まずいシリアル食ったら死んだ。 —Muv-Luv— 作:アストラ9
どうも、作者です。
この作品のタイトルは多少の嫌みを込めた物となっています。
猛毒は入っていませんが、実際に買ってみて後悔しました。あんなまずいモノはもう食べたくないですね。
それとこれからこの作品を読む方々へ一言。
この作品はあらすじとは全く関係ありません。テロの事なんて全く出て来ませんし、シリアルを買う描写なんてありません。
なので私としては、
あらすじ: 主人公は死ぬ前に何処にいたの?
1話 : 主人公は誰なの?
2話 : 主人公はどんな機体に乗るの?
↑の事について書いているんだ、という事を考慮に入れて貰えれば良いんじゃないかな、と思います。多分そっちの方が戸惑わないと思いますし。
では、本編どうぞ。
"黒い鳥" と "財団"
……ん? ここは…何処だ?
青年は何もない真っ白い空間で目覚めた。
辺りを見渡すが、見渡す限り真っ白い空間が広がっているのみ。今自分が何の上に立っているかも怪しい。
青年は考える。何故自分はこんな訳のわからない場所にいるのだろう、と。そもそも自分は今まで何をして……。
そこでふと気付いた。
——俺は誰だ? ここは何処だ? 今まで何をしていた?
あらん限りの疑問が頭の中で生み出されていく。そんな中。自分に真後ろに何かの気配を感じた。誰かに見られているような、そんな感覚。
青年は勢いよく後ろを振り体術の構えを取る。
そしてその構えをとった先にいた人物とは……
「……何をしているんだい? 君」
漆黒のスーツを着こなした金髪の男性だった。
青年は慌てて謝罪の言葉を述べた。
「……はぁ、全く。こんな空間に呼び出されて混乱するのも分かるけど、少しは落ち着きを持った方がいい」
その言葉に青年が反応した。何か知っているのか、と。
スーツの男は答える。
「知っているも何も、君を呼び出したのはこの僕だよ?」
「……」
青年は唖然となって、言葉を失った。
そして、その男の顔をもう一度見て、頭に ⁉︎ のマークを浮かべた。
「……君は少し面白いね。今までも何人か送り出した事があるけれど、君みたいなのは初めてだ」
スーツの男は青年の事を、"変な奴" と認識したようだ。
「……」
「なんだい、その目は。言いたい事があれば言えばいいじゃ……ってそうか、君の音声システムは切ってあったんだね。今解除してあげるよ」
男はスマホのような物を弄る。
しばらくすると、青年の息が詰まるような喉が解放された。どうやら解除とやらは出来たようだ。
青年は質問を投げかける。
「おい、ここは何処だ! それになんで俺はこんな所にいる! 第一に俺は誰だ⁉︎」
「記憶喪失者が第一に発するような言葉じゃないね、それ。最後に自分の事について聞くなんてね」
「いいから質問に答えろ!」
青年の鬼のような剣幕に男は、やれやれ、といったような仕草をした後、答える。
「それじゃあ、自己紹介も兼ねて順に説明していこうか。
まず第一に、君が何故ここにいるか。それの回答はさっきも言った通り僕が君を呼び出したからだよ」
「そんな事はもう分かってる! なんで俺がここにいるのか——」
「騒がなくてもちゃんと説明するよ。だから少し黙っていてくれないかい?」
「……」
青年はその男の言葉に少しの違和感を感じながらも黙り込む。何を違和感に感じたのかは青年には分からなかった。
その様子に男はへぇ…、と含みのある言葉を呟いて、笑う。
「どうやら君は僕が思った通りの人物だったようだね。まさか僕の人生を狂わせた張本人と出会うなんて」
「…? 何を言っているんだ?」
「……そうか、今の君に言っても何も分からないわけだね。だったら思い出させてあげるよ」
そう言って徐に腕を伸ばして俺の頭を鷲掴みにし、力をッグっと入れてきた。頭がミシミシいっていて、とてつもない痛みが身体中を駆け巡る。
そして、俺の中を駆け巡ったのは痛みだけではなかった。ありとあらゆる記憶、思考、技術が俺の中に入って来たような感覚。そんなものが感じられた。
「……よし、どうやら僕の持つ全ての知識は入れ終わったようだ。どうだい、調子は?」
「……ああ、良好だ。とでも言えばいいか? 『財団』」
「くくく、懐かしいね、そのフレーズ。君との最終決戦で『彼』が放った言葉、それをもう『記録』から引き出したとはね。
恐れ入ったよ、『最初の"黒い鳥"』」
「ふん、今はそんな大した存在ではない。ただの死んだ一般人だ」
そう、今の俺は只の
「さて、それじゃあ今回君を呼んだ訳を説明させて貰うよ。
まず、君は現代日本で死んだ、これは分かるね?」
「ああ、勿論だ。まあ、
「まあ、コレばっかりは運が無かったとしか言いようがないね。まさかシリアルを標的にしたテロに会うなんて、誰も想像できないと僕は思うよ」
「まあな」
本当に何故あんな物を買ったのだろうか。悔やんでも悔やみきれない。
子供の頃に美味かったシリアル買ったら死んだとは……意味が分からなすぎる。
「君は現代日本で死んだ。そしてその死んだ君の……便宜上『魂』とさせて貰うそれを回収した訳だ。
この回収される対象には現代日本で死んだ有能な魂が当てはまる。つまり君みたいな逸材が対象って事だよ」
「っふ、シリアルで死んだ人間の何処が有能なんだか」
「いいや、間違いなく君は有能だよ。戦闘に関してはね。その証拠に君の『魂』は色々な世界で『
「……たまたまだ。たまたまそいつらの戦闘能力が高かったんだよ」
俺は別に何もしていない。最初の『シティ』を巡る戦いの時だって、運が良かっただけだ。『シティ』に戻って来た時に仕掛けられた戦闘に勝てたのも運。別に俺が何かをした訳じゃない。
「ま、自分の実力を認めてないのも君の面白い所なんだけどね。
話を戻すよ。回収された君には幾つかの選択肢がある。
一つは転生者として『作られた世界』で暮らして貰う事。
一つは僕達『神』の一員となり、下っ端の職業について貰う事。
一つは僕達『神』のモルモットになる事。
この3つが本来君に与えられる選択肢だ」
「へえ、
と言うよりも、天国に行くという選択肢はないのか?」
「うん、ないよ。君たちのような有能な者はね、再利用するというのがこちらでの常識なんだ。
というのも天国というのは『洗浄機』なんだよ」
洗浄機だと? どういう事だ。
財団は続ける。
「魂っていうのは一度下界に降りた際に"色"がつくんだよ。そしてその色というのが人間のいう"才能"って奴だ。
その才能には色々な種類があって、レア度やグレードが違う。
そしてその幾千もの魂からレア度が高い魂が回収される。その他のどうでもいい魂は天国、即ち『洗浄機』に掛けられて魂に記録された全てが抹消される、というのが現状だ」
「どうやら神の世界は人間の政府機関のように真っ黒のようだな。不正なんかもありそうだ」
「うん、勿論あるよ。日本のある地球政府よりも黒いかもね。何せ人権なんて物はないのだから」
なに? 人権がないだと? それでは安心して暮らす事など不可能ではないのか?
「まぁ、君のいた世界はとてもいい世界だって事だよ。テロや戦争こそあったが、人権などはちゃんと守られている。他の世界にはあまり見られないよ」
……ああ、確かに言われてみれば納得だ。最初の世界でも人権なんて無かったな。いや、あんな寂れた世界で人権などという物がある方がおかしいか。
そして、そこまで普通に話を聞いていて思った事がある。
「なあ財団、お前はもしかして『神』なのか?」
その質問に財団は肯定の意を示した。いつの間にこんな凄い奴になったんだ、財団。
「まあ、神っていうのもあんまり面白く無いけれどね。僕の仮説を証明する為に神になったんだけれども、上司が中々させてくれないんだ。お陰で君に会うまですっかりそれの事を忘れていたよ」
「仮説っていうのはあれか……」
そこで一旦言葉を区切る。そして静かに息を吸い込んで、言った。
「「『人は、人によって滅びる。それが必然』」」
財団と息が合ってしまった。おかしいな、あの世界では敵同士のはずだったんだが。
財団は口を開く。
「ま、今思い出したからいいけどね。
さて、それじゃあ本題に入るよ。君には先程3つの選択肢があると言った。けれど君にはそんな物は与えない。与えるはずがない」
「ほう…、何をするつもりだ?」
「君には"オリジナルの世界"で一仕事をして貰う。尚、反論は認めないよ」
「オリジナルの世界……?」
オリジナルの世界。財団に説明された内容はこうだ。
世界は大きく分けると、神の住む世界と、悪魔や死神の住む世界、俺たちのいる世界の3つに分けられる。
そして俺たちの世界、日本や最初の世界にも幾つかの世界があり、こちらも大きく分けて3つある。
一つ目は先程財団が言った『作られた世界』。これらは神の
2つ目は神達による介入が既に起こっている世界。俺や財団が最初にいた世界、『
3つ目に、神達による介入がされていない俗に言う『未確認世界』。このような世界が存在するのは極めて稀な事。神が対処できない事が少ないからだ。
だが、神にすら対処できない世界がある。それはその世界に存在する者が神に匹敵、またはそれ以上の力を有する場合又は、神にすら対処出来ないほどの物量の敵対生命体がいる場合。この2つが主な原因らしい。
そして、オリジナルと呼ばれる世界はこの内2と3の世界が当てはまるそう。そして中でも俺が行く世界は3の方の世界らしい。……は?
「おい財団、お前は何を言っているんだ? 神にすら対処出来ないような世界に一般人を放り出すなんて、何を考えているんだ?」
「大丈夫だよ、君は今まで色々な組織、最終兵器、人類すらほぼ壊滅状態に追いやったじゃないか。その実力があればなんとかなるはずだよ」
「だが今までとは勝手が違うんだぞ⁉︎」
「心配性だね。大丈夫だよ、今回君にはちゃんとACを用意するから」
そう言って財団は懐から一機のスマホを取り出し、俺に渡してきた。
電源はちゃんと入っているようだが……これは?
「それは僕と通信したり、ACをアセンブル、呼び出す事が出来る代物だ。一応電源を無限にしてあるけれども、壊さないでね。予備は君の家にある2機のみだから」
「財団、ACをアセンブルと言ったが、まさかこれは……」
「ああ、君の予想通り君の魂が散らばった先の全ての世界のACが使えるよ。Vだって、
「……」
財団の言う通りならば、これはかなりの戦力になりそうだ。
ネクストなんて使えれば速攻で敵なんて排除が可能だろう。……その代わり汚染がマッハで広がるがな。
「さて、そろそろ時間……ああ、そうだ。一つ言い忘れていた事があった」
「なんだ?」
「今回無理やり未確認世界に送り込むに当たって少し制限をかけなきゃならない。具体的には、パーツ制限、世代制限とかがかかる」
「制限、だと?」
「具体的にはパーツは現物・弾薬は実際に買わないと使えない、とかだね。そのスマホの中に情報は入っているからあっちで読んで貰えばいいよ」
そして財団は懐からまた何かを取り出してこっちへ近づいてくる。なんだか嫌な予感が……。
「それじゃあ、あっちの事は頼んだよ、黒い鳥」
……そして、財団によって首にスタンガンを当てられた俺はめでたく気を失う事となった。そこから先に何があったのかは全く分からない。