東京喰種 CINDERELLA GIRLS [完結]   作:瀬本製作所 小説部

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彼女たちと離れた初めての夏。



毎年は何も気にすることなく過ごしたのだけど、



今年は違う。






夏入

凛Side

 

(夏休みか...)

 

夏休みに入って最初の日。

学校の友達は海に行くだったり、テーマパークなど普通の日常では行けない遠くに足を運んでいる。

だけど私は逆だ。

早速お仕事が入っているため、遊んでられない。

今日もお仕事はあり、事務所に訪れている。

まだ仕事前だから学校から出されて課題を睨めっこする感じに見ている。

もちろん数学や国語とかあるのだけど、その中でめんどくさく感じるのはオープンキャンパスの報告書だ。

高校二年生だからなのか、夏休みの課題の中に最低でも3つの大学のオープンキャンパスを行かなければならない。

 

(マジでどこのオープンキャンパスに行こう?)

 

私は数学が得意だから、文系ではなく理系に選択した。

それで理系の大学選ぼうとしているけど、中々決まらない。

アイドルになる前の将来の夢は獣医だったけど、今の夢はトップアイドルだ。

夢は変わったけれど担任からは理系の大学に覗いたほうがいいのでは?と言われた。

 

「こんにちは凛さん」

 

「あ、文香」

 

すると文香が私に声をかけた。

あまりにも課題に見ていたせいか、いることに気づかなかった。

 

「今日はお仕事ですか?」

 

「うん。夏休み初日に入って早速あってね」

 

「そうなんですか...無理をなさらないように」

 

「ありがとう文香。仕事は大丈夫だよ。ところで文香はどう?」

 

「私は撮影でここに来ました」

 

「撮影?新曲の?」

 

「ええ、"生存本能ヴァルキュリア"ですね。最初はダンスレッスンで苦戦をしたものですが...以前と比べると体力はつきました」

 

「それはよかったね」

 

会う回数が増えたのか前よりも会話が続く。

初めは会話がすぐに途切れ、沈黙が続くものだった。

そんな時、文香は私が見ていたオープンキャンパスの課題に気が付いた。

 

「その紙は...?」

 

「ああ、これね。オープンキャンパスに行かないといけないやつだよ。今ちょうど行くところが決まらなくて」

 

「オープンキャンパスですか?」

 

「そう、こんな暑い時に行くのは少し辛いよ」

 

「確かに今年の夏は暑いですよね....あ、もしよかったら、私の大学に行ってみますか?」

 

「文香の?」

 

「ええ、上井大学です」

 

文香の口から出た上井大学。

確か"あいつ"が通っていた大学。

そういえば上井大学は理系の学部はいいと言う情報を耳にしたことがある。

 

「ちょうどオープンキャンパスですし、私が案内しましょうか?」

 

「文香が案内?時間はあるの?」

 

「ええ、もし凛さんが行くならば時間を作りますよ」

 

気のせいかもしれないけど、どこか文香は明るかった。

今までは暗い空気を抱えていて明るさとは無縁と言っても良かったけど、

だけど今は前のように暗くはなかった。

何かきっかけがあったのだろう?

 

「なら、行こうかな。上井大学のオープンキャンパスに」

 

私は"あいつ"がかつて過ごしていた大学に足を運ぶことにした。

でもさすがに文香に"あいつ”のことを聞く真似はしない。

誰よりも"あいつ”がいなくなったことに悲しんでいたこもあり、

そして今の明るくしている時を壊したくなかった。

文香は前よりも暗さがなく、輝いている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

再び失った悲しみを起こしたくない。

 

 

 

 

 

 

 

 

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未央Side

 

 

「いやぁ、暑いね〜みんな」

 

「今日は一番暑いとテレビでやってたよね」

 

「こんな日は運動が一番っ!!」

 

夏の太陽がギラつく東京。

今私はあかねちんとあーちゃんと街で歩いている。

今日は休みが取れて、一緒に

暑い夏がやってきてしまった。

どうやら今年も記録的な猛暑だと言われるらしい。

毎年記録的な猛暑だと聞くのだけど、もしかするとこれがいわゆる地球温暖化というものだろう。

 

「あかねちん、今日はだいぶ暑いよ?」

 

「そういう時こそ、やるです!!」

 

「それで熱中ーー」

 

 

 

 

 

 

その瞬間

 

 

 

 

 

「...?」

 

一人の男性が私の横に通り過ぎた後、私は口を閉ざしてしまい、

立ち止まってしまった。

 

「あれ?どうしたの未央ちゃん?」

 

「...え?あ、い、いやなんでもないよ」

 

「もしかして、熱中症?」

 

「いや、さすがにそれはないよ?熱中症だったら、もしかしたら倒れてるよ」

 

「そうだよね。ちょっと心配したよ」

 

私たちは再び足を動かし、歩き始めた。

普通なら横にお通りすぎた人を気にすることはないけど、

先ほど私の横に通りすぎた人は何か普通の人とは違う。 

具体的になんなのかと言われると、やはり空気だ。

どこか懐かしい空気を肌に感じたんだ。

 

 

 

 

 

 

 

一体誰だろう?

 

 

 

 

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美嘉Side

 

 

「わぁ〜!!やっと図書館に行けたね!!」

 

「そうだね。みりあちゃん」

 

夏の快晴の空。

やっとみりあちゃんがこの前に約束していた図書館に行くことができた。

それはもちろん夏休みの宿題の手伝い。

なんとか休みを合わせることができたため、やっとの思いで一緒に過ごすことができた。

ちなみに今日はみりあちゃんだけではなく、莉嘉も連れて来ている。

 

「お姉ちゃん、宿題を手伝って!」

 

「本当にわからないところだったら手伝うよ?流石に全部やってもらうのはダメだからね?」

 

莉嘉は「はいー」と答えたのだが、結局最後はアタシが全部手伝うことになる。

莉嘉はいつも宿題を最終日で溜め込むだからね。

 

(私は莉嘉とみりあちゃんに宿題を手伝うぐらいしかないかな?)

 

普段あんまり本を読むことなく、図書館に足を運ぶ機会がない。

ただ小説を目を通してもだんだんと睡魔がアタシを襲ってくる。

 

「とりあえず二人とも、あんまり迷惑をかけちゃダメだからね」

 

 

「「はーい!!」」

 

 

二人がそういうと、アタシたちは図書館の中に入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこでみりあちゃんと莉嘉が"ある子”と出会うだなんて、アタシは知らない。

 

 

 

 

 

 

 


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