はじめさんが可愛いと思います   作:杉山杉崎杉田

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第6話

 

翌日、イーグルジャンプ。昨日のことをゆんは話した。

 

「えっ⁉︎あの男の子に会ったの⁉︎」

 

「うん。まさか、会えると思ってへんかったけどな。中々ええ子やったよ。うちのこと駅まで送ってくれたし」

 

「んなっ……⁉︎い、一緒に帰ったの⁉︎」

 

「え?うん。お陰で色々分かったで。学校とか名前とか」

 

「教えて!」

 

「いくらで?」

 

「お金取るの⁉︎」

 

「冗談や。昨日はうちもあの子に迷惑掛けちゃってな。すごかったんよ、ほとんど見逃してもうたんやけど、10人くらいの不良を一人でボッコボコにしてたなぁ」

 

「はえ〜……って、違う。他に何か分かったの?」

 

「高校は○○高校、名前は豊田シュウ、部活は美術部で……」

 

「美術部⁉︎」

 

「意外やけど、これがホンマなんや。去年のコンクールでは金賞も取っとるみたいやで」

 

「へぇ〜、すごいねそれ。どんな絵か見たの?」

 

「あ、あー……見たには見たんやけど……」

 

「上手じゃないの?」

 

「いや、バカみたいに上手いんやが……その、何。今にして思えば、何でこの絵で金賞取れるんやろうか、みたいな絵でな……というか、これ美術部でやる絵なん?みたいな……」

 

「へ、へぇ……というか見たの?」

 

「うん。あ、お願いして送ってもらおか?」

 

「連絡先も持ってるの⁉︎」

 

「え、うん。ちょっと待ってな」

 

「………いいなぁ」

 

 

学校の体育館。本日、球技大会。男女共にドッジボール、1、2限目女子の試合をしたあと、3、4限目で男子が試合、昼飯を挟んで5、6限目で勝ったクラスの決勝である。

午前中は暇なシュウは、1組と3組の試合を見ていた。ほたると青葉とねねが出ている試合なので、退屈はしないだろう。何せ、ほたるは運動神経が無い。

喧嘩するだけで怒るほたるの運動の出来なささを精々笑わせてもらおうと思ってると、ヴーっとスマホが震えた。

 

「?」

 

画面を見ると、『飯島ゆん』の文字。

 

「…………?」

 

誰だっけ?と小首を傾げた。聞き覚えはある。けど顔とか覚えてない。

とりあえずLINEを開いてみて、トプ画を見てピンときた。昨日、助けた人だ。

 

『こんにちは。昨日は助けてくれてありがとうな』

 

『この前の金賞の写真、見せてくれへん?』

 

「⁉︎」

 

狼狽えた。この人、他の人に話したのか⁉︎と、思った。写真を送るべきか送らないべきか悩んだが、ここで断ったら、今度お礼してくれる、と言ってた時に気まずい思いをしそうなので、送る事にした。

 

「………文は、いらないか」

 

送った。

 

 

イーグルジャンプ。

 

『メガ粒子レクイエムシュート@シュウから写真が送られました』

 

「お、来たではじめ」

 

「………ムーンレンジャー好きなのかな」

 

「好きなんやない?良かったやん、話が合いそうな子で」

 

「………う、うるさい」

 

LINEを開くと、画面に出て来たのはドラえもんが筋肉むきむきで腕を組み、タケコプターを付けてラスボスのようなオーラを出しながら浮いてる絵だった。

 

「…………ナニコレ」

 

「や、上手いけど……」

 

「や、違うで。これじゃない」

 

 

体育館。

 

「うわやっべ!送る写真間違えた!うわうわうわ、変な笑いとってるって思われたらどうしよう!え、えーっと……なんとか弁解しないと……!って、間違え……!ああ!また送っちまった!」

 

 

イーグルジャンプ。

 

『いまのはまにがえまきた』

 

「「…………」」

 

「ねぇ、ゆん。この子どういう子だったの?」

 

「そういえば、喧嘩の時は堂々とした子やったのに、うちと話すときはやけにたどたどしかったなぁ。自分から話題はろうともせんかったし」

 

「もしかして、会話とか苦手な子なのかなぁ、ひふみ先輩みたいな」

 

「多分、そうかもしれへんな。なんかすごく謝られたし。今思うと少し可愛かったかも」

 

「へぇ〜……なんか変な子だね」

 

「ちょっと、こっちから何か送ってみよか」

 

 

体育館。携帯がヴーッと震えた。

 

「⁉︎ な、なんだ⁉︎飯島さん⁉︎」

 

『焦らんでええから。落ち着いて』

 

「そ、そうだ……落ち着かないと……。……ふぅー」

 

直後、バンッ‼︎と顔面の真横をボールが通り過ぎた。もたれかかってる壁にボールが直撃し、そのボールをシュウが掴んだ。

 

「あ、ごめんね豊田く」

 

「落ち着こうとしてる時に邪魔すんじゃねええええ‼︎」

 

「ひうぅうっ⁉︎」

 

取りに来たねねの真横をボールは通り過ぎ、来た道、つまりコートへ引き返し、コート内のちなつの顔面に直撃した。

 

「先生ー⁉︎」

 

「……と、とにかく落ち着かないと……」

 

大騒ぎになってるのを、当人は全く気にせずに携帯をいじった。

 

「………あれ?ボイスメッセージが送られて……」

 

 

イーグルジャンプ。

 

「あれ?ボイスメッセージが来た?」

 

「へぇ、洒落たことするね」

 

『落ち着こうとしてる時に邪魔すんじゃねええええ‼︎』

 

『ひうぅうっ⁉︎』

 

「」

 

「」

 

 

体育館。

 

「あわわ、やばいやばいやばい……!どうしようどうしようどうし……あっ、返信が……」

 

『い、忙しかったんやね。すまんな』

 

「ち、違うんです‼︎むしろ暇なんです‼︎へ、返信しないと……‼︎あああ!文書いてる途中で送ってしまった‼︎」

 

 

イーグルジャンプ。

 

「……あ、返信来た」

 

『や、さっきのは違くて。今、そのドッジボールでして』

 

「ドッジボールしながらLINEしてるの⁉︎」

 

「どんな状況⁉︎」

 

『ですから別にいいしまさんに言ったわけじゃなくて』

 

「誰やいいしまさんって⁉︎」

 

「………ぷぷ」

 

「今はじめ笑った?」

 

 

体育館。

 

「あ、返信きた」

 

『試合中やったんやね。体育の授業なん?終わってからでええよ』

 

「し、試合中じゃないんだけど……まぁいいか。とりあえず、絵だけ送っておこう。……えっと、この前取った金賞の写真送ればいいんだっけ。この前の金賞は、っと……」

 

送信した。

 

「………あれ?なんで俺がこの前金賞取ったこと知ってんの?まぁいいか」

 

 

イーグルジャンプ。

 

「………お、返信きた」

 

『とりあえず写真だけ送っときます』

 

「とりあえずって……最初からこっちの要望はそれだけなんだけどね……」

 

「あ、来……」

 

「えっ……?」

 

送られて来たのは、『唯一無二の友達』とタイトルを付けられた女子高生の絵だった。

 

 


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