もしもセイバーのマスターがソードアートオンラインに異世界転移したら? 作:雪希絵
次回を書くのが楽しみで仕方ないので、たぶん更新超早いです
「こういうのって、街中に宿屋があったりするものなんだよねー」
「ゲームの中にですか?」
「うん。リアリティを追求するなら、それくらいはするでしょ」
(どうやら、ログアウトもできないようだしね……)
立香はメニュー画面で確認済みだが、こういったVRゲームには必須なログアウト操作ができない。
というより、元からできるようになっていない気がする。
「んー……どこかいい店はないかなー。
んお?宿屋っぽい建物発見!しかもちょうどご飯も食べれる!」
「!? ご飯!!」
「アルトリアさん!?」
ご飯という単語に迅速な反応をする食いしん坊騎士王に、マシュが驚く。
「いやいや、夏休みの『カルデアサマーメモリー』の時で分かってたことじゃん」
「心なしか、本来の先輩が別の場所にいる気がしてきました……」
まるで異世界の人が中にいるような……などと呟くマシュをスルーし、立香は宿屋の中に突入する。
わずかに木が軋む音が鳴り、扉が開く。
その瞬間、店内の全員の視線が三人に集まる。
「わっ……!」
そういった視線に慣れないマシュが驚くが、アルトリアは眉を寄せるだけで、立香に至っては表情一つ変えない。
チラチラといった視線も、鋭く強い視線も浴びながら、三人は一番角の席に座った。
「あ、あの、先輩。なんだ随分と見られてる気がするんですけど……」
「そりゃあ、私達が美少女だからでしょ」
「さすがマスター、自分で言いますか」
「今まで散々もてはやされたんだし、自覚もするよ。っていうか、自覚してるのに知らないふりをしてる方がムカつくでしょ」
「そういうものなんですか?」
「そういうものだよ」
立香の言ってることは事実だ。
というのも、立香はアスナとの雑談の中で、この『ソードアートオンライン』こと『SAO』には女性プレイヤーが滅法少ないことを聞いていた。
その中でも美少女というと、さらに限られてくるのため、美少女となれば必ず注目を集めるのだ。
「まあ、アルトリアはどっちかというと綺麗ってタイプかなー。マシュは完全に可愛いだね、すっごい愛でたくなる」
「「うぅ……!」」
「何を今更恥ずかしがってるの……」
言われ慣れてるでしょ、と続けてから、立香は注文をとる。
数分後、多数の料理がテーブルを埋め尽くす。
(こういうとこはゲームだなー)
現実では有り得ない速度で運ばれてくる料理に、立香はそう思った。
「おおっ……!」
「お、美味しそうです……!」
ふと正面を見ると、前衛組が涎が出そうな勢いで料理を見つめていた。
やはり、カロリー消費が凄かったらしい。
「話はここまでにして、食べよっか?」
「「はい!」」
律儀に手を合わせ、二人は一心不乱に料理に向かっていく。
といっても、やはりマナーは徹底して守っているのだった。
(真面目だなー、二人とも)
立香は二人を見て微笑み、自分も料理を手をつけ始めた。
──── しばらくして ────
「た、食べすぎました……」
「わ、私も……」
「ほら、言わんこっちゃない」
風呂付きでキングサイズのベッドという豪華な部屋中、マシュとアルトリアはグロッキー状態だった。
「ペース遅くしたほうがいいって言ったのに……」
「すみません……」
「いいよいいよ。こちらとしては、抵抗できない方が都合がいいから」
「「……えっ?」」
言いながら袖を捲り、立香は満面の笑みを浮かべる。
それに対し、二人は冷や汗を流す。
経験上、立香がこうやって笑うのは嫌な予感しかしないのだ。
そんな二人にじりじりと歩み寄り、立香はその表情のまま告げる。
「一緒にお風呂……入ろうか?」
そして、サーヴァントである二人すら反応できないような速度で、飛びかかる。
「「きゃあぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」」
広い部屋の中、システム的に誰にも聞こえない叫び声があがるのだった。