東京喰種 CINDERELLA GIRLS [完結] 作:瀬本製作所 小説部
怖い
目が覚めたとき、世界が変わってしまったんだ。
美嘉Side
今日のお仕事が終わり、アタシは事務所の最寄り駅にいた。
それにしても駅が混んでいる。
どうやら先ほど速報で入った20区の封鎖が原因だと思われる。アタシは住んでいる場所は埼玉だから問題はなかったけど、20区に住んでいる同じアイドル達は家には帰れず、それぞれのプロデューサーに対応をしてもらっている。
そういえば先ほど雨が降るって携帯の通知がきた。
今日は雨が降らないと今朝のテレビで聞いたのだけど、突然降り出すのは最悪。
なにせ傘を持っていなかったのだから。
そんな嫌な気分を抱えていたアタシに突然ケータイがなった。
(ん..?)
画面を見ると志希からの電話だった。
いつもならメールが多いのだけど、いきなり電話をかけるには珍しい。
「志希?」
アタシが電話に出ると、10秒ほど何も聞こえなかった。
普通なら志希は「やっほー♪」などどこか軽い返事をするのだが、その時は違った。
「やぁ...美嘉ちゃん」
しばらく待つと志希の声がやっと聞こえた。
その声はいつもより明るさがなく、まるで何かに怯えるように震えていた。
「どうしたの志希?」
「卯月ちゃんは今...そこにいる?」
「卯月?いや、アタシの元にいないよ?卯月って確か志希の家にいたんじゃ」
「.....」
アタシがそう言うと、電話からは静かな空気が聞こえる。
そもそも卯月は志希の元ににいたはずだ。
今日の朝、志希からアタシに『今日は卯月ちゃんが家にやってくるんだ♪』とメールで送ったのだから、さすがにほかの場所に行ったなんて考えられない。
「急に卯月を探してどうしたの?」
「...実はーーーーー」
志希の震えた声から出た話。
それを耳にしたアタシはーーーー
「ーーーーー嘘でしょ!?」
耳に疑うような衝撃が志希の口から耳にした。
周囲がいる駅の中で、私は何も気にせず声を上げてしまった。
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未央Side
ビルのスクリーンに映っていたニュースを見て静かに驚いていた、私。
何気なく通っていた喫茶店が、喰種が経営していたとニュースを耳にした。でも今の私にはそのニュースよりも重要なことがあった。
(..行かないと!)
数メートル先に私たちの近くに現れた白髪の人が立っていたのだ。その人は赤の他人ではなく、ある人に似ていた。
今こちらに全く気がついておらず、スクリーンに流れているニュースに驚いていた。
私は白髪の人の近づき、その人の手を掴んだ。
「っ!!」
その人は私の方に顔を向け、大きく目を開いた。
「か、金木さん!!」
私はその人の名を言った。
私には確信があった。
その人は知らない人ではなく、私がかつて出会った人であると。
「み...未央...ちゃん?」
その人から出た声は、あの時当たり前に聞けた金木さんの声。
ああ、懐かしい。
金木さんの声だ。
この声が再び聞けてよかった。
「今までどこにいたんですか!?」
私は涙を込み上げ、彼をまっすぐと見る。
周りなんて気にしない。
金木さんは私の瞳を数十秒間なにも喋らなかった。
そしてどこか悲しそうな目をし、
「...ごめん、未央ちゃん」
金木さんがそう言うと、私の手を振り払った。
私は金木さんの行動に呆然してしまった。
頭が回らず、突然何が起きたのかわからなかった。
私が気がつくと足を挫けたように倒れた。
「待ってっ!!お願い!!」
私が金木さんに呼び止めようとしたのだが、もう遅かった。金木さんの足は私が追いかけられないほど速かった。
ああ
私は逃してしまった
もう一度会えた彼に
私は涙をした。
街の真ん中で一人涙をした。
またあの人を失ってしまったのだから。
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志希Side
私が美嘉ちゃんに連絡をする前の話。
あたしはお菓子を買いに卯月ちゃんを家に残し、外に出かけていた。
今日はなぜか20区内のお店はなぜか全て閉まっていた。
20区にあるスーパーや年中無休であるはずのコンビニも扉が閉まっていて、営業はしていなかった。
それで私は隣の区に行くことになってしまった。
でもいつもどこかに失踪しているせいかもしくはレッスンのおかげかそんなに疲れることなく、ウキウキしながらお菓子を選び家に帰っていった。
(ん?)
するとちょうど20区に向かう道の先に、いくつかの車が道を塞ぐように止まっていた。
(なんだろう?)
その車をよく見るとCCGと書かれていて、銃を持った人たちが何人かいた。あたしがそのまま進もうとすると一人の男性が「そこの君」と呼び止めた。
「あれー?行けないの?」
「そうだ。今20区内は厳重警戒が入った」
「...え?なんで?」
捜査官の言葉に陽気だった私はだんだんと不安が現れていく。
「今、喰種が20区に大量に現れている。20区にいた一般人は皆退散している」
「あー....そう...なんだ」
少し硬くなった口で話したら、嫌なことが頭に上がった。
(ま、まさか....卯月は外に出ているはずだよね..?)
あたしは携帯を開き、卯月ちゃんに連絡をした。
電話とメールを何度もしたのだけど...
(...あれ?)
メールをしても、電話をしても一切連絡が繋がらない。
胸の奥底から段々と不安が大きくなり始めた。あたしの不安を抱えた顔を見た捜査官の一人が異変を感じ。
「どうしたんだ?」
「取り残されているかも..あたしの家に....」
「取り残されてる!?場所はどこだ!?」
あたしはケータイから地図を表示し20区にある自分が住んでいるマンションに指を指すと、捜査官は「なんてこった...」と顔は険しくなった。
「そこは一番危ない場所だ。すぐに救出に向かえない」
「向かえないって...!お願いっ!!」
「すまない。今すぐ助けに行くことができない」
あたしが何度も捜査官に頼んだのだけど、すぐには助けることができないと何度も同じ言葉を口返していた。
あたしは買ってきたお菓子を地面に下ろし、頭を抱えた。
あたしはとんでもないミスを犯してしまった。
まさに薬品の調合に失敗し危険な薬品ができたように大きな過ちを犯してしまった。
卯月ちゃんをあたしの家がある20区に置いてしまったのだ。
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卯月Side
チクタクと針の音がなる部屋。
寝ていた私はその音に徐々に意識を取り戻し始めた。
「...」
日が沈んでしまったかの部屋は真っ暗で、窓からは街灯の明かりが差しかかる。
(....なんだろう)
静まる部屋とは違い、何か騒がしい。
それは工事の音より音が激しく、人々がワイワイと騒ぐよりもなんだかうるさい。
私はなんだろうと窓に視線を向けた。
そしたら窓に赤い液体は張り付いていた。
「ひぃ!!」
それを見た私は眠気が消え、恐怖が現れた。
部屋の窓に赤い血しぶきがあったのだ。
私が寝る前には綺麗だった窓が、血に染まっていた。
血しぶきの先を見ると何人のかの人が戦っていて、倒れている人があちらこちらに地面に倒れていた。
よく耳にすると悲鳴や断末魔、そして銃の発砲音が聞こえる。
(な....何この音..?)
悪夢を見ているみたい。
寝る前は穏やかで静かな場所だった20区が、まるでどこかの国の戦争の地に来たかのように変わってしまった。
(に、逃げなきゃ..っ!)
恐怖心に駆られた私はすぐに立ち上がり、外に向かった。
あまりにも怖くてそのまま家に出てしまった、私
何も持たず外に行ってしまったんだ。