まずいシリアル食ったら死んだ。 —Muv-Luv—   作:アストラ9

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 どうも。作者です。

 突然ですが、皆さんが好きなMTはなんですか?

 私が好きなMTは、クアドルペッドやスクータム、ローバストなどが好きですね。

 あのカクカクしたフォルムでありながら何処か流線的な姿をしたMT……。くー、たまらん!

 まあ、こんなどうでもいい話は置いておいて。

 本編、どうぞ。




『BETA西軍阻止』

 

『やあ、黒い鳥。僕だよ。

 今回依頼させて貰うのは、現在東ドイツへと進軍しているBETAの軍勢、これの排除だ。

 敵BETAの数は推定で20万強とされている。これだけの数を捌ききるのは流石の君でも難しいだろうと僕は思うよ。弾薬的にね。

 だから今回は特別に、レーザーブレード「EB-O305」を君達に供与する事に決まった。ネクスト用の長レンジ型レーザーブレードだ。EN管理さえしっかり出来ていれば通常ACにも扱えない事は無いだろうね。

 それと今回は、東ドイツに怪しい動きがあるとの情報もある。くれぐれも、気をつけてくれよ?

 説明は以上だ。それじゃ、後は頼んだよ。

 

 

 依頼主: AWW(全世界統治神話連合)

 

 敵戦力: BETA(神に仇すモノ)

 

 作戦領域: 東ドイツ オーデル川東岸

 

 成功条件: 敵対勢力の全滅

 

 追加依頼(サブターゲット): シュタージ機の撃破(加算式)

 

 成功報酬: 300000C

 

 追加報酬: 6000x撃破数C     』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 東ドイツ、ツェーデニック基地。ここでは今、各高官を集めた臨時軍議が行われていた。議題は勿論先程の"黒い亡霊"について、それと現在西軍してきているBETAの進行に対する防衛策についてだ。

 

 そんな中、会議室の木製の重い扉が開かれた。どうやら準主役のご登場のようだ。

 

 議長はその重い口を開いた。

 

「……君達が何故ここに呼ばれたか、分かるかね? ハインツ・アクスマン中佐」

 

「ええ、例の戦術機の事でしょうか」

 

「……」

 

 表情はあまり優れないものの、表面上は強めに答えるアクスマン。その腹の中にはなんとも言い難い屈辱が押さえ込まれていたのだが、それを知るものはアクスマン以外にいない。

 

 そんな彼に比べて彼女、ベアトリクスの表情は非常に暗いものだった。議長の質問に答えもせず、見向きもしない。よほど先の戦闘のショックは大きいらしい。

 

「……分かっているならば話は早い。アクスマン中佐、君にもう一度チャンスをあげよう」

 

「チャンス…ですか」

 

「ああ、もしもこれに成功すれば今回の事は不問にしてもいい。いや、それどころか君を昇進させてやってもいいくらいだ」

 

 その言葉にアクスマンは目を見開いた。

 

 アクスマンは先の戦闘でシュタージがあれだけの失態を犯したのを見て、自分は良くて左遷、最悪の死をも危惧していたのだ。

 

 それがどうだろうか、この上官は自分に起死回生のチャンスを与え、更には昇進までさせるという。これにはアクスマンは非常に驚かされた。

 

 アクスマンは口を開く。

 

「どういう……事でしょうか」

 

「なに、簡単な事だよ。君達は"黒い亡霊"にしてやられたのだろう? ならばどうすれば挽回出来るかは……分かるだろう?」

 

 そこでアクスマンは悟った。目の前の相手が何を言っているのかを。

 

「ま、まさか議長……! あ、貴方は……」

 

「っくく、そう、君の思っている通りだよ、アクスマン君。

 君達の起死回生の必勝法、それはね……"黒い亡霊"を捕獲する事だ」

 

「⁉︎ ぎ、議長! 貴方は何を言っているのですか⁉︎ 私の部隊が8人がかりでかかってかすり傷一つつけられなかったのですよ⁉︎」

 

 その言葉にベアトリクスは強く反応を示した。

 自分の部隊が対峙したからこそ、彼女は分かっているのだろう。相手の圧倒的な力量を。

 そしてそれと同時に、その圧倒的な暴力に恐怖すら感じていた。あの、東ドイツ最強の機体を駆る大隊のリーダーである彼女が、だ。

 

 議長は嫌な笑みを浮かべながら言う。

 

「ああ、知っておるよ、ブレーメ少佐。

 でも、だからこそなのだ。我がドイツを侮辱してくれた輩には、こちらも誠を持って例をしなければならないのだ」

 

「……っち」

 

「それに亡霊はレーザーを使用するらしいからな。それを捕まえる事が出来れば、我が国は他国に対して圧倒的に優位に立てるだろう。

 君達の奮闘に期待しているよ、アクスマン君」

 

「……了解…しました」

 

 その言葉を最後にアクスマンとベアトリクスは無言で会議室を出て行った。その後ろ姿は、BETAに対する人類のようだなと、軍議に出席していたハンニバル少佐は一人静かに思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……これは…面倒な事になったな」

 

「ええ、本当にそうね。アクスマン中佐」

 

 ツェーデニック基地の廊下を焦った足取りで歩く2人の男女が話していた。

 その表情には少しの焦りが見てとれる。

 

「アクスマン中佐、どうするつもりなの? このままじゃハンニバルは……」

 

「……ああ、生き残るだろうね。これから来るBETA西軍の防衛戦において、我らシュタージは奴を見殺しにするつもりだった。

 だがそれは例の亡霊によって……!」

 

 二人はその言葉を区切りに黙り込んでしまった。

 

「……仕方ないわ。私達が奴を仕留めれなかったのがいけなかったんだわ。次こそは必ず…仕留める」

 

「……出来るのか?」

 

「いいえ、恐らく無理でしょうね。私達全員いや、東ドイツが総力を上げても、無理よ。

 奴には勝てない、そう相手に刻み込む何かを奴は持っているのよ」

 

「いや、流石にそれはないと思うよ、ベアトリクス。流石に東ドイツの総力を相手にすれば戦術機一機など……」

 

 そこまで言ってアクスマンは言葉を止めた。

 

 アクスマンは見たのだ、彼女(ベアトリクス)のその真っ直ぐで、非常に暗い瞳を。

 

 その瞳は、嘘をついているような目ではない。それを物語るような、本気の目だった。

 

「出来れば、二度と戦場に現れないで欲しいわね……"黒い亡霊"」

 

 ベアトリクスは一人それを強く願っていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数時間後のツェーデニック基地。そこには今、明日にくるであろうBETAの軍勢に対する防衛作戦「パッチウォーク・バタリオン(つぎはぎ大隊)」の作戦本部が置かれていた。

 

 その作戦本部にいるのは3人。

 

 大隊指揮官である、ホルツァー・ハンニバル少佐。

 

 副官である、マライ・ハイゼンブルク中尉。

 

 第666戦術機中隊指揮官である、アイリスディーナ・ベルンハルト大尉。

 

 この3人は今、最後のブリーフィングをしていたのだった。

 

 ハンニバルが口を開く。

 

「とりあえず、シュタージの支援を取り付ける事には成功した。意図的にではないが」

 

「いえ、それでもありがとうございます。少佐」

 

「なに、君のような優秀な指揮官が安心して戦えるようにするのが我々の役目だ。気にすることはない」

 

 そして、ハンニバルの顔が厳しいものとなった。

 

「正直、シュタージの事だから支援をしないという選択肢を取るのではという心配もあったが……その心配も今ではないも同然だ。コレを間接的に作り出した"奴"には感謝しなければな」

 

「"黒い亡霊"……ですか」

 

 マライが表情を曇らせながら言った。

 

「ああ、そうだ。奴が間接的にだが、シュタージの権力を弱めてくれたんだ。"黒い亡霊"は表向きには東ドイツの敵だが、実際はかなりの人に感謝されている筈だ」

 

 この私もふくめてな、と一言加えて笑った。

 

「だが、十分に注意しておけ。戦場では何が起こるか分からない」

 

「心得ています。では!」

 

 アイリスディーナはピシッと敬礼をした後、その部屋を出て行った。

 

 そんな彼女に対して不満気なマライを見て、ハンニバルは話しかける。

 

「何か言いたそうだな、マライ」

 

「少佐……。国家の為とは言え、家族を売るような人間の事を、何故少佐が……」

 

 その一言を聞いて、ハンニバルの顔は暗いものとなる。

 

 ハンニバルは数刻溜めてから話を始める。

 

「…本当に、そう思うか?」

 

「……え?」

 

「仮に本当に彼女がシュタージに家族を売るような人間ならば、もっと下劣な行動に出ても可笑しくない筈だ。

 だがあの娘はあの事件以来、今まで以上に毅然と淡々と戦場を駆け巡っている」

 

「……! ま、まさか少佐!」

 

 そんな彼女にハンニバルは、首を縦に振る事で答える。

 

 そして、彼女に近づいて両手を握り、一言ささやく。

 

「……マライ、一つ頼みがあるんだ」

 

 そして彼は、彼女に密書への鍵を託したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 同時刻、ベーバーゼ基地。

 

 その雪が降り積もる基地周りの一角で、2人の男女が言い合いを繰り広げていた。いや、この場合は一方的に、なのだが。

 

 赤髪の青年、テオドールが怒鳴りつける。

 

「お前…! 何の為にシュトラハヴィッツ中将を探している!」

 

「な、何か分かったんですか⁉︎」

 

 カティアは壁に押し付けられた事もあり、胸元を押さえ込みながらも言った。

 

 そしてカティアの質問に対しテオドールは顔を暗くしながらも答える。

 

「何も……無いんだよ」

 

「……え?」

 

「……消されているんだよ! シュタージに! 恐らく本人も」

 

 その言葉にカティアは息を呑んだ。シュタージがそんなに酷い事をしているなんて、知らなかったのである。

 

 そもそも何故彼がそんな事を知っているのか、何故その中将を探しているのかと言うと、それは彼女、カティア・ヴァルトハイムの為だ。

 

 彼女はたまたま第666戦術機中隊に救われた身ではあるが、実は半分狙ってやったようなものなのだ。

 

 彼女は先程の中将を探す為にわざわざ東ドイツに支援に行く部隊へと合流、東ドイツの地へと踏み入った。

 

 そしてその目的は、確かに亡命時に言った通り東ドイツが気になっていたと言う事もある。だが、本当の目的は違う。

 

 本当の目的、それが先程の中将を探し出して、実際に会う事。それが彼女の真の目的だったのだ。

 

 テオドールは口を開く。

 

「これ以上はもう関わるな、下手したら俺たちまで消される」

 

「…⁉︎ で、出来ません!」

 

「なぜだ!」

 

 そしてカティアは俯いて、表情を曇らせる。

 

 そして、声を震えさせながらも、言う。

 

「お、お父さん……なんです」

 

 彼女、カティアが探していた人物とは、彼女の実の父親だったのだ。

 

 それを聞いたテオドールは数刻の間、思考を停止する事となった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次の日、ベーバーゼ基地。

 

 今日はBETAの東ドイツ侵攻が予測されている。

 

 そしてコレを阻止する作戦「パッチウォーク・バタリオン」の作戦当日でもあった。

 

 第666戦術機中隊の各員も戦術機に乗り込み、機体を稼働させて準備についていた。

 

 突撃砲や多目的追加装甲()を各機が装備した所で、アイリスディーナが通信を繋げた。

 

『我々はこれよりハンニバル大隊と共に敵陣に突入。中央集団を叩く』

 

 その通信を遠回しに聞いていたテオドールは違うことを考えていた。

 

「……(カティア……奴の思想は危険だ……戦場ならば…排除も……)」

 

 無論、カティアの事である。

 

 あの後、カティアは、「自分はシュタージになんかには屈しない!」とテオドールの目の前で宣言した。

 

 そんな彼女の姿勢を彼は"危険思想"だと認識した。

 

 普通ならば危険思想なのは彼の方なのであるが、彼自身が洗脳されているような物なのでそれに気付くことはない。

 

 実は彼は高校生ぐらいの歳の頃、秘密警察軍(シュタージ)に取り押さえられ、拷問を受けたのだ。

 

 拷問は三日三晩続いた。水掛け、電撃、ムチ、打撃。その他諸々の拷問を受け、彼の心は一度壊れてしまっていた。

 

 そんな中、彼はシュタージこそが絶対の強者だという事を刷り込まれてしまう。

 

 その時からだ。彼がシュタージを恐れたのは。

 

 だからこそ、彼はカティアに恐怖を感じたのだ。何故カティアは絶対の強者であるシュタージに立ち向かおうとするのか、と。

 

 そんなムシャクシャを感じながらも、此処は戦場である。敵は目前だ。

 

 テオドールは心の中にモヤモヤを感じながらも、頭を切り替えて、敵陣へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「パッチウォーク・バタリオン」作戦。

 

 この作戦はBETA西軍を阻止する為に発令された防衛作戦である。

 

 BETA本隊を防衛部隊が抑えている内に戦術機部隊が内部から撹乱、撃破して行く作戦だ。

 

 当然、部隊はある程度のものがなければいけない。そもそも戦術機の数が少ないのだ。少しでも多くの戦術機が必要である。

 

 ——正史ではこの作戦は撤退を余儀なくされてしまうのだが、それはまた別の話だ。

 

 しかし今回は、前回に比べてかなりの数がいる。理由は武装警察軍"シュタージ"の参戦によるものだ。

 

 今回の作戦ではシュタージは軍を出すつもりは無かった。理由は、シュタージにとって邪魔なハンニバル少佐を見殺しにする為だ。

 

 ——だが、その魂胆は根本から崩れ去る事となった。例の"黒い戦術機"によって。

 

 "黒い亡霊"によるシュタージ中隊襲撃。"黒い亡霊"は1対8の勝負を高性能機であるチボラシュカ相手に仕掛けて来たのだ。

 

 普通ならばその圧倒的な数の差と、機体性能差によって難なく鎮圧する事が可能であった。……本来ならば。

 

 だが、今回に限っては相手が悪かった。その乗り手、機体がドイツにとって、世界にとって規格外すぎたのだから。

 

 圧倒的な地上走行能力。

 

 長射程・高弾速・高威力と3拍子揃った弾丸を射出する大型スナイパーキャノン。

 

 現代の技術では再現不可能なレーザー技術、これの強化版の使用。

 

 これだけの性能を備えながら、尚且つ機体パイロットの技量が高すぎた。

 

 3次元移動をする戦術機の後ろをいとも簡単に取って見せ、素早いロックオン・軸合わせをする。更にノーロックでの微調整すら実現させる、その圧倒的な技量。

 

 こんな化け物のようなのが相手だったのだ。勝てというのがまず無理という物。

 

 ——だが、東ドイツにそんな事を知る故はない。

 

 あったとしても、その実力を目の前で見た衛士か、実際に対峙し敗走してしまったヴェアヴォルフ大隊の生き残りかの、どちらかである。

 

 そういう訳あって、シュタージは後に引けなくなってしまったのだ。"黒い亡霊"によってその足元を危ないものとされてしまい、不安定なものとした。

 

 もはや、見殺しなど出来るような状況では無かった。

 

 今までならば、少し咎められるだけで、何にも支障は無かった。

 

 だが、今はそんな事はできない。出来るはずがない。

 

 その立場すら危ういのに、そんなマネなどしてしまえば、今度こそシュタージは瓦解してしまう。

 

 そんなムカムカした気持ちを抑えながらも、シュタージ各員は任務を全うする。

 

 迫り来るBETAを制しながら、黒い戦術機を捜索、捕獲する。

 

 そんな事は無理だ、そもそも出会わないだろうという思いを持ちながらも各員は戦闘を繰り広げていた。

 

 

 ——しかし、"亡霊"は現れた。

 

 

 シュタージの一人、『ベルガ』は味方に後方支援を任せて一人でBETAの真っ只中に飛び込んでいた。

 

 敵陣に飛び込み、戦場を撹乱しながらの戦闘。この戦法によってBETAは彼に集中、見事彼の長刀の餌食となる。

 

 そんな彼がまた敵陣に突っ込み、戦場を撹乱していた時に、それは起こった。

 

 味方の援護射撃が突然止まったのだ。

 

 敵を掃討しつつもベルガは疑問に思った。何故止むんだ、と。

 

 そしてその疑問は時間が経つにつれ急激に増加していく。

 

 時間にして数秒だが、実際に戦場にいるものにとっては長い時間だ。そんな中を一人で戦っていたのが余程気に障ったのだろう。

 

 ベルガは機体を反転させた。

 

 援護射撃を止めている仲間に対して文句を言おうとしていた。

 

 ……だが、それは叶わなかった。機体を振り向かせた瞬間に何故か機体温度が急激に上昇、マグマの中にいるような気分になった。

 

 そして、彼は悟った。マグマの中にいるような、ではない。マグマに近い状態になった戦術機に乗っているんだ、と。

 

 ——そして彼が最期に見たものとは、自分の目の前で灼熱の細剣を振り切った、赤眼の黒い戦術機だったそうだ。

 

 

 

 

 

 

 




 
   —収支報告—

◯収入金額 成功報酬: 0
      特別加算: 30000C(シュタージ機5機)

◯支出金額 弾薬清算: 0
      機体修理: 0(修理なし)
      特別減算: 0

◯合計        1,177,600C


 
 因みに作戦名は適当です。作中に作戦名と思われる物が無かったので作りました。もしもあったならばごめんなさい。

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