東京喰種 CINDERELLA GIRLS [完結]   作:瀬本製作所 小説部

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沈む太陽。


その時、あいつが姿を表すだなんて私は考えもしなかった。








夕焼け

プロデューサーSide

 

 

高槻泉ーーー

 

彼女は10代に書いた『拝啓カフカ』で50万部のベストセラーを達成した作家。

テレビでは度々名が上げられるが出演などなく、サイン会などの小さいイベントで顔を出す程度だ。

そんな彼女が突然346プロダクションに訪れ、取材を求めにきたのだ。

 

「彼女が取材したい理由は?」

 

「それがCCGとの関係を取材したいと言っておりましたが、特に"CCGと組むきっかけを作った人物"と話したいと」

 

「そうですか...」 

 

考えてみれば他の人に任せるより、現在346プロダクションがCCGと提携するきっかけを作った私が話した方がいいかもしれない。

 

「ちひろさん。私が話しましようか?」

 

「え?次の現場があるのでは?」

 

「"少し"のお時間なら大丈夫です」

 

私は携帯を取り出し現場先の担当者に少々遅れると連絡し、高槻さんの元に向かった。

 

「高槻さんですか?」

 

「ああ、どうも高槻です。デカイですね...」

 

高槻さんが言うのはわからなくもない。私よりはだいぶ身長が低い。

 

「くわしくは応接室でお話をしますが、撮影は控えてください」

 

高槻さんは「わかりました」と立ち上がり、カメラをバックに入れ私のあとをついていった。

 

「そういえば、346プロの入り口は特殊ですね」

 

「あれは検査ゲートです。喰種を入らせないように特殊に作っています」

 

入り口の作りは通常とは違い、薄い構造ではなくとても厚い扉になっている。

 

「喰種が入ったら、館内中になるんですか?」

 

「ええ、そうですが…なぜわかるのですか?」

 

私が次に言おうとしたことが高槻さんの口に出たのだ。

 

「前にCCGの20区支部で取材をしていたので、もしかすると同じかなと」

 

「そうなんですか...なぜ20区支部に?」

 

「それは秘密ですね。バラしたら逮捕されるほどの重要な情報でしたから」

 

高槻さんはそう言うと「逮捕は勘弁です」とわずかに笑った。

それにしても高槻さんは20区支部で一体何を話したのだろうか?

 

「346プロに入る喰種はいますかねぇ?」

 

「…おそらくは"0”です」

 

世間には346プロとCCGは強力な関係だと知らされており、13区は他の区と比べ警備が厚いと耳にしている。

そんな状況で346プロダクションに乗り込む喰種がいないことに私は心から願う。

再び"悲劇"が起きることなく、平和で過ごしたい。

そう考えていた私は応接室に着き、高槻さんを席に座らせた。

 

「それで我々とCCGの関係で聞きたいことは」

 

「そのまえに今日きたのは、だた346プロとCCGがどんな関係なのかだけではないのでお仕事のインタビューをできればと!」

 

「お仕事ですか?それならばある程度は答えられますが...?」

 

「なにげない事でもいいですよ」

 

高槻さんはふふっと笑い、満足そうにメモを取る。

 

「私はアイドルのプロデュースをしていまして」

 

「プロデューサーさんですか!プロデューサーっと言うお仕事は具体的にどんなことをするのですか?」

 

「基本的には私の場合はシンデレラプロジェクトのアイドルを担当しています」

 

高槻さんは「ほほぅ」とメモに書いていた。

そのまま話が進むと思っていると、

 

「ところでお好きな食べ物は?」

 

「え?」

 

すると突然、話がガラリと変わった。

 

「これも必要なことですか?」

 

「ええ、もしかしたら次回作のアイディアに必要かなと」

 

高槻さんの言葉に少し疑ったが彼女は作家であるため、もしかしたら創作には必要ではないかと考え、私は答えることにした。

 

「ハンバーグが好きです」

 

「ハンバーグですか。意外と可愛い食べ物がお好きなんですね。私がCCGでお話をした喰種捜査官はその日に食べた昼食は甘口のカレーでしたよ」

 

「は、はぁ..?」

 

その情報は必要だろうかと疑問に感じた。

なんだか話がずれ始めていると思い始めたその時、高槻さんはある話を取り上げた。

 

「そういえばCCGでこんなお話があるんですよ」

 

「お話?」

 

「喰種捜査官は喰種をどんな武器で倒すかご存知ですか?」

 

「クインケと呼ばれる武器で戦うと耳にしてますが、そのクインケというものは一体なにかはある程度...」

 

喰種捜査官はクインケと呼ばれるアタッシュケースの中にある武器で戦う。

そのクインケは喰種から取り出される非人道的な製法のため、一般に知られていない。

346プロダクションでは私と"一部の人"しか知らない。

 

「へぇ、知っているんですね」

 

「はい。それがどうしたのですか?」

 

「CCGは喰種をより排除するために、過去に喰種の身体能力をヒトに取り組む研究をやってたらしく、それがどうも"今"もやっているらしいいのです」

 

「...え?」

 

私は一瞬息を止めてしまった。

高槻さんの口に出た情報に疑ってしまった。

喰種を排除をする機関が人間の体に喰種の能力を入れる非人道的なことをする話を。

人が喰種になる話といえば亜門さんと真戸さんの口に出た話が記憶に新しい。

その被害者が"金木研"。

金木さんは卯月さんや渋谷さん、本田さん、城ヶ崎さんなど交流があった青年で、現在は行方不明だ。

 

「これは"あくま"で噂なので、本当なのかはわかりませんよ?例えるならアメリカのルート51でUFOの研究をしているぐらい」

 

それにしても"どこから"その情報を耳にしたのだろうか?

そう考えていた私に高槻さんはあることを私に伝えた。

 

「話は変わりますが、20区に美味しいコーヒーを出す喫茶店があるんですよ」

 

「喫茶店?」

 

「”あいんていく”と言う名前ですが、他のお店とは比べ物にならないほど味わい深い所で、実は過去に高垣楓が働いていた場所なんですよ」

 

「高垣さんが?」

 

「ええ、この話は意外にも知らされてなくておそらくあなたが...いや、もしかしたら"知っている人"はいるかも」

 

「え?」

 

「何はともあれ、ぜひ立ち寄ったらどうです?」

 

その後高槻さんは私に346プロダクションとCCGに関する質問をするのだろうと思ったのだが、

好きな色や最近訪れた飲食店など大半は関係のない話ばかりであった。

私は質問をした後、高槻さんは346プロダクションから去っていった。

ただ質問を答えた私だが、高槻さんが話したCCGに関する噂に考えさせられた。

高槻さんが言った情報は妙に金木さんの話が一致している。

確か元CCGの元解剖医が喰種の臓器を移植したと言われているが、その人物はあくまで元CCGの人間。

離れているはずなのに今も研究を続けているとなれば、重大な問題だと言える。

噂だと言えどどうも嘘らしさが感じない。

作家にしては想像力で考えた情報とは捉えにくい。

彼女は一体なんだろうか...?

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

カネキSide

 

 

日が沈み始める夏の夕方。

僕は花屋さんに足を踏み入れた。

そこは彼女とは初めて出会った思い出のある場所。

去年は何度か訪れたのだが、今年は今回も含め2回しか来ていない。

その一つが誕生日だった彼女にプレゼントを渡すためにここの花屋さんで花を買いに来た。

その買った花は彼女の家に置いた。

ちょうど彼女の部屋の窓が開いていたため、そこに置いた。

今回お店に訪ねる理由はある人物に会うためである。

僕は彼女がいると思い、お店の中に入っていった。

 

「いらっしゃいませ」

 

出迎えてくれたのは中年の男性。

僕が4月にここに訪れた時と同じ人。

おそらくは凛ちゃんのお父さんだろう。

お店を見渡す限り、彼女の姿はなかった。

僕はその人に「あのすみません」と声をかけた。

 

「どうされましたか?」

 

「凛さんはいますか?」

 

「凛?もしかしてファンの方ですか?」

 

「いえ、ファンと言うか彼女とはお友達で、ここ最近お会いをしてなかったので会いに来ました」

 

彼女が人気になっていたせいかお父さんから少々警戒心が肌に感じる。

以前に出会ったことがよかったのか口を開いてくれたが、

 

「すみません。凛は今オープンキャンパスでいなくて」

 

「そうですか…」

 

「ここ最近は忙しくてね」

 

どうやら現在、彼女はいないようだ。

やはり以前とは違うことがわかる。

彼女は"去年"とは違う。

 

「いえ、彼女が自分の夢にしっかりと向かっているなら大丈夫ですよ」

 

僕はそう言うと微笑みを作った。

今会えなくても、彼女が僕と違って輝いているならいい。

 

「忙しいなら仕方ないです。お聞きできてありがとうございました」

 

「いえ、またお店にお越しください」

 

僕は凛ちゃんのお父さんに「さようなら」と伝え、公園の方に歩いていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次に彼女と会うのはーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

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凛Side

 

 

オープンキャンパスに帰ってきた私。

今日は長く歩いたせいか体に疲労を感じる。

だけど胸の中には充実感があった。

いつも行けるような場所に訪れたから、とても新鮮感を肌に感じ取れた。

高校とは違う大学は私にとって良いところだ。

 

「ただいま」

 

「おかえり、凛」

 

家に帰ると父さんが顔を出し、出迎えてくれた。

もうそろそろお店を閉めるためか外側に置いてある花を持ち出した。

ここ最近はお店の手伝いをする機会がなく、手伝おうとすると『せっかくのオフなんだし遊んで来なさい』と言われ、手伝うことができない。

このまま自分の部屋に行き、オープンキャンパスの報告書を書くつもりだった私。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お父さんの"ある一言"がなければね。

 

 

 

 

 

 

「そういえば、"白髪の人"が先ほど来たよ」

 

「っ!」

 

お父さんの言葉を耳にした私はピタリと足を止め、固まってしまった。

聞いた私は頭が真っ白になった。

 

「どうやら"その人"は凛の友達と言っていたよ。見た感じ凛より大人っぽい"人"だったね」

 

「........」

 

「凛?」

 

「..どこに行った?」

 

私は震える声でお父さんに聞いた。

白髪の人。

それは前に父さんからお店に訪ねたと耳にし、卯月が図書館に勉強していた時も奈緒から聞いた。

ここ最近私の近くで現れる人。

 

「どうした、り」

 

「その人はどこに行ったの!?」

 

怒号に似た声でお父さんに問いただしてしまった。

お父さんは私の態度に何があったのかわからず、目を大きく開いた。

私の感情は揺らいでいた。

私はとにかくお店に訪ねてきた白髪の人を知りたかった。

 

「帰った方向は....多分、公園の方向だな」

 

「っ!!」

 

私は父さんの言葉を最後まで聞かずにすぐ向かった。

もう一度会いたい。

今度こそ会うんだ。

オープンキャンパスで疲れていたはずの体は早く走ることができた。

体よりも会いたいと言う感情が勝っていたんだ。

 

「…….」

 

私は自然と立ち止まってしまった。

走ってきたため息が切れ、立っていられるのが辛い。

だけど今の私は関係がない。

私は公園のベンチに一人座る男性をまっすぐと見ていた。

 

「.....っ」

 

その男性は私がいることに気がつき、振り向いた。

左目に眼帯をして、白く染まった髪。

それに赤黒く染まった爪

 

 

 

 

 

 

 

でも"その人の瞳"は変わってはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「....凛ちゃん」

 

その人はつぶやくように私の名前を言った。

私はその人の声を耳にした瞬間、心の中で確信した。

 

 

 

 

 

 

 

 

“あいつ”だ

 

 

 

 

 

 

私をアイドルになるきっかけを一つ作ってくれた人でもあり、胸に抱えていた悩みを聞いてくれた人。

 

 

 

 

 

 

 

どこか女々しくて会うたびにイラつかせる人。

 

 

 

 

 

 

 

だけど私たちの前から姿を消し、たくさん心配をさせた人。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その人の名は"金木研"。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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