東京喰種 CINDERELLA GIRLS [完結]   作:瀬本製作所 小説部

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気づく、自分



見えなかったものが露わと出てくる






Fissure

カネキSide

 

 

 

勝てない。

みんなを守ろうと誰よりも強くなろうとした僕。

しかしコクリアから脱走をした喰種(シャチ)が、挫折を僕の胸に刻み込んだ。

それ以降様々な格闘書を読み、練習を積み重ね、そして今(シャチ)の前に再びたった。

前回はかわすことができなかった(シャチ)の攻撃を全てクリアし、与えることができなかった攻撃を奴の体に刻み込んだ。

すべてが順調に言ったと確信した、僕。

 

 

 

 

 

 

 

だが僕は、再び敗北を味わうんだ。

 

 

 

 

 

 

散々攻撃を食らったはずの(シャチ)は全くダメージを受けてはなかったかのように、

何不自由もなく動き、ずっとかわしていった(シャチ)の攻撃を受けた。

その衝撃で壁に叩き込まれ、壁が壊れ、そして別の部屋へと写っていった。

そこは他の場所とは違い、壁には人が入れるカプセルのようなものがあった。

攻撃を受けた僕が立ち上がったその時、僕が追っていた"嘉納"が姿を表した。

嘉納を捕らえようとまっすぐと行ったら、またしても(シャチ)の強い一撃を受けてしまった。

せっかく嘉納の前にたどり着けたのだが、

またしても前と同じく"敗北"をしてしまった。

今までの積み重ねが水の泡とかしてしまった。

嘉納が(シャチ)に捕まれ、逃げようとした瞬間、

大量の実験体が放たれ、僕に襲いかかる。

その実験体はかつては人であったが、半喰種の実験に使われ、理性は失っている。

 

『ママ おなかすいた』

 

『うあぼ』

 

理性を失ったことで幼稚語しか話せず、僕を獲物しか捉えていない。

もし僕が喰種になるのを失敗したら、彼らのようになってしまたかもしれない。

僕は彼らを倒すのは困難だ。

(シャチ)から受けたダメージが体が思うように動かない。

 

 

 

 

 

 

僕は彼らの肉を喰う。

 

 

 

 

 

 

 

 

負った体を回復させないと

 

 

 

 

 

食い続けないと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

食い続けないと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

喰い続けないと

 

 

 

 

 

 

 

喰イ続ケナイト

 

 

 

 

 

 

 

 

死んデハいケナイ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あア

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クるうゥ

 

 

 

 

 

 

 

 

アたマがァオかシィくぅナぁテイィく

 

 

 

 

 

 

 

 

大量ノ肉を喰らイ続ケていッた、僕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな時、誰かが現れた。

耳から聞こえる音では、3人ほどのようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まぁいいや

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕の邪魔をするやつはみんな

 

 

 

 

 

摘まなきゃ

 

 

 

 

 

  ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

亜門Side

 

 

 

 

 

俺は嘉納の施設と思われる場所で、再び"ヤツ"と出会ったんだ。

 

 

 

 

 

そいつは雨が降り始めた夜の20区に出会った喰種"眼帯の喰種"だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

その喰種はあの時に戦えなかった俺を殺さなかったんだ。

人を糧にする喰種が見逃すなど通常はありえない。

だが俺は"2回"味わっている。

 

『...鋼太朗。"家族ごっこ"もこれで(しま)いだな』

 

思い出す小児喰らいの喰種"ドナート・ポルポラが真実を知った幼い俺に言った言葉。

実の親を失った俺を育ててくれた。

初めは父の代わりだと捉えていた。

だが日々が一変する時が訪れてしまった。

共に暮らしていた施設の孤児を喰らう場面に出会ってしまったのだ。

それを見た俺は彼が喰種だとわかってしまった。

しかし捕食する場面を見られてしまったにも関わらず、俺を殺さなかった。

あれ以降、俺は胸の中に葛藤を抱えることになった。

 

 

なぜ喰種であるにも関わらずに人間である俺を殺さなかったのかと

 

 

『"ただの喰種"でいいんだなッ!!??』

 

 

眼帯の喰種に問いただすように強く言った言葉。

眼帯の喰種は始め見た時より姿が違う。

ムカデのような姿で、まさにバケモノと言ってもおかしくないほど人の形が止まっていなかった。

人である俺を見逃した姿ではなく、

人を喰らう喰種と何も変わりがなかった。

あれほど自分の欲を抑え涙を流していた姿とは程遠いものだった。

 

『もう....食べたくない....』

 

眼帯の喰種は俺の言葉に我に帰ったのか、

涙を流し、巨大に伸びていた赫子が小さくなっていた。

そのあと俺はヤツを吹き飛ばし、ヤツは逃げていった。

このまま追撃すれば良いかもしれないがが、眼帯の喰種に攻撃を受けてしまった篠原さんを最優先に助けなければならない。

篠原さんは俺にとってアカデミー時代の教官であり、そして現在同じく20区に担当している。

幸いにも使用していた鎧型の赫子を捕食されただけであり、傷は深くはなかった。

その後我々が施設内を捜索していると、あるものを発見した。

嘉納が実験したと思われる被験者が詳しく書かれた書類が見つかった。

その中に以前彼女たちに聞いた"カネキケン"の名があった。

彼は人から喰種に変わったではないかと言う仮説が徐々に露わとしていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

彼をどう裁けばいいのだろうか

 

 

 

 

 

 

 

実験の被験者として裁くのか、それとも喰種として裁くのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして彼女らにどう伝えればいいのか

 

 

 

 

 

 

 

 

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カネキSide

 

 

大切なものを守るために戦っていた僕は、

その大切なものをを摘もうとしてしまった。

大量の喰種の肉を喰い続けてしまい、僕は暴走をしてしまった。

それが原因で共にしていた仲間の体を手で貫き、殺そうとしてしまった。

幸いにも誰も殺さずに済んだが、僕はあることが頭に過ぎった。

それは僕が初めて捜査官と戦った20区のこと。

喰種捜査官と戦い、瀕死になっていた僕。

僕は戦いっていた捜査官を殺さずに見逃した。

だが肉を求める体が悲鳴をあげ、自らを制御ができなかった。

そんな時、僕の携帯が鳴りだした。

僕は這いつくばるように動き、携帯手に取り、画面を見た。

その着信をしてくれたのはかつての友達"卯月ちゃん"だった。

でも僕は必死に電話に出ないよう体を抑えるように動かなかった。

その時の僕は彼女を人ではなく、肉として捉えてなかったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕は改めて考えないといけない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕が守るべきものとはーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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卯月Side

 

 

ふと目を開いた私。

それはゆっくりではなく、パッと開いた。

ぐっすりと眠れた気がしない。

それは私は怖い夢を見てしまったから。

その夢ははっきりと頭に残っていた。

私が見た夢は誰もいない暗闇に、一人取り残されていたんだ。

光もなく、音もない。

まさに”無”と言っていいほど何もない世界。

なんだか“12月の時の私”みたいだ。

 

(..ベッドから起きないと)

 

私はどんよりとした気分を晴らすためベッドから立ち上がり、外の光を断っていたカーテンを開いた。

夜とは違い、空は眩しいほど明るい。

暗い色が消え去っていて、夏の朝日が昇っていた。

そして鳥の鳴く声や蝉の声など夜明けとともに始まった。

 

(あれは”夢”だよね....?)

 

私が見たのはあくまで夢。

現実では起こるはずのない。

きっと”怖い夢"は、起きるわけない。

私は胸の中にそう呟いたんだ。

 

 

 

 

 

 

 

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文香Side

 

東の空から昇る日。

カーテンの隙間から出る日差しで目が覚めた、私。

目覚めた直後、私はあることに気がついた。

どうやら私は本を読んでいる内に寝てしまったようだ。

いつもの私なら本を読んでいるあまり寝ることを忘れ、朝を向かえてしまう。

だが今回読んだ本は違う。

たった数十ページ程度を目を通しただけで、気がついたら眠ってしまった。

おそらくつまらないから寝てしまったと思うかもしれません。

でも考えてみれば、この本を読んだおかげで眠りにつけた。

苦手だった小説が私に眠らせるだなんて、不思議。

 

 

 

 

 

“彼"で眠れなかった私が、彼が好きだった本で眠りにつく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんだか皮肉だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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