「お前の望むものはここにある」
「刃を持つがいい」
「己が力を示すために」
演説・???
間近に迫った臨海学校の為に水着を新調しようと女性陣はフォルとサタナを強引にショッピングに連れてきていた。
「海なんて久々ね~」
「私もです、しかも羽が伸ばせるなんて!」
「お姉ちゃんはしゃぎすぎよ、全く」
「むむ・・こんなにいるのね。メンバー」
「本当ですわ」
「むう・・・嫁が後ろにいるとは」
「仕方ないよ、人数が人数だもの」
各々が先頭だって歩いている中、男性二人はどこか疲れた顔をしながら後についていた。
「なぁ?相棒?俺達」
「言うな、聞くな。黙ってろ」
周りの視線が辛い、大抵は男からの嫉妬の目である。殺気ならなんともないが男性操縦者の肩書きの他に美少女の随伴という状態が嫉妬の拍車を掛けている
「あの店が良さそうね、行きましょ?鈴、シャルロット」
「あ、待って!ルサルカ!!」
「ふ、二人共!待って!」
足早にショッピングモールへ入るルサルカと鈴、シャルロットだが、その様子は子供に近い。
「私達もいこっか?螢」
「うん、一緒に選ぼう」
「貴女の私服もね?」
「確かにその服は・・・」
「それは言わないで、お姉ちゃん・・・セシリアさん」
螢は自分の私服に関してセンスが悪いのを自覚してるらしく項垂れた。
ショッピングモールに入ったと同時に女性陣は買い物を始めていた。
シャルロット、ルサルカと鈴は臨海学校の為の水着を探しており、ベアトリス、セシリア、ラウラ、螢は私服と水着を選んでいる。
男性陣の二人は荷物持ちをしながら自分達の買い物も済ませていた。元々、水着だけを買いに来たので荷物は少ない。
「そこの男共!これ片付けておいて!」
命令口調で一人の女がフォルとサタナの目の前に女性用の下着や水着が入った買い物カゴを置いた。
「ああ?なんで俺達が見ず知らずの奴が散らかしたのを片付けなきゃなんねーんだ?」
「これはアンタが自分で入れたものだろう?自分で戻すのが筋だよな?」
二人の反論に女は奇声を上げながら睨みをきかせ、口調を荒げ始めた。
「男風情が女の私に口答えしても良いと思ってるの!?警備員呼ぶわよ!!」
「呼べるなら呼んでみな?俺達は荷物で両手が塞がっている。乱暴されたと言っても取り合わねえぜ?」
「それに監視カメラでの映像もあるだろうからな、意味がない」
「なによ!私は女よ!ISを動かせるのよ!」
切り札を出したと勘違いしているような女の言動を聞き流していたが、フォルとサタナはほんの少しだけ殺気を出した。
「ISを動かせるだぁ?なら専用機は?所属は?今ここでISを出してみろや!」
「アンタはISを実際に動かした事もないただの一般人だろう?女にしか適性が無いというだけで自分が特別だと思うな!」
「ぐっ!あ、アンタ達!タダじゃおかないわ!名前!そう!名前を教えなさいよ!」
「必要ねえな、だってお迎えが来たぜ?」
女の後ろには警備員が二人、女の腕を掴んでいた。
「な、何するのよ!悪いのは私じゃない!!あの二人よ!」
「ほかのお客様の迷惑となりますので」
「こちらへお越し下さい」
女は警備員に連行されていった。俺達に対して何か言っていたが気にしても仕方ない。
「はぁ、疲れたわ。女尊男卑に染まった女の相手は」
「全くだな、あんなのが多いからおかしくなっちまってる」
二人が短く会話している間に女性陣の買い物が終わったらしく、全員が合流し昼食をとった。
◇
「では、そちらの手番ですぞ?獣殿」
「ふむ、ならば」
同時刻、城の内部では双首領の二人が揃い、チェスを始めていた。
「この城に来てから、どうやら篠ノ之束が己の渇望を無自覚に発現しかけている様子」
「ほう?だが、それも我らにとっては」
黒色の駒を動かしながらも会話をやめない二人は笑みを浮かべ続けている。
「然り、既に経験してるが流れがほんの少し変わっている次第」
「それは興味深いな?して、どのような」
「
「織斑千雨、卿が聖遺物を渡した者か。篠ノ之束も鍵とはな」
「篠ノ之束は特定の共存しか望んではいなかった。だが、今回はまるでマルグリットと似た望みを抱き始めている」
「あの者が、か。それだけではあるまい?」
「もちろんですとも。そして織斑千雨、彼女は己のみを良しとする渇望を抱いている。きっかけを与えたのは私だが同じ事を繰り返すことになろうとは」
カールは白色の駒を動かし、黒色の駒を退ける。それを見たハイドリヒは次の一手を打つ。
「あくまで、
「織斑千雨は我らが守護する者を殺そうとした。カールよ、この世界でその傾向が現れているのだろう?」
「ええ、私の代替は女神の刃として自立している。それに代わる刃を作り出さねばならない」
「それが模倣者という訳か」
「そう、彼には我が息子と女神に出会ってもらわねば刃とならぬのです。そのための手筈はしましたがね」
「して、もう一人の英雄には?」
「彼にも会ってもらうつもりだ。彼を見守る
笑みを深くしたカールは黒色の陣へ駒を進め、チェックメイトと宣言した。
それと同時にハイドリヒも笑みを深くする、かつて宇宙を三色で塗りつぶさんとした戦争の時のように。
二人にとっては未知以外に興味はない。しかし、守護者の役割を忘れている訳でもないのだ。
女神の統治を消滅させるわけにはいかない、次に座を狙う者あらば倒さねばならぬと。
史上最悪の座は決して成立させてはならない。女神以外に消滅させられるなど嫌だ、認めない。
この世界は誰もが幸せになれるよう統治されてはいるが、限界はあるのだ。
だからこそ、彼女には次世代へ繋ぐべき相手を見定めてほしい。
その時、私は私の使命を女神の手で終える事ができるのだ。
「生きる為に何を飲み、何を喰らっても足りる訳がねえ」
「満たされたら何も残らねえ」
「飢え続けろ」
「それが生き様だろう」
演説・???
※短いですが次回は福音編です