無限の成層によるDies irae   作:アマゾンズ

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「かくして、いよいよ最大の見せ場が始まる」

「どんな些細な事でも戦いとは美しいもの」

「私は荒事は苦手だが、観戦するのは好きな方だ」

「さぁ、魅せろよ。我が子等よ」

「その演目(たたかい)が舞台を盛り上げるのだから・・・」


BGM・Letzte Bataillon

演説・水銀の蛇


第四劇 戦前

「ただいま」

 

サタナは少しだけため息をつくと自分の席についた。

 

「あの子はお前の知り合いだった子か?」

 

「知ってるみたいだったものね、向こうは」

 

フォルとルサルカも会話しようとサタナに近づき、椅子に座った。

 

「幼なじみだったがもう昔の話だ。今はもう関係ない」

 

「そういうのは大切にしたほうが良いですよ?サタナ」

 

ベアトリスは立ったまま少しだけ怒った表情を見せている。

 

「良いんじゃないですか?本人がもう関係ないって言ってんですし」

 

「だから、フォルは会話を乱さないでください!」

 

ベアトリスはペースを乱された事にご立腹の様子。

 

「まぁまぁ、これも若さよ。ヴァ・・・ベアトリス」

 

ルサルカは魔名で呼びそうになったのを訂正して呼びかけた。

 

 

 

周りから見れば何の変哲のない会話だが周りの生徒、特に女尊男卑主義者達は陰口を言っている。

 

それもそのはず、男性操縦者という異物の他に自分達を上回る美人とくればそれはもう妬みの対象にもなるからだ。

 

ルサルカはどこ吹く風で流しており、ベアトリスは元々そのような事を気にしない性格であるために全く動じていない様子だ。

 

そんな四人に近づいてくる一人の生徒が居た。

 

 

 

「少しよろしくて?」

 

「ん?」

 

「あ?」

 

「はい?」

 

「ん~?」

 

四人が四人、違った反応を見せ、話しかけてきた生徒はまるで火のように怒り出した。

 

「まぁ!何ですの!?そのお返事は!わたくしに話しかけられるだけでも光栄なのですから、それ相応の態度というものがあるのではなくて?」

 

その言葉にフォルが反応し、口を開いた。

 

「おいおい、俺達はこの学園に来たばっかりで右も左も分かってねーのに。それをいきなり出てきて私を敬いなさいって態度に(こうべ)を垂れるかっての!」

 

フォルの言葉にサタナ、ルサルカ、ベアトリスは頷き肯定の意思を見せた。

 

「くっ!」

 

「んで、アンタ誰だよ?名前がわからねーんじゃ名乗りようがねえからな」

 

「わたくしはセシリア・オルコット。イギリスのIS代表候補者ですわ!」

 

「イギリスねぇ。ま、忠告はしとくがあまりそんな態度とってるといつか破壊(こわさ)れるぞ?」

 

「っ!」

 

言い返そうとしたがチャイムが鳴り、セシリアは苦虫をかんだ表情をして自分の席に戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、授業が始まる前に教員であり、担任でもある織斑千冬がHRを始めた。

 

「授業を始める前に再来週に行われるクラス代表戦でのクラス代表を決めねばならん。自推薦、他推薦は問わんぞ」

 

学校で言う委員長みたいなものだろう、フォルとサタナはかつての学生生活から予想し、ベアトリスとルサルカは軍での経験から予想していた。

 

「はい!フォル君を推薦します!」

 

一人のクラスメイトが元気よくフォルを推薦してきた。

 

「わ、私もフォル君を」

 

大人しそうなクラスメイトも代表になって欲しい人を推薦した。

 

「おいおい」

 

フォルは苦笑を浮かべながらクラスメイト達を見ている。

 

フォルとしては面倒な事は御免被りたい心境だが周りが許してくれないようだ。

 

「納得できないわ!」

 

「わたくしもです!」

 

立ち上がりながら怒号を上げたのは織斑千雨とセシリア・オルコットの二人だ。

 

その目には敵意しかなく、特に男性操縦者であるサタナとフォルを睨んでいる。

 

「クラス代表は最強である私がなるべきだわ!男なんかに任せられないわ!」

 

「それには同意致しますわ!こんな男の猿が代表に!」

 

セシリアの言葉が言い終わる前に机を思い切り殴る音が教室に響いた。

 

「「「「っ!!!!!!」」」

 

「いい加減にしやがれよ?相棒を馬鹿にするってことはあの方々を侮辱するのと同義だ」

 

それは怒りに満ちたサタナが出した怒りのメッセージだ。

 

机が無事なのは加減されてた故だがそれでもヒビが入っていた。

 

「っ、ならば決闘ですわ!」

 

「おい、今・・・なんて言った?」

 

「だから決闘ですわ!わたくしが全て倒して代表に相応しい事を示してみせます!」

 

「上等じゃないの!逆に返り討ちにしてやるわ」

 

「てめぇら・・」

 

今度はフォルが怒りを露わにしていた。

 

二人だけで盛り上がった事ではない。

 

軽々しく使われた決闘(たたかい)を示す言葉が心の奥にある忠誠が許せないと感情が溢れたのだ。

 

「決闘なら命に値するものを賭けろ・・・それが出来ねぇなら軽々しく決闘なんて言うんじゃねぇ!!!!!!」

 

「「っ!!!」」

 

千雨とセシリアはフォルの怒りに怯んで震えてしまった。

 

「あーあ、二人の悪い癖が始まっちゃったわね~」

 

「すぐに熱くなるんだから、全くもう」

 

ルサルカは我関せずといった様子でベアトリスは呆れていた。

 

「なら、アンタ達は何を賭けるの?」

 

「そうだな。この命をくれてやるよ」

 

「俺もだ」

 

「それならわたくしはわたくしの専用機であるISを賭けますわ!」

 

 

四人が合意したと同時に千冬が声を上げ、自分に視線を集中させた。

 

「ならば一週間後に第二アリーナが空いている。そこで決着をつけろ」

 

そう言い終えて、HRは終了し通常の授業が開始された。

 

 

 

 

 

 

 

「本当に熱くなりすぎですよ!」

 

放課後にベアトリスから二人は説教を受けていた。

 

「熱くなりすぎたのは分かってる。だけど」

 

「だけど、じゃありません!全く」

 

「仕方ないわよ、ヴァルキュリア。この二人は忠誠の度合いがすごいもの」

 

「俺達を認めてくれたハイドリヒ卿や黒円卓の方々のためにも負ける訳にいかねぇな」

 

サタナとフォルは冷静になり、自分の発言を反省していた。

 

「それじゃ私達は先に戻るわね?」

 

「それでは」

 

ルサルカとベアトリスは教室を出て仮初の住まいである学園寮に向かった。

 

到着の少し前で、二人を待っていた人物がいた。

 

「貴女方がマレウスとベアトリスという方たちでしょうか?」

 

「そうよ?」

 

「アナタは誰です?見たところ変わった姿をしていますが」

 

目の前の女性らしき人物に二人は警戒しながら会話を続けている。

 

いざという時は形成を使う事も厭わない考えだ。

 

「私はクロエ・クロニクルと申します。私の主人から預かっているものがございまして」

 

そう言うとクロエは銀色の牙のようなペンダントと灰色のハルバートのペンダントを差し出してきた。

 

「これは男性操縦者お二人の専用機です。貴女方に渡すよう頼まれていましたので」

 

「一体誰から頼まれたのよ?」

 

「ええ、それを聞かない限り受け取るわけにいきませんからね」

 

「えっと・・カール・クラフトという方だそうです」

 

「「やっぱりあいつかー!」」

 

声を揃えて同じ事を言う二人にクロエは首を傾げていた。

 

「分かりました。渡しておきます」

 

「ええ、それなら受け取っておかないとね」

 

「はい、お願いします」

 

それぞれの専用機をクロエから受け取った二人は渡すことを約束した。

 

「それでは」

 

要件を済ませたクロエはその場から去っていった。

 

「さて、あの二人に用事ができちゃいましたね?マレウス?」

 

「本当ね、でも仕方ないっか。二人が帰ってくるのを待ちましょ?」

 

二人は部屋へと入り、お茶を淹れて一息を付いた。

 

「これがISかぁ・・・見た目はただのアクセサリーに見えるのに」

 

「待機状態・・・って言うらしいですよこれ?」

 

部屋の中心にあるテーブルに待機状態のISを置いて眺めていた。

 

牙とハルバート、どちらも武器(ちから)であることに変わらないものだ。

 

だが、黒円卓にて鍛えられた二人にとってそれは枷にしかならないはずである。

 

二人の(つばさ)は更なる高みへと向かわせるのか、それとも。

 

自身を堕落させるものとなるのかは誰も知らないことだろう。

 

一週間後に始まる決闘(パーティ)に備えて二機のISは眠り続ける。

 

主となる二人の男性操縦者と共に破壊(アイ)を見せるために。




「狼煙は上がり、(IS)を手に入れた」

「これより先は明かす事はしないでおくよ」

「なぜなら・・・これから始まる歌劇(たたかい)は」

「私にとって我が息子とその自滅因子(アポトーシス)が相対した時の興奮を思い出す」

「さぁ、最高の歌劇(たたかい)にしてくれたまえ」


水銀の蛇

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