まずいシリアル食ったら死んだ。 —Muv-Luv— 作:アストラ9
約1ヶ月ぶりまして。どうも。作者です。
やっと投稿出来ました。長かったです。
遅刻の理由は中々上手くまとまらなかったから。これのせいで今話の試作品が2つもお亡くなりになりました。無念。
それでも、1ヶ月音沙汰無しというのも……、と思い、上手くまとまらなかったけれども、投稿する事にしました。
それと、今後は投稿ぺースを上げるためにも文字数は削減させて頂きます。
後日、後編を追加し、結合する方式を取らせて頂きます。ご了承ください。
では本編、どうぞ。
目の前のディソーダーをレーザーブレードで殲滅する事数十分、いい加減相手の数が減ってきた。あと数百匹と言った所か。
「まあ、その数百匹が面倒なんだがな」
何せ残りの奴らが現在いる場所は、ノィエンハーゲン要塞陣地、その内部にいるのだから。
全く、護衛戦は俺の大の苦手だって言うのに、それに加えて室内戦も増えるのかよ。護衛対象踏む潰さなければいいが。
「なんせ今回の護衛対象はトラックとかに載ってない状態の、生身の人間だからな」
あの24時間での戦争の事をふと思い出した。あの時は歩兵の護衛対象など居なく、踏む潰しても何の問題も無かった。というか小さすぎて分からなかったくらいだ。
それが今回の護衛対象だと? 全く、ネルの奴は何ふざけているのかと、文句を言いたいぐらいだ。
「まあ、それでも依頼は依頼だ。傭兵として、最低限の仕事はさせて貰いますよ」
周りのディソーダーをあらかた片付け、機体を急転回する。
「さて、それじゃいっちょいきますか!」
機体のブースターを吹かせて要塞陣地へと向かった。
「……おっと、今一番密集しているのはこの辺だな」
ノィエンハーゲン要塞陣地、第一ブロック(仮称)の上空を飛びながら、映像を確認する。
ふむ、財団の資料によるとどうやらここは武器庫のようだ。RPGなどの歩兵BETAに唯一対抗出来る兵器など置いてある。そこに銃弾の雨を降らせて仕舞えばどうなるかなど……考えなくとも分かる。
そんな場所に弾丸を撃ち込んでいいものなのか。下手すればこの要塞の主力兵器が全て消し飛ぶ事になってしまう。それだけは、それだけは避けなければ……
「ならない訳じゃないんだよ」
躊躇いも無くトリガーを引く。
——キィィイイイン…ダガァァン!!
擦れるような金属音が聞こえ、その数刻後に大きな爆裂音が響いた。爆裂音の発信源は俺の真下、第一ブロックのど真ん中からである。天井には大穴がぽっかりとしてしまっている。
「熱源は……ないな」
どうやら大部分の奴らは片がついたようだ。さすが爆発ダメージ。やはり俺が投擲銃を愛用していたのは間違いなかったのだな。
「……ん? バイオセンサーに反応が……」
反応があったレーダーを見ると10個程の緑点と、それに対して近づき続ける20以上の赤点があった。今回は緑点が人間、赤点がディソーダー、黄点がBETA?青点が戦術機に設定をしてある。
そしてこのレーダーの反応が示している事とは、つまり……
「護衛対象が危ないって事だ…!!」
ブースターを起動し、すぐさま現場へと急行する。もしもコレで護衛対象が死んだって事になれば、依頼は失敗、俺たちが賭けた弾代が無駄になっちまう。それだけはゴメンだ、そんな事したらロザリィに怒られちまう。
10秒掛からずに現場上空へは到着した。
さて、この後はどうするべきか……。このまま突っ込むのもいいが、それでは瓦礫が護衛対象へ当たる危険性がある。現実的ではないだろう。
かと言って時間を掛けて侵入すれば、ディソーダーのレーザーに護衛対象が焼かれてしまうだけ。どちらにしてもバットエンドだ。
どちらもバットエンド。されどバットエンド。最終的にバットエンドになったとしても、それには大小という違いが出てくる。そして、この場合どちらの方が被害が少なく済むかなんて、考えずともわかる事である。
そうと決まれば即刻決行だ。人命救助は早いうちに、ってな。
跳躍ユニットを使い、即座に急降下。すれ違いざまに、要塞の天井にレーザーブレードで切り込み入れ、機体で真ん中を通り抜ける事で天井を落下させずに、変形させるだけで抑える。
周りを見渡してみると、辺り一面にかなりの数のディソーダーが。幸い、防御陣を敷いている護衛対象達には届いていない。が、それも時間の問題だろう。早いうちに片付けるに限る。
ブースターを吹かして護衛対象付近へと急接近、爆風で対象が傷付くかもしれんが、全滅よりはマシだ。多少の痛みはガマンして貰う。
護衛対象はバックに抑えた。目の前には敵。手に握るは黒光りする綱鉄の砲身。ならば、やる事は一つだけだ。
「こちら"RAVENS"一番機、コレより、敵機の殲滅に入る」
そして次の瞬間、けたたましい爆音が響いた。
「……う、うそ…」
あ、あり得ない……、と私、ヴィヴィエン・シュバインシュタイガーは続けようとしたが、それを口にする事は辞めた。
目の前の圧倒的な力量を見せつけられた上での、判断である。これは夢ではない。決して、夢なんかでは。
目の前に起こっている惨状を見て、私はいや、私達は
私達がどう足掻いても傷一つつけられなかった"敵"を、突如現れた綱鉄の巨人が最も簡単に片付けてしまうのだから。
そもそもの話、私達は本来、こんな防衛戦を行う予定など無かった。先の防衛戦ではシュタージの部隊の参戦により各所の防御が固められ、どこの場所も被害が最小限で済んだ。
勿論、それはここも同じ事である。一時はどうなるかと思ったが、戦術機の支援もあって、無事生き残る事が出来た。……あの時は。
それは、今日の翌朝、偶然に起こった。このノィエンハーゲン要塞陣地への、未確認生物(兵器)の急接近の事である。
レーダーは奴らが接近してくるまでは、全くの無反応だった。勿論、整備を怠っていたわけではない。ここの軍人も生きる事には精一杯努力しているのだ。
なのに、奴らの接近には、事前には気付けなかった。奴らがノィエンハーゲンから程ちかく、数がギリギリ数えられるようになって初めて、レーダーが反応したのだ。それはまるで、急に存在が現れたかのように……。
勿論、我々も戦いに出かけた。最初確認できたのはたったの一匹だけだし、先の防衛戦の事もあり、油断していたのだろう。出掛けていった兵士達は、軽く終わらせてくる、応援なんて頼まなくても良いぜ、なんて軽口を叩いて行ってしまった。
そしてその兵士達は、二度と帰ってくることはなかった。
別に数人で行ったわけではない。戦車2台、歩兵15人。未確認生物相手には物足りないかもしれないが、今の備蓄を考えるとこれぐらいしか使えない。それがこの中隊の隊長、クルトが出した答えだった。
そして20人程度の兵士が向かい、戦った結果、完敗に終わってしまった。
断末魔は通信越しでも聞こえてきた。腕が溶けた、仲間の下半身がない、戦車が一瞬で。兵士達は混乱していたようだった。
そんな兵士達は、一目散に本陣へと走って来たらしかった。恐怖を、化け物による恐怖を感じていたらしい。
だがそんな兵士達の中で、唯一生きて帰ってこれたのは、たったの3人だけだった。20人中、3人。生還率が、とても低い。それだけの相手だと言うことだ。
クルトはすぐさま本部に救援を要請した。元々確認連絡していたのだが、その際には救援は要請していなかった。敵は一匹だけだったからだ。たかが一匹だけならば……。そんな考えがあった。
だが今はそんな事は許されない。貴重な部下であり、戦力である彼らがやられたのだ。そんな化け物に、救援なしで戦えるわけが無い。
そうして、私達は救援を待ちながら、要塞での防御を固めた。
敵は強い。強いからこそ、私達には何も出来ない。その現実を突きつけられるたびに、胸が痛んだ。私達は結局、強大な力の前には無力なのかと。
それでも、私達は待った。周辺を徘徊中だったという、戦術機部隊を待って、必死に耐えていたのだ。
そんな中、私達に最悪の知らせが届いた。
「BETAが出現した。付近へと急行していた部隊はこれを排除せよ」
事実上の追い打ちであった。
彼らが私達を支援しなければここは全滅する。だが、BETAの相手をしなければBETAは私達のところへ到達し、確実に全滅する。どちらにしても、最悪の結末しか残っていなかった。
クルトは一番若い私を、逃がそうとしてくれた。彼だけじゃない。隊員の全員が私を、こんな私を逃がそうとしてくれた。
でも、私はそれをする事はなかった。
私は部隊の一員なんだ。決して、みんなの妹分ってだけじゃ無い。自分も、軍人なんだから、最後まで闘う! そう言ったら、部隊の皆に笑われてしまった。これで、空気は良くなっただろうか…?
そう思った時だった。奴らが最終防衛地点まで到達したのは。
鉄鋼の扉をレーザーで溶かし、四足歩行で虫のように近づいてくる大型の機械のようなもの。私の目にはそれは、死を告げる死神に見えてしまった。
私の股間部が生暖かくなるのを感じながらも、恐怖を押し殺してRPGを構えて、撃った。
事前に敗走した兵士からRPGは効かなかったと聞いていたが、その時の私にはそんな事は関係無かった。目の前の敵を何としても撃退しなければ。出なければ、全滅だ。
だが、残念ながら、撃破には至らなかった。それどころか傷一つつける事すら叶わなかった。私の中で絶望が大きくなるのを感じる。
そして、フラッシュバックする。通信越しに聞こえた、あの断末魔が。あの内容の事が、今から起こるのだろうか、そんな恐怖が降りかかるのだろうか、私達は全滅するのだろうか。
それらの答えが、この場の現状からすぐに分かってしまうと、大きな脱力感に襲われた。ああ、私の人生は、短いもんだったな、と。
そして、私達を蒸発させる光の集合体が、私たちへと放たれる……前に、それは現れた。"虫"を迎撃するようにマシンガンを撃ちまくる、人型の物体。私はその姿につい、見惚れてしまっていた。
天井を突き破って乱入してきた、謎の戦術機。こいつの存在は知らない。が、こいつが私を助けてくれた。それだけを理解すると、途端に身体が軽くなった。重荷が取れたような気分だ。
だがまさか、この戦術機が現れた事によって、私達の運命が左右されるなんて事は、今の私達には知る故も無かった……。
■
《"RAVENS"の傭兵、速やかに投降せよ》
俺がディソーダーを、ドイツ軍戦術機隊がBETAの殲滅を終わらした頃に
はっきり言って、いきなり過ぎるだろう。
此方はお前達の世界の敵を、お前達にとっての
恩知らずにも程があると思う。
だが、此処で俺が暴れる訳にも行かない。
もし暴れて仕舞えば、俺の真下にいる
そうなって仕舞えば、今回の依頼の報酬はおじゃん。骨折り損のくたびれもうけとなる。
支出をマイナスにしない為にも、この勧告は受け入れなくてはならなかった。
チッ、と舌打ちしながらも、コックピットブロックの入り口を開放して、広い空間へと這い出る。
周りを見てみると、その大きな銃口を此方に向けている戦術機が居た。
ふむ、08番機か。
「すまないが、その銃口を下げて貰えるか? 敵意剥き出しだと流石に俺も気分が悪い」
何時もならば適当に拳銃でカメラアイを潰して即コックピットへ、軽く暴れて帰還する所なのだが……
流石にそれをして仕舞えば全てが台無しになってしまう。
それを避ける為にも穏便にすませたい為、相手に不快感を与えぬ様に話しかけた。
だが……
《お前のような奴を、簡単に信じられるとでも思ってるのかよ!
幾らシュタージとは言え、味方をやられて黙っている訳が——》
《そこまでにしろ、シュヴァルツ08。相手が誰だか、分かっているのか?》
《……了解》
銃口を向けていた戦術機の、青年であろうパイロットが此方に向けて怒涛のマシンガントークを開始しようとする。
が、その目論みは残念ながら、彼らの隊長であろう女性の一声で幕を閉じる。
残念だったな、青年。
「ああ、そう言えば。お前達は降りてこないのか?」
俺はお前達ドイツ軍の要求を呑んででて来てやったのだ。彼らの方も同じ様に機体から出て来なければ、不公平では無いだろうか。
01番機のスピーカーから音が出る。
《確かにそうだな……よし、第666戦術機中隊、全員機体から出ろ》
よしよし、これで大型砲でズガン、何てことは無さそうだ。まあ来たら来たでコックピットに避難するが。
それにしても、この隊の隊長は度胸があるな。
この俺に臆する事なく話しかけ、俺を同等の立場と見なして話を進める。
その姿勢には、少なく無い評価が与えられるべきであろう。
さて、そんな隊長の姿はどんなものなのかな……?
01番機のコックピットブロックを見つめ続ける。
……出てきたのは、金髪のストレート美人だった。
ほうほう。イングヒルトも何気に良い体をしていたが、彼女も同様のようだ。まあ戦いには不要なのだろうがな。
それよりも、俺が気になるのはあの二組だ。
俺は端の方に機体を止めていた、2機の戦術機パイロットを見る。
俺に突っかかって来た08番機パイロットである、赤髪の青年。
その近くにてあたふたと怯える茶髪の少女。
遠目で見るとその二人はさながら、恋人のようだ。
「こいつは……面白そうな事になりそうだな」
俺に突っかかる部下と、それを止める上司。
こいつらとは是非、良い関係を持ちたいものである。
俺はコックピットブロックから地面とへ降り立った。
さて、それじゃあ早速情報交換と行こう。
まあ此方が開示できる物はたかが知れているがな。
「それじゃあまずは、自己紹介から行こうか。
俺の名前はエーアスト。とある傭兵部隊に所属する傭兵の一人だ。お前達からは、"黒い亡霊"と呼ばれているらしいな」
周りを一周見渡してから、話しを話し出す。
目の前にいるのが例の金髪の隊長、
その横に黒髪を団子にして束ねる女性、
さらにその反対側には黒髪を下げてメガネを掛けた女性。
両サイドに黒髪の女性を置くのが、最近の流行りなのか?
「そうか、エーアストというのか……。
私の名前は、アイリスディーナ・ベルンハルト。東ドイツ第666戦術機中隊所属の衛士だ。
一応、隊長という役職に就かせて貰っている」
中央の金髪隊長、アイリスディーナが自己紹介をした。
ふむ、やはり俺が思った通り、コイツには度胸があるな。その瞳には迷いが無かった。
出来れば敵対はしたく無い人種だな、こう言うのは後から追撃をしてくる。
「私の名前はファム・ティ・アランよ。
東ドイツ第666戦術機中隊の次期指揮官よ。隊のみんなからはお姉さんって呼ばれているわね」
「私の名前はグレーテル・イェッケルン。
東ドイツ第666戦術機中隊の政治将校よ。東ドイツに逆らおうなんて、思わない事ね」
俺は反発しようとする心を、ぐっと抑えた。
この黒髪メガネの声、何処かで聞いた事があると思ったら、先のディソーダーの件で初めて会った時、俺を挑発して来たやつか。
通りでツンツンしていると思った。
それと、ファム、と言ったか。
優しそうな顔をしているが……その表情の下には、どうすれば事がうまく進むかなどと考える、新しい顔が隠れていそうだな。
まあこればかりは実際に見てみないと分からないが。
「俺の名前はヴァルター・クリューガー。第666戦術機中隊所属の衛士だ。
で、こっちが——」
「シルヴィア・クシャシンスカ、よ。
あんたの事ははっきり言って、信じてないから」
銀髪コンビが俺に挨拶(と罵声)を投げかけてくる。
銀髪男の方は、随分な筋肉質だな。よく鍛えているのが分かる。
恐らく、念には念を入れるタイプだろう。事前情報があれば彼は、特に活用しようとするだろうな。
銀髪女の方は口数が少ないから判断しにくいが……まあ良い印象は持たれていないな。
今後の活躍にでも期待して貰おう。
次に、赤髪の青年が前に出てくる。
「テオドール・エーベルバッハだ。
第666戦術機中隊に所属している。あんたの事は——」
そう言って何か言いたそうに言葉を区切ってから此方を睨みつける。
なんだろうか、彼は実は、俺に喧嘩を売るのが趣味なのだろうか?
だが、残念ながら今はその喧嘩を買う事は出来ない。まあこんな状況じゃなきゃ喜んで買っていたが。
そんな彼と俺の間に茶髪の少女が割って入った。
「あ、あの!
私はカティア・ヴァルトハイムって言います!
第666戦術機中隊所属の、衛士です!」
全ての言葉に『
この娘はなんと言うか……純粋、そして活発だな。活発的でないのがミソだ。
恐らくこの娘は、何事にも臆せずに突っ込んでいけるような人種だろうと思われる。
……今思ったが、東ドイツは強気な女性の排出国なのだろうか。流石にメンタル強そうな奴が多すぎるような……。
そう思った時、最後の一人の衛士が前に出た。
いや、前に出たと言うか……
「……ねえ、ねえ、ねえ!
イングヒルトは……イングヒルトはどうなったの⁉︎」
俺に掴みかかって来たのだった。
ああ、良かった。メンタルが弱そうな奴、ちゃんといたんだな。