東京喰種 CINDERELLA GIRLS [完結]   作:瀬本製作所 小説部

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知る


無知な私にとって欲しいもの


Emerging

プロデューサーSide

 

 

未だに動揺が治らない。

私がいる待合室にやって来た二人の喰種捜査官の一人に亜門さんがいたのだ。

 

亜門鋼太朗(あもんこうたろう)

かつて私が346プロダクションに入社したばかりに出会った喰種捜査官の男性。

出会ったきっかけは自分が担当していたアイドルが喰種によって命を奪われてしまった雨の日だ。

あの事件以降もう会うことはないと思っていたのだが..

 

「私は真戸暁。亜門上等の部下として捜査を務めています」

 

「よろしくお願いします」

 

髪を結んだ、しゅっとした女性。

私たちはそれぞれ自己紹介をした後、椅子に座り本題に入った。

 

「それで今回お話をするのは"アイドルの喰種調査"でしょうか?」

 

私は"アイドルの喰種調査"という情報をCCGから耳にしている。

本来は企画はこちらで作り、直接我々が喰種捜査官の元に訪れるのだが、

なぜかCCG側が企画を提案したのだ。

亜門さんは首を少し横に振り、口を開いた。

 

「いえ、事前に情報を頂いたと思いますが、それはあくまで表向きです」

 

「表向き?じゃあ一体何を?」

 

「今回お話することは貴社の上層部、特にアイドル部門で影響をしかねない話です」

 

それを耳にした私は、思わず息を飲んでしまった。

亜門さんがこれから言うのことはただの話ではない。

まるで亜門さんと初めて出会った時の雨の日のように、部屋の空気がずっしりと重く感じたのだ。

 

「そのお話は?」

 

「ええ、私たちは"ある人物"について彼女たちから聞きたいのですが」

 

「ある人物?」

 

「はい、"カネキケン"と言う青年に」

 

「....えっ?」

 

名前を聞いた瞬間、私は呆然してしまった。

 

「どうしましたか?」

 

「あ、いえ....」

 

「......もしかして、知っているのか?」

 

すると真戸さんが口を開いた。

 

「......はい。実は何度かお会いしたことがありまして」

 

「何度か?」

 

「ええ、彼女たちのライブ終わりにお会いすることが多くありました。でも去年の12月の終わりに、彼は行方不明になったと聞きました」

 

「あなたもカネキケンを知ってたとは...」

 

亜門さんは私が金木さんを知っていたことに驚いた。

おそらく予想がつかなかったことに出会ったように。

 

「それで聞くが、カネキケンについて何かわかっていることは?」

 

「彼のことについては全くと言ってもいいほどわかりません」

 

「そうか...だが誤解はしないでくれ。我々はカネキケンと接触していたとされるアイドルと話をするためにあなたの元にやってきた。

 決してあなた方の会社のブランドを傷を入れるわけでもなく、メディアに情報を売る馬鹿げたことではない」

 

確かに亜門さんたちが他の誰かではなく、私に声をかけたのはおそらくは他の誰かよりも信頼をする人物だからだと思われる。

我が社は喰種対策に肯定的だか、もしアイドルが他の男性と何らかのつながりを持っていたとするなら、

各マスコミが食いついてしまいブランドを傷をつけかねない。

あくまで我々の仕事は喰種対策ではなく、アイドルのプロデュースだ。

 

「それで、我々がカネキケンを捜査している理由は....」

 

真戸さんの口から出た本当の真実。

その内容は社内では知らされてはならないものであり、

自分にとって衝撃的なものであった。

亜門さんたちが言うには現段階ではあくまで仮説であると言われるが、

私は"その仮説"が現実になってほしくはない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

亜門さんたちが346プロダクションに去った後、心の中で思ったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まさか、彼は初めから喰種なのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いやそんなことない。

 

 

 

 

 

 

 

 

あの仮説があるなら彼は初めから喰種ではない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でも

 

 

 

 

 

 

 

 

もし彼が喰種だとなれば...

 

 

 

 

 

 

再び私の担当したアイドルを失ってしまう

 

 

 

 

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亜門Side

 

「まさか亜門があのプロデューサーとつながりを持っていたとはな」

 

「今回彼の手を借りてしまうとは考えもしなかった」

 

俺たちは346プロから去って行き、20区支部の戻って行った。

 

「さすがに彼は上には伝えないはずだが...」

 

「もし上が知られてしまえば、"カネキケン"に関する情報が途切れ、今後の捜査に影響が出る」

 

俺たちは彼に我々が捜査していることを伝え、

その関わったていたとされるアイドルに会えるよう許可をした。

彼はシンデレラプロジェクトのプロデューサーとはいえ、以前よりはアイドル部門の中の地位は高い。

それで我々は彼に許可を求め、了承を得た。

我々がカネキケンと言う人物を知った理由は、

CCG内でバイトをし、捜査官補佐になった永近から情報を得たのだ。

永近曰く、カネキケンは島村卯月と交流があり、つい最近まで何度か会っていたらしい。

 

「それでなぜ島村卯月だけではなく、"鷺沢文香"と"一ノ瀬志希"が?」

 

本当なら島村卯月だけでもよいが、なぜか関係ない二人が捜査対象になっていたことに疑問が浮かんだ。

 

「これはあくまで私の勘だが、鷺沢文香はカネキケンと同じ大学に在籍している。

 おそらくは何らかの交流があったのではないかと思われる」

 

「交流?」

 

アキラはかつての上司真戸さんの娘でもあり、親子二人の勘が強い。

俺は長年、真戸さんとパートナーをしていたため、身に染みるほど勘の凄さを味わっている。

永近はカネキケンとは同じ大学だと言っていたが、鷺沢文香と同じ大学とは言ってはなかった。

 

「それと一ノ瀬志希はこの前の音楽番組で"ある意味深い発言"をした」

 

「発言? あの"K・K"か?」

 

K・Kは一ノ瀬志希がアイドルをなったきっかけを作った人物。

しかもそのK・Kは男性だ。

その出来事は色々な番組で取り上げられ、世間を騒がせている。

各メディアではそのK・Kと言う人物について何人か候補を挙げているが、未だにはっきりとした答えはない。

なにせ一ノ瀬志希は何を考えているのかわからない。

真相は彼女の頭の中にしかない。

 

「しかも彼女はカネキケンと同じ20区に住んでいる。もしかしたらカネキケンは彼女と接触したのではないか?」

 

「....確かにありえなくもない」

 

アキラの推理は、納得はいく。

我々が彼女たちから彼について聞き込みをする理由、

それは彼は一体どういう人物かと聞くのもあるが、肝心なのはここ最近の"異変"だ。

10月に起きた鉄骨落下事故でその場にいた少女は死亡し、彼は重傷を負った。

重傷を負った彼はとある医者が死亡した少女の臓器を使い、移植を受けた。

もし彼女たちからカネキケンの情報を得ることができたなら、捜査が進める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女たちの口から一体どんなことを耳にすることができるだろうか?

 

 

 

 

 

 

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未央Side

 

 

「あー疲れたー」

 

そう呟いた私は都内の喫茶店のテーブル席に一人座った。

春の終わり頃とはいえ、夜は少し寒い。

今は夕方頃だから私は、暖かいカフェオレを頼んだ。

今日は仕事が終わり、こうして休んでいる。

外に見える車の渋滞がより夕方の味を出している。

 

(お仕事をするのはいいけど....その代償がね....)

 

初めて立った舞台の成功を納め、世間に名が挙がった。

その代わり友達とは遊ぶことが少なくなり、仕事が増えていった。

夢に近づけたとはいえ、失うものがある。

 

 

 

 

 

まるで"12月20日に聞いた衝撃"のようにね。

 

 

 

 

 

はぁっとため息をつき、ふと横を見ると"とある男性"が横に通った。

 

「あれ?もしかして...ヒデさん?」

 

そう呟くように呼びかけると、その男性は足を止め、私の方に振り向いた。

 

「お、久しぶりじゃん!未央ちゃん!」

 

まさか再びヒデさんと出会えたのだ。

ヒデさんは金髪の髪をした男性で、金木さんの親友だ。

 

「ちょっと隣に座っていいか?」

 

「いいですよ!ちょうど一人でしたし」

 

私が座っているソファーにぽんぽんっと叩くと、ヒデさんはそこに座った。

 

「最近、舞台で結構頑張っているだろ?」

 

「前よりも成長していると実感できて、楽しいですよ」

 

「そーなんだな。結構充実してるじゃん」

 

そういう時ヒデさんは嬉しそうに笑った。

久しぶりに話しているせいかなんだかとても面白いし、

話題が尽きることがない。

でもヒデさんと会話している時、ふとあることに気がついた。

 

「ヒデさん?」

 

「ん?」

 

「前より、髪伸びてませんか?」

 

「髪?ああ、長く切ってなかったな」

 

ヒデさんはそう言うと、自分の前髪を少し触った。

初めであった時よりも帽子から出ている髪が長かった。

 

「そろそろ切りどきかもしれないけど、俺にはやることがあるんだよなぁ」

 

「やること?」

 

「ああ、つい最近CCGでバイトをしてるからさぁ」

 

「あれ?CCGてバイトできましたっけ?」

 

CCGでバイトできるっていうのは初めて聞いた。

 

「なんか11区の作戦以降、人が少なくなってバイトの募集を始めたって」

 

「へー、そうなんですか」

 

「まぁ、さすがに未央ちゃんはバイトをする時間はないよな?」

 

「アイドルと舞台をやってますからね」

 

そう言うと私たちは笑った。

長く会ってなかったけど、ヒデさんも元気そうで何よりだった。

その後少しヒデさんと話し、私はまだ高校生のため先に席から去り、

ヒデさんと別れた。

ヒデさんと会話をして改めて思ったことは、友達や知り合いと毎日会うのはいいかもしれないけど、

たまに会う程度も悪くはない。

そちらの方がより楽しく感じられる。

 

 

 

 

 

 

 

でもヒデさんと話してみて思ったんだ

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒデさんは前と同じくどこか悲しそうだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まだ金木さんを探しているんだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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卯月Side

 

 

それは春の晴れが梅雨の雨に変わる時期でした。

私が"ラブレター”のミュージックビデオの撮影する学校に着いた時でした。

 

「え?お話ですか?」

 

「ああ、CCGの捜査官が卯月に用があるらしい」

 

ラブレターの撮影会場に着き衣装の制服を着替え、髪をセットしている時であった。

プロデューサーさんから突然、撮影前にCCGの方が私とお話をするのでした。

 

「なぜ今ですか?」

 

「それが...先程急に連絡が入ってきて。詳しくはわからないが、喰種の認知度調査らしい」

 

「喰種の認知度調査...?」

 

どうやらプロデューサーさんもよくわからないらしく、突然その知らせが来た。

いつもならきっちりとスケジュールを伝えてくれるプロデューサーさんが、

今回は急に予定が入ったことにどこか困惑していました。

それにしても喰種の認知度調査ってなんだろう?

 

「とりあえず、髪をセットしたら向かってくれ」

 

「わかりました....」

 

明確な理由もないまま私は髪を整えた後、一人CCGの人が待っている部屋に向かいました。

廊下に歩くたびにキュッキュッと音が鳴り響く。

これを聞くのは高校最後の一年だけ。

今回のお仕事の撮影と収録が終われば、私は活動を休止し、受験勉強に入る。

そう思うと、今回のお仕事は決して無駄にしたくない。

 

(確か...あの教室かな?)

 

私は目的の教室の前についた。

CCGの方が待っているのは入り口近くの教室。

おそらくは中に待っている。

私は学校の職員室のように「失礼します」と引き戸のドアを開くと、二人のCCGの捜査官が座ってました。

 

「こ...こんにちは」

 

「撮影の中、時間を頂いてすまない」

 

「あ、い、いえ、大丈夫ですよ」

 

教室にいたのは二人。

一人は男性で、何だか前のシンデレラプロジェクトのプロデューサーに似ていて、驚いてしまった。

 

「島村卯月さんですね?」

 

「はい、そうです」

 

「亜門鋼太朗上等です。よろしくお願いします」

 

「こ、こちらこそよろしくおねがします...」

 

亜門さんを新ためて顔を見ても、やっぱりどこかシンデレラプロジェクトのプロデューサーさんに似ている。

 

「私は真戸暁二等捜査官だ。亜門上等の部下を務めている」

 

「島村卯月です。よろしくお願いします」

 

「その着ている制服は撮影用か?」

 

「はい!さすがに普通に使ったら目立ちますよね..ははは」

 

私は暁さんの言葉に少し恥ずかしそうに笑った。

撮影前に急な連絡を入ったから仕方がない。

私たちはそれぞれ自己紹介をした後、椅子に座った。

 

「それで...先ほどプロデューサーさんが言っていた"喰種の認知度調査"ってなんでしょうか?」

 

「それは嘘だ」

 

「えっ?」

 

「あれはただの偽の情報を伝えていただけで、実際は違う」

 

真戸さんの唐突な言葉に、私は混乱をしてしまう。

 

「アキラ、さすがに急すぎるのでは」

 

「時間はわずかしか与えられてはないだろ?」

 

「そうだが...」

 

亜門さんと真戸さんは小声で何か話していました。

おそらくは真戸さんの行動がまずいのでないかと気が付いたようでした。

 

「あ、あの...一体何を話すのですか?」

 

「ああ、すまない。本題に入ろう、亜門」

 

「...わかった」

 

亜門さんは暁さんの様子に諦めた感じ、本題に入りました。

 

「今回我々が話すことなのだが....」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「"カネキケン"を知っているか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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