もしもセイバーのマスターがソードアートオンラインに異世界転移したら?   作:雪希絵

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お待たせしました……

やたら早かったり、すごい遅かったり、安定しない更新ペースですね

安定してできるように、3日とか一週間とか期間を決めて更新したいです

まだ決まってませんが


チートソードスキル

「そういえば、本当にそれで良かったのか?」

 

手頃なモンスターを探し、迷宮内を歩いている途中、キリトがそう言う。

 

キリトが言っているのは、立香の腰に収められた短剣だ。

 

固有名『ソードブレイカー』。

 

片刃の短剣で、峰側のギザギザの部分で相手の武器を破壊する確率が上昇する。

 

だが、それは極低確率あり、主目的として運用するにはギャンブルになる。

 

加えて基本攻撃力が低く、普通の武器としても扱いにくい。

 

立香はそれを承知で、この武器をキリトから譲り受けたのだった。

 

「大丈夫。私はこれでいいんだよ」

「? ならいいけどさ」

 

首を傾げ、キリトはどこか納得のいかない様子でそう言った。

 

(……私は、これを使う必要性はないからね。二重の意味で)

 

苦笑しながら、立香はそんなことを考えていた。

 

「それにしても、何もいませんね」

「試す機会がないのは、残念です」

「マッピングが随分進んでるからねー。他の人たちが倒しちゃったかも」

「MMOの欠点だねぇ」

「あはは、たしかにな」

 

人は暇になると雑談が弾む。

 

さらに歩くこと数分後、なんの敵にも遭遇しないまま、一行は大きな扉の前にやってきた。

 

「……なんというボス部屋臭」

「うん……大当たり」

「わかるやつにはわかるよな」

 

立香がため息をつきたくなるほどに、モロにボス部屋という禍々しいデザインの扉。

 

中にはボスが居て、それを倒せば先のフロアに進むことができる。

 

「なるほど、試し斬りの相手としては申し分なさそうですね」

「いや、やめた方が……」

「ダメ!!!」

 

立香の発言を遮り、アスナが叫ぶ。

 

突然声を荒らげたアスナに、立香たちは目を白黒させる。

 

「ど、どうしたの?」

「あ……ごめんね。でも、本当にダメ。唯でさえ今回は五の倍数だから危険だし、キリトくんの仮説が正しければもっと大変なことに……」

 

(五の倍数が危険ってことは、恐らくそれらのボスは他より強く設定されてる。で、今は五十層。どんなやつが出てもおかしくはない数か……)

 

「やっぱり特別なの?この層は」

「ああ。偵察を繰り返しして、ようやく最近討伐の話が出たところだ」

「ってことは、それまでにはソードスキルを習得しないとね」

「さ、参加する気なんだ……」

「チャレンジャーだなぁ……」

 

血気盛んな思考回路だった。

 

ボス部屋に挑むのは後々とすることにし、出口に向かいながら敵を探す。

 

すると、

 

「居た……」

 

出口付近に二体発見した。

 

「マシュ、アルトリア」

「了解です」

「お任せを」

 

ゴブリンが2体だが、どちらも重装備だ。

 

俗に言う『ホブゴブリン』というやつだろう。

 

「ゴブリンですね。特異点でも見かけました」

「だね。大した差はないはずだから、大丈夫だと思う」

「はい。行きます!」

 

立香を庇うように前に立ったマシュは盾を正面に構え、後ろ脚を引いて防御体勢へ。

 

アルトリアはその隣で剣を中断やや担ぎ気味に構え、前傾姿勢で腰を落とす。

 

「ギギィ!」

 

爛々と輝く目でこちらを見つけると、ゴブリン達は武器を振り回しながら突進してきた。

 

彼我の距離は約20mほど。

 

それが、

 

「ギギャァァァァァ!!」

 

瞬きの間にゼロになった。

 

かろうじて視認できたのは、オレンジ色々のライトエフェクトと、破砕音と共に爆発四散するゴブリンだけだ。

 

「はっ……?」

「嘘っ……!?」

「うわぁお……」

 

アルトリアの遥か後ろで、キリトとアスナと立香の驚く声がする。

 

「まさかここまで速度が出るとは……」

 

しかし、斬った本人が一番驚いていた。

 

アルトリアが使ったのは、両手剣上位ソードスキル『アバランシュ』。

 

威力が高く、圧倒的な突進力を持つため、非常に優秀なスキルの一つだ。

 

これに、アルトリアは魔力放出を重ねた。

 

ただの思いつきだった。

 

メニュー画面で見て暗記したソードスキルのうち、自分に合いそうなものを使った。

 

どうせならと魔力放出を重ねた。

 

効果は予想以上。

 

瞬間移動とも言える速度と、一撃必殺の威力が現れたのだ。

 

(これが……ソードスキル……!)

 

アルトリアの胸に、久々に湧き上がる興奮。

 

初めた剣を握った時、初めて剣技を身につけた時のことを思い出すほどだった。

 

だが、敵は待ってはくれない。

 

もう一体のホブゴブリンは、仲間の敗北も意に返さずに、すぐ近くのアルトリアに剣を振りかぶる。

 

その頭上に、

 

「やあぁぁぁ!」

 

雷ごとく黄色に輝く大盾が、叩きつけられた。

 

大盾ソードスキル『トールハンマー』。

 

圧倒的な威力と引き換えに、当たり判定の範囲が少ないスキルだが、マシュはいとも簡単に当ててみせた。

 

やはり、この辺りはデミサーヴァントとしてのセンスだろう。

 

「やりましたね、マシュ」

「はい!お疲れ様でした、アルトリアさん」

 

ソードスキルを使った初戦闘を終え、二人は互いの健闘をたたえる。

 

しかし、見守り組は唖然としたまま固まってしまった。

 

「……えーっと、マスターことリツカさん?この展開は?」

「……ヨソウガイデース」

「なんで片言なの……」

 

アスナのツッコミも覇気がない。

 

「まあ……一般人でもモンスターと戦えるようになるわけだもんね……。百戦錬磨の英霊が使えばこうなるか」

「リツカちゃん、何か言った?」

「なんでもないよー」

 

自己完結したリツカは、アスナの問いをはぐらかし、話題を変える。

 

「私も試したいな。どっかに敵いないかな?」

「ダメです!マスターにそんな危険なことさせられません!」

「そうですね。戦闘は私たちに任せてください」

 

そして速攻却下された。

 

「えー、いいじゃん。私もソードスキル使いたい!左右に切り払ってから鞘に収めたい!」

「落ち着いて、リツカちゃん。短剣じゃ無理だと思うの」

「っていうか、それは単に癖なんだが……」

 

いつになく騒がしい迷宮内。

 

通りがかったプレイヤーたちが眉をひそめていたのは、言うまでもない。

 

───────────────────

 

その後、何度か戦闘はあったものの、アスナとキリト、もしくはマシュとアルトリアが処理したため、結局立香の出番は無かった。

 

最初は不満気だったが、最後の方は諦めたようで、文句も言わなくなった。

 

「ところで、みんなこの後予定はあるの?良かったら、うちでご飯食べていかない?」

「「「もちろんです」」」

「息ぴったりですね!?」

 

理由は違うが、三人はマシュが驚くほど同じタイミングで頷いた。

 

街の中心にある転移門まで来ると、キリトが街の名前を宣言して中に飛び込む。

 

アスナがそれに続いたので、他三人も恐る恐る入る。

 

レイシフトに似た、酔うような感覚。

 

目を開ければ、もうそこは全く別の街だった。

 

「この近くだよ。私に着いてきて」

 

アスナは、キリトや昨日の立香たちと違い、コルを払ってプレイヤーホームを購入したらしい。

 

キリトも本当はそうしたいらしいが、手持ちのほとんどを装備品やら怪しいアイテムやらに使ってしまうらしい。

 

「本当はもっと綺麗なところに住みたいんだけどね」

「いや、充分だと思う……」

 

到着したアスナの家は、外から見ればたしかに普通の家だが、中はあらゆる高級そうな家具と調度品が揃えられ、扉が転移門だと言われた方がまだ信じられそうな状態だった。

 

「よくこんな高そうなアイテムばかり揃えたよなぁ……」

 

キリトが感嘆混じりに声でそう言った。

 

「家具は引っ越してからも使えそうだから、こだわってるんだ。着替えてくるから、その辺に座ってて」

 

アスナはテーブルを指差し、奥の部屋へと入っていった。

 

「では、私たちも着替えてきますね、先輩」

「うん、いってらっしゃい」

 

(本当は自分の意思で切り替えられるんだけどねー)

 

アルトリアもマシュも、普段着と戦闘服なら自由に切り替えられる。

 

しかし、この世界ではステータス画面を操作するのが普通なので、極力そういうフリをするように指示してあるのだ。

 

「リツカは着替えないのか?」

「普段着兼戦闘服だから、問題ないよ」

「そうか。俺もそういうのにしようかな……」

「コート脱ぐのすら面倒くさがったらダメでしょ」

「男は割と服装にこだわらないんだよ」

 

コートと剣帯を解除したキリトに習い、立香も短剣を解除する。

 

ついでにアイテム欄を見てみると、装備品には『アトラス院制服 帽子』の記述があった。

 

戦闘前に邪魔になるから外したのだが、今更つける気にもならないのでやめておくことにした。

 

ほぼ同時に、ガチャっと音がしてアスナがリビングに出てきた。

 

さすがに操作するだけとなると、着替えも早い。

 

程なくしてマシュとアルトリアも戻って来たため、食べたいものを聞いてアスナは調理に取り掛かった。

 

「そういえば、SAOの料理ってどんな感じなの?」

「『料理スキル』がスキルの中にあるんだ。熟練度が上がるにつれて、作れる料理とかも変わってくるんだよ」

「ふーむ、なるほど」

「アスナのスキル熟練度も随分上がったよな」

「誰かさんがたくさん作らせるからね」

「俺は熟練度上げに貢献してるだけだ」

「はいはい」

 

(リア充まぶしー)

 

ピンク色の空気を発し始めた二人を尻目に、立香は視線を移す。

 

そこにあるのは、ステータス画面。

 

正しくは、おそらくはマスター特権で見られるマシュとアルトリアのステータスだ。

 

(……やっぱり、高いよね。二人とも)

 

先ほどから考えていたのは、自分のステータスに比べて二人のステータスが高いことだ。

 

それどころか、レベル65のアスナや71のキリトより高い。

 

(英霊としての補正ってことかな……。でも、身体がここにあるわけじゃないのに、どうやってこんなに細かく再現出来てるんだろ?ぱっと見、カルデアで見てたステータスと似通ってるんだよね……)

 

自分のステータスの一部を下方修正して平均値とし、二人のステータスと照らし合わせる。

 

すると、今までA+やBとして記述されていた、各ステータスとよく似ていた。

 

ここから推測できるのは、一つだけ。

 

(今の現状を作ったのは、事故じゃなくて第三者。となれば、必ずどこにあるはず。聖杯が─────!)

 

なんとしても見つけなくては、と一人考えるのだった。




次回、真面目な話になります

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