無限の成層によるDies irae   作:アマゾンズ

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「■■の修羅に敬意を評する」

「お前の忠こそ■■にとっても至高の天であったのだろう」

「彼の地でお前が■の■を許せるようになる事を■も願う」

「良き出逢いを、■の英雄。お前も俺が尊ぶ■■だ」

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「我は永劫に御身の爪牙!」

「私の魂は・・・今も貴方の愛で溢れている」

「貴方に捧げるこの忠こそが私にとって焼身の剣」

「胸に修羅の矜持がある限り、無限の強さを得られるだろう」

演説 天■・■刀 御■龍■


※捕捉

今回の話では千冬がものすごくエグい目に合いますので千冬ファンの方は注意してください。それでも一向に構わんッッ!という方は進んでください。


第七劇 刻傷

焦熱の世界に入った二人は今もなお戦い続けている。

 

しかし、この世界は炎そのもの。生身の人間が耐えられるはずがなかった。

 

「く、くそっ!があああ!」

 

「どうした?逃げようとしても逃げられんぞ?この世界に出口などない!」

 

膝を折れば地に焼かれ、壁に当たれば背を焼かれ、相手は砲撃のように炎を撃ち込んでくる。

 

「化物が・・!」

 

千冬はそうつぶやいた。自分以上の強者などいないという自分の考えを真っ向から崩しに来ている相手が居る。

 

どうあがいても勝てる要素は何一つ見当たらない。

 

「燃え尽きろぉ!!」

 

フォルは本来の使い手であるザミエルのような威力が無いことを知りながらも炎を放ち続ける。

 

「!!」

 

千冬はそれを避け続け、ついには自分の間合いの中へフォルを捉える事に成功し横へ刀を薙いだ。

 

「終わりだ!」

 

自信の一太刀を浴びせた千冬は自分の勝利を確信していた。

 

しかし、それは泡沫の夢と消えていく。

 

「なに・・・!」

 

フォルは千冬の刀の刀身を腕で止めていた。

 

しかも、その身には炎が燃え上がり、刃を押しとどめている。

 

「近づいたな?」

 

フォルは炎を集中させ、極大な砲撃を至近距離で千冬に浴びせた。

 

「ぐああああああああああ!?」

 

「ザミエル卿と口調が似てるだけで強さが違いすぎる」

 

『貴様は引っ込め。私の気が済まん』

 

「(えっ?)」

 

フォルは呆気にとられると髪の色がザミエルのような赤に変わっていく。

 

「『こいつが我が君を侮辱した者か』」

 

身体はフォルだがその雰囲気は軍人、それもかなりの階級の人物であることが分かる。

 

千冬は刀を支えにし、立ち上がると口を開いた。

 

「貴様・・・何者だ?」

 

「『聖槍十三騎士団黒円卓第九位・大隊長、エレオノーレ・フォン・ヴィッテンブルグ=ザミエル・ツェンタウァ』」

 

「!?」

 

聞きなれない名前だが女性である事は分かる。

 

「『模倣者の身体でしかも今の私は欠片だからな。会話と軽い技しかできんが十分だ』」

 

千冬を捉えるその目は明確に逃がす事はないと殺気で教えている。

 

「『燃え尽きるといい』」

 

軽く手を振った瞬間に炎の壁が千冬に迫り、全身を包み込んで燃え上がり始める。

 

欠片とはいえ、本来の使い手が操作する炎は決して消えることはない。

 

「ぐあああああ!!がああああああ!」

 

「『ふん、この程度の火力で喚くか。出しゃばり過ぎた、戻させてもらう』」

 

「っ・・」

 

髪の色が元の色に戻るとフォルは自分を取り戻した。

 

先ほどの出来事は近衛兵であり、黄金に最も近い赤騎士だからこそ出来た事である。

 

 

「ぐ・・・・くっ・・」

 

全身が炎による傷で千冬はほとんど戦える状態ではなくなっていた。

 

「ザミエル卿が何をしたか知らねぇが。ふん、世界最強と言われたブリュンヒルデ様が炎で負傷とはなんとも皮肉が利いてやがるなぁ?おい」

 

「ふざ・・けるな!」

 

フラフラになりながらも刀を使い、フォルへと斬りかかる千冬だが万全ではないために一向に当たる気配はない。

 

「止まって見えてるっての!」

 

「ぐあっ!?が・・・は!」

 

炎を宿した拳で千冬の腹部を殴った後に崩れかけたところを首を掴み、焦熱と化している地へ叩きつけた。

 

「ぐあああああ!!」

 

それと同時に砲身の世界が霧散し、元のアリーナの状態へと戻った。

 

二人が現れたのを確認した三人は驚きのままだった。

 

「さっきの創造、一体誰のよ・・・」

 

「わかりませんよ・・(まさか、ヴィッテンブルグ少佐?)」

 

「炎の中で一体何が?」

 

千冬を首から頭の髪を掴み、フォルは空いている右手に炎を纏わせた。

 

「お前が相棒に近づけない印をここで刻んでやるよ。永久に消えない印をな!」

 

「な・・・に!?」

 

フォルはそのまま右手の人差し指と中指を立てると千冬の顔へ近づけていく。

 

その意味を理解したのか、千冬はフォルから逃れようとするが全くの無意味だ。

 

「あ・・・!や、やめ・・ろ!やめて・・くれ!!ぎゃあああああああああああああああああ!!」

 

「ハイドリヒ卿を侮辱し、相棒すら自分の所有物と考えている。このくらいで済めば安いもんだろうがよ!まだまだ刻みは終わってねえぞ!」

 

それは目を覆いたくなる光景であった。

 

フォルは炎を纏わせた指で千冬の顔の左半分をザミエルのような火傷を負わせ始めたのだ。

 

「あ・・・が・ああ・・・」

 

「これでお前はもう相棒に近づくことは出来ねえ。左半分全てじゃないが印としては十分だろうよ」

 

千冬は火傷を負わされた顔の左半分を押さえながら地に伏せっている。

 

「うっわ~、エッぐーい。あれはキツいわね」

 

「やりすぎですよ!いくら気に食わないからって」

 

「・・・・あ・・・あ」

 

ルサルカは笑っており、ベアトリスは怒りを見せ、セシリアは震えていた。

 

「・・・いいか?二度と相棒に干渉するなよ?あんな態度でまた相棒に干渉したら・・今度は印じゃすまねえ、その首を胴体から飛ばしてやる!」

 

「っ・・・っ・・・」

 

「だが、自分の所有物としての考えを改めるんだったら俺は何も言わないけどな?」

 

フォルは千冬に近づき、さらに一言言い放つ。

 

「それが出来ない無いなら近づくな。私の家族だ?私の物だ?笑わせるなよ、相棒に甘ったれてる奴が!真に愛するなら今の自分を壊せ!それが相棒に対する最大の信頼になる」

 

奇襲を警戒してか刀を蹴り飛ばし、フォルはアリーナから去っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フォルが去り、観戦者も去ったアリーナで千冬は仰向けに大の字になったまま天井を見つめていた。

 

『笑わせるなよ?相棒に甘ったれてる奴が!真に愛するなら今の自分を壊せ!それが相棒への最大の信頼になる』

 

「真に愛するなら今の自分を壊せ・・・か。奴はきっかけを与えてくれたのかもしれんな」

 

千冬は自虐的な笑みを浮かべ、押さえたままの顔の左半分の痛みをしっかりと受け止め過去を振り返った。

 

一夏が必死に頑張っていたことを認めずに千雨のみを見ていたこと。

 

自分から何故離れていったかを考えずに自分の中にある形だけで弟を見てしまったこと。

 

ありとあらゆる過去を振り返ったが結局は自分が原因だという事に気づいただけだった。

 

「ふふ・・・情けんな。世界最強の肩書きなぞ何の意味もなかったのだ」

 

「私はただ、家族を・・いや家族という名の箱庭を守りたかっただけ。それだけだ」

 

千冬は目を閉じると同時に目を瞑るとそのまま気を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、フォルは職員室に赴き合意の上で戦ったことを伝え織斑先生を負傷させてしまった事を報告した。

 

お互い合意の上だったという事でお咎めはなかったが、清掃活動をするように言われた。

 

「このくらいの罰なら安いもんだな。って・・・・なんでいるんですか?ベアトリスさん?」

 

「当たり前でしょう?監視するために来てるんです!サボリは許しませんからね?」

 

「へーい」

 

こうして学園生活へと戻っていく。しかし平穏とは刹那のごとく過ぎるもの。

 

戦いはすぐにやって来る。それも三つの流れを持ちながら。




「これにて戦いの幕を一旦下ろすとしよう」

「まだまだ、この物語は始まったばかり」

「慌てなくとも開幕はすぐだ」

「では・・・私は」

「舞台装置を用意するとしよう」


演説・水銀の蛇

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