東京喰種 CINDERELLA GIRLS [完結]   作:瀬本製作所 小説部

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いつの前にか、あの人を名前で言うのはなくなってしまった。




それが再び名前を言うきっかけが現れたんだ。



カネキと。








蘇る、忘れられた人

美嘉Side

 

 

「最近、お仕事どう?」

 

「うん、結構楽しいことがあって面白い!」

 

日が赤く染まっていた、仕事終わり。

アタシはみりあちゃんと一緒に帰っていた。

別にお互い一緒の仕事ではないのだけど、

今日はたまたま帰る時間帯が同じだったからこうして話しながら帰っている。

アタシは大学生になり、みりあちゃんは小学校6年生になった。

みりあちゃんも成長をし、アタシも同じくそうだ。

前よりも見ている世界が変わった。

それはアタシが前とは違い、変わったと言える。

 

 

 

 

でもそんなアタシに、もやもやすることを抱えていた。

 

 

 

 

 

(なんで言ったんだろう...志希)

 

それはこの前の音楽番組の収録で起きた出来事。

LiPPSとして一緒に出ていた志希が司会者に意味深い発言をしたのだ。

"K・Kさん"という名を言ったのだ。

SNS内ではその"K・K"という人物に一体誰なのかと議論されている。

しかし今世間で有力とされている人が上がっているが、

アタシはその答えが全く違うとはっきり言える。

 

(...さすがに金木さんが名前をあげることないよね?)

 

金木研

アタシとは一つ上の男性。

金木さんとは13区駅で初めて出会ったけど、

知り合ったのは卯月と凛、未央が初めてステージに立ったライブの終わりの帰りだ。

なぜ金木さんが志希が言ったK・Kだといえるかと言うと、もちろん名前もそうだけど、

志希がアイドルになったきっかけを作ったのは金木さんであった。

あくまで予想だけれど、まさか志希がその人を収録でイニシャルで上げるなんて考えもしなかった。

 

(....本当にどこにいるんだろう)

 

でも金木さんは今は行方不明。

理由はわからない。

理由を探したくてもアタシはアイドル。

それを大きく知られてしまえば、アタシの今の道を失う。

アタシも他のみんなも探したい気持ちを抱え、ただ時間が過ぎていく。

 

 

 

 

 

時間が経つに連れてもう一つ、増えていく情報があった。

 

 

 

 

「そういえば美嘉ちゃん、この前に行ったカフェも一度行きたい!」

 

「あそこ?えっと....そこは今度にしようか」

 

「えー?今度に?」

 

みりあちゃんはアタシの答えにどこか落ち着いた様子になってしまった。

決してみりあちゃんを悲しませるために断ったのではなく、

この前に行ったカフェは6区の近くだ。

つい最近、6区内で"喰種の事件"が多発している。

だからアタシはそう伝えるしかなかった。

 

(...なんか喰種の事件が増えて、都内は物騒になっているしね)

 

ここ最近、喰種の事件を耳にすることが多くなった。

おそらくは12月に行われた11区の作戦だ。

11区にいた喰種の集団を倒すため、CCGはそこに攻撃をしたのだけど、

その同時に23区にあった収容所に多くの喰種が東京に放たれてしまった。

そのおかげでアタシは前よりも強く警戒するようになった。

 

「そういえば、美嘉ちゃん?」

 

「ん?」

 

「今度一緒に図書館に行きたい!学校でわからないところがあって、教えて欲しい!」

 

「いいよ。時間が空いたら、声をかけるよ☆」

 

「やったー!」

 

みりあちゃんはアタシの言葉に大きく喜んだ。

何気なく同意をした、アタシ。

 

 

 

 

 

 

 

その図書館でみりあちゃんが"ある子"と出会ったことは、アタシは知らない。

 

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

文香Side

 

 

雲が多く覆った朝。

事務所に訪れ、部屋にあったソファーに座り、一人本を開く私。

お仕事の前に私はいつも読書をします。

気持ちの整理もありますが、ある意味ルーティンとしてやっています。

今日はありすちゃんと一緒にお仕事をします。

それで私は早めにここに訪れました。

 

「おはようございます、文香さん」

 

「おはようございます」

 

するとありすちゃんがドアから現れ、挨拶をしました。

私もやって来ましたありすちゃんに挨拶を返しました。

前までは読書をしていると誰かが声をかけない限り気がつかなかったのですが、

今では読書をしていても気づけるようになりました。

 

「今日はどんな本を読んでいるのですか?」

 

「最近書店でベストセラーになっている本を選びました」

 

ありすちゃんとは本の話題で盛り上がります。

プロジェクトクローネの活動のおかげで色々な方と接する機会が増え、

以前よりもお友達が増えました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でもそのおかげで"失ってしまった人"がいます

 

 

 

 

 

 

 

それがきっかけで心の中で葛藤するようになりました。

 

 

 

 

 

 

本当にこうしてアイドルをしていいのだろうか?っと

 

 

 

 

 

一人本を読む彼の姿を思うだけでも、胸が痛い。

 

 

彼の声を思い出すだけで、気持ちが乱れる。

 

 

彼の顔を思い出すだけで、涙が流れる。

 

 

 

 

 

私は彼がいなくなってしまった時から、こうして今を過ごしている。

 

 

 

 

 

「文香さん、文香さん?」

 

「...はい?」

 

「また何か考えてますよね?」

 

ふと気がつくとありすちゃんが私に何度も声をかけていました。

最近、ありすちゃんに気づかれています。

私がこうして一人、何かを思い続けていることを。

でも何を考えているかは、ありすちゃんは知りません。

 

「そうでしょうか....私は何も考えておりませんよ?」

 

「本当ですか?」

 

ありすちゃんは私の言葉に信じきれないまま、言葉を返しました。

私はまた嘘をついてしまった。

これで何回目だろうか。

"彼"を考えてるなんて言えない。

 

「そういえば、先ほどプロデューサーさんが探していましたよ?」

 

「プロデューサーさんが?」

 

「はい...そのお仕事前に何か打ち合わせみたいのをするって言ってました」

 

「打ち合わせですか...?わかりました、プロデューサーさんの元に行ってきます」

 

一体なんだろうかと疑問を抱え、プロデューサーさんの元に向かいました。

別にお仕事の打ち合わせなら、ありすちゃんと一緒に受けるはずなのになぜか私だけ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこで"彼の名”を聞くなんて、私は知らない。

 

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

プロデューサーSide

 

彼女たちが"ある人物"を聞く前のこと。

私は応接室の椅子に座り、"ある方々"を待ち合わせいた。

今日のスケジュールでは一番初めにこの応接室にてある方々と話すことになっている。

 

気がつけば、"彼女たち"と出会って一年が経っていた。

あの時は時間は長く感じ、今ではあっという間に短い。

私は2代目シンデレラプロジェクトを担当し、

卯月さんたちとは出会う頻度は少なくない。

今日は"CCG"の方が私に用があるようだ。

 

(一体何を話すのだろうか...?)

 

私がCCGの方に声をかけられるのは、"あの事件以来"であった。

担当していたアイドルが喰種に捕食される残酷な事件で、

当時そのアイドルをプロデュースしていた私にCCGの方が事情聴取をした。

今回は決してそのような関連はなく、理由が見つからない。

私に対してはないが、ここ最近都内は喰種に脅かされている。

都内では"アオギリの樹"と呼ばれる喰種集団が活発期的に活動していると耳にした。

これはCCGから我々346プロダクションに伝えられた情報であり、

一般的に公開されていない。

アオギリの樹は11区の作戦以降、都内で大きく勢力を示している。

そのおかげか、今まで社内では無駄だと称してきた喰種対策が、今では重要な政策だと一変している。

それは私も予想にしていなかった出来事だ。

 

「...ん?」

 

すると応接室の扉が開いた。

CCGの方々が来た。

私は椅子から立ち上がり、出迎える。

部屋に訪れたのは二人。

一人目は女性で、二人目は.....

 

「貴重なお時間をいただきありがとうございます」

 

「...」

 

その女性のCCG捜査官の方がお伝えしたのだが、

私はもう一人同じく来たCCG捜査官に思わず声を失い、驚いてしまった。

 

「亜門さん...?」

 

20区で仕事されるはずの亜門さんが私の元にやってきたのだ。

 

 

 

 


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