東京喰種 CINDERELLA GIRLS [完結]   作:瀬本製作所 小説部

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私は知りたい


あいつの本当の理由を






guilt

凛Side

 

20区に踏み入れた、私。

卯月と別れた次の日、私は学校終わりに立ち寄った。

今日は仕事やレッスンもないから、そのまま20区に来ることができた。

空は冬のせいなのかいつもより早く夕日が沈んでいて、日の近くは赤く染まり、日から離れるほど黒染まっていた。

 

(絶対来るよね....卯月)

 

昨日の約束したこと。

ここ最近事務所や仕事に立っていなかったため、

クリスマスライブに出る約束をした。

卯月がクリスマスライブに出るか不安もあるけど、

その同時に同じく胸にもやもやさせることがあった。

 

(あいつが行方不明って....なんでなの)

 

それは金木が行方不明だと言うことだ。

私は金木とはここ最近連絡していなくて、

あいつのことが行方不明だと知ったのは昨日だ。

卯月と約束をし、未央と一緒に帰ろうとした瞬間、その情報を知ったのだ。

それを聞いた時、悪寒のような感覚を味わった。

まるで当たり前だったものが一瞬にして嘘と化したように私はその事実を耳にしたんだ。

 

(確かここだよね?)

 

金木が働いているあんていくの前に着いた。

卯月は時間が空くたびにここにやって来たらしい。

私は最近忙しくて来れなかったけど、今ここに来れた。

来れたのはよかったのだけど...

 

(あれ?閉まってる?)

 

お店のドアにはCloseと書かれた看板があった。

今の時間帯は開いていてもおかしくはないけれど、なぜか閉まっていた。

 

(なんで閉まって....)

 

どうしようかと周りを見渡していたら、私の目にある人物が写った。

その人は金木と同じく働く人だ。

 

(ん?あれって...?)

 

今すぐ声を掛けたらいいのではと思うかもしれないけど、

まず私が思い出さないと話にならない。

ショートカットに右目が髪に隠れている女子だけれど、

私はその人を何度も見かけたことがあるが声が掛けたことがない。

 

(声を掛けたらいいのか)

 

「っ!....あの」

 

「っ!」

 

声を掛けようか迷っていたら、

まさかのその人と目が合い、あそこから声を掛けて来た。

 

「もしかして...凛さん?」

 

「そ、そうですけど....?」

 

「ですよね。私、あんていくで働いている"トーカ"です」

 

「トーカ?」

 

今初めて名前を知った。

そう、金木と同じく働いていた人だ。

いつも金木と話していたせいか、トーカさんとは話すのは初めて。

 

「以前、卯月さんと未央さんと一緒にカネキさんとお話に来てた時見かけましたから」

 

「ああ、そうなんですか」

 

金木と最後に会った時にトーカさんの姿はなかったことはよかった。

あの時の私は感情的になってたから、金木以外誰も見て欲しくない。

 

「そういえば、お店が閉まってましたけど?」

 

「はい...しばらくお店はお休みです」

 

「え?お休み?」

 

「店長が体調を崩しちゃって...12月の初めからお休みなんです」

 

「ああ....休みなんだ」

 

それだから今、お店のドアにCloseと書かれた看板があったんだ。

でも私があんていくに訪れた理由は、それだけじゃない。

 

「そういえば、金木さんが行方不明って知ってますか?」

 

「ええ...どうして凛さんは知ってるのですか?」

 

「金木と同じ大学に通っている文香から聞いたんだ」

 

「文香...?アイドルのですか?」

 

「うん」

 

「.......」

 

するとトーカさんは目を伏せた。

 

「トーカさん?」

 

「それで..卯月は?」

 

「え....?」

 

小さく驚いてしまった。

急にトーカさんの言葉遣いタメに変わったのだ。

 

「卯月はそれを聞いてどうだった?」

 

「...泣いたよ。金木が行方不明と聞いた瞬間に」

 

トーカさんは「...そう」とつぶやくように答えた。

金木が行方不明の知らせを聞いた時の卯月は混乱していた。

自ら抱えていた不安もあったのだけど、卯月は金木が本当に行方不明だと言うことに信じようしなかった。

電話を掛けてきた志希の言葉を嘘と言い渡して私に携帯を渡してきた時の卯月の状態は、ボロボロと言ってもいいぐらい自分を失っていた。

本当に卯月はそのぐらい金木を失ったことに信じられずに泣いたんだ。

 

「卯月は金木がいなくなったことに信じられなくて、たくさん泣いた」

 

「....ごめん。あいつ(カネキ)を助けることができなくて」

 

「...えっ?」

 

トーカさんは謝ったのだ。

しかも"助けることができなくて”と。

 

「何であやま」

 

「あいつに何もすることができなかった....」

 

そう言うとトーカさんは唇を噛み締め、手をぐっと握った。

トーカさんの声は怒りのように聞こえ、悲しんでいるように聞こえた。

 

「金木の友達に伝えてくれる...?『何もできなくてごめん』って」

 

トーカさんはそう言うと背を向けて、この場からすぐ去って行った。

私は謝った理由を聞こうとしたけど、トーカさんの足が速くて聞けなかった。

その後私は理由を聞けず、もやもやしたまま家に帰って行ったんだ。

先に去ってしまったトーカさんの姿は何もできなったことに悔やんでいた。

 

 

 

 

 

 

 

その"何もできなかった"って一体?

 

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

美嘉Side

 

 

昨日の出来事が終わった次の日の夕方。

アタシは昨日と同じく玄関にあったソファーで一人座っていた。

今回は何もすることがなくてぼーとしていたのではなく、莉嘉の帰りを待っていた。

今日は帰る時間帯が同じなのか莉嘉が「お姉ちゃん、今日は待ってね!」と今朝に聞いた。

アタシは別に帰りは誰も誘ってはいないからとりあえずソファーに座り、莉嘉を待つことにした。

 

(.....文香さん大丈夫かな)

 

昨日と同じく場所に座っていたせいか。ふと文香さんを思い出した。

その文香さんが泣いた理由はアタシと志希を驚かせた。

 

(まさか金木さんが行方不明に...信じられない)

 

それは今でも信じがたい。

突然金木さんがいなくなったのだ。

 

(いい顔してるのに.....)

 

文香さんが撮った金木さんが行方不明だと知らせている張り紙をスマホで見ていた、私。

くっきりと目を開いて微笑んでいる写真で、別に悪そうな顔つきではないしむしろアタシを助けてくれた人。

あの時のおかげでいろいろお世話になったことが生まれた。

相談も乗ったり、話を聞いてくれたり、あとは一緒に探してくれたりとか金木さんを頼ったことがたくさんあった。

それなのに、今行方不明って.....

 

(これじゃあ、莉嘉とみりあちゃんと一緒にあんていくに行っても仕方ないかな...)

 

でも金木さんは今は行方不明。

金木さんが働いているカフェに足を運んでも、彼はいない。

今度、莉嘉とみりあちゃんをあんていくに連れて金木さんと話したかった。

 

(...まぁでも、あんていくに来るのはいいかもね)

 

よくよく考えてみると訪れて損はない気がする。

あくまでアタシの思いつきだけれど、金木さんがいなくても"意味"はあると思う。

 

「あの、どうしましたか?」

 

「えっ!?あ、ああ、プロデューサー」

 

アタシに声を掛けて来たのは、シンデレラプロジェクトのプロデューサーだった。

急に現れたのだから驚いちゃった。

 

「城ヶ崎さんはもうそろそろここに来ますよ」

 

「わ、わかったよ。てか今、城ヶ崎さんと言うのまぎわらしくない?」

 

普通に莉嘉と言えばいいのだけど、この人はいつも人の苗字で呼ぶからアタシと莉嘉の区別がつかないことがある。

 

「すみません。城ヶ...あれ?どうして金木さんを?」

 

「えっ?あ、ああ、これね」

 

プロデューサーが目を向けたのは、アタシの携帯。

金木さんが行方不明と知らせているポスターだ。

アタシはそのことをプロデューサーに伝えた。

 

「金木さんが行方不明....!?」

 

「うん...金木さんと同じ大学に通っている文香さんから聞いたんだ」

 

「...そうなんですか」

 

プロデューサーは金木さんが行方不明だと耳にして、意外と驚いていた。

あんまり金木さんとは会っていないイメージがあって驚かないと思ったのだけれど、

まさかそこまで驚くなんてこちらもびっくりした。

 

「何か心当たりはありますか?」

 

「心当たりはないよ...一体どうしていなくなったか誰でもわからない」

 

「そうですか....あと、あまり彼のことを言わないでください」

 

「う、うん...わかってるよ」

 

当たり前だけど、アタシはアイドル。

もし金木さんを探していると"記者"が知ってたらまずい。

早く見つけたい気持ちがあるけど、今はその気持ちを抑えなきゃいけない辛さを味わなければならない。

 

「あ!お姉ちゃん!」

 

するとタイミングよく莉嘉がアタシたちの元にやってきた。

 

「やっとお仕事終....あれ?お姉ちゃん、もしかしてPくんと一緒に待ってたの?」

 

「ま、まぁ、そうだね...」

 

「ほ〜?Pくんと他に何したの?」

 

「ち、違うよ!莉嘉!」

 

莉嘉はまだ子供なのか状況を理解せず率直に聞いてきた。

アタシはその質問を聞いて"別なこと"が頭に生まれ、少し顔を赤く染まり否定をした。

 

「ほ、ほら!行くよ莉嘉!あ、あ、ありがとうね。プロデューサー!」

 

「あ、はい...さようなら」

 

「さよなら〜Pくん」

 

そしてアタシと莉嘉は事務所から出たんだ。

外はすっかり夜空が広がっていて、街は綺麗な光に包まれていた。

それに冷たい風が吹いて、つけていたマフラーが心地よく感じる。

先ほどの変なことを考えていたアタシを冷やしてくれる。

 

(....話してはダメか)

 

でも内面は全体を綺麗に写してはくれなかった。

昨日生まれた謎が中々晴れやしなかった。

金木さんが行方不明と言う暗闇だ。

今すぐ金木さんを探し出したい。

だけど今すぐだなんてできない。

まるで金木さんを見捨てろと聞こえてもおかしくはない。

 

「お姉ちゃん?」

 

「ん?」

 

「悩みあるの?」

 

「悩み?別にないけど...どうしたの?」

 

「なんか暗い顔してたからさー」

 

莉嘉の言葉に胸に刺されたような感覚を味わった。

些細な言葉なのになぜかそう感じたんだ。

金木さんの話題のせいか暗くなっていたことに今更だけど気づく。

さすがにそのことは口には出せなかった。

あまりいろんな人に広めたら影響がでかねないから。

 

「そ、そうだ!今度みりあちゃんとカフェに行かない?」

 

「お!いいね!どこの?どこの?」

 

「それはアタシが行っているところで、行ってからのお楽しみ☆」

 

「えー今教えて、教えて!!」

 

アタシはその莉嘉の話を変えようと、別の話題を出した。

いつも男性の話を持ちかけられると素直になりきれないアタシ。

でも金木さんが生きて欲しい気持ちは決して嘘じゃない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

たとえ"本人"が変わったとしても

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私たちの元に帰ってきて欲しい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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