東京喰種 CINDERELLA GIRLS [完結]   作:瀬本製作所 小説部

64 / 84
久しぶりに彼の名前を耳にした


その同時に疑いたくなる情報を耳にした






his name

卯月Side

 

 

「カネキ...ケン?」

 

私はその名前を聞いた瞬間、記憶が一瞬にして消えたように状況が把握できなかった。

突然、喰種捜査官の暁さんの口から出た金木さんの名前。

なんで知っているのかわからない。

というか何で知っている?

行方不明のはずの金木さんが、警察ではなく喰種捜査官の口から出るなんて。

一体どうしてなの?

 

「あの」

 

「..え?」

 

「大丈夫か?」

 

混乱していたせいか、亜門さんに声に気がつかなかった、私。

かなり動揺をしていたんだ。

 

「あ、す、す、すみません...」

 

「戸惑うようなことを言ってすまない」

 

「だ、だ、大丈夫です....」

 

お仕事では緊張で動揺や硬くなることは少なくなったのだけれど、

今は仕事の時よりも比べものにならないほど動揺が大きかった。

 

「話に戻るが、お前はカネキケンを知っているのだな?」

 

「...知ってます。私は金木さんとは友達です」

 

疑ってしまう。

なんでCCGの人が金木さんを知っているのかと。

喰種を取り締まるのが主な仕事なのに、なぜ金木さんを?

 

「すみませんですが....誰にも言いませんよね?」

 

「安心しろ。我々は変にメディアに情報を売りつけるような馬鹿げたマネはしない。情報の保持は保証をする」

 

私は真戸さんのその言葉にほっとした。

私がアイドルで名が上がったおかげで、前よりも注意深く過ごさなければならない。

特に男性との関係に関してはもっと注意しないといけない。

 

「それで...なぜ金木さんを知っているのですか?」

 

「ああ、言い忘れてすまないな。我々はカネキケンに関する情報を集めている」

 

「関する情報?」

 

「カネキケンは現在行方不明だと知っているな?」

 

「はい...知ってます」

 

「それで何か"異変"を感じなかったか?」

 

「異変....?」

 

""異変"と言う単語に、私は真っ先に頭に浮かんだことがあった。

最後に出会った日が迷うことなく浮かんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でも、あの出来事は言ってはだめだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「....少し体調が優れていないと金木さんは言ってました」

 

「体調が?」

 

「はい...おそらくは、”事故”で」

 

「"鉄骨落下事件"だな」

 

その事故を知ったのは志希さんからだ。

その事故の被害者は名前が伏せられていて、

もし志希さんに言われなかったらわからなかった。

 

「そうです。その事故の影響かもし」

 

「その"事件"なんだが」

 

「ん?」

 

すると突然、真戸さんが私の話を遮るように口を開きました。

 

「その治療を担当した医者がCCGの元解剖医だ」

 

「かいぼう...い?」

 

「簡単に言えば、喰種の体の仕組みを調べる仕事だ。その医者なのだが」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『カネキケンに喰種の臓器を移植した疑いが出ている』

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーーえっ?」

 

真戸さんの言葉に、私は固まった。

電流が走ったかのように心臓の鼓動が早くなり、頭が回らない。

喰種?

金木さんが喰種の臓器を移植された?

一体どういうこと?

 

「じゃあ...喰種の臓器を移された人間は、どうなるんですか?」

 

「それに関しては我々は答えることができない」

 

「答えることができない...?」

 

「ああ、人間が喰種の臓器を移植されるとどうなるかは我々はわからない」

 

亜門さんと真戸さんはどこか確信を持てない顔をしていたため、

私はそれ以上追求はできなかった。

 

「それで現在カネキケンに二つの可能性がある。一つは初めから喰種か、本当に人間だったか」

 

「初めから喰種..!?」

 

「喰種だった可能性はないとは限らない。喰種は人に紛れて生きている。特に親しくなった人間を捕食する事例は数多くある」

 

「え....」

 

「それでカネキケンが姿を消した理由はあくまで推測だが、その喰種の理由が絡んでいる可能性がある」

 

話が頭に入らない。

衝撃のあまり、頭に入らずに聞き流すように聞いていた、私。

喪失感と言うものを受け取ってしまったようだ。

 

「もし何か手がかりがあったら、俺たちに連絡をくれ。今日話したことはあなたのプロデューサーや友達など、誰にでも言わないように」

 

気がつくを話が終わり、亜門さんと暁さんは私に名刺を渡した。

暁さんと亜門さんの名刺を受けとり、二人は部屋から去って行った。

 

 

 

 

 

しばらく教室に留まっていた、私。

亜門さんと真戸さんの口から出たことに未だに信じきれない。

もし金木さんが初めから喰種だったなら、初めて出会った時はなんだったんだろうか。

あの時に出会ったのは私を食おうとしたの?

 

 

 

 

 

 

 

 

いや

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

金木さんが私を獲物として狙うなんて考えられない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最後に出会った時に流した涙は、嘘だったわけがない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一人になるのが怖がっていた姿が、偽っていたとは思えない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ヒナミSide

 

 

珈琲の匂いが程よく香るあんていく。

そのあんていくのカウンターに座っていた私。

いつもなら表に出ることのない私だけど、今日は違う。

 

「もうそろそろ来るかな?」

 

「今日は撮影で遅くなるかも」

 

トーカ姉ちゃんがそう言うと、そわそわしている私に少し笑った。

今日は私が会いたい人がやってくる。

早く会いたいせいか、 時計の針がいつもより遅いように感じる。

こんなに会いたいと言う気持ちをさせたのは、"お兄ちゃん"以来久しぶり。

 

「こんにちは、みなさん」

 

カランっとお店の開く音出した瞬間、一人のお姉ちゃんがきたのだ。

その人はトーカお姉ちゃんと同じ年で、長い髪をしたお姉ちゃん。

 

「あ、うづきちゃん!」

 

「こんにちは、ヒナミちゃん」

 

彼女はうづきちゃん。

笑顔が素敵な人で、私たちとは違い"人間"だ。

 

「今日は早いね。もう少し遅く来るかと思った」

 

「いえ、今日はいつもより早く終わりました」

 

うづきちゃんは笑顔でそう言うと、カウンター席に座った。

彼女と出会ったのはつい最近のこと。

私は今まではこっそりと見ていて会おうとはしなかったけど、

今は普通にお話ができるようになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私たちが"喰種"だと言う事実を隠しながらね

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヒナミちゃん!」

 

「んー?」

 

「今日いいもの持ってきたよ」

 

「いいもの?」

 

うづきちゃんがそう言うとふふっと笑い、カバンの中からあるものを出した。

 

「じゃーん!お花の本だよ!」

 

「本!本だ!!」

 

「ヒナミちゃんは本を読むのが好きとトーカさんから聞いたから、持ってきたんだ」

 

私はうづきちゃんの持ってきたものに嬉しさが溢れるばかり、大きく喜んだ。

新しい本を読めるワクワク感は好き。

知らないことを知れる喜びを味わえるから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

"お兄ちゃん"が本を読む面白さを教えてくれた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「卯月ってそんな本持ってたの?」

 

「いえ、実は凛ちゃんからもらいました」

 

「凛?あいつそんな本を持ってたのか?」

 

「はい!凛ちゃんのお家はお花さんをやってますので、小さい時によく読んだそうです」

 

「そうなんだ、意外」

 

「あんまり本を読むことはないのですけど、凛ちゃんからこのお花の本をもらって試しに読んでたら、あっという間に時間が過ぎたんですよ」

 

そう言うとうづきちゃんは笑った。

私はそんなうづきちゃんの横に座れるだけでも嬉しい。

 

「あ、そうそう。この本にはね、花言葉があるんだよね」

 

「花言葉?」

 

「花言葉はそれぞれのお花に意味があって、例えばアネモネと言うお花は."期待"と"希望"と言う意味があるんだよ」

 

 

 

 

 

 

 

うづきちゃんが帰った後、私は一人でクローバーの花言葉を調べてみたんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしたら、明るい言葉ばかりの花じゃないことに気づく。

 

 

 

 

 

クローバーの花言葉

 

 

 

 

 

希望、愛情、信仰

 

 

 

 

 

そして最後にあった言葉。

 

 

 

 

それは"復讐"。

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

亜門Side

 

 

雲が厚く広がる朝。

俺とアキラは346プロダクションに訪れ、待合室にて鷺沢文香を座って待っていた。

今回も島村卯月の時と同じく、急に予定を入れる形で会うことになった。

これは決してあちらを迷惑かけようとするためではなく、事前に察することなくやるためだ。

 

「そういえば、亜門」

 

「なんだ?」

 

「この前の卯月のことなのだが.....彼女とまた話す必要がある」

 

「それはなぜだ?」

 

「私の勘だが、"何か"隠している」

 

「何か?」

 

「ああ、どこか不自然さを感じたからな」

 

さらに聞こうとしたその時、扉がゆっくりと開く音がした。

 

「え..?あ、あれ?プロデューサーさんは?」

 

入ってきたのは今回聞き込みをする鷺沢文香。

本来この時間は仕事の現場に向かうはずだったか、

その前に我々の聞き込みをする。

 

「部屋は間違ってはない。座ってくれ」

 

「は、はい....」

 

アキラがそう言うと、彼女は戸惑った様子で椅子に座った。

 

「戸惑うことをさせてすまない。今我々が話すことはあなたのプロデューサーには伝えれないことだ」

 

「えっと..どう言ったことでしょうか?」

 

予想がつかなかったことに出会ったせいか、彼女は動揺した様子で俺たちに声をかけた。

ちなみに彼女と話すのは基本アキラだ。

同性だと話しやすいのではないかと、俺は少し黙っている。

 

「私たちはカネキケンを探している」

 

「えっ」

 

鷺沢文香は小さく呟くように言うと、目を大きく開き、口を閉ざした。

 

「....」

 

そして彼女は視線を下に向け、手をだんだんと握った。

 

「どうしまーーーーっ!」

 

俺は彼女を伺おうとをしたその時、口を止めてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女はしゃくり始め、涙を流したのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

とても悲しそうに、儚く泣いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。