DragonTACTICS 作:隣のトットロさん
「ねえ、聞こえてる?早く起きてーーー早く私を目覚めさせて。私の名前はーーーーーー」
目が覚めると俺の額には冷や汗が伝い落ちて寝間着は汗でぬれていた。
「また、あの夢か...」
中学卒業の頃に龍跡(りゅうもん)が出てから毎日のように朝この夢を見るのだ。
龍跡というのは人が成人になるときに現れる龍を召喚できるという証みたいなものだ。これがあるかないかで将来進む道が変わってしまう。
この龍跡は現在5人に1人という確率で出てきている。
そして現代は龍世界。龍を持っているだけで地位が変わってしまう。
ただし龍と言っても5段階ほど各位がある。
まず一番低い5段位の龍は幼龍と言われている。幼龍は戦うことも飛ぶことも出来ないが成長する龍によっては化けるかもしれないので望みはある。
次に4段位の龍はワイバーンと言われている。龍には勝てないがある程度の人よりは強く飛べるので運搬用の仕事に適している。これ以上上を目指すことは出来ないのでワイバーンを召喚してしまった者は負け組と言われている。
次に3段位の龍は地龍と言われている。ワイバーンと違って空を飛ぶことは出来ないが頑丈で個体によっては早く動けるものもあり実力次第では国の防衛を任されることもある。安全圏と言えるだろう。
次に2段位の龍は翼竜と言われている。空を飛べ魔法も使える。人は5段階魔法以上を使用することが肉体的に不可能なのでそれ以上強力な魔法を使えないが翼竜は9段階魔法まで使うことができる、稀に希少種と呼ばれ10段階魔法を使える翼竜もいる。国の防衛、傭兵の依頼、龍魔導学校の教師など推薦が沢山くる。憧れる勝ち組といったところだ。
次に1段位の龍は成龍と言われている。空も飛べ魔法は13段位まで使えその姿は100メートルを裕に越える。知能も高く召喚した主人とだけならテレパシーで会話が出来る。基本的に王様の警護以外は何でも任せてもらえる。
次に特段位の龍は神龍と言われている。空を飛べ魔法は20段位まで使えその姿は200メートルを越えるらしい。知能も高く召喚した主人だけではなく周りとも会話できる。そして龍具という特別な武器を与えてくれる。その破壊力は凄まじく人でも龍を倒せるほどと言われている。貴族の地位を与えらる。世界でも5人しかおらず国と王様を守っている。
噂では俺が今日から通う龍魔導清リリアナ高校の生徒会長が神龍を召喚したらしい。
最後に幻段位の龍はそのまま幻龍と言われている。お伽噺の話でその存在は未だ確認されておらずいないのではないかと言われている。ただお伽噺の中の話では人の姿にもなれるらしい。誰も召喚出来たことがないので不明。いるのかすら不明な存在。
そしてもうひとつ。龍跡は男なら腕か手の甲、稀に膝に出る。女は胸やお尻に出る。だが俺の龍跡は違っていた。俺の龍跡は左頬にあり皆から異常者と呼ばれている。
「さて、支度も終わったし学校に行きますかね」
着替えを済まし制服を着こみパンをかじりながら家に鍵をかけて高校に向かって歩きだす。
「おーい!龍ちゃーん!!」
呼ばれたので振り替えるとそこには幼馴染みのチカが此方に向かって走ってきていた。チカにも中学卒業の頃に龍門が出て同じ高校に通うことになったのだ。
「おーチカ、あんまし走ると揺れるから気を付けろよ?」
「え?揺れるって?・・・ひゃん...龍ちゃんのえっち」
チカは俺が何を言いたいのかが分かるとその場で胸を隠すように手で覆って顔を紅める。
隠すと逆にエロいなーとか思いつつ。
「そこまででかくなったお前が悪い」
「もう!龍ちゃん!言っていいことと悪いことがあるんだよ!女の子はこう、もっと繊細に「あーはいはい」もう!」
俺とチカは並んで高校に向かって歩き始める。
「ねえ、龍ちゃん。今日入学式だけどなにやるんだろうね?」
無言で歩いているのが嫌だったのかチカが話をふってくる。
「さあな。プログラムも何ももらってないし」
「そ、そうだよね」
チカは、あははと苦笑いしながらまた無言で歩き始める。
え?何、なんかこの状況作ったの俺みたいで罪悪感半端ないんだけど?
「・・・でも」
「え?」
「でも何かあるとは思う。龍魔導学校だしな」
「龍ちゃん、清が抜けてるよ?」
「ん?ああ良いんだよ。俺に清なんて似合わないだろ?」
「クス、そうだね♪うん、似合わない」
チカは笑顔で言ってくる。何か納得いかなかったが罪悪感は消えたしいいかと納得する。
「あ、そう言えば。龍ちゃんて魔法得意だったよね?」
「ん?ああ、まあな。こんな世界じゃ使えないけどな」
実際俺は人が使える最大の5段階魔法まで使えることが出来る。だが龍のいる現代ではなんの役にもたたない。誰にも話していないが俺は何故か8段階魔法まで使うことが出来る。
「そんなことないと思うけどな~、私はそんなに得意じゃないし」
チカは3段階魔法まで使える。普通よりは上というところだ。
「ま、お互いにワイバーンを召喚しないように気を付けような」
「気を付けようがないけどね」
あははー、とまた苦笑いで返してくるチカ。
「あ、そうだ。なあチカ」
「ん?どうしたの?」
「お前学校ではあんま、俺に話しかけてくるなよ?」
「えー!?どうして?」
「俺が異常者ってこと知ってるだろ?」
この左頬に出てきてしまった龍跡のせいで俺はあまり周りから良いように見られていない。俺のせいでチカが苦しむところは見たくなかったのだ。
「知ってるけど...嫌!」
「なんでだよ...」
「私は龍ちゃんの、その龍跡カッコイイと思うよ?」
は?この子は何を仰ってるの?勘違いしちゃうよ?
「何いってんだよ...一緒にいたら何か言われるかも知れないぞ?」
「いいよ」
即答だった。
「それで龍ちゃんと一緒にいれるなら♪」
「っ!」
「それに~龍ちゃんが守ってくれるんでしょ?」
「・・・ああ」
「なら安全だ♪」
それから少し歩くと龍魔導清リリアナ高校に到着した。徒歩で30分という距離だった。
「意外と遠かったな」
「だね~でもさ龍ちゃん肉体強化の魔法が使えるんだからそれ使えば速かったんじゃない?」
・・・・い、言うのが遅いわぁあああああ!!
★☆★☆★☆★☆★☆★
体育館にしては広いドームのような所に俺達は教師と思われる人たちに連れてこられていた。
今年の合格者は160人ほどらしいので40人4クラスになるらしい。
てかドーム広すぎて真ん中まで歩きたくない。皆入り口付近に固まってるし。
「ね、ねえ龍ちゃん」
「ん?どしたよ」
「・・・トイレ行きたい」
Oh... 後少しで入学式らしいものが始まるというこのタイミングでかよ。
「はあ...ほらいくぞ」
「う、うん、ごめんね」
「良いよ。気にすんな、俺も丁度行きたいって思ってたしな」
俺達はやたら広いドームから出て本館らしい場所に入ってきた。本館に入ると1人の綺麗な女の人と鉢合わせた。
「あら?あなたたちは見たことない顔ね。でもうちの制服を着ているのだし、新入生かしら、でも新入生なら体育館に行かなくては駄目よ。今からセレモニーが始まるのだから」
セレモニーって何!?と突っ込みたかったがチカを見ると足が震えていたので状況を理解する。
「え、えと。トイレに行きたくて出来れば教えてください!」
生まれて初めて敬語を使った気がする。
「顔に龍跡....そうあなたが」
女の人は俺の顔を見て何か小声で言っていたが今はそれどころではない。チカが言えないが色々とやばい。顔も青くなってきているあたり限界が近い。
「あ、あの!」
「あ、ごめんなさい。そうだったわね。トイレね、一番近くても500メートルほど距離あるわよ?」
Why?何故?
「この学園、無駄に広いからトイレも遠いのよね」
あー成る程。チカ初日からどんまい。
「フッ、でもいいわ。特別に」
そう言うと俺とチカの頭に女の人は手をあてて言ってくる。
「送ってあげる♪」
その言葉を聞いた瞬間俺とチカの目の前には便器があった。
「え!?な、何で!?」
チカは戸惑っているが俺は冷静考えていた。先程から聞こえてくる女子生徒の声。大便という個室に入っているという状況。これは....。
「ね、ねえ...。龍ちゃん、も、もう限界だからその外で待っててくれない?」
状況を理解できていないチカが言ってくるが正直無理だ。初日から変態のレッテル張られるとか俺の学園ライフが終わる。
「なあチカ」
「な、何?...は、早くしてよ...もう」
「俺もここにいちゃ駄目か?」
「・・・ウィルサムガルサルシバアルバネルファーネ...いいわけ無いだろぉおおおおお!」
そして俺は黒い光線に包まれて大便の個室から吹っ飛ばされる。
ですよね~。
周りを見渡すと化粧をしている女子生徒や下着を見せたり(百合ですか?)している女子生徒がいた。
魔法の発動により皆一斉にこちらを見て静寂。
そして。
「「「「キャーーーー!!変態!」」」」
女子生徒の声が木霊した。
「お、落ち着いてください、これには深い深いマリアナ海溝よりも深いりゆ「「うるさーい!!」」」
女子生徒全員が俺の方に手をつきだした。
「「「「ファイヤーボルト!!!」」」」
無詠唱の2段階魔法を俺はノーガードで受けトイレの壁もろとも外にほおりだされた。
「何でこんな目に...」
壁から吹き飛ばされると本館の恐らく8階ほどだった。
「高っ!いや死ぬって!!死ぬってーーー!!」
俺は慌てて詠唱を始める。
「アーサスドラコムストルフィデルーー!我にあだなす敵を永遠の氷の中に閉じ込めよ!コキュートス!!!」
俺は両手を前に出し8段階魔法を唱えた。俺と地面との間に巨大な氷の山が出来上がり俺は停止した。
使った後にやべと思ったが命がかかっていたのだしょうがない。
「にしても酷い目にあった...」
あの女の人。恐らくテレポートを使ったのだろう。それも無詠唱で二人一緒に。テレポートは4段階魔法だ。かなりの腕が必要になってくる。
俺は氷の山から滑り降りるようにして降りてから氷を消した。すると本館の方からチカが走ってくる。
だから揺れてるってとか思いながら揺れてるものを見ながら待つことにした。
「はぁ.はあ、はあ。もう!何で一人で先いっちゃうの!?」
やばい。久し振りに殴ろうかと思った。原因が全部こいつでなんで理解してないの?
「あいた!!何で殴るし!?」
あれ?殴ってた?うんまあしょうがないよね。
「あそこ女子トイレなの分かったか?」
「え?うん当たり前じゃん!私がとい...もう!なに言わせるの!変態!」
「うるせえ!そんななかで俺は個室からほおりだされた。どうなるかわかるか?」
「ん?・・・あーそう言えば少し熱かったような」
それは俺が燃やされてるときの熱だな。
「分かったか?」
「えと...よく生きてたね?」
「おいこら怒るよ?まじで怒るよ?激おこだよ?」
「痛いっ!痛い!もう怒ってるじゃん!」
俺は知らない間にチカの頭に拳でグリグリの刑を与えていたようだ。
「まっ、このくらいにしてそろそろ戻るぞ、終わっちまう」
「あのね...その事なんだけど」
「どうした?」
「もう皆あそこから出始めてる..」
「な、なななな!んだとぉおお!」
「どうしよう...」
「分かるか!それよりまだ誰かいるだろうし、ほら行くぞ!」
俺はチカの手を握って自身に肉体強化の魔法をかけてチカを引き寄せお姫様だっこの状態にする。
「ちょ!ちょっと龍ちゃん!?流石にこれ恥ず「黙ってないと舌噛むぞ!」ふぇ!うわーーー!」
「良し!まだ誰かいる!」
俺は体育館の中を覗くと1人中央にいる生徒が見えたのでめんどくさいが肉体強化をしたまま風の魔法もかけた。
「エア!」
無詠唱、風魔法の2段階魔法だ風に体を押してもらいスピードを速める。
「あ、あの!?」
「あら、あなたたち」
俺が見た生徒はあの時本館で合った女の人だった。