もしもセイバーのマスターがソードアートオンラインに異世界転移したら? 作:雪希絵
大事なことなのでもう一度
お風呂回です
これを書いている時の作者の顔ほど気持ち悪いのはヌタウナギくらいでしょう
ヌタウナギ好きの人がいたら、ごめんなさい
「はぁ……」
「もうお嫁にいけません……」
「初心だなー、二人とも」
マシュとアルトリアが一糸まとわぬ姿でうずくまっている。
見えもしないステータス画面を操作するという離れ業をやってのけ、二人の装備を全解除した立香は、脱衣所でアトラス院制服を解除してヘアゴムも解く。
「アルトリアさん……」
「ええ……諦めましょう」
二人は何を言っても無駄だと悟り、先に浴室に入った立香の後に続く。
「おー!結構広い!」
「本当ですね……三人同時に入っても、これなら多少は余裕がありそうです」
部屋に備え付けの風呂は広く、そういうシステムなのか既に浴槽はお湯で満たされていた。
「とりあえず、私は身体を洗ってから入りたいので、マスターとマシュは先に浴槽に浸かっていてください」
「はいはーい」
「わかりました。お先に失礼します」
アルトリアに言われ、二人は浴槽に片足を入れる……間もなくマシュは立香に突き飛ばされた。
「わ、わわっ!」
バッシャーン!!
と激しく音が鳴り、マシュは頭から浴槽に落下した。
「イェーイ!!」
それに立香め続き、軽くジャンプして浴槽に飛び込む。
「ぷはっ!せ、先輩!何するんですか!」
「いーじゃん、いーじゃん。ちょっとハメを外したくなったんだよ」
「先輩は常に外れてます!」
顔から蒸気が出そうなくらいに憤慨するマシュをいなし、立香はお湯に肩まで浸かる。
「ふぅぅぅ……やっぱいいなぁ、お風呂は」
実際のところ、如何に最新鋭のVR装置であるナーヴギアでも、お風呂のような大量の流体の再現は難しいらしい。
だが、ここでそんなことを気にするのは野暮だろう。
ゲームの中だろうとお風呂に入れるどうかというのは、女性として沽券に関わる。
それが満たされた今、本物かどうかなどは些細なことだ。
「いいお湯ですねぇ……」
ふと前を見ると、先程まで怒っていたマシュも、肩までお湯に浸かって惚けた顔を浮かべている。
アルトリアもその白磁をような肌色をした自分の身体を、石鹸とタオル(途中の店で購入しておいた)で洗いながら、ふんふんと鼻歌を歌っている。
待ちに待ったそんな至福の一時を、三人は各々で味わっていた。
どれくらい経っただろうか。
不意に、マシュがとある視線に気がついた。
「あ、あの……先輩?」
じぃーーー、という音が鳴りそうなほどの立香の視線が、マシュに注がれる。
しかもそれは、他の二人と比べても明らかに豊かで、今もお湯にプカプカと浮いている胸部に注がれている。
しばらくそれは変わらなかったが、不意に立香が口を開く。
視線は変えないまま。
「ねえ、マシュ」
「は、はい」
「また育った?」
「は、はい!?」
マシュが驚いて声を上げたのと、立香が距離を詰めたのは同時だった。
そして立香は迷うことなく、その両腕で、がっしりと、マシュの両胸を鷲掴みにした。
「えっ、きゃ、ちょ、先輩!?」
「うーん……やっぱり」
抗議するマシュを華麗に無視し、立香は両手を動かす。
強弱をつけ、されど大事なものを扱うように胸を揉みしだく。
「やっ……!あ、あの……!はぅ!」
しばらくすると、マシュの声色が変わってきた。
あまりにも手慣れた手つきに、こらえきれず声が漏れる。
「はぁ…はぁ……!あっ……あぅん!」
「…………やば、なんか妙な気分になってきた」
対する立香も、あられもないマシュの姿に理性が崩れかける。
ただ、そこは腐ってもカルデア唯一のマスター。
思考が如何わしい方向にフルスロットルする前に、どうにか手を離した。
「はあ、はあ……。先輩!冗談にも限度があります!」
「あはは、ごめんごめん。にしても、すごいなー。感覚までリアルなんだもん、このゲーム」
名残惜しそうに両手の指を空気を揉むように動かし、立香は笑う。
マシュを胸を腕で抱きながら肩を上下させ、立香を睨みつける。
そんなマシュにもう一度だけ謝り、立香は視線を空気と化している人物に向け、にっこりと笑う。
『み・つ・け・た♡』
立香のそんな心の声が聞こえたのは幻聴だろうか。
腕で自らの身体を抱くアルトリアは、逃げ場がどこにもないことを悟るのだった。
次回はアルトリアに毒牙がかかります