短編集   作:亜亜亜 無常也 (d16)

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MF文庫Jで発売されているライトノベルが原作です。

これも原作読破推奨です。

一応読んでいない人のためにも多少わかりやすく書きました。

原作一巻だけでもいいから読んでから読むことをオススメします。

ちなみに今月の25日に13巻発売予定です。


魔技科の剣士と召喚魔王と契約英雄(魔技科の剣士と召喚魔王 × Fate/Grand Order)

少年———林崎一樹———は何もないところにいた

眼を覚ませば、自分の部屋の天井があるはずだったのに、目が覚めるとそこには何もなかった。上下左右が真っ黒だった。

まあ、こういうのは慣れている。……それはそれでダメな気がするが。

目が覚めたら自分が眠った場所ではないのには慣れている。ファウスト化している地方都市、フランス、ローマ、海の上、船の上、霧の魔都、アメリカ、エルサレム、古代メソポタミア、神殿、異境、魔境、迷宮の中、荒れ果てた場所、無限に剣が突き刺さった荒野、監獄塔、鬼ヶ島、千差万別な城の中、無人島、砂漠、森、マンション、ピラミッドの中、山の上、形容し難い世界etc

 

彼らに付き合ううちに慣れてしまった。もうずいぶん()の出来事なのにまだ色あせず覚えている。……ここにいるということは誰かが呼んだのか?

 

彼らとの繋がりは未だ存在しており、今でもたまに呼ばれることはあるが、こんな景色は初めてだ。……いったい誰が俺を呼んだ?

 

「キミを呼んだのはボクさ。■■君」

 

 自分を呼ぶ声が聞こえた。()の名前である『林崎一樹』ではなく、()の名前である■■と呼ぶ声。

 もう二度と聞くことのできないと思っていた声。

 振り返るとそこには一人の男が立っていた。

 

 橙色の髪の毛を後ろでまとめて、白衣を着ている。そして、両手には手袋。一樹は知っている。その指には指輪があったことを。

 

「久しぶりだね。元気そうで何よりだよ」

 

→あの格好じゃないの?“本物”のソロモン王。

 

「再会しての第一声がソレかい!?本当に久しぶりに会ったんだから、もっとこう感動してよ!」

 

→黙れ!すべての元凶!

 

「そ……それを言われると否定できないけどさ、こっちはその尻拭いの為に十年間がんばったんだよ!」

 

→冗談ですよ。久しぶりですねドクターロマン。また会えて嬉しいです。

 

「……相変わらずだねキミは。全く変わっていないようで嬉しいよ」

 

 一樹とロマンは久しぶりにあった友人同士のように話始めた。

 少年は話していく。自分が()住んでいる()()の事や近況について。

 

「へえ、神話の神や天使、悪魔、英雄———神魔(ディーバ)から力を借りて魔術―――魔法を発動させる世界で、日本に力を貸す神話がソロモン72柱とはね。何か運命(Fate)を感じる世界だね。そして、明日から学院に入学か。それと義妹が出来たのかい。ボクの兄弟は……」

 

→あのブタ野郎のことは忘れましょう。

 

「結構酷いよ!?アレでもアーサー王やヘクトール、アレキサンダー大王と並ぶ西方九偉人の一人だし、キミのサーヴァントの一人だろう!?」

 

→アレはまあ、メフィストやカエサル、パラケルススと同じ扱いで。

 

「……まああの3人は問題起こしてばかりだったからね。本当に何であんなのと契約したんだい?」

 

→ロビンにもよく言われました。

 

「アハハ。こういう会話本当に懐かしいな。……そうだ、今日は用があったからキミを呼んだんだ」

 

→?

 

「キミはまた色々と巻き込まれることになる。それにはボクも責任がないようで、あるからさ」

 

→またおまえか?タラスクで押しつぶしますよ?

 

「やめてね!?死んじゃうから!?あの時は本当に星になるかと思ったんだからね!」

 

→一応冠位持っているんですから、耐えてください。

 

「無理だからね!?……話を戻そう。それでキミはもうすぐとある神魔と契約することになるだろう?キミの契約する神魔は“ボク”とも“アイツ”とも関わりのある神魔でとても強いが、欠点がある。……まあ今のキミには今までの経験や剣術、そして()()があるし、おそらく大抵の敵はどうにかなるだろう。だけど、それだけじゃ不安だからね。これを渡そうと思ったんだ」

 

 ロマンが差し出したのは漆黒と黄金の二色のカードだった。表面は無地、裏面には(キャスター)の絵柄と形容し難い紋様(ビースト)の絵柄が混ざり合っている。

 

→コレは?

 

「ああ、このカードはね……」

 

 ロマンから説明を受けた。……いいのかそれ。チートすぎるだろう。

 

「確かにね。でもキミにはふさわしい力だと思うから渡すんだ。それと注意事項だけど、”本来の第一宝具”は使用できないからね。もう使ってしまったから」

 

 ……頷いた。当たり前だ。

 

「さて、そろそろ時間だ。そろそろボクはお暇するよ。」

 

→また会えますか?

 

 それを聞いたロマンは鳩が豆鉄砲を食らった顔をしていた。そして……噴きだした。

 

「アハハ、何でここにいるのかとか色々聞かれると思ってたのに……、本当に変わらないねキミは。ああ、きっとまた会えるさ。あの世界ではボクは消えたけど、この世界では……。さあ、目覚める時だよ?■■君……いや、今の名前で呼ばせてもらおう、一樹君」

 

→さよなら、アイドルオタク。

 

「最後までソレかい!?締まらないね!?」

 

 

……。

ゆっくりと意識が戻されていく。

気が付くと、一樹は朝のお布団の中にいた。

アレは夢だったのだろうか……

……いや、待て。コレは。

手にはあのカードが握られていた。

 

「夢だけど、夢じゃなかった!」

 

思わず叫んでしまった。カードを見つめて、一樹が呟いた。

 

「ドクター。ありがとう」

 

 ……さて、鼎を起こして、学院へ行こう。さすがに初日から遅刻はいけない。

 

 

 

 

「それにしても、今日から兄様と一緒の学校というのは嬉しいですが、学科が違うのは……、兄様に謎痕(スティグマ)を授けた神魔が憎いぃぃぃぃぃぃ」

「落ち着け。ホモな坊主を焼き殺そうとしている、愛に生きる女(自称)みたいになっているから」

 

 馬鹿話をしながら、二人で学院へ向かう。今日は初登校なので、義妹(実は年上で義姉なので先輩)の鼎に頼んで学校の案内をしてもらうことになっているのである。ちなみにこの二人通う学科が違う。一樹は魔法を学ぶ魔技科、鼎は剣での戦いを学ぶ剣技科だ。そして、鼎は剣技科の生徒会長である。

 

「兄様」

「何だ、改まって?」

「“アレ”はこの学院で使うのですか?」

 

……ちなみに鼎は一樹の秘密を知っている数少ない一人であり、彼の力の一部を使用できる。

 

→使う時が来たら使う。

 

「……そうですか。ですが、兄様」

「わかっている。俺はまだ捕まる気はない。使うとしても目立たないように使う。だから大丈夫。ところで、鼎は“アレ”を去年は使ったのか?」

「いえ、使うまでもありません。私に剣術で勝てる者はもう学院にはいませんし、……魔技科の学生は剣技科との決闘を受けてはくれませんし」

 

→???

 

「ああそうか、知らないのですね。この学院は魔法使いの方が上に見られていて、剣を使う私たちは魔法発動までの壁や盾としてしか見られてません。扱いが低いのです私達は」

 

→馬鹿が多いね

 

「私もそう思います。この教育そのものが悪い。そして……兄様に謎痕を授けた神魔が憎いぃぃぃぃぃぃ」

 

→落ち着いて、清姫。

 

「私は鼎ですよ!?兄様!?昔の女と間違えないでください!」

「いや、似ていたからつい……」

「似ていませんから!それに私と相性のいいのは“剣豪”とかあの“赤色”ですよね!?」

「そうだけどさ……、学院見えてきた。案内してください。姉様」

「露骨に話をずらしましたね?でも姉様って呼び方……いい!もう一回お願い致します」

 

→姉様!

 

「もう一回!」

 

→姉様!

 

「もう一回!」

 

→姉様!

 

「もう一回!」

 

→いつまでやるの?

 

「後一回だけ!お願いします!」

 

→姉様!学院の案内よろしくお願いします!

 

「わっっっっっっかりました‼ではまずこれが正門です。そして……」

「あっ、見つけた!会長!」

 

 その声を聞いた鼎が綺麗にズッコケた。……ドリフみたいだな。

 そこには剣技科の制服を身に着けた男がいた。

 

「何でここにいる寅蔵!?」

 

 ……どうやら知り合いらしい。彼は山田寅蔵。生徒会の役員のナンバースリーであり、話を聞くと何でも新入生同士で決闘騒ぎが起こって、仲裁を鼎に頼みに来たらしい。ちなみに鼎は携帯の電源をOFFにしていたので足で探していたらしい。……さすが世界一のブラコン(自称と他称)

 

「そんなものお前たちでどうにかしろ!私には今日は大事な用事があると言ってあっただろう!」

「どうにもならないから探してたんですよ。……もしかして彼が噂に聞く?」

「そうだ。私の兄様だ‼とっても強いぞ!かなり強いぞ‼すごく強いぞ‼!」

 

……鼎は清姫じゃなくて、DEVE(ローマ)だったのか?

 

「ああもう!兄様すみませんが、私は決闘の仲裁に行ってきます。この埋め合わせは後日必ず!」

 

→行ってこい。怪我はするなよ?鼎

 

「はい‼兄様パワー充電完了!さっさと済ませるぞ寅蔵!一歩音越え二歩無間三歩絶刀!」

「会長待っ……、早!?もういない!?つーか場所知ってんのか会長!?」

 

 ……大丈夫かな?まあ大丈夫だろう!多分。きっと。

 

 

 この世界は普通の世界だった。

 ところが、ある時にもたらされた賢者の石(パラケルススが作る物とは別物)により、一部の人々が魔法を使えるようになったのである。そして、現代の兵器は意味をなさなくなり、魔境と呼ばれる場所が現れ魔獣まで現れた。

 そして、神話が―――神魔が接触してきた。それにより、14歳の時に謎痕授けられたものは神魔と契約して10の固有魔法(+α)が使えるようになったのである。

 本来は謎痕は女性しか授からないはずなのだが、……一樹はそれを手に入れた。ちなみにこれで林崎家の養子になった一樹の本当の年がわかり、鼎との関係が変わったのである。

 これはこんな世界に生まれ変わった”人理を守り、世界を救った少年” の新たな物語である。

 




このシリーズは好きなので。ずっと考えてました。

そして、コレと今考案中のもう一作品が連載候補です。

楽しめたのなら幸いです。

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