東京喰種 CINDERELLA GIRLS [完結]   作:瀬本製作所 小説部

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それぞれの思い



離れてしまった人を思い続ける







わたし

卯月Side

 

月が輝く夜。

外は昼間の暑さが残っているせいか、夜でも蒸し暑い。

それで部屋の窓を閉め、エアコンをつけ、

そろそろ寝ようとしていた、私。

ベットの上のいて、寝る準備はばっちりでした。

だけど私はあるものをずっと眺めていました。

それは合格祈願と書かれた小さなキーホルダー。

私が受験生だからこれをもらった。

でも私は何より気になっていたのは、そのキーホルダーではありません。

 

(金木さん....なのかな)

 

それは渡した人です。

直接は会っていないけど、渡された奈緒ちゃんはその人は金木さんではないかと言っているのだ。

奈緒ちゃんが言った言葉が今でも頭に焼き付けられるほど、明確に覚えている。

髪は白かったと聞いたのだけど、金木さんは黒髪だ。

真っ黒だった髪が白くなるなんて、髪を染めるぐらいしか考えられない。

 

(.......)

 

でも奈緒ちゃんと出会った人が"他の人"とはなぜか考えられない。

このキーホルダーを渡してきたのは白髪の人だと言われても、頭の片隅には金木さんではないかと考えてしまう。

 

 

 

 

 

 

 

ふと浮かび上がる金木さんとの思い出。

 

 

 

 

 

 

 

 

特に一番大きいのは、最後に出会った日。

 

 

 

 

 

 

 

 

いつものように振る舞えるような空気でもなく、

いつものようにはできないことに挑戦ができて、

いつもでは味わえない空気

そしていつもとは違う胸に秘めていた想い

 

 

 

 

 

 

 

 

冬の冷たい空気に、キラキラときらめくイルミネーションが記憶の中に明確に覚えていて、

 

 

 

 

 

 

 

そんな状況の中、金木さんは泣いていたんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの時の金木さんはたくさんの悩みを抱えていて、それが溢れる形で泣いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私はどうすればいいのか考えた。

 

 

 

 

 

 

 

楽しく遊園地で過ごしていたはずなのに、金木さんはまるで物語の終わりに恐れを抱くように震えて、怯えていたんだ。

 

 

 

 

 

 

考えついた末に私が示したことは、金木さんの手を握ったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

一人にしないようにと、ぎゅっと握った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時私は金木さんに約束をしたんだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『金木研さん。私は何があっても忘れません』と

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でも金木さんは私の前から姿を消してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

どうして姿を消してしまったのか今でもわからない。

 

 

 

 

 

金木さんがいなくなり、日々過ごしてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

凛ちゃんや未央ちゃんもいつしか金木さんの話題を上げることがなくなり、"二度目の死"を表そうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな時、CCGの暁さんと亜門さんが私の元に来たのだ。

 

 

 

 

 

 

 

それはただ私に会いに来たのではなく、金木さんのことを私に聞きに来たのだ。

 

 

 

 

 

 

 

もちろんそれは金木さんが見つかったと言う報告ではなかったけど、喰種にされた疑いが上がっていた。

 

 

 

 

 

そのことに私は混乱してしまい、頭が回らなかった。

 

 

 

 

 

 

まさか金木さんに関することをこんな形で久しぶり聞くだなんてねって。

 

 

 

 

 

 

亜門さんと暁さんと話した後、しばらく心に引っかかて落ち着かなかった。

 

 

 

 

 

 

それは数時間ではなく、数十日ぐらい続いた。

 

 

 

 

 

 

 

その影響かラブレターの撮影で、何度も取り直しがあった。

 

 

 

 

 

 

美穂ちゃんや響子ちゃんに迷惑をかけてしまった。

 

 

 

 

 

二人からどうしたの?と心配をされたけど、金木さんのことを話すわけにはいかない。

 

 

 

 

 

 

 

その人で気になっているだなんて。

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな状況だったけれど、無事にラブレターの撮影が終わり、お仕事が終わった。

 

 

 

 

 

 

その後アイドルを休止し、受験勉強を励んでいた私。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな時に突然、私にやって来たのだ。

 

 

 

 

 

 

 

金木さんと思われる人が奈緒ちゃんの元にやって来て、私にキーホルダーを渡した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まさか金木さんと思われる人からキーホルダーを受け取るだなんて考えもしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

(....なんだろう)

 

 

 

 

 

 

 

切ない。

 

 

 

 

 

 

心が満たされない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

落ち着かない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、どこか"恋しい"。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は空いた穴を埋めるため、大きなぬいぐるみをぎゅっと抱きしめる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夢にしていたアイドルになっていても、全てを得られていたわけがなかった。

 

 

 

 

 

それは普通の女の子の時でも同じく得られていないもの

 

 

 

 

一人では得ることができず、誰かがいないと結ぶことができない。

 

 

 

 

かと言って相手は誰でもいいとは言えない。

 

 

 

 

 

こうして日々過ごしているうちに、ふと思い出すかのように考えてしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もし金木さんに再び会えるとしたら

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私はーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

金木Side

 

 

(何か嘉納と関係するものはあるのか...)

 

夏の夜。

日が昇っていた時とは違い、涼しい風が吹く夜。

僕たちは嘉納が所有する屋敷についた。

そこは嘉納とつながりのある喰種マダムAが彼と立ち会った屋敷だ。

街からだいぶ離れた丘に立っている建物で、誰もいる気配が感じない。

屋敷の入り口は鍵かけらてはおらず、僕たちはそのまま屋敷の中へと入った。

その後各自で屋敷内を捜索し始めた。

おそらくはこの中に何か嘉納に関する手がかりがあるはずだ。

僕はマダムが嘉納と話し合った居間に入った。

そこは生活感もなく、家具には埃がかぶっていた。

居間を見渡してみると、僕は本棚に目をつけた。

その本棚にある本を取ろうとしたその時、

 

「.......」

 

本を取ろうとした腕がピタリと止まったしまった。

何かが僕の動きを阻むように現れた。

 

(.....)

 

直接は会えなかった"彼女"を思い出す。

彼女は大学に進学するために夢であったアイドルを休止し、勉強に取り組んでいる。

笑顔が素晴らしくて、純粋で優しい彼女。

確か僕と違って国語が苦手と言っていたことがあった。

あの頃が懐かしく思う。

 

 

 

 

 

特に彼女と最後に過ごした日々が頭に浮かぶ。

 

 

 

 

 

 

泣いていた僕の手を握ってくれた。

 

 

 

 

 

 

 

彼女の手は暖かく、心に不安を抱えていた僕を和らげてくれたんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

一人だった僕を寄り添ってくれた、彼女。

 

 

 

 

 

 

 

今はどうしているのかな。

 

 

 

 

 

(.....)

 

 

 

 

 

でも今は忘れるべきだ。

 

 

 

 

 

 

情が僕を妨害させる。

 

 

 

 

 

みんなを守らないと、殺されてしまう。

 

 

 

 

 

情があったら僕は強くなれない。

 

 

 

 

 

 

 

だから、今彼女のことを考えてはいけない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今の彼女は"目の前に消えた僕"を忘れている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

せっかく約束してくれたのに、僕は破ってしまったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

きっと僕のことなんてーーーーーー

 

 

 

 

 

「カネキ!!」

 

ふと我に帰ると万丈さんが何か見つけ、僕を呼んだ。

取り付いていた想いを忘れるように僕は万丈さんの元に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その下は一見ただの地下室に見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕はマダムAにさらに情報を聞き出すために赫子を壁に叩きつけた。

 

 

 

 

 

 

 

その時、嘉納の研究施設の入口を発見した。

 

 

 

 

 

 

僕たちはその先を歩いていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

その先に僕を喰種に変えた医者"嘉納"がいるはず。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーー

 

文香Side

 

 

 

 

 

眠れない

 

 

 

 

 

目を閉じても、リラックスをしても、息をゆっくり吸っても、

 

 

 

 

 

私は眠ることができない。

 

 

 

 

 

 

 

 

ただ真っ暗な天井を見ているだけの私。

 

 

 

 

 

 

 

 

チクタクと時計の針が動く音。

 

 

 

 

 

 

 

扇風機の回る音。

 

 

 

 

 

 

 

明日は大事な撮影ですが、その緊張よりもはるかに大きいものが私を眠らせない。

 

 

 

 

 

 

以前まではだんだんと落ち着いていたのだが、

 

 

 

 

 

 

 

CCGの人からお話を聞いて以来、私は"彼"のことを思い出してしまう。

 

 

 

 

 

 

 

"彼"

 

 

 

 

私と同じ大学に通う一つ下の男性。

 

 

 

 

 

 

"彼"は私と同じく本を読むのが好きな方で、人と接することが少なかった私にとって大切な人でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし私が346プロダクションでアイドルになった時、"彼"と接する機会を失ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

事務所に入って多くの人と知り合えましたが、それと同時に"彼"と会う回数は減っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

初ライブ前の出来事、私は"彼"に告白をしてしまったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今でもなぜやってしまったのかと後悔してしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その結果は振られてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

理由は私がアイドルだと"彼"は寂しそうな顔で言った。

 

 

 

 

 

 

 

それ以降、お互いは大学内でも話すことなく過ごしてしまい、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ついには"彼”は本当にいなくなってしまった。

 

 

 

 

 

 

今思えば後悔の連続。

 

 

 

 

 

 

 

 

なぜ私はアイドルをしてしまったのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

今の私は、ただアイドルの仕事をしているに過ぎない。

 

 

 

 

 

 

(.....)

 

 

 

 

 

 

 

私は立ち上がり、押入れの奥からあるものを取り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

それは私が以前触れたが、それ以上読むのを拒ませた本。

 

 

 

 

 

 

高槻作品の一つ、"拝啓カフカ"

 

 

 

 

 

作者"高槻泉"の処女作だ。

 

 

 

 

 

私がこれを読むのは苦手だが、

 

 

 

 

 

 

 

“彼”にとっては好きな小説。

 

 

 

 

 

 

 

私がこの本を再び取るなんて、前の私が見たら驚くに違いない。

 

 

 

 

 

私がこの本を手にした理由、

 

 

 

 

 

 

 

 

少しでも"彼"に近づければいい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私はその本のページをめくり、読み始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私の胸に溜まり続けていた後悔を消すために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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