……そっちの……方こそ……」
最終的には、どちらがたくさん食べられるかの戦いになり、同時に限界を迎えたのだった。
「まあ、喜んでくれて何よりだよ」
「うん、本当に美味しかった。ね、マシュ?」
「はい。ごちそうさまでした」
随分と簡略化されてはいるが、やはりSAOでも手料理は美味しく感じる。
立香もマシュも大満足だった。
食事も終わったので、アルトリアとキリトが動けるようになるまで、三人はお茶を飲みながら話すことにした。
「ねえ、アスナ。SAOに回復アイテムってないの?」
「あるよ。ポーションとか、結晶アイテムとか」
「ポーションはわかるけど、結晶アイテムって?」
「文字通り結晶型のアイテムだよ。指定の転移門にワープできる『転移結晶』、瞬時に体力を回復する『回復結晶』なんかがあるよ」
「便利ですね。緊急時に活用すれば、生存率が上がりそうです」
「そうだね。すっごく高いから、みんな緊急時にしか使わないよ」
「それでも、いくつかは持っておきたいですね」
「うん、今度買いに行こう。そういえばさ……」
それから、時々キリトも加わりながら、話は進んでいく。
おかげで、三人はSAOに関して様々な情報を手に入れることができた。
気がつくと、視界の端の時計はすでに23時だった。
「もうこんな時間か。そろそろ帰るかな」
「あ、じゃあ私たちも」
キリトはコートを装備し直し、立ち上がる。
帰り際、玄関前で立香たちは不意にアスナに呼び止められた。
「ねえ、リツカちゃん、アルトリアちゃん、マシュちゃん」
「ん?」
「良かったら、しばらく私たちとパーティーを組まない?まだわからないことも多いだろうし」
「それは願ってもないことだけど、大丈夫?迷惑じゃない?」
「全然。むしろ心強いよ。キリトくんもいいよね?」
「ああ。悪いやつらじゃないみたいだしな」
「そっか……。二人はいい?」
「もちろんです。安心して背中を任せられます」
「私も同意します」
「じゃあ、よろしくね。キリト、アスナ」
「うん、よろしく!」
「よろしくな」
というわけで、五人でパーティーを組むことになったのだった。
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「……んにゃ……先輩……」
「まだまだ食べられます……」
「……どんな夢見てんだか」
深夜。
アルトリアとマシュに挟まれた立香が、不意に起き上がった。
アラーム機能をこの時間にセットしておいたのだ。
二人を起こさないようにベッドから出て、窓際の席に座る。
窓枠に肘を載せ、頬杖をつく。
それから数分後、
「月光に照らされて物思いに耽る美少女か。中々絵になるじゃないか」
呑気なダヴィンチのそんな感想が聞こえてきた。
「それはどうも。随分遅かったね」
「ごめんごめん、状況が状況だからね。時間がかかっちゃったんだ」
「その代わり、いくつか分かったことがあるよ。心して聞いておくれよ、立香ちゃん」
「OK」
言いながら、ベッドで寝ている二人を見やる。
(戦闘は任せきりだったし、寝かせてあげよう。朝ごはん食べながら話せばいいでしょ)
窓枠に手をかけ、ささっと屋根に登る。
どういうわけか知らないが、アインクラッドの天井は明るかった。
幻想的な光景を眺めながら、三人の情報交換が始まった。
「さて、とりあえず、一番大きなところから行こう。立香ちゃん達が今いる世界……ああ、ゲームじゃなくて元の方ね。そこはどうやら、並行世界の一つのようだ」
「『もしも人理焼却が行われなかったら』の並行世界ってこと?」
「いや、もっと広い範囲だろうね。『もしも魔術自体がとっくに廃れた世界だったなら』とか」
「え、それおかしくない?」
ダヴィンチの言葉に、立香が反論する。
「だって、今のこの状況って、聖杯が原因でしょ?」
「まあ、それはね」
「後で言おうと思ってたけど、今の立香ちゃん達の状態から考えると、間違いなく聖杯が原因だろうね」
ここで、立香がため息をついて頭に手を当てた。
「待って、疑問が多すぎて処理出来ない」
「落ち着いて、立香ちゃん。順を追って話すよ」
「はーい」
一息ついでに、話を聴きやすいように楽な姿勢をとる。
長い話になると悟ったようだ。
「今の立香ちゃん達は、魂を引っこ抜かれて、その魂を仮想空間の身体に貼り付けられた状態だ」
「つまり、立香ちゃん達は、他のプレイヤーと違って本当に仮想の身体を手に入れたってわけだ」
「で、そんな器用なことは聖杯にしか出来ないってことね」
「そういうこと」
そうなると、いよいよ『魔術が廃れた世界』というのがわからない。
立香は改めてそこを尋ねる。
「じゃあ、なんで魔術が廃れた世界で、聖杯が使えるの?」
「聖杯はあくまでも、『莫大な魔力をもって全ての過程をすっ飛ばす願望器』だからね。一度魔力で満たされたなら、あとは願うだけだ。どんな方法で呼び出したかはわからないけれど、願いを叶えることはできるさ」
「それに、これも聖杯の効果なのか、そのゲームの世界は半ば固有結界のようになっている。残念ながら、こちらから通信や物資の供給以上の干渉は無理そうだ。ごめんね」
「いいよドクター。気にしないで」
首を横に振ってそう答える。
こうなったのは首謀者のせいであり、ロマンのせいではないのだ。
「他に分かったことは?」
話を先に進めるため、立香が促す。
すると、二人は急に押し黙ってしまった。
「? どうしたの?」
立香の呼びかけにも答えず、さらに時間が経ったころ、
「ああ……えっと、すごく言いにくいんだけど」
ようやくロマンが口を開く。
「実は……そのゲームをクリアしないと、こっちに戻ってこれなさそうなんだ……」
「……まあ、固有結界ってことならそうなるヨネー」
思わぬ真実に、立香の語尾が妙なことになってしまった。
「正しくは、固有結界の源にもなっているであろう聖杯を回収しないといけないんだけど……」
「ドクター、それはラスボスを撃破しろって言ってるのと似たようなものだと思うよ」
「だ、だよね……」
三人にはもう、話さずとも経験則から分かっていた。
こういう時は、大抵最後の敵が聖杯を持っているのだと。
今回の場合はまさかサーヴァントが関わっているわけではないだろうが、恐らくこの前提は変わらないだろう。
「はあ……」
(毎度毎度、よくまあ色んなことに巻き込まれるなぁ……)
同じサーヴァントが違うクラスで何度も出てきたり、マジカルな固有結界に放り込まれたり、ちびっこい謎生物が大量発生したり、サンタと一緒に空飛んだり。
立香は様々な理由で様々な場所に行ったし、巻き込まれて来た。
(でも、今思い返せば、それも結構楽しかったかな。きっとここも、そうなるよね)
こうなっては仕方ない。
時間を巻き戻すことなんて、それこそ聖杯でも可能かわからないのだから。
「よし、覚悟を決めたよ。私は!」
「おお、急にやる気だね立香ちゃん!」
「私はいつだってやる気だよ、ダヴィンチちゃん!」
言いながら立ち上がり、上空に向かって拳を突き上げる。
「モンスターだろうが、剣士だろうが、かかってきなさい!私がこのゲームを終わらせる!」
そう改めて、決意を固めるのだった。
本当に長らくお待たせ致しました……
更新日はできる限り守りますので、お許しください