まずいシリアル食ったら死んだ。 —Muv-Luv—   作:アストラ9

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 どうも。作者です。

 最近、事後処理的な話が多くて飽き飽きして来ています。そろそろ戦闘回が欲しいくらいですね。

 まあもうちょっとで原作ルートに戻れそうですから、我慢してください。

 それにしても……なんだろうか、今日はお腹の調子がすこぶる悪い。
 もしかしてさっき食べた、揚げ餃子(皮だけ)の所為かなぁ? 賞味期限十日切れてたし、ちょっと黒点々もあったから、そうかも知れないな……。

 まあいいや。

 どうせ死にやしないし。悪くても腹のナニカが壊れるだけだろうし。

 とりあえずくだらない話はここら辺で。
 本編、どうぞ。
 


スパイ と 妹

 

 リィズ・ホーエンシュタイン。

 

 テオドール・エーベルバッハ少尉の義妹であり、テオドールの最も大切な人の一人である。

 

 テオドール達が西ドイツへと亡命している途中に、東ドイツの武装警察、シュタージに拘束。

 その際に両親(テオドールにとっては義理の父母)は射殺され、リィズとテオドールの二人はシュタージに逢えなく拷問される事となる。

 

 そしてテオドールはその拷問に耐える事が出来ずに、父母が持っていた情報を漏らしてしまう。

 その時点はテオドールはシュタージに処刑される筈なのだが……何故か彼は突如、解放される事となる。

 理由は不明。そして、義妹のリィズの行方も、不明。

 

 リィズを探し回ったテオドールだが、最終的に食うものが無くなり、軍に入る事を決意した。

 

 ……という、悲劇の兄弟劇が、テオドールにはあった。

 

 勿論、この際にテオドールは自分の持ち得る全ての力を使ってリィズを探したが、結果は、『不明』という、歯軋りするようなものだった。

 そして、テオドールはある一つの答えを手に入れる。

 即ち、彼女はシュタージに処分されたのだと。

 胸が痛い話だが、テオドールはこの可能性を重く受け止め、この後の人生を歩んでいく事となる。

 

 そんな行方不明の義妹、リィズだが……いた。

 

 スタスタと歩いて部隊のミーティングルームの前へと出てくる、金髪の美少女。

 彼女は黒板の前でビシッと敬礼し、自己紹介を始める。

 

「リィズ・ホーエンシュタインです。宜しくお願いします……って、お兄ちゃん⁉︎」

 

 そして、即座にテオドールの元へと飛びつくリィズ。

 呼びつけられた当の本人は頭に小さな"?"を浮かべていた。

 そんな中、リィズが今までいた場所の横ではアイリスディーナが腰に手を当てながら、

 

「……今、自己紹介した彼女が本日東欧派遣兵団より補充として着任した、リィズ・ホーエンシュタインだ。

 彼女が1日も早く中隊に馴染むよう、気を配って欲しい」

 

 そう定型文を読み上げるようにいう彼女に、リィズは反応を示さない。

 が、その当の本人は既に、馴染んでいるようだった。……義兄の胸元で。

 

「良かった……会えて、本当に良かった……!!」

 

 彼女は男の胸元で涙を流す。

 その涙に、嘘偽りはないように見える。

 テオドールの方もまんざらではなさそうだ……が、彼女の行動を、周りの面々は強く見つめる。その中には、テオドールすらも入っている。

 

 実はここに居る全員が、彼女の行動に目を光らせているという事に、彼女はまだ気づいていない……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「義理のいもうとぉ? はぁー、道理で似てないわけだわ」

 

 食事の席で、呆れ顔のアネットが言った。

 ここはベーバーゼ基地の食堂。

 今は中隊メンバー全員で、食事会のようだ。

 

 ヴァルターとシルヴィアでひと席、

 グレーテル一人でひと席、

 残りのメンバーでひと席の、計3席を一つの中隊で占拠している。

 グレーテルはぼっち席である。

 

「義理ですけど、正真正銘の兄弟ですよ。

 それよりも、驚きました。まさかお兄ちゃんの周りにこんな美人さんが沢山いるなんて!」

 

 その言葉に、アネットとグレーテルは肩が跳ね、ファムはニヤリと微笑。アイリスディーナは気にせずに食事を続けている。

 ヴァルターとシルヴィアに至っては、遠くの席にいるため、気が付いて無いようだ。

 

 その反応を見てリィズがニヤリと一笑い。

 アイリスディーナをチラリと見て、

 

「そう言えばお兄ちゃんって、金髪でスタイル良いお姉さん、大好きだったよね〜。……ベルンハルト大尉みたいな!」

 

 爆弾発言を投下する。

 

「……ェハッ⁉︎ ば、バカっ! お前何言って……!!」

 

 その言葉にいち早くテオドールが反応する。

 まるで、何かを隠す子供のように。

 その反応を面白がって、リィズは更に追撃する。

 

「え〜。でも昔、ベットの下にあったよ。金髪のお姉さんのヌード写真」

 

「あ、あれはクラスメートから渡って来ただけで! 別に俺のって訳じゃあ……!」

 

「へぇ〜、可愛いとこあんじゃん。あんたも普通の男の子だったのね」

 

 そのあたふたを見て、アネットもが追い打ちを仕掛ける。ドSである。

 テオドールは顔を真っ赤にしながら羞恥心を隠すように、言った。

 

「う、うるせぇ!!」

 

 テオドールよ、それは、逆効果だ。

 そんな照れ隠しでは、彼女達には丸わかりである。

 

 

 

 そんな感じで場が和んできて時、リィズは顔を上げて、口を開く。

 

「あ、そう言えば。

 皆さん、"黒い亡霊"の事は知ってますか?」

 

「「……⁉︎」」

 

 何気ないリィズの質問に、アネットとグレーテルが肩を震わせた。

 それを脇目に見ながらリィズは、再度問いかける。

 

「あれ? どうかしたんですか、2人とも」

 

 その追撃に、問いかけられた二人はあたふたする。

 が、

 

「な、何でもないよな、2人とも。

 そんなことよりもリィズ、なんでいきなり"黒い亡霊"の話になるんだ?」

 

 2人の状況を鑑みて、すかさずテオドールはフォローをいれる。

 テオドールのこのファインプレーとも言える行動に、2人はただ頷くしかなかった。

 リィズは(ほお)けたような顔をして、

 

「え〜、だって気になるじゃないですか。

 戦術機の1/2程度の大きさながら、その戦闘力は戦術機の何倍も上。

 更に単機で戦っていると言うのに複数の相手に反撃の隙も許さない技量。

 こんな面白い話題、他に無いですよ!」

 

 その言葉に一同の顔が引き締まる。

 

 確かに、彼女の言う事は最もである。

 彼の戦闘能力には、目を見張るいや、目を奪われる程の物がある。

 

 初遭遇時には部隊の真近くにいたBETAを一掃、一瞬の迷いなく自分の戦術機にイングヒルトを運び込んだ。

 BETAを殲滅するだけでなく、自機を飛び出して人命救助など、並大抵の精神の持ち主では出来ない。

 

 技量だけでなく、度胸もあると見て良い。

 

 二回目の遭遇時には、東ドイツの高級機である、MIG-23 チボラシュカの部隊を襲撃していた。

 

 しかも、全滅直前にまで追い詰めて、だ。

 

 数の暴力など彼には効かないとばかりに各機撃破していき、最後にはあの、ベアトリクスまで大破に追い込んだ。

 BETA相手に単機で舞った事も驚きだが、ベアトリクスを大破までに追い込んだのも、相当なものである。

 

 東ドイツ最強と名高い、彼女までも撃破されてしまったのだから。

 

 そして、先日の謎の兵器によるノィエンハーゲン要塞襲撃。

 

 彼らはBETAとは似てない姿ながら、蟲のような姿で現場に現れていた。

 鋼鉄の装甲に包まれた、蟲型の未確認兵器(生物)。こんなものは、アイリスディーナも、というよりは部隊の全員が見た事が無かった。

 更にレーザーすら吐くという。レーザーという超兵器を装備した生物兵器。そんなものに、戦術機が勝てるのだろうか?

 

 結論から言えば、勝てないと言って良いだろう。

 

 現在、戦術機の撃破敗因の何割かは、光線(レーザー)級のレーザーによって撃破されたものが殆どである。

 長距離射撃能力と弾速、威力が桁違いなのだ。

 

 そもそも、戦術機にはレーザーを無効化、軽減する装備は搭載、開発すらされていない。

 何をどうすれば対光線(アンチレーザー)装甲が出来るか、検討がつかないのだ。正確には戦術機に搭載できて、光線(レーザー)級の光線(レーザー)に対抗できる装甲が、だが。

 そのため現在は、鉛粉を撒き散らしてレーザー照準を撹乱させ、半無効化する、ALM(対レーザー弾頭)というもので対応しているが……せいぜい目眩し程度が関の山。

 結局自機に当たるか当たらないかは、五分五分なのである。

 

 そして、そんなレーザーを近距離から撃ってきて、数も多くて、移動速度もそれなりにあるディソーダーのものなど、一撃でも被弾してしまえば大変な事になってしまうという事は、容易に予想できる。

 

 そんな相手を、エーアストは撃破していった。単機で、ディソーダー全部を、である。

 ディソーダーの事をあまり知らない彼ら(テオドール達)からすればディソーダーのその脅威にまだ気付いていない。

 が、レーザー兵器を所持しているという事を知ったら、どんな顔をするのか。

 そんな事すら容易に想像できてしまう。

 レーザーという言葉に、この世界の人間は過剰なほどの反応は示すのだから。

 

「(確かに(エーアスト)の戦闘能力は目を奪われる程の物だが……奴の情報収集能力にも、目を配らなければならないな)」

 

 リィズの言葉を受けて、アイリスディーナは思考する。

 

 確かにエーアストの戦闘能力は凄まじい。それこそ、人間のそれを容易く超えていく程に。

 

 戦場を単機で駆け巡り、自分以外の機体を手助けする。

 

 東ドイツ最新鋭の機体駆る部隊を単機で全滅寸前まで追い込む。

 

 事ある毎に、様々な機体を乗りこなしている。

 

 これ程の人材が、他にいるだろうか?

 否、そうそういるようなものでは無い。その時代のイレギュラーと言える程の存在だろう。……まあ彼はこの世界の人間ではないが。

 

 それに加え、(エーアスト)は自分達の祖国、東ドイツの秘密すら手に入れていた。

 

「(この娘(リィズ)がシュタージだという情報を、まさかあの時(交渉直後)に渡してくるとは……)」

 

 アイリスディーナは自分の部屋にある資料の事を頭に思い浮かべる。

 

 あの交渉が一段落ついた後、エーアストはアイリスディーナに近づいて行き、書類の束をポンと渡して、

 

「あ、そうそう。コレ、シュタージに関係している奴らの情報ね。頻繁に密告している奴とかピックアップしてるから」

 

 東ドイツの機密情報とも言える物を軽い感じで手渡ししたのだ。

 この言葉には耳を疑った。

 シュタージに関係しているもののリストだと?、何故お前がそれを知っているのだ、と。

 しかしその資料には確かに、シュタージに関係している者が多く見受けられる。一部は彼女の方でも確認していた者達だ。

 更にその他にも"黒い亡霊"に関する調査報告や、機体調整など、密告者のリスト以外の情報も載っている。それどころか、自分達の情報すら載っているではないか。

 

「一応色々調べてたものだから、協力者となったお前らにも渡しておく。参考程度には覚えておいてくれ」

 

 ぬけぬけとそう言い放つ彼に、アイリスディーナは疑問をぶつける。

 

「エーアスト殿、これは見た所軍の最重要機密文書に見える。しかも軽く見て見た所、ごく最近のものまで記載されていた。

 貴殿は一体、何処でこんな物を手に入れたんだ?」

 

 そう、これは軍の最重要機密文書。公の場で手に入るような、それどころか軍の中でも一部しか知らないような物だ。

 外部の人間が持っていいようなデータでは無い。

 

 そんな彼女にエーアストは一言、

 

「ん、別に大したことはしていないさ。

 ただ俺ん所にはちょっとしたハッキングツールがあるってだけだ」

 

 まあそのハッキングツールとは、太平洋に浮かんだAF(アームズフォート)の事なのだが。そんな事はその存在すら知らない彼女達に言っても、分からないだろう。

 第一、各所の衛星をハッキングしているのがコレ(AF)なので、彼らが知る事すら困難である。

 

 そんな訳で、アイリスディーナはこの交渉で知った訳だ。

 

 (エーアスト)には、(戦闘力)があり、国の機密情報を盗める程の機関が絡んでおり、更に軍の一部を接収して自軍に仕立て上げる程の財力もある、と。

 

「(奴を信じきるのもどうかと思うが……今は信じてみるのもいいかも知れないな)」

 

 彼の軍事力には、かなりの物があるのは分かりきった事だ。

 後は、それをどう利用するのか、だ。そこがキモとなるだろう……。

 

 そんな場違いな構想を、アイリスディーナは食事を口に運びながら考えていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くしゅんッ! ……なんだろうか、風邪でもひいたか?」

 

 ちり紙を取り出し鼻を擤む男、エーアスト。

 その手には機械図面や何かの基準で振り分けされたリストが載っている端末が握られていた。

 そしてここはノィエンハーゲン要塞陣地内の兵器ドック。ドック内には幾つかのMTが見られる。

 

 どうやら今は、新規機体を搬入している真っ最中のようだ。

 

「んー、風邪を引くような身体ではないんだがな……」

 

 そう言いながらちり紙をポケットへと戻す。

 その目は既に、端末の方へと向けられていた。

 

「うーむ、召喚場所をここにセットすれば楽だが……まだそれを見せるのは早いか」

 

 本来ならば機体の搬入は、手元端末で購入すれば、すぐ目の前に召喚できる。

 燃料も装甲も準備万端の状態で、だ。

 

 だが、普通の人間はそれを見たらどう思うだろうか。

 当然、驚きなんてもんじゃないほどの、感情を抱く事だろう。

 

 空虚から機動兵器が出現する。

 

 これ程恐ろし(面白)い事は無い。

 物理学やらなんやら学んでいる者からすれば、天地がひっくり返った時のような反応を、見せるんじゃ無いだろうか。

 

 だが、そんな事では困る。

 

 自分(エーアスト)の所で働いて貰うのだ。そんな事で驚くようではこれから使う様々な兵器群を使いこなせないだろう。

 

 だから、最初は優しくやっていく。

 

 例えるならば、ドラクエだ。

 

 主人公は魔王を倒す旅に出る事が多い。勿論、それ以外もあるが、今回は割愛する。

 そんな魔王だが、最初から挑んで勝てるのだろうか。

 いいや、勝てない。その圧倒的なレベル差によって、ワンパンされてしまうだろう。

 

 だが、その間に雑魚戦や中ボスを挟めば、どうだろうか。

 レベルが上がり、タイマンでも中々の戦いを繰り広げるであろう。

 そしてめでたくハッピーエンド。主人公は勇者として祭り上げられる……。

 

 まあ何が言いたかったのかと言うと、少しずつ小さな事から慣れさせて行け、って言う事だ。

 

 俺の部隊にいるのだから、しばらくしたら慣れるだろう。

 慣れてくれれば、俺の方でも色々な手段を使えるようになる。

 部下を無我にしてまで推し進めては、茨の道は確定だろうからな。

 

「エーアストさーん! 追加の運送ヘリ(LAQLAQ)が来ましたよぉーー!!」

 

 ドックのハッチの方で元軍人が叫んでいる。

 どうやら新しい機体が着いたようだ。

 

「さて、それじゃあお前ら、さっさと運んでメンテするぞ!!」

 

「「「おおぉぉおおお!!!」」」

 

 ノィエンハーゲン要塞陣地は、今日も業務に忙しい。

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 
 さて、今回の話で、ドイツ側の衛星に何故彼ら(エーアスト)の事が映らなかったのか……そう言うのが想像出来るようになったと思います。


   なって貰えてるといいなぁ……。

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