東京喰種 CINDERELLA GIRLS [完結]   作:瀬本製作所 小説部

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光もあれば影もある。

ぼくはその影かもしれない。






輝影

 

 

 

卯月Side

 

 

『多分、"その子"と出会ったことがある』

 

 

「.....え、えっ!?」

 

私はそのメールを見て驚いた。

まさか金木さんが未央ちゃんに会ってたとは...

 

『もしかして、お知り合いですか?』

 

わたしは急いでメールを打ち、送る。

 

(....まだかな?)

 

まだ数秒しか経ってない。

金木さんの返事が来るまで、

ものすごく待ち遠しい。

なぜ金木さんが未央ちゃんを...?

 

『実は卯月ちゃんの誕生日の時に出会ったんだ』

 

『どうして出会ったんですか?』

 

『確か....その子は何かオーディションを受けるため移動をしていたら、たまたま僕に当たって』

 

未央ちゃんがオーディションを受けたのは私の誕生日の時に受けてたと言ってた。

だとすれば、一瞬かもしれないけど会っていたことになる。

 

『そうですか....』

 

『多分、僕と会っても覚えてないかも』

 

(ん....そもそも未央ちゃんに金木さんの名前を言っても....)

 

しかも金木さんの写真もないため、確認しようがない。

 

『ちなみに卯月ちゃん達が出るライブって...?』

 

(あ....言ってなかった)

 

『"Happy Princess"のライブで、私たちが出るのは城ヶ崎さんの"TOKIMEKIエスカレート"のバックダンスです!』

 

(....そうだ!)

 

わたしは何か思いつき、メールを打つ。

 

『そうなんだ。有名なユニットのライブに出るんだね』

 

(じゃあ....会わせてみようかな...?)

 

たぶん、未央ちゃんは思い出すかも。

 

 

『来てくれますか?ライブに?』

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

金木Side

 

 

『来てくれますか?ライブに?』

 

 

卯月ちゃんからの返事を見て、なぜかびっくりした。

 

(ら、ライブ...)

 

少し迷う。

卯月ちゃん達が出る"Happy Princess"のライブに行くことを。

別にその日は何も予定はないが....

 

(まぁ...せっかく卯月ちゃん達の初めてのライブ出演だし...)

 

ぼくは『行こうかな』と入力し、返事を送る。

 

『そうですか!ありがとうございます!』

 

卯月ちゃんはとても嬉しそう。

しかしぼくは手を額につけ、ため息をつく。

 

(どうしよう....チケットは...)

 

ライブは来週。

しかも"Happy Princess"のライブ。

ぼくはチケットの調達の仕方がよくわからない。

ある有名な歌手のライブでは、チケットは抽選でゲットできると耳にしたことがある。

 

(明日ヒデに相談しようかな...?)

 

そう思っていると、携帯が鳴る。

 

『金木さん。ライブが終わったら、しばらく会場の外で待ってくれませんか?』

 

(.....え?)

 

ぼくはその返事に少し動揺した。

なぜ待つのかを。

 

(.......なんて返事を....)

 

あまりにも驚いたせいか、指が動かない。

会うなんて約2週間ぶりと言えばいいだろう。

 

(......もしかしたら...城ヶ崎さんに会えるかな?)

 

確率は低いと思うが、会えるかな...?

 

『いいよ。待つよ』

 

『ありがとうございます!ではおやすみなさい、金木さん!』

 

その返事の最後にハートがあった。

その返事を見て、携帯の画面を消す。

そして....

 

(あーーーーーーーーっ!!!!!)

 

ぼくは心の中で叫ぶ。

僕が未熟なせいか、

ただの会話のはずなのだが、

妙に恋人同士の会話に見えてしまう。

 

(これは普通の会話だ....多分)

 

恋愛なんてだめだ。

 

彼女はアイドル。

 

そんなことしちゃ....彼女の道を"傷つける"ことになる。

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

次の日―――喫茶店

 

 

「よーし、今日も合格だ」

 

午前の講義が終わり、ぼくたちは喫茶店にいる。

今日のヒデのテストはもちろん合格した。

出された問題は現在のシンデレラプロジェクトのメンバーを言えという問題。

 

「もうやめない....?」

 

なんだかヒデと会うたびテストをやるため、もう定番化しそうだ。

 

「別にいいだろ?カネキが忘れないためにだ」

 

ヒデは笑ってそう言う。

どうやらやめないらしい。

 

「別に忘れはしないけど...」

 

そう会話していると、テレビにあるニュースが出ていた。

 

『今日、13区にて"喰種"(グール)の捕食事件がありました』

 

「またか"喰種"(グール)か.....しかも"13区"」

 

ヒデが少し顔を曇らせ、呟いた。

そのニュースは昼のトップニュースだ。

そのニュースはとても残酷だ。

その被害者は目を潰され、手足が切断されたと。

 

「昔から13区って危ないよな?」

 

「うん....」

 

昔から危ないと聞いている。

いつまで経っても同じことを聞くため、まだ危ない。

 

(と言っても......."喰種"(グール)ってなんだろう?)

 

そもそも"喰種"(グール)の姿を見たことはなく、どういった者なのかわからない。

中学や高校の時には薬学講座や交通安全、犯罪防止する講座を受けたことがあるのだが、

"喰種"(グール)についての講座はやったことがない。というかないと言ってもいいだろう。

学んだことを言えば、現代社会の時間でぼそっと出たくらいだ。

 

(あ...そうだった)

 

今日ぼくがヒデに会って話すことがあった。

 

「そうだ。ヒデ」

 

「ん?」

 

「ぼく行こうと思うんだ。ライブに」

 

「ライブ?どのライブだ?」

 

「えっと..."Happy Princess"の」

 

ヒデはそれ聞いた瞬間、顔が変わった。

 

「まじかっ!ちょうど俺も行くつもりだったから、行こうぜ!」

 

やっぱり、ヒデはアイドルが好きだと再び感じられる。

 

「でも...ぼくにはまだチケットが....」

 

そもそもどうやって買うのかわからない....

しかもまだ残っているのか....

 

「やっぱりか...でも、予想してたぜ?」

 

「え?」

 

ヒデがバックから何かを取り出した。

もしかして....

 

「そうと思って、事前にお前の分もあるぜ!」

 

ヒデが取り出したのは二枚のチケット。

ぼそっと「しかも抽選で」と言った。

どうやら抽選でゲットしたらしい。

 

「本当は一人一枚だったけど、頑張ってお前の分をゲットしたぞ」

 

一体どんなルートでゲットしたのか分からなかったが、とりあえず安心した。

 

「ありがとう、ヒデ。あとでお金を...」

 

「いいぜ、金木。合格祝いだ」

 

ぼくは「それでいいかな..」と苦笑いして言った。

 

ぼくがこのライブに行きたいのは"Happy Princess"のためではなく、

城ヶ崎美嘉の"TOKIMEKIエスカレート"の時に出るバックダンサーの三人の子たち、

つまり卯月ちゃん達を見るためだ。

 

それのために来るのは少し変かもしれないけど、でも彼女達にとって初めてのライブだ。

 

(さすがに....卯月ちゃんたちが出ることは言わないでおこう...)

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

未央Side

 

鼻歌を歌いながら346プロに向かっている。

気分がいいのは今度ライブに出るのだ。

しかも初ステージ。

美嘉姉のバックダンサー役だけど、だいぶ嬉しい。

ライブまであと数日程度。

 

(今日も頑張って行こう!)

 

心にそう言い、346プロに入ってくと、わたしは"ある人"に目を止めた。

 

「あれ?だれだろう?」

 

白い白衣みたいなコートを着て、銀色のアタッシュケースを持った男性が二人いた。

警察の人に見えるけど、何か違う。

 

"喰種"(グール)捜査官の方ですよ」

 

ちひろさんがわたしの後ろからやって来た。

 

「あ、ちひろさん!おはようございます!」

 

わたしは頭を下げ、挨拶をする。

ちひろさんも「おはようございます」といい、頭を下げる。

 

「なんで346プロに?」

 

"喰種”(グール)捜査官が来るなんて今初めて知った。

 

「昔から13区は"喰種"(グール)事件が多くあるところなんですよ」

 

確かに今日も13区で"喰種"(グール)の事件があった。

被害者は30代男性で、遺体は腕と足が切断され、腹部は穴が開けられ、目は潰されたと聞いた。

それを耳にしたはわたしは、朝から妙に嫌な気分を味わった。

 

「それで、"喰種"(グール)捜査官の方が防犯のために、ここに来ますね」

 

家は千葉だから、東京の事情は少ししか知らない。

東京ってそんなに危ないんだね。

 

「まぁ、月に一回ぐらいにここに来る程度ですけど」

 

「そうですか...それでここに来ているんですね」

 

「ちなみに346プロの入り口には、"喰種"(グール)が入って来ないようにするためのゲートがあるんですよ」

 

「へーだいぶ警備が厚いんだね」

 

初めてここに着た時、入り口が妙に違うことに気づいた。

13区のお店にはまずない作りだ。

それなのになぜ346プロはそういうことをするんだろう?

13区だから警備が厚いということかもしれないけど....

 

「今日も練習ですか?」

 

「はい。今日もですけど、がんばってきます!」

 

ちひろさんは「がんばってください」と言い、その場から立ち去った。

 

(さてと、ロッカーに行かないとっ!)

 

わたしは足を動かし、ロッカーに向かう。

 

日が近くなるにつれて、楽しみが増して来る。

 

 

 

 

 

 

それと同時に"緊張"が迫ってくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

金木Side

 

当日―――会場

 

 

(だいぶ人多いな....)

 

僕たちは"Happy Princess"のライブに来ている。

会場に入るため、列の中にいる。

予想していた通り人が多い。

今週はゴールデンウィークということだからか、多くの人がやって来ている。

おそらく東京以外から来た人たちが多くいるだろう。

 

「いやー美嘉ちゃんに会えるからいいなー!」

 

「うん...」

 

ぼくは適当に返事を返す。

今日はヒデのアイドル愛がもっと見れる。

あまり好きではないけど。

 

「ところで席は...?」

 

「えっと、二階の前らへん」

 

「二階か...」

 

前の席かなと思ったが、二階であった。

 

「前の席は即完売したんだよ...」

 

ヒデは残念そうに言う。

確かに"Happy Princess"は人気アイドルユニットだ。

移動中、街の広告では何度も見かけて来た。

 

「仕方ないかな....」

 

そう呟くと、係員の人が『大変お待たせしました』と言う声が聞こえた。

すると止まっていた列が動く。

 

「行くぞ!金木!」

 

ヒデはそう言い、歩く。

 

多くの人の中、僕たちは歩む。

 

(一体どんなライブなのか?)

 

僕にはわからない。

前の高垣楓のライブとは妙に違うように見える。

 

 

 

 

なんだか楽しめそうだ。

 

 

 

 

 


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