東京喰種 CINDERELLA GIRLS [完結] 作:瀬本製作所 小説部
いい匂いさせてる人はいい人
やっぱりその通り
金木Side
「やっと見つけたよ〜♪」
その子はにゃははと笑う。
もしかして彼女は、今日ぼくのあとを追っていた人物なのか?
「えっと.....どなた様ですか?」
ぼくは恐る恐る彼女に聞く。
「やっぱり知らないよねー♪あたしも同じくー♪」
一瞬、昔出会った人かなと思ったが、結局ぼくの記憶の中にはなかった。
すると、先ほど大きい音に気がついたのか、文香さんがぼくたちの元にやって来た。
「あなたが...先ほど金木さんを...?」
文香さんは少し険しい様子で彼女をみる。
「うん、そうだよ〜♪」とそんな険しい様子を気にせず言う。
「ただこの人の"匂い"がよかったから〜♪それだけー♪」
そういうと彼女は、ぼくの腕に抱きつき、匂いを嗅ぐ。
思わずぼくはドキッした。
「..........」
謎の静けさが数十秒続く。
なんとかしないと....
「とりあえず....彼女を送るよ...」
文香さんは険しい様子で見るかと思いきや、
「金木さん...大丈夫ですか」
心配そうな目つきでぼくを見る。
どうして変わったのかわからなかった。
「うんまぁ...彼女を家に送るよ...最近"物騒"だし」
「まぁ、"志希ちゃん"は少なくとも
ぼくの腕に抱きつく彼女を連れ出し、ここから去った。
ーーーーーーーーーーーーーーー
結局彼女を連れ出すことにした、ぼく。
本来なら6時ぐらいで文香さんの古書店に出られるはずだったが、
突然やって来たストーカーさん(名前は...志希ちゃん?)のせいで一時間長引き、現在は7時ぐらいだ。
彼女はぼくの腕から離れ、鼻歌を歌いながらステップするように歩く。
しばらくぼくたちは会話をせず、ただ歩いていた。
さすがに黙ったままじゃ何もわからないので、とりあえず彼女に聞くことにした。
「名前は?」
「ん?あたしの名前?
満面の笑みでイエイとピースをする。
なんだんだ、この人は。
「君の名前は〜?」
「ぼくは金木研」
ぼくは控えめに口ずさむ。
「ふーん。じゃあ、"カネケンさん"でいいや〜♪」
「"カネケン"...?」
今まで"カネキ"か”ケン”しか言われたことがなかったため、ものすごく違和感を感じる。
でもぼくはやめてほしいとは思わなかった。なぜか。
とりあえず彼女を家に帰してあげないと...
「あの...家は?」
「知らなーい♪」
「え?」
ぼくはその言葉に疑った。
その同時に足を止めてしまった。
「まだここに住んだばかりで、志希ちゃん、わかんなーい♪」
彼女はえへへと言い、両手を少し上げてお手上げのポーズをした。
その同時にぼくは右手を顔につけて、ため息をつく。
どうすればいいのかと。
(交番に連れて行こうかな...?)
ここからだともう少し歩かないといけない。
もう少しでぼくの家なのだが....
すると彼女はとんでもないことを口にだす。
「じゃあ、カネケンさんの"お家"に行ってもいい?」
「え?」
一瞬、何を言っているんだと感じてしまった。
「それはだめだよ....」
さすがに見知らぬ人を泊まらせるなんてとんでもない。
どっかのテレビ番組なら多くの人は了承をしたくなるだろう。
でもさっきまでついて来たストーカーを普通に了承するだろうか?
さすがに無理がある。
「おねがーい!ねぇ?こんな女子高校生が夜一人で歩いてたら"襲われる"じゃーん!」
ぼくは"襲われる"と言う言葉に反応する。
この前に起きた"13区の事件"を思い出す。
被害者は夜一人で歩いていて、
そういえば、最近20区で
「わかったよ。連れてってあげるから...」
ぼくはため息をつき、オッケーを出してしまった。
ぼくの家の方が近いし...
彼女は「やった〜!」と言い、とても嬉しく喜んだ。
「じゃあ!カネケンさんのお家にレッツゴー!」
志希ちゃんは再びぼくの腕を抱きしめた。
ーーーーーーーーーーーーーーー
歩いて数分。
ぼくの住んでいるアパートに着いた。
「へーここがカネケンさんの家?」
「そうだね...」
「一人暮らし?」
「そうだね....」
「あたしと一緒じゃんー♪」
さっきからぼくは『そうだね』しか言っていない。
彼女はそんなぼくの姿を気にせずにゃははー!と笑い、ぼくの腕を抱きしめる。
それにぼくはため息をした。
めんどくさい子に会ってしまったと。
鍵を開け、中に入っていく。
それ同時に志希は感動する子供のような反応をする。
「ところでさ!同じ一人暮らしだったら、一緒に住まなーい?」
「さすがに困るよ.....」
まだ出会ってまだ1日にも満たない。
さっき家に泊まっていいよと言ってしまったが、こんな状況で了承したらおかしい。
「えーいいじゃーん!そうしたら、アパート代が安くなるし!」
「そうだけど....」
「しかも、カネケンさんは優しいじゃん!」
自分で言ってみるのはあれだが、確かにぼくは優しい。
志希ちゃん曰く、いい匂いさせてる人はいい人だと。
すると彼女は何かに目を止め、それに近づく。
「これか!カネケンさんの匂いの元!」
彼女は卯月ちゃんからもらった香水を取り、匂いを嗅ぐ。
「カネケンさんってこうゆうのシュミ?」
「いや、それは貰い物だよ」
「貰い物?女の子から?」
「なぜ女の子?」と聞くと、「こんなの絶対男性はあげないよ。男だったら、自分のものにするじゃん」
と目輝かせながら香水をみる。
やはり志希ちゃんは匂いが好きみたいだ。
「じゃあ、もらっていい?」
彼女はぼくの目をじっと見つめ、答えを待つ。
「......"だめ"だね」
ぼくは断った。
"理由"があるから。
「へー何か特別な意味でもあるの〜?」
彼女は少し嫌らしい目をしながら、ぼくに近く。
「まぁ...なんて言うかな?その友達から"初めて貰った物"だから....さすがに他人には渡せないよ」
卯月ちゃんからの初めてのプレゼント。
これをみるとなぜか、あの時貰った時の"卯月ちゃんの笑顔"が浮かぶ。
どうしてかはわからないけど、これは特別なもらい物だと思う。
それを聞いた志希ちゃんは「おー」と言い、納得した。
「じゃあ、さすがにあたしはもらえないや」
彼女は香水を元の場所に戻す。
(....ん?)
するとぼくは"何か"を見てしまった。
「ところで...カバンに入っているのは?」
志希ちゃんのバックの中に、なにか"薬品"が見える。
「あたし、化学好きだし、匂いも好きだからこういうの持ち歩くんだ」
彼女はバックから何かを取り出す。
一つは香水。
二つは試作品と書かれた小さな瓶。
その小さな瓶の中に入っている液体の色が危なっかしい。
「この薬品飲む?」
志希ちゃんはその小さな瓶をぼくに渡す。
「さすがにこれは.....飲まないよ」
ぼくはすぐに彼女に返す。
冗談抜きで死ぬんじゃないかと。
「えー?別に飲んでも死なないよー?あたしがホショーするからー♪」
「いや....飲まない」
「飲んでー?カネケンさーん?」
ぼくは何度も断り、彼女は何度もぼくに飲ませようとする。
これが何分間も続いた。
ああ、なんでこの子を連れてきたんだろう.....ぼく―――
ーーーーーーーーーーーーーーー
ぼくはシャワーし、髪を乾かしている。
先ほど志希ちゃんはシャワーに入り、今はぼくのベットにいる。
今日は志希ちゃんがぼくのベットで寝て、ぼくは床に毛布を敷いて寝ることにした。
(意外と辛いの好きだったんだね....)
志希ちゃんがお風呂に入る前に夕食を食べた。
冷蔵庫にあったのはぼくの好物のハンバーグしかなく、他に使えそうなものがなかった。
ここで使うべきだろうか?とためらっていると、志希ちゃんは『ハンバーグが食べたーい♪』を言ったので仕方なくハンバーグにすることにした。
そこで衝撃なことがあった。
彼女は食べる前にバックからタバスコを取り出し、ハンバーグにかけたのだ。しかも大量。
ぼくにとってはとてもショッキングなシーンであった。
まるで美しい街が大量の溶岩に飲み込まれたように。
デミグラスソースだけでもおいしいのに.....と。
(とりあえず下着姿じゃなくてよかった....)
志希ちゃんがシャワーに入る前に『着替えはあるの?』と聞いたら、『下着しか持ってないよー』と笑って言った。
もしかすると最初から他人の家に泊まることを前提にしていたのかと疑った。
さすがに下着だけでは困るので、ぼくはクローゼットからシャツと短パンを取り出し、彼女に渡した。
そして今、彼女は着ている。
(志希ちゃんって綺麗だね...)
彼女の肌はとても綺麗だ。
制服姿よりも肌が出ているため、よくわかる。
透き通るような肌、化粧をしていないことを疑いたくなるような可愛さ。
そう思うと、卯月ちゃんのように"アイドル"を目指せるんじゃないかな?
『そういえば、小倉さん。つい最近に20区で喰種の事件がありましたよね?』
『ええ、そうですね。この前は13区でしたが、今度は20区で起きましたね』
「.........」
さっきまでハイテンションな感じが、まるで嘘のように黙っていた。
彼女はぼくのベットに両膝を抱えながら、ただぼーっとテレビを見ている。
テレビでやっているのは
この前に起きた13区の事件についてが取り上げられている。
もちろん
(どうすればいいんだろう...)
突然見知らぬかわいい女の子が現れ、『あなたの家に行きたい』と言い、自分の家に泊まらせる。
まるで恋愛小説みたいなシチュエーション。
他の人なら喜ぶかもしれないけど、ぼくは喜ぶどころか困っている。
さすがに明日には帰ってくれるだろう...
「カネケンさん」
突然志希ちゃんはぼくの方に顔を向け、声をかける。
「どうしたの?」
「
それを聞いたぼくは何も言わず、間を作ってしまった。
彼女の声があまりにも静かであったから。
「見たことないな...」
「ふーん」と表情を変えず答える。
そういえば『少なくとも
「あたし見てみたいなと思うことあるんだ」
「どうして?」
「だって、見たことがないもん」
「そうなんだ...」
なんだか違和感を感じる。
先ほどまでのテンションと違うせいか、とても違和感がある。
「......んふふっ」
「ん?」
「うふふふふふふふふふふ、なんちゃってー♪」
突然彼女は吹き出した。
さっきまでの満面の笑みが戻り、にゃははと笑う。
「どう?さっきとは違う志希ちゃんは?」
「....不思議に感じた」
「フシギに感じたんだ」とニヤニヤしながら言う。
さっきのなんなんだ。
「ていうことで、おやすみー♪カネケンさんー♪」
彼女はそう言い、布団に包まる。
「..........
ぼくは小さく呟くように言う。
ニュースで何度も聞く言葉で、なんとなく耳に入る言葉。
でも実際どう言ったものなのかわからない。
姿は人と同じと言うため、
しかも"人"しか食べれないと。
妙に胸騒ぎがした。
もし今日、彼女を家に招かなかったら....
ーーーーーーーーーーーーーーー
「カネケンさん!カネケンさん!」
ぼくの体がゆさゆさと触れていた。
いつもの朝より騒がしかった。
目を開くと制服姿の志希ちゃんの姿が映った。
そしてぼくの手を引っ張り、台所に連れ出す。
まるで何かを見せたがる子供みたいに。
「あたしの料理の腕はいいでしょー」
「そ、そうだね....」
ぼくは無理をして笑顔を作り、言う。
どうしてそれをしたのか理由があった。
食パンをオーブンで焼き、皿に置いただけのものだ。
ぼくは椅子に座り、一品だけの朝食を食べる。
その同時に志希ちゃんはインスタントコーヒーを作り、ぼくに渡す。
『食べないの?』と志希ちゃんに聞いたが、『もう食べた』と言った。
「どうでしょー?志希ちゃんが作った朝食はー?」
志希ちゃんは食べているぼくをじっと見つめ、にゃははと笑う。
ぼくは「おいしいよ」とまたしても無理して笑顔を作る。
うん、いつも食べる味。
『何か変なもの入れてないよね?』と志希ちゃんに聞くと、『何か入れる?』と言い、真っ青な色をした薬品を取り出す。
それを見たぼくはすぐに断った。
「そういえばさ....志希ちゃん」
「ん?」
「"お金"取ってないよね?」
勝手に料理を作っていたため、もしかするとぼくが寝ている間に何かやったのではないかと疑った。
「うん、取ってないよー?どうして疑うの?」
「ほら...まだ出会ったばかりで、しかもぼくが寝ている間に朝食を作ったし」
すると志希ちゃんはなにか企んでいるような笑顔を顔をした。
「志希ちゃんは何も取ってませーん。さてどうしてでしょー?」
ぼくは「わからないな....」と答えた。
起きたばかりのせいか答える気力がなかった。
「正解は、カネケンさんが優しい人からでーす♪」
そして、にゃははーと笑う。
朝から疲れる....
すると志希ちゃんは何か思いついたような顔をした。
「あたし、わかったかも」
「どうしたの?」
「家の場所」
なぜ今思いつくんだろう....
「大丈夫?また迷ったりしないよね?」
情緒不安定の彼女が心配になり、ぼくは聞く。
「大丈夫!"カネケンさんの連絡先"を知っているから」
「....え?」
ぼくはその言葉に耳を疑う。
すぐさま携帯を開く。
連絡帳には『志希ちゃん♪』と登録されていた。
ぼくの携帯はパスワードを設定していなかったので、勝手にいじられたのだ。
「いやーカネケンさんは優しい人だとわかって、これから多分ここを使わせてもらうよー」
ぼくは「さすがにやめてほしいな...」とぼそっと口に出す。
しばらく会話をし、ぼくは『学校行かないの?』と言うと志希ちゃんは『そうだった!』と大声を上げた。
聞くところによると、本来なら昨日が初登校であったが、やる気をなくしてしまい、ぼくについてきたそうだ。
そして彼女はバッグを取り、玄関に向かう。
ぼくも彼女を見送るため、同じく玄関に向かった。
「今日学校行きまーす♪」
彼女はビシッとぼくに敬礼をする。
「サボらないでね」
「大丈夫ー。今日は化学がある日だからー」
彼女はそう言い、玄関のドアを開いて行ってしまった。
(もう....来ないよね...?)
遊びに来るのはわかるが、
食費を浮かせるためや泊まるためにここに来るのは勘弁だ。
そう思っていると、ちょうど携帯が鳴った。
(?)
こんな時間にメールなんて珍しい。
開いてみると、卯月ちゃんからだ。
「!」
ぼくはそのメールを見て、驚いた。
『CDデビューが決まりました!!!』