東京喰種 CINDERELLA GIRLS [完結]   作:瀬本製作所 小説部

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死にたくはない





ひとりにしないで






alone

楓Side

 

 

夜の居酒屋。

 

「お誘いをしてくださってありがとうございます」

 

「いえいえ、私一人でお酒を飲むなんて心寂しいじゃないの」

 

瑞樹さんのお誘いで行きつけの居酒屋に訪れていました。

本当ならば今日あんていくに訪れる予定でした。

しかし芳村さんは「今日はお休だよ」と言われてしまい、来ることができませんでした。

あんていくが臨時休業をするのは珍しいです。

 

「ほら、今やっている番組みたいに元気にしなくちゃ!」

 

「本当ですね」

 

居酒屋に置かれていたテレビに視線を向けた私たち。

今やっていたのはゴールデンタイムのバライティ番組。

ここ最近巷で話題の番組で、視聴者からおもしろいと言うことを耳にします。

その番組を語っているうちに私たちはお酒が進み、さらに会話が弾む。

お酒は私にとって切っても切り離せない存在です。

普段言葉を伝えることが苦手な私を解放してくれるように口数が益々増えていきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな時でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーー速報です」

 

するとテレビに流れていたバライティー番組が急遽ニュースへと変わりました。

 

「あら、せっかく面白い場面だったのに」

 

「どうしたのでしょうか?」

 

いつも速報ニュースなら画面の上に字幕として出るのですが、今回は番組がガラリと変わりました。

それほど重要なニュースでしょうか?

 

「20区は大規模な警戒網が張られ、現在立ち入り禁止区域となって」

 

 

 

 

 

 

『対象は20区にある喫茶店で、"喰種(グール)"の巣窟(そうくつ)である可能性がーーー』

 

 

 

 

 

 

 

 

「このキャスターくん少し声が慌ててるわね。楓ちゃんもそう思わない?」

 

「.....」

 

「楓ちゃん?」

 

私はテレビのキャスターが伝えた言葉に震えていた。

生中継で映されていたのは、20区にある喫茶店。

アルコールが頭に回っているはずなのに酔いが覚めたようにはっきりと目に映り、恐怖が差し迫るかのように震え始めた。

中継で映されている場所は知らない所ではなく、かつて私がアイドルになる前に通っていた見慣れた景色。

私がアイドルになる前まで働いていた喫茶店がある。

そのお店の名前はあんていく。

 

「う....嘘ですよね...?」

 

「か、楓ちゃん!?どうしたの!?」

 

「う、嘘ですよね....?嘘、うそ、うそだ、な、なんで...なんで」

 

息が荒れ始める。

その同時に涙が目から溢れてる。

あまりにも信じられない。

これが夢であってほしい。

現実ではなく、夢の中の出来事であってほしい。

 

 

壊れ始める。

 

 

私の思い出の場所。

 

 

 

 

 

 

 

 

その場所が崩壊しようしていたのだ。

 

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

永近Side

 

20区 CCG総司令部。

現在20区では一般人は退避され、いるのはCCG捜査官と喰種(グール)だけだ。

しかしCCGの中に一人特殊な人物がいた。

その人物の名は永近英良(ながちかひでよし)

彼は正式にはCCG捜査官ではなく、捜査官補佐としてCCGの元にいる。

本来CCGは一般人からスカウトすることないのだが、丸手特等は永近の才能を見抜きスカウトをした。

 

「なんだと!?」

 

すると司令部に何やら動揺が走っていた。

なんだろうかと疑問を感じた永近は耳を傾けた。

その捜査官の驚き方は損害な被害を受けた情報ではなく、予想外な出来事に驚いたと言うには等しいほどの口調であった。

 

「島村卯月が20区内にいるだとっ!?」

 

今司令部に入った情報は被害の報告ではなく、まさかのアイドルの島村卯月がいると言う情報が入った。

 

「それは本当か!?」

 

「ええ....同じくアイドルの一ノ瀬志希からです。彼女曰く、自宅にいるのではないかと聞いています。彼女の自宅は現在、激戦区です」

 

(おいおい....嘘だろ)

 

島村卯月は346プロダクションに所属しているアイドルで、現在大学受験のため活動を休止している。

一般人が20区に残されているというのは仮にあるかもしれないが、彼らが彼女を大きく取り上げたのは理由があった。

それは彼女が所属している346プロダクションであった。

通常は約1週間前には計画を346プロに伝えるのだが、今回の作戦は何より最重要機密として作戦前ギリギリまで報告をしていないのだ。

 

「絶対に死なせるな!特に346に知られたらまずい!」

 

司令部内は今すぐ彼女を確保するようにと緊迫した空気が現れた。島村卯月が20区に取り残されたという事実を知られるのは確実であるが、もし仮に島村卯月が作戦中に死亡してしまえば、世間からさらに批判を受けるのは間違いない。

 

  ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

プロデューサーSide

 

 

私が20区に出た瞬間だった。

喰種捜査官が大量に現れ、20区へ続き道を塞いだ。

 

(何が起きている..?)

 

装甲車などが大量に20区内に入り、そして武装した捜査官がゲートを設置した。

明らかに異様な光景だ。

そもそもCCGが作戦を実行するなど耳にしていない。

異様な光景に動揺していた私に持っていた電話が入った。

私が電話に出ると 、

 

「プロデューサーさん!」

 

私にかけてきたのは、事務員の千川さんだった。

 

「今、20区方面に多くの喰種捜査官が向かっているのですが..」

 

「20区は現在CCGによって厳重警戒区域になりました」

 

「今って、ど、どういうことですか!?」

 

本来なら都内に大規模な作戦が行う約一週間前には346プロダクションに連絡が入ってくるのだが、今回は事前にも知らされずに作戦が執行されたのだ。

 

「つい先ほどCCGから連絡が入ったんですよ。喰種捜査官から『今回は最重要なため、最後までお伝えすることができませんでした』と焦った様子おっしゃっていました」

 

直前まで報告しないとなると今回はただの作戦ではない。

 

「20区に住んでいるアイドルの皆さんにはそれぞれ対応を急がせていますが..」

 

千川さんの声の先には慌ただしく怒号に似た声が聞こえる。おそらく予期しない出来事に対応に追われているとわかる。

 

「それで今回の作戦はなんでしょうか?」

 

「今回の目的は20区内にある喫茶店だそうです」

 

「喫茶店?」

 

「そのお店の名は“あんていく”」

 

「っ!?」

 

美城常務から聞いた喫茶店の名前に私は背筋が凍った。

なぜなら私はつい先ほどそこに訪れていたのだ。

 

「その喫茶店にあのアオギリの樹と関係のある喰種がやっていたらしく、その喰種は過去に多くの人を殺害したそうで...」

 

「....」

 

「プロデューサーさん?」

 

「あ、い、いえ..あまりにもひどいお話で」

 

私がつい口を閉ざしてしまった理由はその話ではなかった。

私が手にしている袋。

それはあんていくの店長から頂いたものだった。

まさかあの人がCCGのターゲットなのか?

 

「そうですよね..まさか喰種がお店を経営してるとは考えられませんね....」

 

私はCCGが攻撃対象であるあんていくに訪れていた事実を隠しながら話した。

 

 

 

 

 

でも衝撃はすぐに消えることなく、ずっと胸の中に残っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

私には疑問があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なぜ彼は高垣さんをあの喫茶店で働かせていたのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女を喰種が働いている喫茶店に

 

 

 

 

  ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

卯月Side

 

一歩一歩地面に歩く私。

何も持たずに飛び出してしまった。

大通りには戦闘が行われ、光が届かない路地裏に隠れていた。逃げる途中私は足を挫けてしまって長く歩くことができない。

平和だった東京がいつの間にか戦争の地に変わった。

 

 

 

 

 

 

耳を済ませば銃の発砲音

 

 

 

 

 

 

跡形なく倒れている死体

 

 

 

 

 

 

誰なのかわからない切断された腕

 

 

 

 

 

 

 

鬼のように恐ろしいマスク

 

 

 

 

 

 

 

 

そして感情をおかしくさせる血の匂い

 

 

 

 

 

 

 

 

 

怖い

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

怖い

 

 

 

 

 

 

私は暗い路地裏にあった鉄のゴミ箱の横に見つからないように座った。

 

 

 

 

 

 

 

座った瞬間、不安と恐怖がますますと頭に浮かんでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私はここで死んじゃうのかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰にも見られず一人で死ぬ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パパとママより先に死ぬなんて

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一人で死ぬなんて嫌だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私にはアイドルという夢を掴んだのに

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今過ごしている場所はいつ死ぬかわからない怖い場所

 

 

 

 

 

 

 

助けを求めても誰もこない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

胸の中で助けてと言うしかない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私一人で死ぬは嫌だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一人にしないで

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「卯月ちゃん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ!」

 

 

すると誰かが私の名前を呼んだ。

振り向くと道路側に一人誰かが立っていた。

逆光で誰なのかわからない。

でもその声はどこか懐かしい。

久しぶりに聞いた声。

 

 

 

 

それはまるでーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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